すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「新版 シルマリルの物語」 J.R.R.トールキン (イギリス)  <評論社 単行本> 【Amazon】
上古の代、世界は唯一なる神エルによって創造された。地球には8人のアルタールが降り立ち、エルが やがて生まれると言った最初の生ける者エルフを、そしてその後で生まれるという限りある命の生ける者、人間 の現れるのを待ちながら、世界をより住みやすいものにしようと労いていた。
にえ 「指輪物語」「ホビットの冒険」と読んだあと、いつかは読まねばと思っていた 「シルマリルの物語」の新版が出たのでさっそく読んでみました。
すみ 新版の特徴は、旧版では上下2巻だったものを1冊にまとめてあるってことと、 トールキンの手紙も収録してあること、エルフ語の表記がもとの発音に近くなったこと、そしてもちろん、文章じたいが、ぐっと読みやすくなったようです。
にえ それにしても、「指輪物語」もそうだったけど、この本もまた紙の手触りが心地よかったよね。 軟らかくてしっとりしてて、しかも丈夫で、ページのめくりやすいこと、めくりやすいこと。
すみ 最初にね、まずJ.R.R.トールキンの息子さんのクリストファ・トールキンの序文が 初版のと、第二版のと2つついてるの。それによると、「シルマリルの物語」はJ.R.R.トールキンが亡くなって4年後に ようやく出版されたのだとか。
にえ そのあとにJ.R.R.トールキンが編集者ミルトン・ウォルドマンに 宛てた手紙がついてるの。これは先に読むよりあとで読んだほうがいいんじゃないかなって気がしたんだけど。 けっこう長い手紙です。
すみ で、本編にはいるわけないんだけど、これは「アイヌリンダレ」「ヴァラクウェンタ」「クウェンタ・シルマリルリオン」 「アカルラベース」「力の指輪と第三紀のこと」の5つの章に分かれてるの。
にえ 前の2つと、後の2つは短いのよね。大部分は「クウェンタ・シルマリルリオン」で占められてた。
すみ 最初の「アイヌリンダレ」と「ヴァラクウェンタ」は、まるで神話というか、旧約聖書というか、 そういう世界。唯一神エルによる、天地創造の物語なの。
にえ エルの下には聖なる者たちアイヌアがいて、とくに優れているのは7人とその妃7人の合計14人。そのなかでも 長となるマンウェってアイヌアがいるんだけど・・・。
すみ じつはマンウェと同じぐらい優れたアイヌアがもう一人いるのよね。 メルコールっていうんだけど、このメルコールが欲深いというか、邪悪なお方で、その後も悪として存在し続けるのよね。
にえ 地球に降り立ったのは8人のアラタール。でも、やっぱりメルコールもいらっしゃるのよ。
すみ アラタールたちはなんとかメルコールを抑えつけたりもするんだけど、メルコールはとにかく狡猾で、 強大で、邪悪で、そう簡単には片づかないのよね。
にえ で、「クウェンタ・シルマリルリオン」に入ってからは、メルコール対エルフの壮絶な戦いの歴史と なっていくのよ。
すみ 正直、「クウェンタ・シルマリルリオン」に入るまでは、ずっとこの調子で、おもしろくなくはないけど物語として 刺激があるとも言いがたいような神話を読まされるのかしら、こりゃ最後まで読めないわ、と思ったけど、 「クウェンタ・シルマリルリオン」に入ったら、一気におもしろくなったよね。
にえ そうそう、最初の2章もおもしろいんだけど、どうしても、こんなありもしない国の架空の神話を長々読まされてもな〜みたいな 気持ちになっちゃったよね。でも、「クウェンタ・シルマリルリオン」に入ったらもう、壮大な物語に夢中になってしまった。
すみ 「クウェンタ・シルマリルリオン」の中がまた24の章に分かれてて、 話は時の流れとともにつながっていくんだけど、それぞれ主人公が違うって感じなのよね。
にえ エルフとメルコール、単純に善と悪の戦いの物語と思ったら、大間違いよね。
すみ うん、エルフってもうちょっと超然としたイメージがあったんだけど、読んでかなりイメージが変わった。 嫉妬や欲によって、エルフどうしで憎しみあったり、裏切りがあったり、同族殺しが幾度も起きたり、壮絶なの。
にえ でももちろん、哀しい愛の物語がいくつもあったし、勇者の物語もいくつもあったし、 美しさに酔いしれる部分も多かったよね。
すみ あとさあ、とにかくエルフ語の固有名詞やら、名前やらが腰の引けるぐらいタップリ出てくるんだけど、けっこう章ごとで 話に区切りがついてたから、つらくもなりすぎずに読めたね。
にえ そうそう、「指輪物語」で重要人物や重要アイテムだけ気をつけて、あとは 軽くっていう読み方のコツもちょっとつかめてたのかな、なんてこの本読んでて嬉しくもなったりした。
すみ エルフとドワーフがどうしていがみあっているのかも、この本でわかったよね。 人間族の創世記時代のこともわかったし、エルフと人間の初期の関わり合い方もわかったし、なんといっても「指輪物語」でお馴染みの方の名前が 出てくると、すんごい嬉しかったし。
にえ 「指輪物語」はかわいいホビットの勇気と冒険の物語と、壮絶な戦記物、それに美しい愛の物語って感じだったけど、 「クウェンタ・シルマリルリオン」はそこからホビットの冒険物語だけを抜いて、他をもっと膨らませたって感じだったよね。可愛らしさ、クスクス笑える楽しさは 抜けちゃったけど、そのぶん他が充実してて、こっちはこっちでまた良かった。
すみ で、そのあとの「アカルラベース」と「力の指輪と第三紀のこと」が、 直接「ホビットの冒険」「指輪物語」に続く話の内容なの。
にえ 指輪の話は出てこないのかな〜となかば諦めかけてたけど、最後にキッチリ出てきたね。 そういうことでしたか〜。
すみ 「指輪物語」を読む前だとちょっとキツイかもしれないけど、「指輪物語」のあとなら、 タップリ楽しめる本でしょ。やっぱり読んでよかった。