すみ=「すみ」です。 にえ =「にえ」です。
トリイ・ヘイデン 
1951年5月21日アメリカ、モンタナ州リビングストン生まれ。母親は15歳の高校生、父親は大学生だったため、 祖父母に育てられる。モンタナ州のビリングズ高校からウィットマン・カレッジで動物学を専攻していったが、アルバイトで 情緒障害児教室のアシスタントのアルバイトをするときにある少女と出会ったことをきっかけに、障害児教育にたずさわることを決め、 モンタナ州立大学で特殊教育の理学修士を修得、ミネソタ大学で教育心理学、特殊教育を学ぶ。 1982年にイギリス人の夫と結婚、1985年には娘を持つ。現在はスコットランドに住んでいる。
日本の公式ファンサイト http://www.torey-hayden.com/japan/defaultj.htm
すみ 「シーラという子」からノンフィクションを発表していき、「ひまわりの森」からフィクションを書きはじめたトリイです。
にえ 無理に感動させようとするようなクサイ話なんじゃないの?とか、障害児教育はこんなに大変なのよ〜みたいな押しつけが ましい苦労話だと思って敬遠している人もいるかもしれないけど、とにかく「シーラという子」から読んでみてほしい。
すみ トリイはほんと、ビックリするほど等身大で、すぐに親近感がわくんだよね。
にえ 悩みもすれば、いやになったりもする、ごくごく普通の女性なんだなってわかるよね。
すみ でも、普通の女性だな、とわかったところから、トリイの凄さがジワジワ伝わってくるのよね。
にえ 子供たちのちょっとした心の変化を見逃さない感受性がありながら、あくまで気長で、明るい気持ちを持ちつづける強さ、真似しようと思っても真似できない。
すみ え、こんなときでも人に優しくできるのって驚いちゃうしね。
にえ 普通にイライラしたり、もうやだとか言ってるのを知ってるからね。私だったら、雑になったり、放り出したりしちゃう。でも、トリイは子供の前に立つと、もうアンテナがビンビンに立って、子供の気持ちになって考えてるんだよね。
すみ そしてなんといっても、いかに大人の犠牲になってしまう子供が多いことかと、ほんとに考えさせられちゃう。
にえ それに、障害児を育てていくことの大変さを思い知らされるよね。自分にできるんだろうかって考えちゃう。
すみ 女性だったら子供を産むとなると、障害児が生まれてくるっていうのは誰にでも可能性のあることだからね。
にえ 他人事のようには考えないでほしいよね。
すみ そして、フィクション1作めの「ひまわりの森」では、娘が母親を愛すること、そういうことすら本当は難しいんだってことを思い知らされました。
にえ トリイの本は、フィクションでもノンフィクションでも、人を愛するって自分たちが思ってたような薄っぺらい、簡単なことじゃないんだと気づかされるよね。
  
「シ−ラという子」    <早川書房 単行本>

傷害事件を起こしたために精神病院に入ることになっていた六歳の少女シーラを、一時的とはいえ、 障害者教室に引き取ることになったトリイ。だが、暴力的で言うことをきかないシーラには、じつは 高い知能と繊細な感受性をやどしていた。
トリイ・ヘイデンを読むならまずこの本から。感動のノンフィクションです。
「タイガ−と呼ばれた子」    <早川書房 単行本>

情緒障害児教室の教師をやめてセラピストとなったトリイは、七年ぶりにシーラと再開する。だが、髪を派手なオレンジ色に染めた14歳のパンク少女シーラは、あの二人の信頼関係や教室での楽しかった日々をまったく憶えていなかった。
『シーラという子』の続編です。人の心はわずかな期間で癒せるものではないし、何層にも深く傷や悩みを隠し持っているものだとあらためて考えさせられます。
「檻のなかの子」    <早川書房 単行本>

8年間、だれとも口をきかず、机の下でおびえている15歳の恐怖症の少年ケヴィンは、身長が180センチもあり、ひとたび恐怖心が爆発すると、猛獣のように暴れまわる。ある日、ケヴィンが描いた絵にトリイは驚愕する。それは彼に内在する怒りと憎しみのすべてが込められていた。
障害児教育の難しさ、それに柔らかに、そして諦めることなく果敢に取り組むトリイの姿が感動を呼ぶノンフィクションです。
「幽霊のような子」    <早川書房 単行本>

私立のクリニックを辞め、小学校の情緒障害児クラスの教師となったトリイが出会ったのは、八歳の少女ジェイディだった。体をほとんど二つに折りまげ、上目づかいにこちらを見上げる異様な姿勢、顔色ひとつ変えず、まったく話さず、反応がない。ところが、トリイはまっすぐに立つジェイディの姿を目撃した。そしてジェイディから受けとったメッセージとは。
衝撃のラストはフィクションかと思うほど。主観的で、無意識のうちに話を歪めてしまう子供に接する難しさを痛感させられます。
「愛されない子」    <早川書房 単行本>

トリイの教室を手伝うことになったラドブルックは、驚くほどの美人で、学歴も高く、裕福な女性。だが、人をよせつけない雰囲気を漂わせたラドブルックは、少女時代の経験から重い苦悩を抱え、じつは自分に自信を持てずにいる、怯えた子供のような存在だった。
トリイの癒しは大人の女性にも通じるのか。嫌悪を抱く前に人を愛したい、と思わせてくれるノンフィクションです。
「ひまわりの森」    <早川書房 単行本>

17歳のレスリー・オマリーには、愛しあう父母と少し生意気な9歳の妹がいた。母は楽しい人だった。ハンガリー語、ドイツ語、英語を使いこなし、若かった頃の思い出を演技を加えておもしろおかしく話してくれる。ハンガリーでの裕福な生活、ドイツでパン屋の息子に恋をして、自分をオーストリア大公の娘だと嘘をついたこと、一面のひまわりが美しかったウェールズの思い出。だが、母は心を病んだ人でもあった。人に会うことを恐れ、鬱に陥ると引っ越さずにはいられない。母の言いなりになる父は、そのためにきちんとした仕事に就けず一家は貧しく、転校を繰り返すレスリーには彼氏もできない。それは、母が過去の記憶から逃れられないためだった。母は父親の意向で14歳でハンガリーからドイツに留学させられ、16歳で戦争がはじまると、ドイツ軍の従軍慰安婦として働かされて、二人の子供まで産まされていたのだ。やっと落ち着きを取り戻しはじめたカンザスでも、母の様子は少しずつおかしくなっていった。やがて母は、まったく関係のない家庭の子供を自分の失った息子の一人クラウスだと思いこむようになる。そこから滑り落ちていった狂気は、レスリーの、そしてオマリー一家の運命を暗転させていった。
トリイの初のフィクション小説です。
 →読んだ時の紹介はこちら。
■今後の読書予定■
「よその子」「機械じかけの猫」