=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「エイラ―地上の旅人 第2部 野生馬の谷」 上・下 ジーン・アウル (アメリカ)
<集英社 単行本> 【Amazon】 (上) (下) 新しく族長となったブラウドに命じられ、「死の呪い」をかけられて氏族を追われたエイラは、置いてきた息子ダルクに思いを残しながらも、亡き養母イーザの教えに従い、 自分と同じ種の人間を求め、たった一人で旅に出た。しかし、同じ種の人間たちのもとにたどり着かないまま、冬を迎えることになりそうだった。エイラは野生馬の住む谷の洞窟でしばらく暮らすことにした。 一方、エイラと同じ種であるゼランドニー族のジョンダラーとソノーランの異父兄弟は、若いうちにしかできない長旅に出ようとしていた。公式HP | |
「ケープ・ベアの一族」の続編、完訳版のエイラの第2部です。 | |
第1部の続き、「死の呪い」をかけられて氏族を追い出され、旅立つところからだよね。いよいよネアンデルタール人と別れ、自分と同じ種類の人間のもとに行くのね〜。 | |
いや、あんまり先走っちゃダメでしょ。第2部ではまだ人々の中に入っていくところまではいかないし。 | |
そうそう、その前に伴侶となる、愛しあえる男性と出会うのかしら、と思わせておいて、それもなかなか、よね。 | |
この第2部では、最初のうちは2つの話が並行して進んでいくのよね。まずは、独りぼっちで野生馬のいる谷の洞窟で暮らすエイラ、それから、 私たちと同じ種類の人間の兄弟、ジョンダラーとソノーランの話。 | |
いずれは出会うんだろうと、誰しもが最初から気づくと思うんだけど、それがなかなか出会わないんだよね。なんと出会うのは下巻の100ページを過ぎたあたりでようやく。だから、 早く出会え〜と焦ってページをめくるんじゃなく、それに至るまでの過程をじっくり読もうという気持ちで読み進めたほうがいいかもしれない。 | |
出会ったときに、そうとんとん拍子にうまくいくものじゃないってことは、この下巻の100ページぐらいまでを読めば、しっかりわかるよね。 | |
そうそう、それに先を急がなくても、そこまでの話も起伏に富んでいて、充分におもしろいから大丈夫。 | |
エイラのほうは、女がたった一人で暮らす、それから、人間以外の動物と心を通い合わせる、というネアンデルタール人も私たち人類もエイラ以前にはやっていなかったことをやってしまうのよね。 | |
私たち人類がネアンデルタール人と違うところは、今まで誰もやったことのないことをやって、新たに切り開いていくってことにあるからね。つまり創造の力。これがエイラの武器。 | |
エイラは動物と一緒に暮らすってところまでいくんだけど、その考え方がおもしろかったよね。ペットでもなく、役に立てる家畜でもなく、まさに共存する仲間。 | |
こんなかたちで動物と協力し合って暮らすって、私たちにとっても新鮮だったよね。というか、そんな人は見たことも聞いたこともない。でも、読んでいるうちに、ありうるのかも・・・とは思ってしまったけど。 | |
以前に見聞きした動物園の人の経験談とかに、同じ要素を聞いた覚えがあるなあ、なんてところもあったけどね。たぶん、この作家さんのことだから、そういう情報もめいっぱい集めてリアルに書いてあるんだと思う。それにしても、狩りのところはその斬新さに驚いた。 | |
で、ジョンダラーとソノーランなんだけど、こちらは私たちと同じ種の人間で、こちらにも旅していくうちにいろんな出会いや出来事が待ち受けているのよね。 | |
なぜエイラとっていうのが、この前半部分で納得できるよね。あとで気づいてみれば、そういう説明なくしては、とてもじゃないけど、ただ出会っただけで男がエイラを愛するなんて信じられない。どれほど同種の他の人とのあいだに大きな溝があることか。 | |
あと、ネアンデルタール人に対する一般的な考え方もわかってくるでしょ。「平頭」って呼んでいて、自分たちと同じ人間じゃなく、獣の一種だと思っているの。 | |
でもどこかで、それにしても自分たちに近すぎるって恐怖感も持ってるよね。 | |
それにしても、地球上で2種類の人類が存在した時期があるって、小説を通じて実感してみると、とっても不思議な気持ちになるよね。なんだかSFの世界、どこか遠くの惑星の話みたい。 | |
人間ってなんなんだろうと思うよね。なぜネアンデルタール人が生まれ、そのあとに私たちのような人類が生まれたのか。 | |
で、後半の出会ってからなんだけど、こちらはけっこうエロティックでロマンティックなところもあり? | |
まあ、この内容じゃ大人向きだよね。でも、行為も含めてそれはたしかに決してはずせないこと。ネアンデルタール人と私たち人類の違いでもあるし、エイラが前々から疑問に思っている、赤ちゃんはどうしてできるのかってところにも繋がっていくから。 | |
どちらの種類の人間たちも霊の力で説明しようとするけれど、エイラはもっと科学的に解明したいって気持ちがあるんだよね。それが科学だという認識はもちろんなく。 | |
その疑問って現代にも通じる、宗教と科学の対立その他の問題含みだよね。あと、それとは別なんだけど、地の文の表現で、思いのほか原始を意識せず、大胆に現代用語的なものを使っているところにも驚いた。声がテノールだとか。こういう大胆さに作者の意気込みを感じてしまうな〜。 | |
ますます先が気になる第2部だったよね。第1部では異種のなかで暮らす大変さを思い知らされたけど、この先は、同種のなかでも、異種と暮らしていたことのために大変なことになりそうな様子。ということで、まだまだ夢中になれるのでした。 | |