=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「小鳥はいつ歌をうたう」 ドミニク・メナール (フランス)
<河出書房新社 単行本> 【Amazon】
祖父母は故国から逃げ出した。しかし、祖父は鶏を抱きかかえて自転車に乗っていたときに止められ、その国の言葉がしゃべれなかったか、字が書けなかったかして、連れて行かれてしまった。わたしの娘アンナは、耳が聞こえるのに声が出せず、しゃべることができない。そして、わたしは字を読み書きすることができなかった。 | |
河出書房新社のModern&Classicシリーズの1冊です。初邦訳の作家さんですが、この作品は2002年に創設されたフナック小説賞の第1回受賞作、2003年度のアラン=フルニエ賞受賞作なのだそうです。 | |
どっちも初めて聞く賞だけどね(笑) でも、この作品以外でもいろんな賞を獲っていて、かなりの実力派みたいね。 | |
あと、映画化もされているみたいよ。「インド夜想曲」や「めぐり逢う朝」などで知られるアラン・コルノー監督により映画化、だって。 | |
フランス映画の雰囲気だよね。小説じたいも、もろフランスの新鋭作家の作品って感じだった。 | |
うん、鋭敏すぎるオンナの感受性で描き出した世界だもんね。そういうのが好きな方だったら、ハマれると思う。 | |
そういった作品群のなかでは、かなり良い感触だったよね。ひとつだけ、翻訳の方もあとがきで指摘していた音声によるコミュニケーションのところは、私もちょっと読んでいて気になったんだけど。だから、そこが許せればって条件付きになるかな。 | |
あそこは気になっちゃったね。フランシス・イタニの「遠い音」で、耳が聴こえない子供たちが学校で、音声によるコミュニケーションをとる練習をしているシーンを読んだばかりだし。 | |
それを除けば、感受性で突っ走ってるようでも、きちんと主人公を客観的に見ているような視線もあって、息づまりしないで安心して読めたし、全編に漂うヒリヒリするような緊張感もよかった。 | |
ラストはけっこうあっけない気もしたけどね。 | |
まあね。お話はね、祖父、そして祖母の死のために読み書きの修得を拒否して、そのまま成長した女性が娘を産み、その娘が言葉を話せない。母親は娘と二人きりの世界のなかで生きているってそんなふうなの。 | |
その母親が語り手なのよね。小鳥屋さんで働いているの。夫はいなくて。 | |
娘のアンナが学校へ行く年齢となり、その学校にいた教師メルランによって、母と娘の二人だけの世界から、アンナは外の世界へと歩み出しはじめることになるの。 | |
アンナを奪われる恐怖心と、メルランに惹かれていく自分に、母親は引き裂かれそうになっていくのよね。 | |
鳥の羽、海辺のバンガロー、カモメ、シャボン玉……って、小道具や背景も雰囲気出しまくって、フランス映画の世界だよね〜。 | |
これはもう、好きな人が読むって小説だよね。カバー絵がとっても素敵で、このカバー絵に惹かれて読む人は期待通りってことになるんじゃないかな。 | |
んじゃ、カバー絵でご判断をってことで。 | |