すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
マーガレット・ミッチェル 
ジョージア州アトランタ生れ。1922年レッド・アプショウと結婚、1924年離婚。 翌年ジョン・マーシュと結婚。10年を費やして執筆した唯一の長編『風と共に去りぬ』で ピューリッツァー賞受賞。1949年、自動車事故で死亡。
にえ 一生に1作品しか残さなかった作家マーガレット・ミッチェルです。
すみ でも、その一作が凄まじいヒットで、永遠に生きつづける名作となったのよね。
にえ 私たち、これを読むのはけっこう遅かったよね。
すみ うん、映画も見ないでポスターとかの雰囲気だけで、気の強い美女ときざったらしい中年の恋物語ね、なんて決めつけてたもんね。
にえ そのわりに、私たち好みの長さでもあり、気になってた。
すみ で、読んだらメチャメチャおもしろかったよね。なんといっても、登場人物がすばらしい。
にえ それぞれの魅力ある性格のうえに、どうしてそういう性格になったかという厚みが加わって、読んでいくうちに、はまる、はまる(笑)
すみ 主役二人だけの話じゃないのよね、それぞれの人がこれからどうなっていくのかってすごく興味がわいてくる。
にえ その魅力的な登場人物たちが、生き生きとした会話をして、行動をして、もう堪りませんね。
すみ そのうえで、南部戦争をからめたストーリーがまたおもしろい。読みだしたら、一気に読めた。
にえ で、それからこの作品の周辺を知ったら、これがまたおもしろい。
すみ 他の作家が書いた続編あり、そっくり真似て裁判沙汰になった作品あり、それに、マーガレット・ミッチェルの人柄やどのようにして発表さ れるに至ったかまでを書いたノンフィクションもこれまたおもしろい。
にえ たった一作しか残さなかった作家だからこそ、あまりにも優れた、人の心を惹きつけて放さなかった作品だからこそ、こういう現象が 起きるんだろうね。
すみ こういう裏から表からぜんぶ知ってい くっていうのも楽しいよね。名作の別の楽しみ方。
にえ まずは「風とともに去りぬ」を読んでからだけどね。
  
「風と共に去りぬ」 マーガレット・ミッチェル  <新潮社 文庫本 全4巻>ほか

アメリカ南部の大農園に生れたスカーレット・オハラは16歳、輝くばかりの美貌と火のように激しい気性 の持主だった。スカーレットがひそかに憧れていたアシュレイは、いとこのメラニーと結婚することになってしまった。 スカーレットは、つらあてにメラニーの兄チャールズの妻となる。そんなスカーレットをひそかに見つめる謎の男レット・バトラー。 そんな中で南北戦争が勃発、スカーレットの波瀾の人生が幕をあけた。
「ロスト・レイセン」 マーガレット・ミッチェル   <講談社 単行本>

1995年になって発見された、ミッチェルがわずか15歳で書いた中編「ロスト・レイセン」と、彼女の幼なじ みであり、求婚者でもあったヘンリー・ラヴ・エンジェルとの書簡、写真などを解説つきでおさめた本。 「ロスト・レイセン」は、無骨で大柄、喧嘩ばかりしている純情な船乗りビリーと、小柄で美貌の女性 コートニー、ハンサムな彼女の求婚者ダグラスの三角関係を描いた物語で、プロが書いた小説としてじ ゅうぶん堪能できるほどの出来栄え。これだけでも読む価値あり。あらためて、 燃やされたであろう他の著作が残念になる。後半の書簡や解説は、それほどのものではない。
 →読んだ時の紹介はこちら。
「タラへの道」 アン・エドワ−ズ  <文藝春秋 単行本>

ミッチェルの人生の軌跡を追ったノン・フィクション。なぜ、『風と共に去りぬ』が出版社によって 見つけだされたのか、スカーレットという名前の前にはどんな名前が候補になっていたか、 『風と共に去りぬ』以前と以降のミッチェルの暮らしがどう変わったか、 死につながった自動車事故の深層、などよく調べてあり、また一人の女性の裏表を含めた生き方をえぐり 出し、読み物としての完成度も高い。他にも関連本は沢山あるので、探してみると楽しいかもしれません。 私たちが読んだなかでは、今のところこれが一番おもしろかったです。
「スカーレット」 アレグザンドラ・リプリ  <新潮社 単行本 文庫本1〜4>

ミッチェルの遺族の依頼で、『風と共に去りぬ』の続編を書く作家が募集され、選ばれたのがリプリ。 本人みずからスカーレットの性格が嫌いと言いきるだけあって、スカーレットの性格改造がテーマになって いる。また、これも本人の好みか、アイルランドがねっちりと描かれている。ファンを絶望の淵につき落と した怪作。
ストーリーは、レット・バトラーに去られたスカーレットが子供を連れ、アイルランドに行って 性格を改造し、ふたたび愛を取り戻そうとする話。とほほ。
「青い自転車シリーズ」 レジーヌ・デフォルジュ  全5冊  <集英社 単行本>

フランスで、フランス版『風と共に去りぬ』を書いてほしいという出版者の依頼のもと書かれた作品。 シリーズは世界中で1千万部以上の売り上げとなるが、ミッチェルの遺族に訴えられた。裁判でレジーヌ側 は、設定こそ同じでも、オリジナルの世界を描いていると無罪となっている。
気になる内容だが、第二次世界大戦中、ナチスドイツの迫害を受けるフランスが舞台で、最初のうち こそ『風と共に去りぬ』に酷似しているが、後半になるとどんどん反戦色が濃くなり、説教くさくなる。

「青い自転車」  (青い自転車シリーズ 1)
出だしはそっくり同じ、主人公の名はレア、運命の男の名はフランソワとなっている。 反ナチスドイツ運動のため、レアが青い自転車に乗って活動するところがオリジナル。

「アンリ・マルタン通り101番地」  (青い自転車シリーズ 2)
20歳になったレアが、最愛の母に続き父も失なう。父の遺したモンチヤックのブドウ園の経営は 行きづまり、生活も逼迫。レアは姉フランソワーズの出産のため、パリに行く。ここでユダヤ人ザラー に出会うことで、脱『風と共に去りぬ』が始まり、反戦小説となっていく。

「悪魔は二度笑う」 (青い自転車シリーズ 3)
一九四四年。寒い冬が終わり、春を迎えてもモンチヤックは、暗く閉ざされていた。ゲシュタポより 残忍なフランス民兵団がレアの周囲で暗躍。レアの身に危険が迫り、シャルル坊やを連れたカミーユと 共に転々と逃亡。この辺からはもう、戦争の被害、拷問と殺人ばかりが繰り返し描写されるようになる。

「闇のタンゴ」  (青い自転車シリーズ 4)
戦争が終ってやれやれ、これでフランソワとの恋愛話に戻るのかと思いきや、ナチへの復讐を誓った 友の狂気に巻き込まれ、レアは南米アルゼンチンへ。まだまだ反戦、反戦。レアもフランソワもこの頃に なると、性格が変わってしまっている。ひたすらフランソワに従属するばかりのレアが哀しい。

「絹の街」  (青い自転車シリーズ 5)
南米アルゼンチンからの帰国の船中、レアは妊娠に気づく。そして故郷ボルドーでついに愛する男 フランソワと結婚式を挙げる。しかし、フランソワはインドシナ・ヴェトナムに飛び、まだまだ反戦、 反戦。この辺になると、もうどうでもよくなって、とりあえずシリーズを最後まで読みたいという気力だけ で読み切るしかない。世界中で多くの人がきっと同じ思いをしたはずと考えれば、少しは心も和むかも。