すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「バートン版 千夜一夜物語」 第6巻  <筑摩書房 文庫本> 【Amazon】
世界最大の奇書「千夜一夜物語」を、世界に名高いバートン卿が翻訳した「バートン版 千夜一夜物語」の全訳。大場正史氏の流麗な翻訳文に、古沢岩美画伯の甘美な挿画を付した、文庫本全11巻。
にえ とうとうと言うか、ようやくというか、第6巻になりました。もう半分は超えた〜(笑)
すみ 今回は軽いディティールについての話にしたいんだけど。たとえば、王様はいつ寝ているのか、とか(笑)
にえ そうそう、巻を重ねていくと、早寝の日が急に多くなってきたけど、最初のうちは毎晩、夜が白々と明けるまでシャーラザットは話し続けているし、そのあと、王様が夜になるまで謁見などのお仕事をしている記述もあるし、これじゃ死んじゃうよ、と思ったよね(笑)
すみ あとさあ、物語の中で、みんなやたらと気絶するよね。喜んで気絶、悲しんで気絶、ビックリして気絶、とにかく感情に劇的な変化が訪れるときは、かならず気絶するの。
にえ 現代人ほど刺激になれてないからかなあ。べつに千夜一夜物語にかぎらず、西洋ものでも東洋ものでも、昔の小説だと、やたらとみんな気絶するじゃない。千夜一夜物語だと、あんまり衝撃が過ぎると、死んじゃうことが多いから、ちょっと驚くけど。
すみ 気絶したときにかならず出てくるのが、薔薇(しょうび)水だよね。すかさず気絶した人の顔に薔薇水を振りかけるの。そうすると、かならず目を覚ます。
にえ 薔薇水はホントによく出てくるよね。気絶したときは顔にかけ、風呂上がりには体にかけ。薔薇の花のエキスを水で薄めたものかしら。バートン卿は、薔薇水で淹れたお茶を飲んだら不味かったって書いてあったけど(笑)
すみ そうそう、お風呂。お風呂、水浴び、沐浴、よく出てくるよね〜。この時代、西洋では体を洗うことじたい、ほとんどしなかったそうだから、この清潔好きにはバートン卿も感心しきりだった。
にえ 飲み物といえば、シャーベット水だよね。これはどういうものかわからないけど、なんだか高級な飲み物みたいで、美味しそうなの。
すみ お酒もよく飲んでいるけど、なぜかお酒はどういう種類があるか、まったく記述がないよね。酒っていえばこれって言う感じで、一種類しかないのかなあ。
にえ 食べ物は意外と特徴がないよね。肉、魚、野菜、果物、わりと普通に焼いたり、煮たり。ちょっと素揚げにすることが多いぐらいかな。
すみ あと、これは大昔の話だからしょうがないとは思うけど、いつかは言っておきたかった。差別用語がやっぱり多いのよ。私たちの紹介でも、どうしても削れないところ入れてしまっているけど。
にえ そういうところからすると、新訳で出すのは難しいかなと思うよね。これから百年後、二百年後とぶじに読み継がれていくといいな〜と思うけど、どうなっていくんだろう。ちょっと心配だね。
すみ 人種差別については、そういう意識じたいがないみたいで、その点では安心して読めるけどね。おっと、今回はこのへんで。けれども王さま、次のお話はもっとおもしろうございますわ。
「アル・マアムン教主とエジプトのピラミッド」 第397夜〜第412夜
ハルン・アル・ラシッドの子息アル・マアムン教主は、カイロの町に踏み込んだ際、ピラミッドを壊して中に入ってみようとした。ピラミッドは三つあり、なかは宝物であふれていた。
「盗人と商人」
ある店で夜の番人をしていた男は、それらしい服装をして店に入っていき、帳簿を調べている様子の男がてっきりその店の商人だと思ったが、実は泥棒だった。
「宦官マスルールとイブン・アル・カリビ」
ハルン・アル・ラシッド教主に宦官マスルールは、イブン・アル・カリビという男がとても面白い話をすると言った。さっそく連れてこいと命じられ、マスルールはイブン・アル・カリビに、教主から褒美をもらったら、その三分の二は自分にくれと言ったのだが・・・。
「行者の王子」
ハルン・アル・ラシッド教主の息子の一人は、16才になると世を捨てて、苦行の道を歩むことにした。
「歌を聞いて恋におちた愚かな先生」
ある学者が話したところによると、教師にしては珍しくとても聡明な男がいて、しばらく親しく付き合ったが、その教師が惚れた女の話を聞いて呆れかえった。
「あほうな先生」
ある学者が話したところによると、教師にしては珍しくとても聡明な男がいたが、ある日、あやうく死にかけた教師の話を聞き、学者は呆れかえった。
「学校の先生になりすましたあき盲」
読み書きもできないのに、子供を集めて学校を開き、先生になった男がいた。その先生のもとに、ある女が夫からの手紙を読んでほしいと持ってきたが・・・。
「王と貞淑な妻」
ある国王がとある村にさしかかり、水を所望したところ、運んできた女にすっかり心を奪われたが、女は貞淑な妻だったので、機転を利かせ・・・。
「マグリビ人アブド・アル・ラーマンの大鳥の話」
ムア人でシナ人のアブド・アル・ラーマンは、ある航海で大きな島にたどり着き、大鳥(ルフ)の卵を割って、中から出てきた雛をみんなで食べたのだが、そのあと航海を続けると・・・。
「アディ・ビン・ザイドと王女ヒンド」
イラクのアラブ人の王アル・ヌウマン・ビン・アル・ムンジルの娘ヒンドは、11才にして、類い希なる美しい王女だった。ヒンド王女にマリヤーという奴隷娘がいたが、マリヤーはペルシャ王の使者であるアディ・ビン・ザイドという若者に一目惚れをした。マリヤーは自分の思いを遂げるため、ヒンド王女がアディに恋心を抱くようけしかけた。
「ディイビル・アル・フザイと上揩ニムスリム・ビン・アル・ワリド」
ディイビル・アル・フザイが話したところによると、ある日、城門に腰掛けていると、驚くほど美しい乙女が通りかかった。うまく口説き落とし、乙女を連れて行くことに成功したが、我が家があまりにもみすぼらしいので、友人の屋敷に連れて行くことにしたところ、自分が買い物に行っているすきに友人と乙女は・・・。
「モスルのイサアクと商人」
イシャク・ビン・イブラヒム・アル・マウシリは、ある日、いつものように御殿で教主のそばに侍るのがどうしてもいやで、馬に乗ってふらりと出掛けた。すると、美しい乙女が通り過ぎていったので、あとを追い、その乙女が入った商人の家に自分も入っていくことにした。商人は招いた客でないことに気づいてが、こころよくもてなし・・・。
「三人の不幸な恋人」
ある老人の娘は、一人の若者に思いを寄せていた。ところが、その若者はとある歌姫に思いを寄せていた。そして、その歌姫は老人の娘に思いを寄せていた。とうとう三人は・・・。
「アブ・ハサンが屁をした話」
アル・ヤマンのカウカバンという町に住む、ファズリ族の男は、裕福な商人になったが、若い頃に妻を亡くしていた。そこでみんなに勧められ、再婚することにしたのだが、その婚礼の席で・・・。
「タイイ族の恋人たち」
タミム族のある男が、迷子になった家畜を探すうち、タイイ族の水飲み場へやってきてしまった。すると男の目の前で、やつれた若者と娘が抱き合い、その場で二人そろって事切れてしまった。あとで老人から事情を聞いたところによると・・・。
「恋に狂った男」
アブ・ル・アッバス・アル・ムバルラドがある日、アル・バリドの僧院に立ち寄ったところ、収容されている一人の狂人と話す機会を得た。狂人は愛する人がどうなったのか知りたがっていたので、アル・ムバルラドが軽い気持ちでもう死んだはずだと答えると・・・。
「回教徒になった副修道院長」 第412夜〜第414夜
回教徒になった副修道院長がその理由を訊かれて答えたところによると、ある回教徒の男がキリスト教徒の乙女に一目惚れをして、乙女のもとに通い詰めたところ、とうとう乙女もほだされて、若者の求婚を受け入れたのだが・・・。
にえ びっくり、びっくり。まさか千夜一夜物語の中にピラミッドが出てくるとは。内容はピラミッドという珍しいものがあるって紹介ていどのもので、期待されても困るんだけどさ(笑)
すみ バカな先生の話が3つあったね。子供に学問を教える先生は、なぜか西洋でも東洋でも見下されているってバートンが書いてあったけど、たしかに西洋の古い小説でも、家庭教師のたぐいはちょっと見下されていたような。子供の将来を期待しているのに、子供に学問を教える教師をバカにするっていうのも、なんだかおかしな話だけどねえ。
にえ 後半は恋の話が多かったかな。三角関係の話とかね。それにしても、これまでにも何度か出てきているけど、同性愛には寛容なのよね。これは時代的に世界でも珍しいんじゃない。
すみ それより私は、「アブ・ハサンが屁をした話」にご用心と言いたい。オチがあまりの不意打ちで、電車の中で爆笑して恥ずかしい思いをしたから(笑)
「アブ・イサとクラト・アル・アインの恋」 第414夜〜第419夜
アル・マアムン教主の兄弟であるアブ・イサは、教主の重臣アリ・ビン・ヒシャムの奴隷女に思いを寄せ、女の方もまんざらでもない様子だったが、その奴隷女を買い取ることがどうしてもできなかった。そこでアブ・イサは教主をくどき、教主とともにアリ・ビン・ヒシャムの家を訪れることにした。
「アル・ラシッドの子アル・アミンと叔父イブラヒム・ビン・アル・マーディ」
アル・マアムンの兄アル・アミンは叔父イブラヒムの家にいた奴隷女にすっかり心惹かれてしまった。そこでイブラヒムはその奴隷女をアル・アミンに贈ったが、アル・アミンは奴隷女がすでに叔父と雲雨の契りを結んでいるだろうと考えて、枕を交わすこともなく送り返した。すると叔父は奴隷女の肌着に金文字で・・・。
「アル・ファス・ビン・ハカンとアル・ムタワッキル教主」
病の床についていたアル・ムタワッキル教主に、アル・ファス・ビン・ハカンは当代随一の美女である奴隷女を贈ることにした。
「男女の優劣について、ある男が女の学者と議論した話」
バグダッドの説教師に、シット・アル・マシャイフという、特に才知に秀で、人格でも尊敬を集める女がいた。あるとき、マシャイフのもとに集まった学者や文人たちの中に、マシャイフの美しい弟に見とれている者がいた。そこでマシャイフはその者と、男と女のどちらが優れているか、議論を戦わせることにした。
にえ 上3つはどうってことのない話なんだけど、4番目の「男女の優劣について、ある男が女の学者と議論した話」にはビックリ。この時代に学者として尊敬を集めている女性がいて、しかも、その女性が男の人と、どうどうと男と女の優劣について議論を戦わせるの。ヨーロッパでも、他のどの地域でも、この時代にここまで女性の地位が認められてはいなかったでしょ?
「アブ・スワイドとこぎれいな老婆」 第423夜〜第436夜
アブ・スワイドが友人たちと連れだって、ある果樹園にはいると、その片隅に顔は輝くばかりに美しいが、髪は真っ白な老婆がいた。
「アリ・ビン・タヒル太守とムウニスという娘」
アリ・ビン・タヒル太守の前にムウニスという奴隷女が披露された。その乙女は器量だけでなく、多芸多才の詩人としても秀でていた。
「若いつばめをもった女と大人を情夫にもった女」
アブ・アル・アイナが話したところによると、町に二人の女がいて、一人は若いつばめを、もう一人は大人の情夫を持っていた。若いつばめを持つ女が自慢げにそのことを話すと・・・。
「カイロ人のアリとバグダッドの幽霊屋敷」
カイロの町にハサンという裕福な宝石商がいたが、ハサンが亡くなると、息子のアリはその財産を放蕩のあげく、使い尽くしてしまった。アリは妻と子を残し、旅に出た。親切な人たちの助けでバグダッドまでたどりついたアリは、ある商人に手厚く迎えられ、家を一軒貸してもらえることになったが、アリが選んだのは、幽霊が出るという屋敷だった。
「巡礼男と老婆」
巡礼隊に加わっていた一人の男が、寝坊をして置いて行かれた。男はとある天幕にたどりつき、そこにいた老婆に食べ物を求めたが、老婆は谷間に行って、蛇を捕ってこい、そうすれば、それを焙って食べさせるという。
すみ この5つの話の中で、4つはとっても短いお話、「カイロ人のアリとバグダッドの幽霊屋敷」だけはそこそこ長くて、けっこうおもしろかった。やけで借りた幽霊屋敷で、幸運に出会う男の話なの。
「アブ・アル・フスンと奴隷娘のタワッズド」 第436夜〜第482夜
金満家の息子として生まれながらも、放蕩の末に無一文となったアブ・アル・フスンには、絶世の美女である奴隷女タワッズドだけが残った。タワッズドはアブ・アル・フスンに、自分を教主に売れと言った。教主の前でタワッズドは、自分がいかに才たけているかを証明するため、学者を集めてほしいと言った。
「死の天使と高慢な王と道士」
ある国王が豪華な衣装をまとい、駿馬にのって領内を練り歩いていると、ボロを着た男が近寄ってきて、自分は死の天使だと名乗った。王はあわてて哀れみを請うたが、死の天使は容赦なかった。ところが敬虔な道士のもとに訪れた死の天使は・・・。
「死の天使と富裕な王」
巨万の冨を貯め込んだ王のもとに、死の天使が訪れた。
「死の天使とイスラエルの子孫の王」
イスラエル族のなかにあって、とくに暴君といわれた王のもとに、死の天使が訪れた。
「イスカンダル・ズ・アル・カルナインと貧しい人々」
イスカンダル・ズ・アル・カルナイン王は旅をするうち、小さな部族と出会った。この部族はあえて貧しく生き、戸口の前に墓穴を掘っていた。
「アヌシルワン王の威徳」
正義の王アヌシルワンは、病にかかったふりをして、廃墟から泥瓦を持ってくるよう、家臣たちに命じた。
「ユダヤ人の判官と貞節な妻」
ユダヤ人の判官にひときわ器量の良い妻があった。判官がエルサレムへ参詣へ出掛けているあいだに、この妻に言い寄ろうとした判官の弟は、手厳しくはねつけられてしまったので、告げ口を怖れて判官の妻を姦通の罪で訴えた。
「難船の憂きめにあった女とその子供」
社への参詣のため、嬰児を抱いて船に乗っていた女は難船の憂き目に遭い、一人の水夫に言い寄られた。
「信心深い黒人奴隷」
バッソラーで干魃に苦しみ、雨乞い祈願に出掛けた人々はその願いがいっこうに叶えられなかった。ところが、一人の薄汚い黒人奴隷が天に向かって祈ると、たちまちにして雨が降り始めた。
「道心堅固な盆作りとその女房」
信心深いユダヤ人の夫婦がいたが、その夫は眉目美しい盆作りの職人であったので、ある屋敷の奥方に言い寄られてしまった。それをはねつけて清らかなまま家に帰ると・・・。
「アル・ハッジャジとその信心家」
アル・ハッジャジが長いあいだ探していたお尋ね者がようやく捕まった。ところが、鍛冶工が鉄の足枷と鎖をつけたはずなのに、翌日にはいなくなっていた。
「火をつかんでも平気な鍛冶屋」
まっ赤に焼けた鉄をつかんでも火傷をしない鍛冶屋がいるというので、ある信心家が訪ねたところ、鍛冶屋はこうなった理由を話しはじめた。昔、ある奴隷女に首ったけになった鍛冶屋は、飢饉となって、物乞いに来た奴隷女に言い寄ったが・・・。
「神から雲を授けられた信者と敬虔な国王」
節制禁欲で聞こえの高い一人の行者は、アラーによって雲を与えられていた。ところが信心が薄らいでくると雲はとりあげられ、なんとか取り戻したい行者は、夢の中である国王のもとを訪れよと告げられた。
「回教徒の戦士とキリスト教徒の乙女」
ダマスクスで回教軍とキリスト教軍が戦っているとき、回教軍の勇敢な戦士として知られる兄弟のうちのひとりがキリスト教軍に捕まった。なんとか改宗させ、自軍の兵士として使いたいと願った王に、騎士の一人が、自分の美しい娘に誘わせることを提案した。
「キリスト教王の王女と回教徒」
キリスト教国に入った回教徒の男は、医者と間違われて、病気の王女のもとに連れて行かれた。すると、王女は実は回教徒で・・・。
「預言者と神の審き」
ある預言者が泉をながめていると、泉に水を飲みに来た一人の男が金貨の入った袋を置き忘れるのを、次の男が金貨の袋を持ち去るのを、その次に来た樵夫の男が盗んでいない金貨の袋のために殺されるのを見た。
「ナイル川の渡し守と隠者」
ナイル川の渡し守のもとに、一人の老人が訪れた。老人は、もうじき自分は死ぬので、その死骸を経帷子で包み、衣と瓢箪と杖は預かっていてほしいと頼んだ。
「島の王と敬虔なイスラエル人」
誓いごとはするなとの父の遺言を守った孝行息子は、それにつけいられて、財産をことごとく奪われてしまった。妻と二人の息子を連れ、その地を逃げ出すことにした男は、船旅の途中で難破の憂き目に遭ってしまった。
「アブ・アル・ハサンと癩患者アブ・ジャアファル」
巡礼の途中でアブ・アル・ハサンは、黒い癩病の男に同行してほしいと頼まれた。すぐに断ったハサンだったが、じつはその男が有名な信心家だと知り、今度は見つけ次第、同行を頼むようになったのだが・・・。
にえ 最初の「アブ・アル・フスンと奴隷娘のタワッズド」は、長いわりには前にそっくり同じような話があったんだよな〜。それにしても、アラビア社会では、女は美しくても、頭が良くないといい女とは認められないの。
すみ あとは宗教もののお説教くさいお話ばかりだったねえ。とくに「預言者と神の審き」あたりは宗教ものでよくある、それっぽい話を作ろうとしすぎて、道徳からはずれちゃってる、みたいな。バートン卿も原注でちょっとムカつき宣言(笑)
「巨蛇(おろち)の女王」 第482夜〜第536夜
ギリシャのダニエルという哲人は、アラーへの祈祷により、一人の息子を授かった。しかし、息子のハシブが生まれたのは、ダニエルが亡くなってからだった。ハシブは勉強もできず、なにをやってもまともにできなかったので、母親はハシブを樵夫に預けた。ある日、樵夫たちと洞窟で雨宿りをしていたハシブは、洞窟の奥に蜂蜜の詰まった地下室を見つけた。ところが蜂蜜を横取りしたかった樵夫たちにより、ハシブは洞窟に閉じこめられ、その奥で、巨蛇の女王に出会った。
<ブルキヤの冒険>
巨蛇の女王が語ったところによると、カイロの都の王子ブルキヤは、モハメッドに会いたいと願い、旅に出た。途中で巨蛇の女王に出会い、足の裏に塗れば水の上を歩ける草を得て、海を歩き、世界をくまなく回ることとなった。
<ヤンシャーの話>
ブルキヤが旅の途中で出会った男ヤンシャーは、じつはテグムスという広い領土を治める王の息子だったが、狩りに出たおり、海に浮かぶ大きな島が気になって、漁船に乗り込んだところ、そのまま遠く旅をすることになってしまった。その旅先で、三羽の白鳥がその羽衣を脱いで、美しい乙女となるところに出くわした。
にえ これがこの巻では一番長くて、一番おもしろいお話。しかも、ちょっとこれまでにない手法が使われているの。これまでの作中作は独立していたんだけど、この話では、本筋の話と作中作が同時進行で進んでいくの。より現代的な小説に近い感じ。
すみ 「ヤンシャーの話」は途中から、アンデルセン童話の「白鳥の王子」と、日本の民話「天女の羽衣」の両方に似た話になってて、驚いた。そういった意味でも興味深かったよね。
  
 「バートン版 千夜一夜物語」 第7巻へ