=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「ジャングルの国のアリス」 メアリー・H・ブラッドリー (アメリカ)
<未知谷 単行本> 【Amazon】
5才の少女アリスは、両親に連れられ、アフリカ旅行をすることになった。両親は、博物館に ゴリラの剥製を展示するため、ゴリラを狩って皮を得ようとするエイクおじさんに誘われたのだ。 船のうえで6才になったアリスは、アメリカでは見ることのない野生動物や火山に出会いながら、 大人たちと未開の地アフリカを旅した。 | |
O・ヘンリー賞などを受賞したメアリー・H・ブラッドリーが1927年に 発表した、娘アリスの目を通して書かれたアフリカ旅行記です。 | |
子供向けの本なのよね、しかも昔の。それがなぜ今になって邦訳出版されたかといえば、 だれあろう、このアリスっていうのが、有名なSF作家ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアその人だからなの。 | |
ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアについては、「愛はさだめ、さだめは死」のときにご紹介 してますので、ご存じない方はご参照あれ。 | |
私たちは、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアことアリスの子供時代を知る手がかりとなる 本ってことで、苦手な<です・ます調>であるにも関わらず、がんばって読んでみたのよね(笑) | |
原書では、アリスの描いた挿し絵がたくさん入っていたらしいんだけど、この邦訳版では 地図とゾウの絵以外は新しい挿し絵になっちゃってるのが残念。でも、そのぶん原書にはない、5才、6才の頃のアリスの 写真が12点も入れてもらえてて、これはうれしかった。 | |
写真のなかのアリスは、まさにアリスって感じの少女だよね。長くてフワフワの、 クルクル巻き毛の金髪で、とにかく可愛かった〜。 | |
うん、前に大人になってからの写真を見たときは、アリスなんて可愛らしい 名前じゃ物足りないぐらいの女性だなと思ったけどね。 | |
この本じたいは、1921年のアフリカ旅行を書いたもので、今とはかなり 考え方というか、意識が違う時のものだから、ちょっと首を傾げてしまうところもあったりしたけど、それはそれでおもしろかったかな。 | |
そうね、とくに子供を含めてもたった6人の白人が旅をするための荷物を運ばせるのに、 黒人を200人も雇う必要があったとかいうのは、昔だな〜って感じがした。 | |
アフリカに合わせた生活をしようなんて気はぜんぜんなくて、アメリカにいるときと同じ生活を しようとするんだから、まあ、荷物も増えるわなあ(笑) | |
アフリカのジャングルであろうが、平原であろうが、どこに行ってもアメリカにいたときと 同じような食事をしようとしたり、サファリのど真ん中で乗るために自転車まで運ばせたりとか、今考えればオイオイって感じだけど、 当時はそういうものだったんだろうな〜と思うよね。 | |
だいたいからして、ゾウやゴリラをライフルで撃って剥製にすることがとても良いことで、 アリス様ご一行はその良いことをするためにアフリカに行ってるんだから、今とは感覚が違うよ。 | |
でも、さすがにアリスの母のメアリーは、すでに自然保護について考えはじめていたようで、 そういう記述もあったけどね。 | |
そのへんもまあ、過去のこととして楽しく読んだし、自然描写はタップリだし、 人食い人種についてとか、ケロッとなんでもないことのように書いてあったりもして、なかなかおもしろかった。 | |
ただ、どうしてもお話じたいより、気になるのはアリスと母の関係なんだけどね。 | |
そうなのよね、この本の時のアリスは6才、で、その6年後の12才の時には、大きすぎる 母の存在に押し潰されそうになって自殺未遂しちゃうのよね。 | |
アリスが12才といえば、ちょうどこの本が出版された1927年なんだよね〜。 | |
そうそう、それなのにこの本では母のメアリーは、5才、6才の時のアリスになったつもりで、 アフリカ旅行を楽しげに書いている。本の中のアリスはおてんばで、好奇心いっぱいの明るい少女なの。 | |
メアリーはアリスを本当に理解していたのかなあとか、大きなお世話とは知りつつ考えちゃうよね。 | |
アフリカを発つときの写真の、アリスの小さな背中が、見ていてなんとも切なくなったな。 | |
本当のアリスはなにを考え、どう感じていたんだろうかとめいっぱい意識しながら読んでしまった。 あと、この旅行がのちのち発表することになるSF小説にどう影響しているのかなとか、そんなことばかり考えちゃった。 | |
ということで、メアリー・H・ブラッドリーが意図したものとは、まったく違うところで 深読みしてしまったのでした。複雑〜。 | |