すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「王子シッダールタ2 四つの真理」 パトリチア・ケンディ (イタリア)  <ホーム社 単行本> 【Amazon】
王子として生まれながらも国を捨て、子供を産んだばかりの愛する妻とも別れ、天命を果たすべく修行の旅に出たシッダールタは、 運命の女性ナーラーヤニの息子スヴァスティと出会い、ともに旅をすることとなった。シッダールタの旅に待ち受けていたのは、死の神マーラの執拗な邪魔だてだった。 「王子シッダールタ1」
にえ 全3巻の王子シッダールタ・シリーズの第2巻です。ということで、第1巻だけ読んで、どうしようかなと迷ってる方むけにしゃべるしかないかな。
すみ とはいえ、真ん中の巻だからねえ、ここで良いとも、悪いとも判断はできないんじゃないの。
にえ そりゃまあ、そうなんだけど。まだ読んでない方むけにちょっと説明すれば、これは仏陀、シッダールタの生涯を西洋ファンタジー風に仕立てた小説なの。
すみ ファンタジーの中でも、けっこう甘っちょろいというか、子供っぽいタイプではあるよね。あんまり深さはないかも。
にえ 仏教っぽくないって言い方も変だけど、仏教らしい話ではないんだよね。シッダールタが仏教の開祖で、それ以前には仏教がなかったわけで、じゃあ、この小説はというと、 インドを舞台にした古代ヒンドゥー教をアレンジした西洋ファンタジーって感じ。
すみ ヒンドゥー教の神々がいっぱい出てくるよね。シヴァとか、ヴィシュヌとか、マーラとか。
にえ 要するに、善の神々の中でマーラだけが悪の神で、その善の神々が人間界に送り出したのがシッダールタで、悪の神マーラが送り出したのが蛇の国の王ドゥロノダーナ。その善と悪との戦いのファンタジーなの。
すみ でもさあ、第2巻に入ったら、やたらとラブ・ロマンス的な要素が増えてきたよね。シッダールタが愛に悩む姿が前面に押し出されてて。
にえ シッダールタにはヤショーダラーという賢く美しい奥さんがいるんだけど、もとは娼婦であり、蛇の国の王妃となったナーラーヤニは過去生で何度も何度もシッダールタの恋人だった女性で、 シッダールタは惹かれずにはいられないのよね。
すみ 話を逸らしちゃったから戻すけど、マーラとの戦いは、魔術と妖術で繰り出される幻覚の魔法合戦だった。
にえ 修行となると、邪悪なものが繰り出す幻影からの誘惑との戦いってのが定番でしょう。ただ座ってるだけじゃ話にならない。
すみ マーラはマーラで、手先ドゥロノダーナを使って、死体の上に死体を築くような残酷の限りを尽くしてたね。
にえ まあ、要するに、恋愛といい、戦いといい、かなり毒々しいのよ。
すみ 一度はドゥロノダーナに捕らえられ、邪悪な教育と恐怖を味わったスヴァスティが、今回は目立ってたかな。
にえ そうそう、善と悪の間で激しく揺れ動くスヴァスティは言動がつかめなくて、かなりの無気味っ子だったよね。
すみ あと、スジャータって不思議少女も出てきた。こちらは現実世界と幻想世界の狭間に生きているような少女で、これまた不思議な存在。
にえ スジャータは善でしょ。ただ、現実世界でちゃんと生きたいっていう思いが強すぎて、善にも悪にも気が行かないようなところはあるけど。
すみ とにかく、第1巻に比べるとかなり話は入り組んできたよね。
にえ あとさあ、いかにも児童文学っぽいような会話部分に気を抜いていると、急に難しい話が出てきたりするから、けっこう戸惑っちゃったかも。
すみ 正直、第3巻を読む気力が萎えはじめてるんだけど、どうしましょ。ここまで来て止めるのも惜しいしなあ。
にえ シッダールタが完全にファンタジー世界の王子様になってるところは違和感を感じつつ、まだ面白味もあるんだけど、子供っぽさと毒々しさが入り交じったような内容についていけなくなりつつあるよね。
すみ まあ、第3巻は気が向いたころにってことで。あ、こんなんじゃ第1巻だけ読んでどうしようかと思ってる方の参考にはならないかも。失礼しました〜。