=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ペネロピアド」 マーガレット・アトウッド (カナダ)
<角川書店 単行本> 【Amazon】
【ペネロペイアとオデュッセウス】紀元前8世紀頃の古代ギリシア叙情詩のひとつで、詩人ホメロスがトロイア戦争を描いた「イリアス」の続編にあたる、壮大な冒険物語「オデュッセイア」。英雄オデュッセウスの妻であり、トロイア戦争の原因となった絶世の美女ヘレネを従姉にもつペネロペイアは、そのなかで徹底的に貞節な妻として描かれている。 夫オデュッセウスがトロイア戦争に出征して20年余り、ひとり孤独に待ちつづけた日々。その間、王なき王国イタケーを守るため、あられもない噂話に耳をふさぎ、向こう見ずな息子を育て、財産目当てに押し寄せる数多の求婚者たちを必死に追い払う。一方、怪物を倒し女神と寝たりの旅を経てついに帰還を果たしたオデュッセウスは、求婚者たちを惨殺する。そしてペネロペイアの12人の女中たちも……。 (「ペネロピアド」見開きの文章を引用) | |
こちらもちょっとお馴染みのアトウッドですが、この本はジャネット・ウィンターソン「永遠を背負う男」と同じく、<新・世界神話プロジェクト>の第1弾の1冊です。もとの話は上に(↑)。 | |
これもギリシア神話なんだよね。どうせなら第1弾だし、どっちかがギリシア神話だったら、どっちかは違う神話にすればよかったのにという気も。 | |
やっぱり物語性のある神話となると、ギリシア神話が選ばれやすいのかもね。でもさあ、こういうのってどうなんだろうね。最終的には百人の作家が百冊の本を書くんでしょ。最初のうちに書きやすいものが選ばれてしまうと、あとのほうの人は大変かも。 | |
でも、あとのほうの人なら、じっくり時間が取れるんだから、いいんじゃない。 | |
あ、そっか(笑) これはホメロスの「オデュッセイア」をもとに書いてるんだよね。「オデュッセイア」は「イリアス」の続編にあたるそうだけど、私たちはやっぱり読んでなくて、内容もよく知らなかったりして。 | |
でも、この小説は原典をかなり意識した内容だよね。神話を書き直した小説というより、新解釈を小説風にして披露したというか。 | |
うん、そんな感じだったよね。原典ではこうなってるけど、私はこうだと思うよ、みたいな説明がいたるところに透けて見えて、小説を読んでいると言うより、解説を読んでいるような感触があった。 | |
これをあらためてきっちり書き込んだ長編小説に仕上げてくれていたら、それをぜひ読みたいって感じだったなあ。 | |
なんかサササッと進んじゃったって印象だったよね。あまりにもササッと行くから、とりつく島がなかったような。上滑りっぽく受けとめてしまったせいか、パロディ的なものを意識しすぎているような感じもしてしまったし。 | |
一人称語りなんだよね。今はもう死者の世界へ行ってしまったペネロペイアが、自分の死後の長い歴史のなかで、自分が誤解されてしまっていることを、違うのよ、本当はこうだったのよ、と語るって設定なの。 | |
おもしろくなりそうな要素はテンコ盛りなんだけどね。賢いと言われながらも美貌には恵まれなかったペネロペイアが、絶世の美女で計算高い策士のようなところがある従姉のヘレネに比べられてしまう苛立ちとか、イタケーという嫁ぎ先の異国で独りぼっちの感情を抱かざるをえなかったペネロペイアとか、妙に力を持った存在のオデュッセウスの元乳母のエウリュクレイアとペネロペイアとの関係とか、可愛がっていた若く美しい12人の女中とか、だんだん生意気になっていく息子と母ペネロペイアとか。 | |
アトウッドがいつもの調子で、じっくり長編小説として仕上げてくれていたら、かなりおもしろい小説になっただろうと思うと、ホント残念だね。 | |
でもまあ、このあとのアトウッドの作品には生かされてくるんでないかい。アトウッドがこれで満足したとは思えないな〜。 | |
このシリーズって、これぐらいの長さにしてくださいって制限があるんだろうね。なんかアトウッドの作風には、この長さが合ってないような気がしてしまった。もっと短いものでビシッと決めるか、長いものをジックリ書く人なんじゃないかなあ、なんて思ってしまったんだけど。 | |
私はこの長さで、ペネロペイアの人生を一通り収めてしまわなければいけなかったところに無理があったのかなあ、なんて思ったんだけど。 | |
私はジャネット・ウィンターソンは逆に、あのくらいの長さに向いてるって気がしたんだよね。それと比べると、って思ったんだけど。 | |
うん、まあ、とりあえず、私たちみたいに「イリアス」も「オデュッセイア」も読んだことない人には、とっかかりにはなるかもね。 | |
そうだね、意外とおもしろい話なんだなあと思った。ということで、アトウッドの今後に期待ってことで。 | |