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 「失われた時を求めて 第7篇 見出された時」 マルセル・プルースト (フランス)
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マルセル・プルースト(1871年〜1922年)
【広辞苑 第四版】フランスの小説家。ベルクソン哲学や精神分析学の影響を受けて、独特の手法でフランス第三共和政の上層社会を深層心理学的に再構成したともいうべき七編一六巻の長編小説「失われた時を求めて」を書いた。
【大辞林 第二版】フランスの小説家。長編小説「失われた時を求めて」は、人間の意識の流れを綿密に追うことによって小説概念を一新し、二〇世紀の新しい文学の出発点となった。
にえ ついに最終篇となりました〜、パチパチパチ。
すみ 振り返れば、長かったような、短かったような。とりあえず、薄くもない本を13冊も読んだわけだけど、難しいことを書いているわけじゃないから、淡々と読んでいけばいいだけだったよね。
にえ まあ、現代人からすると、ノンビリ同じ話ばっかりしてないで、さっさと先へ進めよって言いたくなるところもあったけど、とりあえず、人間たちの織りなすドラマなわけだから、読むのが辛いってこともなかった。
すみ ず〜っと前に読んだ時は、どうしても読んでいるうちに眠くなって、それが辛かったけど、今回はメモを取りながら読んで、それが良かったのかも。目を開けたまま読むことができた(笑)
にえ それにしても、さすがに最終篇ともなると、おもしろく感じたよね。12冊かけて描かれた世界が、最後の1冊でガラリと変わるおもしろさもあったりして。
すみ 私は12冊読むあいだ、ずっと語り手と気持ちを合わせられなかったのね。この人ってなんて意地悪に他人を見るんだろう、病気がちだからしょうがないのかもしれないけど、あら探しのしすぎだよって。悪く書いてる人も、本当はみんな良い人に違いないと思っていたし。どんなにきれいな顔をした人だって、拡大してみたら黴菌だらけでしょ。そういう黴菌ばっかり見てないで、大きな目で綺麗さを見たほうが幸せなのに、なんて思ったりしたの。でも、この最終篇では心を合わせることができて、スンナリ書いてることが入ってきたかな〜。
にえ そうそう、この語り手って、けっこう自分のことは棚に上げて、他人のことは悪し様に言うところがあったよね。自分は賢いっていう自尊心がものすごくって、まわりの人のことはみんな頭の悪い人ってことになっちゃってたし。そういうのを腹にためこんで、口に出さないタイプだったしね。
すみ 他人が自分に良くしてくれるのは当たり前で、自分は他人のためになにもしないってところがあったよね。でもまあ、この語り手もまた根は優しく、思いやり深い一面もあったのだけれど。
にえ うん、まあ、若い頃のことを回想して書いてあったから、自分を悪く書きすぎちゃったってところもあったのかもね。その点でも、この最終篇の後半では、年齢がそのまま書いている時になったから、違和感がなくなったのかも。
すみ ということで、ストーリーを知りたくない方はこの先を見ないでくださいね。
にえ さてさて、話はジルベルトから。せっかくサン=ルー(ロベール)と結婚したジルベルトだけれど、サン=ルーがまだ昔の恋人ラシェルに金を渡していることや、複数の女性を愛人にしていることを気にして、苦しんでるの。
すみ 本当は、サン=ルーは男性を好むようになって、昔の恋人に金を渡すのも愛人を作るのも表面的に取り繕うためのもので、女性の中ならジルベルトが一番好きなんだけどね。
にえ そのジルベルトもまた、生前のアルベルチーヌと同性愛の関係だったことがわかったりするんだけどね。
すみ それから長々と語り手の文学論が入ります。なんとなく前後の繋がりを欠いているのは、推敲を重ねていない遺稿だからなのか。
にえ ここではおもに、ゴンクール兄弟について語られてたね。ゴンクールほどのものが書けるのかって悩んでて。
すみ そういえば、ゴンクール兄弟ってゴンクール賞で名前を知っているけど、作品を読んだことないよね。あんまり日本ではメジャーでないような。
にえ バルザックのことも語られてたね。バルザックは全篇にやたらと名前が出てくるけどね。立派な文学者の代表みたいな感じで。あとはなんといっても、語り手の愛読書「千夜一夜物語」。
すみ そんなこんなで、ついに第一次世界大戦突入。これまでずっと語り続けられていたドレーフェス事件なんて、これですっかり忘れ去られてしまったとさ。
にえ モレルはずっと軍に所属していたのに、いざ戦争が始まったら脱走しちゃうんだよね。そのせいでシャルリュス男爵まで一時的に逮捕されることに。
すみ ブロックは近眼だから徴兵されないと安心しきっていたら、従軍検査に合格してビックリ。
にえ そんな腰抜けどものなか、サン=ルーは除隊していたのに、志願してわざわざ前線へ行くことに。
すみ 部下の退却をかばって戦死しちゃうのよね。やっぱりサン=ルーは立派な方でした。これぞ本物の貴族ですよ。
にえ サン=ルーが戦死したおかげで、なぜだか捕まっていたモレルが釈放されちゃうのよね。どこまで悪運が強いのか。
すみ 新聞社に勤めることになるのよね。ベルゴットの真似ばっかりするようになっていたモレルは、文体までそっくり真似ちゃって。
にえ 語り手はモレルに、シャルリュス男爵にもうちょっと優しくしてやれって言うのよね。そしたら、モレルからは「怖い」という意外な返事が。
すみ それについては、もっとあとになってシャルリュス男爵が亡くなった後、モレルを殺すつもりだったって告白した手紙を受けとって、語り手はそうだったのかと納得するの。
にえ 優しい人だから、けっきょくは会っても殺せなかったと思うけどね。そのシャルリュス男爵は、ヴェルデュラン夫人から戦前派の流行遅れと言いふらされ、尊敬の的の地位を失って、とうとう少年愛に目覚めることに。
すみ 語り手は偶然、シャルリュス男爵が若い兵士とSMプレイをしているところを見かけちゃうのよね。そこはジュビヤンがその手の趣味の人のために作った宿なんだけど。
にえ もっとずっと若い、幼いとも言えるような少年にも手を出したりしているみたいだったけどね。で、モレルのほうは、一人の女性を愛するようになって、同性愛者ではなくなるの。
すみ 戦時中も、服装が地味になっただけで、まだ社交界の催し物は相変わらず。そして2巻めへ。
にえ どのくらいの時が経ったのか、戦争はもうとっくに終わっていて、語り手は久しぶりにゲルマント大公夫人の開いたマチネー(午後の集い)に出席。ちなみに、ゲルマント大公夫人といっても、前の夫人は亡くなって、今はヴェルデュラン夫人が大公と結婚して、ゲルマント大公夫人に。ビックリ。
すみ そんなことより語り手は、知人たちの顔がまるで別人のように見えることにビックリするのよね。
にえ もっと驚いてしまったのは、若者だったはずの自分が老人に近いような年代として扱われること。使用人たちは陰で○○おやじ(○○は名前)なんて呼んでいるし、結婚しなかったのは残念ですが、子供がいたら戦争にとられてましたね〜なんて言われたり、持病があっても長生きてきてよかったねなんて言われたり、しまいには、うっかり語り手が自分のことを若い男と言ってしまい、冗談ととられて周りのみんなに笑われてしまったり。
すみ 社交界もすっかり人が入れ替わっているのよね。戦前にちやほやされていた人たちが忘れ去られ、知らない人や意外な人が今や社交界の中心的存在に。
にえ ブロックとも久々の再会。ブロックは社交界などについてわかったふうな著作をたくさん書いて、いまや人々の賞讃を集める存在に。
すみ 語り手はブロックの書いてるものなんて信じちゃいけないって周りの人に言ってるみたいだけど、ブロックは前と違って、すっかり慎み深い人物となっているのよね。それに、いろいろあったにも関わらず、語り手に親しげに話しかけてきてくれて。
にえ モレルもなんだか裁判で重要な証言をしたらしくて、時の人となっているのよね。それでも、語り手には親しげに話しかけてきてくれるんだけど。
すみ ジルベルトはアンドレと親友になったみたい。その母のオデットは、フォルシュヴィル夫人と再婚していたけど、今やゲルマント公爵の愛人に。
にえ そこに、ラシェルが登場するのよね。かつては娼婦、サン=ルーの恋人、そして今や、押しも押されぬ人気女優に。成功した女優ラシェルは、大公夫人に招かれて詩を読むことになっているの。
すみ ジルベルトがいるのをわかってて、あえてラシェルを呼んだのよね。一時は優しくなっていたゲルマント公爵夫人もジルベルトへの憎しみを口にするし。
にえ ラシェルが人気女優になった今、かつての人気女優ラ・ベルマがどうなったかというと、病気で瀕死の状態だというのに、娘と娘婿に贅沢な暮らしをさせるため、無理を押して舞台に立ち続けているのよね。
すみ ラ・ベルマは、ラシェルが大公夫人に招かれたのが気に入らなくて、同じ日にお茶会を開くけど、誰も来ないのよね。しかも、吐血してベッドへ行ったすきに、娘と娘婿は大公夫人邸へ行き、参加させてもらえないかと直談判。断られると、せめてラシェルと握手だけでもさせてくれと頼む始末。
にえ そして、唐突に締めの言葉に。語り手は自分の死を予感し、この作品を最後まで書きおえることができるのだろうかと危惧しつつも、死後もこの作品が残ることについて語っているの。
すみ ヴィクトル・ユゴーの詩から、「草は生い茂り、子供らは死なねばならぬ。」という言葉が引用されているのが印象的かな。
にえ ついでに言っておくと、語り手は私たちのようにさっぱり良さをわかってくれない読者もいるだろうことを予想しています(笑) ということで、いや〜、終わってしまいましたね。
すみ うん、まあ、雑な読み方だったと自分でも思うけど、とにかく読了しました。なんかいろいろと後悔が襲ってきそうだけど、ぐっと堪えて、よかった、よかったってことで。
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