#4 旅人は苦労人(誰のこと?)

舞台は唐突に変わり―――。

ここは南の国スサの最西端の港町・エナ=ソー。
【おいおい、本当にエラい変わり様だな(汗)】←天の声(健在)
その道の真ん中を歩く3人の旅人達。

その中の一人、背の高い男がすっかり軽くなった財布を持ってブツブツとつぶやく。
「・・・あれだけ稼いだお金が、何でこう一瞬で消えるかな・・・
 俺には理解できんよ。」
「文句言わないでよ。 1年近く離れていた故郷のある大陸へ帰れるんだから。
 そう考えれば船代なんて安いモノでしょう?」
「いや・・・、船代は良いんだが・・・船代差し引いてもまだ残るはずの金が残ってないのは
 ・・・何故だ?」

「いいじゃない!! 私だってもっといい剣とか買いたいんだからね!!?」
「だからって旅の資金勝手に使って衝動買いするなぁっ!!!」






―――さっきからこの調子で言い争っているこの2人の男女と、それを後ろから楽しそうに見つめる女性。
この妙な3人組がこの旅の主役、となる。

「ユイさん〜〜!!!」
一人じゃかなわないと判断したのか、後ろの女性に助けを求めたのは男の方。
「ユイさんからも言って下さいよ!
 このままじゃ本当にサオリさんのせいで俺達が飢え死にするかもしれませんよ!?」
「あ?」

【ちょっとちょっと、怖いよサオリさ〜ん(汗)】

後ろでなにやら謎のオーラを発しているサオリに圧されて一瞬男の動きが止まる。
すると、今まで特に何も言わなかった『ユイさん』が口を開いた。
「う〜ん・・・。 まぁ、そーゆーことは飢え死にしそうになってから考えましょうか♪」
「何でそう楽天的なんですかぁ〜〜〜。」
ずるずると泣き崩れる男。 それを尻目にすたすたと歩き去っていくサオリ。(非情)

すると『ユイさん』、
「大丈夫大丈夫、色々言っててもサオリは私たち全員のこときちんと考えてるから。」
「そ・・・それはわかってますけどね・・・。 でも時々キツイッスよ・・・。(汗)」
涙ながらに男はつぶやいた。






色々ありながら船に乗り込む3人。

船、それは波に揺られて優雅な気分を味わえる乗り物・・・
のはずが。






「うぎゃぁぁ〜〜〜〜っ!!!!」

「ちょっとちょっと!!
 この船沈まないわよね!!?」

「面白〜い!!!」






いろんな意味で叫びまくる御三方。
海は大荒れ、船は狂ったように揺れている。

船が出たばかりの頃は何でもなかった、が。
何故か立ちこめる暗雲・・・、待ってましたとばかりに嵐が船を飲み込んだ。

ちなみに一番最初のこちらも狂ったかのように悲鳴を上げているのは背の高い男。
次の声はサオリ。
最後の声はユイさん。【楽しんでる・・・?】

と、再び男が声を高めた。
「お、降りたい!! 降ろしてくれぇっ!!」
「何!? アキラ、海に降りたいの!?」
「そうは言ってないぞぉぉぉぉっ!!」
こんな極限状態(?)でも言い合いが耐えないお二人(笑)

さらに何故か笑顔は絶やさない『ユイさん』ことユイナ。






ようやく嵐がおさまったのは3日目の朝。
サオリの船室のドアを誰かが叩く音がした。

「はいはい・・・って、あ、ユイさん。」
「やっと晴れたわね。 眠れた?」
「いや・・・、なんかまだ横になると嵐の幻が鮮明に・・・。」

思い出したらしくサオリの顔が青ざめる。

「こんな所でへばってたらタツヤさん見つからないわよ?
 私たちの旅の目的は何だったのかしら?」
「・・・そりゃわかってますよ。 ただの観光の旅なんかじゃないです。」
ユイナの言葉に青い顔を上げてサオリがつぶやいた。

「でも、私もアキラも、兄ぃのことを見つけるだけじゃなくてあなたを護ることも・・・。」
「ストップストップ。」
更に続けるサオリをユイナが遮る。
「今の私はただの女、ただの魔道士なんだから。
 もうあの日から、私はなんでもない、ただの人間なのよ。」






場面は変わり、晴れ渡った海を見つめるアキラ。
もともと山の中で育った彼にとって海は未だに未知であり、神秘だった。
【昨日まではエラい目にあってたけどね・・・】

と、アキラの目にマストの下に落ちている謎のブツ(え)が映った。
「・・・?」
嵐で飛んできたガラクタとかかもしれないが、妙に引っかかったアキラは
とりあえずマストへ。

謎の物体(笑)はどうやらタマゴのような楕円形の謎の物体。
(・・・取ってみたけどますます訳がわからないな・・・。 なんだこれ?)






しばし考えてから、アキラはそのタマゴ?を持って部屋へと歩き出した。






すべてはあの日に変わった。
何もかもが。
1年以上前、雪の降る都スノーノウェスパは魔物の襲撃を受け、壊滅。
それまでの日常はすべて崩れ去った。

「サオリ、あなたは責任を時々自分で背負い込もうとするわ。
 何も一人で背負うことはない。 私たちもいるのよ?」

「わかっています・・・、でも、ユイさん。
 あの時、私も兄ぃと一緒に行っていたら、王は死ななかった・・・かもしれません。」

「だからって、それを今言ってもどうなるモノじゃないでしょう?」
冷たく言い放つ。
「サオリ、今を生きるしかないのよ。
 後悔するくらいなら、強くなるのよ。 二度と後悔しないように。」






と、その時再びサオリの部屋にノックの音が響いた。
「アキラ?」
サオリの予想通り、そこにいたのはアキラだった。
【まぁ、彼以外に思い当たる節もないけど。】

「・・・アキラ、あんた何手に持ってるの?」
半ばあきれた口調のサオリ。
もちろん手に持っているモノとは謎のタマゴ(らしきブツ)。
「いや、マストの所に落ちてたんです。」
「マストに? ゴミじゃないの?」
サオリはさっきまでの話と雰囲気がガラリと変わってしまったことに
ちょっと不機嫌のようだ。

「ちょっと、それ私にも見せてくれないかしら?」
と、後ろから今まで奥で座っていたユイナが歩み寄ってきた。

「ユイさん・・・これ・・・タマゴみたいな形ですけど、なんだと思います?
 俺もちょっと捨てようかと思ったんですけど、なんか・・・。」
「捨てられないの?」
サオリの問いに頷くアキラ。
その間にもユイナはまじまじと「それ」を見つめる。
「う〜ん・・・。 何かはわからないわ。
 でも、妙に「チカラ」を感じるのよね、やっぱりこれ何かのタマゴじゃないかしら?」

さらにしばらくユイナはタマゴとにらみ合っていたが
(立ち話もなんなのでアキラも部屋に入った)
結局降参してしまった。

「ダメ。 わからないわ。」
結構魔力の高いユイナを持ってしてもなんなのか分析不能
となると、他の2人にもわかるわけがない。

「これ・・・本当に何かしら。
 ただのゴミだとしたら魔力がかなり感じられるし・・・。」
つぶやきながらサオリにタマゴを手渡すユイナ。

と、その時。






「!?」
サオリは全身の力が抜けるのを感じた。
が、それも一瞬。

サオリの意識は消え、彼女の身体はその場に伏した。

「さ・・・サオリ!?」
2人の声だけが、船室に響いた。



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慧太のつぶやき。

いよいよ旅立ちとなりました。
時々真面目路線をぶっ飛ばしているような・・・。
新キャラ二人がどのようにサオリに絡むか
彼ら脇役は後々活躍・・・するヤツもいるかもしれない(え)
ユイナが何者なのか? まぁ、すぐわかるでしょう(え)