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 「失われた時を求めて 第4篇 ソドムとゴモラ」 マルセル・プルースト (フランス)
               <集英社 文庫本> 【Amazon】 (7) (8) <筑摩書房 文庫本> (6) (7) 10巻セット

マルセル・プルースト(1871年〜1922年)
【広辞苑 第四版】フランスの小説家。ベルクソン哲学や精神分析学の影響を受けて、独特の手法でフランス第三共和政の上層社会を深層心理学的に再構成したともいうべき七編一六巻の長編小説「失われた時を求めて」を書いた。
【大辞林 第二版】フランスの小説家。長編小説「失われた時を求めて」は、人間の意識の流れを綿密に追うことによって小説概念を一新し、二〇世紀の新しい文学の出発点となった。
<ソドムとゴモラ> 死海の近傍にあった古都市ソドムとゴモラは、共に住民の罪悪のため、神によって滅ぼされた。ロトは天使に「明日、ソドムとゴモラは滅ぶ。急いで逃げよ。逃げる途中、決して後ろを振り返ってはならない」と告げられ、一族を連れて同地を脱出した。翌日、ソドムとゴモラは硫黄の炎に滅ぼされ、逃げる途中で振り返ってしまったロトの妻は塩の柱にされてしまう。
にえ さてさて、全7篇のうちの第4篇まで来ました。第4篇のタイトルが「ソドムとゴモラ」だったので、上(↑)にソドムとゴモラの説明も入れてみました。
すみ ソドムとゴモラってことは、語り手がロトってこと? と思って、ロトまで言及してみたものの、どうなんでしょうね。なんだかあんまりロトじゃないような(笑)
にえ ここでもそれほど急展開はなかったよね。次への予感はさせたけど。そうそう、母親が語り手にガラン訳の「千一夜物語」とマドリュス訳の「千夜一夜物語」を贈ったという記述があって、個人的にはうれしかった。お母様は、マドリュス訳はどぎついから、できればガラン訳だけよんでほしいみたい。バートンが英語訳で良かったねえ(笑) ということで、ストーリーを知りたくない方はこの先を見ないでくださいね。
すみ まずは、第3篇の続きからの話になるんだけど、じつはゲルマント公爵夫妻に会いに行くとき、語り手はあるとんでもないものを目撃していたんだって打ち明けるところから。
にえ 公爵の屋敷の中庭にチョッキの仕立屋の店を出しているジュピヤンという男性がいるんだけど、その人が通りかかったシャルリュス男爵に色目を使い、二人で店の奥に入っていくところを語り手は目撃してしまうのよね。シャルリュス男爵もジュビヤンも同性愛者だということをようやくはっきり認識するの。
すみ おまけに、あとで店から出てきた二人の会話から、男爵が語り手を狙っていることまで知ってしまったりして。
にえ 屋敷の中に店があるって不思議な感じだけど、敷地の広さの感覚がつかめていないからだろうね。私の想像するていどのお屋敷では、敷地内に店があるなんて変(笑) それはともかく、ジュピヤンはこれでシャルリュス男爵と強い繋がりができて、のちに秘書に採用されることになるみたい。
すみ この第4篇では、同性愛者のオンパレードって感じになってるよね。ようやくゲルマント大公家の夜会へ行くんだけど、そこでもゲルマント大公家とようやく関係を修復した親戚の息子シャーテルロー公爵が、門衛と顔を合わせて、以前に街で行きずりの関係を持った相手だと互いに気づいたりして。
にえ 夜会に来ているシャルリュス男爵と話しているヴォーグーベール侯爵も同性愛者よね。プラトニックみたいだけど。
すみ そんな中、語り手はゲルマント大公夫人とはすぐに挨拶できたんだけど、ゲルマント大公には紹介してくれる人がいなくて、なかなか挨拶できないの。
にえ シャルリュス男爵は自分の口添えなしではゲルマント大公の家に行けないぞと豪語していたから、あなた抜きでも来ることができました、では紹介してくださいってわけにもいかないしね。
すみ 結局は、ブレオーテ侯爵って人が紹介してくれるんだけど、話してみると、ゲルマント公爵の親しげな態度に比べて、ゲルマント大公はかなり横柄。でも、庶民に親しげに振る舞うゲルマント公爵より、大公のほうがむしろ打ち解けているな〜って語り手は感じたみたい。親しい振りの壁を築かないってことかな。
にえ でも、あとでわかるけど、どうやらこのゲルマント大公も同性愛者みたいだけどね。
すみ ゲルマント大公の家には豪華な噴水があって、これが名物みたい。だけど、噴水ってものは、風向きによっては人に水がかかっちゃうものよね。ここでも、ちょこっと一騒動。
にえ この夜会で、スワンの祖母がユダヤ人と結婚したプロテスタントだってことがわかるよね。で、その祖母はベリ公爵って人の愛人だったみたい。スワンもこの夜会に来ているんだけど、スワンは長いことゲルマント大公と二人きりで話すことに。あとで語り手が教えてもらったところに夜と、ゲルマント大公は反ドレーフェス派だったのに、ドレーフェスはやっぱり無実じゃないかと考えはじめた様子。
すみ サンニトゥーヴェルト侯爵夫人の行動がちょっと見物だったよね。自分の家のパーティに招待する客を物色するためにこの夜会に来ているの。
にえ サンニトゥーヴェルト侯爵夫人は自分のサロンに、これまで来ていた冴えない客を呼ばなくなり、エレガントな客に入れ替えている最中なんだよね。切り捨てられた冴えない客の一人には、ルグランダンの妹のカンブルメール夫人がいるの。
すみ ロベール(サン=ルー)が来るよね。ロベールは語り手を探して、この夜会へ来ることに。話してみると、ガラッと人が変わっているの。例の恋人と別れたために、文学への興味も失い、ドレーフェス派もやめていて。
にえ シャルリュス男爵は、ショルジ侯爵夫人の二人の息子に目を付けて、夫人に取り入ろうとするよね。他の人から見ると、夫人に言いよってるみたいに見えるけど。あと、シャルリュス男爵はゲルマント公爵と兄弟で、公爵は男爵が同性愛者だとなんとなくわかってるんだけど、それでも二人は仲の良い兄弟なの。
すみ そのゲルマント公爵も反ドレーフェス派だったのに、どうやらここらで鞍替えした様子。じつは湯治に行った先で、3人の魅力的な婦人と知り合い、その3人に感化され、考えを変えたみたい。
にえ ゲルマント公爵は、親戚のオスモン侯爵が死んだと知らされるけど、それでもこのあと、仮面舞踏会ヘ行くみたいね。死んだって知らせに、そりゃ大げさだ、なんて変な返事をして。この人はスワンの告白のあともそうだったけど、とにかく楽しいことのためには、他のことは全部目をつむりたいみたい。
すみ 語り手は、夜会のあとに家でアルベルチーヌと会う約束があるから、早く帰りたくてしょうがないんだけど、ソワソワしながらも、ロベールが美貌の高級娼婦とピュトビュス男爵って人の家の美人の小間使い、この二人を紹介してくれることになって、ワクワクしだしちゃうの。相変わらずね〜(笑)
にえ 語り手はようやく帰ることになるけど、スワンに自分の娘ジルベルトに会ってほしいと頼まれ、今さら会いたくない語り手は、ジルベルトに手紙を書くことにするのよね。
すみ ようやくやって来たアルベルチーヌに、そんなに会う期待していたって思われたくないみたいで、目の前でジルベルトに手紙を書いたりするの。ホントにもう、いちいちポーズつけないと気がすまないんだから(笑)
にえ かつては好きで好きでしょうがなかったジルベルトだけど、どうやら語り手の気持ちは本当に冷めたみたい。でも、この手紙を書いたことが、あとあと新たな運命を導いてくるみたいなんだけど。
すみ そのジルベルトの母、スワン夫人(オデット)のサロンは、人気作家ベルゴットが出入りしていることもあって、だんだんと人気が高まってきているみたいね。いつの間にやら、大公夫人やら侯爵夫人やらって貴婦人が集まるようになっていて。
にえ ジルベルトがスワンの叔父から8千万フランもの遺産をもらったことも大きいみたいね。金持ちだし、趣味もいいしって評判が広まって。スワン夫人もこの頃には知恵をつけて、貴婦人たちが自分のサロンに集まってきていることを言いふらしたりとかしないの。それでますます評判は上がっていくばかり。
すみ 最も華やかとされていた、ゲルマント公爵夫人のサロンより華やかになっていくのよね。もともとスワンとスワン夫人が出入りしていて、のちに仲違いしたブルジョア、ヴェルデュラン夫人のサロンも隆盛期に入りだすんだけど、その頃にはスワン夫人のほうはしっかり地位を固めたみたいで、ああいう新参者の方たちは〜なんて言っちゃったりするのよね。こういう夫人が開くサロンどうしの争いは、かなり熾烈みたい。
にえ んで、語り手は保養のため、またバルベックに行くことに。前はお祖母様と二人で行って、なんだかひどい扱いを受けたけど、今度は語り手が社交界でちやほやされだした成果、ホテルの支配人も他の常連客も、ヘコヘコしちゃって賓客扱い。
すみ 語り手は情けないことに(笑)、ピュトビュス男爵家の美人の小間使いがバルベックへ行くと噂で聞いて、バルベック行きを決めたのよね。でも、いざ着いてみると、小間使いは来ないことになったことを知ってガックリ。
にえ アルベルチーヌは来るけどね。なんと、語り手は美人の小間使いに会えなくて欲求不満になり、アルベルチーヌの女友達13人と関係を持つことに。おいおい(笑)
すみ でもさあ、相変わらずアルベルチーヌに冷たかった語り手だけど、アルベルチーヌが実は女友達アンドレと同性愛らしいと気づいて、そこからはアルベルチーヌに固執しだすのよね。まだ、アルベルチーヌなんて本当は愛していないとかなんとか、言い訳をしまくるけど。
にえ 本当はアンドレを愛しているんだとか、パリで恋人と別れてきたんだとか、アルベルチーヌにもいろいろ嘘をついていたよね。アルベルチーヌとの関係を終わりにすることにした、なんて記述も何回も出てくるし。
すみ 結局は、毎日のように会って、嫉妬しまくるんだけどね(笑) 語り手のママはそれが気に入らないみたいで、そうそう毎日は会わないでほしいみたいなことを言うけど、それを言い訳にして、ママが止めるから、やめようとしていた関係にもう一度火がついたとか言いだす始末。
にえ 汽車でちょっと行ったところに、ヴェルデュラン家の別荘があるんだよね。その別荘で、ヴェルデュラン夫人は毎週水曜日に水曜会ってサロンを開いているみたいで、語り手もアルベルチーヌを連れて、そこの常連になっていくんだけど。
すみ 意外なことに、シャルリュス男爵も招かれて、いつのまにやら常連になっていくんだよね。
にえ シャルリュス男爵はモレルという音楽家の青年を恋人にして連れ歩いてるの。そんなつもりはなかったけど、語り手は駅で偶然であったシャルリュス男爵とモレルの仲を取り持つことになっちゃったのよね。
すみ このモレル、じつは第3篇のうしろのほうで、私が「大叔父の遺品となった写真を大叔父の従僕だった人の息子から受けとって、ようやく「薔薇色の服の婦人」とスワン夫人が同一人物であることに気づいた」って言ったんだけど、その従僕の息子っていうのが、このモレルなの。
にえ モレルも、シャルリュス男爵も、他の人には絶対にモレルが従僕の息子だとばらすなと語り手を脅してくるのよね。良家の子息ってことにしておきたいみたい。
すみ モレルってイヤな奴なんだよね。語り手が運転手付きの自動車を借りて、アルベルチーヌとドライブを楽しんだりするんだけど、実はその車、シャルリュス男爵とモレルもご愛用だったみたい。で、モレルはその運転手をヴェルデュラン家に雇わせることにしたみたいで、なんの罪もないヴェルデュラン家の馬車の御者に人を使って嫌がらせを始め、しまいには半殺しの目に遭わせて、追い出すことに。
にえ そのモレルだけど、実はアルベルチーヌと知り合いだったと、語り手はあとで知るみたいね。どんな過去があるのやら。
すみ そういえば、シャルリュス男爵の寵愛を受け、調子に乗ってるモレルだけど、ゲルマント大公と一度だけ関係を持ち、あとになってシャルリュス男爵が自分の忠実さをたしかめるためにしかけた罠じゃないかと不安になり、大公に会わないように逃げ回ったりするのよね。
にえ 同性愛者といえば、前に親しくなったホテルの給仕人のエメも同性愛者みたい。それから、ブロックの従妹も、叔父も同性愛者なのだとか。
すみ ヴェルデュラン夫人は相変わらずだよね。インテリのブルジョワを気どっているけど、知らないことに知らないって言えず、知ったかぶって嘘をついたり。
にえ ヴェルデュラン家の別荘は、カンブルメール侯爵家から借りているものなの。で、この人気の出はじめたブルジョワと人気のない貴族の家どうし、最初のうちは仲良くしようとするんだけど、結局は小さな擦れ違いが積み重なって、仲が悪くなっちゃうの。
すみ そんなこんなとしているあいだに、なんと、語り手は母に、アルベルチーヌと結婚すると宣言。ということで、第4篇は終わり。さてさて語り手とアルベルチーヌはこれからどうなるのでしょう。ってことで、以上っ。
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