=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「バートン版 千夜一夜物語」 第3巻
<筑摩書房 文庫本> 【Amazon】
世界最大の奇書「千夜一夜物語」を、世界に名高いバートン卿が翻訳した「バートン版 千夜一夜物語」の全訳。大場正史氏の流麗な翻訳文に、古沢岩美画伯の甘美な挿画を付した、文庫本全11巻。 | |
さてさて、ようやく第3巻に入りました。まだまだ先は長いよっ。 | |
えっとね、ここではもうちょっと詳しくってことで、まず、「千夜一夜物語」に含まれる数々の物語の舞台、というか、場所について。 | |
場所はかなり広範囲だよね。アラビアン・ナイトっていうぐらいだから、アラビア半島はぜんぶ含まれるでしょ。それからギリシャ、あと、中国まで出てきた。 | |
まあ、中国が舞台になっていても、別に中国らしい話になるってわけじゃなくて、やっぱりアラビア〜ンなお話になってるんだけどね(笑) | |
あと、人種の多さにも驚くよね。黄色人種、白色人種、黒色人種・・・そのなかでもまた種類がいろいろ分かれるけど、もうありとあらゆる人種が出てくるって言っていいぐらい。 | |
これだけの広範囲、これだけの多種多様の人種の混在、「千夜一夜物語」が書かれたといわれる8世紀ごろ、どれほど貿易その他での交流が盛んだったか、わかるってものだよね。 | |
物語の中でも、商人が遠くの地まで商品を売りに行ったり、仕入れたりする話が多いよね。 | |
商人じゃない召使いとか、奴隷とかも、主人のお供で旅をすることになると、行った先でちょっとした商売をしたりするもんね。どれほど商売好きかってことがうかがわれるよ。 | |
そして、広範囲で多人種、となると、とうぜん、宗教もいろいろ出てくるよね。イスラム教、キリスト教、ユダヤ教・・・。もちろん、話を聞くシャーリヤル王も、語るシャーラザッドも回教徒だから、イスラム教が善、ほかの宗教は悪ってことになりがちなんだけど。 | |
でもさあ、登場人物たちがやたらと「アラーのほかに神なし!」って唱えたりして、そこだけ注目しちゃうと、やっぱりイスラム教って狭量な宗教なんだなって気がしちゃうけど、もっと大きく見ると、私たちが思ってるような、アラーって戦いの神? イスラム教徒って男尊女卑? ってイメージとは、かなり違ってるのがわかるよね。 | |
うん、もっと素朴で、もっと優しいよね。もちろん、王様には奥さんがたくさんいたりとか、そういうことはあるんだけど、威張った奥さんも、賢い乙女も出てきて、女性が軽んじられているって感じではないし、信仰するってことが、正直に生きて、人に親切にするってことに繋がっている。決して、戦うってことには繋がってないよね。よそから来た人にも、みんな親切に接しているし。 | |
「アラーのほかに神なし!」っていう言葉じたいも、庶民たちが唱える、おまじないって言ったらちょっと違うけど、素朴な信仰心から来ているっていうのは、読んでいるとホントよく伝わってくるよね。 | |
ああ、お姉様、また夜がしらじらと明けてきましたわ。内容だけじゃなく、どういう構成になっているかというお話もしとうございましたのに。 | |
では、それについては次の夜にいたしましょう。王様さえ私の命をお助けくださいますならね。 | |
「オマル・ビン・アル・ヌウマン王とふたりの息子シャルルカンとザウ・アル・マカンの物語」 第96夜〜第146夜
第2巻の続き。さらに奸計をもって、亡きオマル王のあとを継いだ、シャルルカンやザウ・アル・マカンを陥れんとする魔女ザト・アル・ダワヒ。やがて次の代、タンマカンへと進むと、王族は他の者の手で国を奪われることとなり・・・。 <タジ・アル・ムルクとドゥニャ姫の話> 戦の陣営で、憂さ晴らしに物語が聞きたいというザウ・アル・マカンの求めに応じ、忠臣ダンダンが語り始めたところによると、イスパハンの山々の後ろに、緑の都と呼ばれる都があり、その国の王子タジ・アル・ムルクはある日、一人の眉目麗しい商人アジズと言葉を交わした。アジズの悲しい話を聞くうちにタジ・アル・ムルクは、遠い樟脳島にいる美しい王女ドゥニャ姫のことを知り、どうしてもドゥニャ姫と結婚したいと思うようになった。 <アジズとアジザーの話> 商人アジズがタジ・アル・ムルクに語ったところによると、アジズには幼い頃より決められた許嫁、従妹のアジザーがいたが、いつも一緒に寝起きをする仲で、とても女性としては意識できなかった。そんなとき、一人の美しい女性を知って・・・。 <麻薬を飲んだ男の話> タンマカンから従妹のクジア・ファカンとの逢引を手配するよう頼まれた老婆が語ったところによると、麻酔薬(ハシシ)を一粒飲んで大理石の床に転がっていた男は、気持ちよく体をもまれる幻をみたのだが・・・。 <バダヴィ人ハマッドの話> 王の前に引き立てられたバダウィ人ハマッドが語ったところによると、先日、狩猟で駝鳥を追って行ったところ、いつのまにやら砂漠に迷い込んでしまい、もう助からないと思っているところに一人の若者が現れて・・・。 | |
第3巻に移ると、ロウム国との戦いから、途中、「アジズとアジザーの話」という長いお話をはさんで、次の代のタンマカンの話になっていくの。王の息子であるタンマカンがいつのまにやら王の座を奪われ、貧民街で暮らすほど落ちぶれてしまうんだけど。 | |
いや、それにしてもおもしろいよね。これで最後の方だけバタバタッと駆け足で話を終わらせないでくれたら、最高なんだけど(笑) | |
そうなんだよね〜、最後の最後のほうだけちょっと雑になっちゃってるよね。まあ、おかげでぜんぶの結末が一気にわかって、スッキリもするんだけど。 | |
でも、それより重要なのは、この長い長いお話を聞いたあと、シャーリヤル王がなにげに自分からシャーラザッドに次の話をするよう求めるところ。どうやら王は、もうシャーラザッドを殺す気はまったくなくなってしまった様子。 | |
「鳥と獣と大工の物語」 第146夜〜第147夜
野獣たちを避けるため、樹木の生い茂った島に移り住んだ孔雀の夫婦のもとに、おびえきった野鴨がやってきた。野鴨はアダムの子(人間)を怖れて獅子の子と暮らしていたのだが・・・。 「隠者の話」 第147夜〜第148夜 信心家の羊飼いのもとに、一緒に暮らしたいと女が訪ねてきたが、羊飼いは堕落せずに神に仕えるため、女を追い返した。 「水鳥と亀の物語」 第148夜 アダムの子を怖れた水鳥と亀は、一緒に島で暮らすことにしたが・・・。 「狼と狐の話」 第148夜〜第150夜 狐と狼は洞穴で一緒に暮らしていたが、狼は横暴で、いつも狐にひどい仕打ちをした。いつかは手痛い仕返しをしてやろうと考えていた狐は、近くのぶどう園の囲いに一カ所、破れているところを見つけ・・・。 <はやぶさと鷓鴣> 狐が狼に語ったところによると、つかまえようとした鷓鴣(しゃこ)が巣に隠れてしまったはやぶさは、鷓鴣に話しかけ・・・。 「二十日鼠と猫いたちの話」 第150夜 二十日鼠と猫いたちは、ともに貧乏な百姓の家に住んでいた。百姓が病気になった友達のため、殻をむいた胡麻の実を干しているのを見た猫いたちは、さっそく胡麻の実を自分の巣穴へ運んでいったが・・・。 「猫と烏の話」 第150夜 猫と烏(からす)が一緒に仲良く暮らしていた。あるとき、猫は烏に助けを求め・・・。 「狐と烏の話」 第150夜〜第152夜 自分の毎日の糧を烏(からす)に世話させようと考えた狐は、仲良くするよう烏に持ちかけたが・・・。 <のみと二十日鼠> 狐が烏に語ったところによると、金持ちの商人の家に住んでいたのみと二十日鼠は助け合うことにした。ある日、商人がたくさんの金貨を隠し持っていることを知った二十日鼠は・・・。 <雌鷹と小鳥> 烏が狐に語ったところによると、むかし、一羽の雌鷹がいたが、とても思いやりのない残忍な暴君であったため・・・。 <雀と鷲> もうひとつ烏が狐に語ったところによると、一羽の大鷲が子羊をわしづかみで捕らえたのを見た雀が、自分も同じことをしようとして・・・。 「はり鼠とじゅずかけ鳩の話」 第152夜 棗椰子を独り占めにしたかったはり鼠は、信心家のふりをして、じゅずかけ鳩の夫婦にこんな提案をした・・・。 <商人とふたりのぺてん師> 大金持ちの商人と旅をしていた二人のペテン師は、商人をだまして持ち物を巻き上げる相談をしていたが、内心、どちらも相手を出し抜こうと考えていた。 「泥棒と猿の話」 第152夜 一匹の猿を飼っていた泥棒は、盗んだ古着を綺麗な布で包み、包みを開かないことを条件に、まとめて安く売ることにした。 <馬鹿な機織工> お得な買い物をしたとばかり思っていた男が家に帰ると、妻はあきれて、馬鹿な機織(はたおり)工の話を始めた。馬鹿な機織工はもっと楽をして暮らすことを考えていたが、ある日、高い塀から飛び降りる山師を見て・・・。 「雀と孔雀の話」 第152夜〜第153夜 鳥の王様を決めることになり、雀は孔雀を推薦した。王となった孔雀は雀を秘書兼宰相にし、雀は誠心誠意で孔雀につかえたが・・・。 | |
王が自分を殺す気がなくなったところを見て取ると、シャーラザッドはお説教くさい寓話をたたみかけ、王にこれまでしてきたことの反省を促します。ということで、私は好きじゃないけど、ここは重要なところ(笑) | |
まあ、どれも短い話ばかりだからね。その話だけを楽しむというより、こういう話を聞いて、王はどう思っているのかなって考えながら読むとおもしろいかも。 | |
「アリ・ビン・バッカルとシャムス・アル・ナハルの物語」 第153夜〜第170夜
大昔のこと、ハルン・アル・ラシッド教主の側女(そばめ)であるシャムス・アル・ナハルの類い希なる美しさに、一目で恋に落ちたペルシャ王の末孫アリ・ビン・バッカルは、なんとかこの恋が成就されるよう、商人アブ・アル・ハサンを頼った。 | |
これは互いに愛し合っていても、立場ゆえに結ばれない男女の悲恋の物語。 | |
なぜか二人の悲恋より、巻き込まれてビビリまくる商人アブ・アル・ハサンと宝石商のほうに注目が行ってしまうけどね。気持ちはわかるっ(笑) | |
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