すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「ホビットの冒険」 J・R・R・トールキン (イギリス) <岩波書店 単行本> 【Amazon】
中つ国にある、ホビット庄で暮らすホビットのビルボ・バギンズは、代々暮らしむきの良い家柄で、 なに不自由のない生活をしていた。ところがある日、有名な魔法使のガンダルフがやってきて、冒険の話を はじめた。冒険なんてとんでもない。ホビット庄ではのんびり暮らすのが偉いホビットで、冒険なんかする ホビットは軽蔑されてしまうのだから。ところが、翌日には13人のドワーフがやってきて、ビルボのこと を、旅の仲間に志望した忍びの者だと決めつけた。なにがなんだかわからないまま、ビルボは忍びの者とし て、ガンダルフやドワーフたちとともに、欲深い竜のスマウグに奪われた宝を奪い返す旅に出た。
にえ これは「指輪物語」の前のお話。この本ではビルボが冒険にでかけ、 「指輪物語」では旅から戻ったビルボから話がはじまります。
すみ こっちは読者の対象も、ぐっと年齢を低く設定してあるのよね。
にえ そうなの、だから、小学校高学年ぐらいで「ホビットの冒険」を読んで、 中学生か高校生ぐらいに「指輪物語」を読むっていうのが一番理想的なんだろうね。そうすれば、本の中で流れる 時も、すんなりと自然に受けとめられるだろうし。
すみ そんでもって、大人になって映画を観る前に「指輪物語」を再読す れば、なお理想的かも。でも、過去には帰れないから、私たちは今読むしかないのだ(笑)
にえ 今になって読むとなると、時間の流れの順番どおりに、「ホビットの 冒険」を先に読んでから「指輪物語」を読んで、ひとつの流れとして把握する。もしくは、「指輪物語」 を先に読んで、外伝的な感じで「ホビットの冒険」を読むってことになるだろうね。
すみ 私たちにはやっぱり、子供向きに書かれた「ホビットの冒険」は軽い 外伝だと思ってあとから読む方があってたと思うけど、これはもう人それぞれでしょ。
にえ それにね、「指輪物語」だけ読んで、「ホビットの冒険」は読まなく ても、べつに問題はないと思う。両方読まないと読んだことにならないよ!ってほどではないんじゃない?
すみ うん、そうだね。ただ、「指輪物語」ではすでにビルボと友だちに なってた登場キャラが、ここでこうやって知り合ったのね〜とか、わかって楽しめることが多いから、 読む価値はありだよ。
にえ そうそう、私はとくに、石になったオークの話は、オオッと思った。
すみ 「指輪物語」ではフロドが石のオークを見て、これがビルボの話に出 てくる、あのオークかって思うだけで、説明はないんだよね。それがこの本を読むと、どうしてオークが石 になっちゃったかわかるの。
にえ 逆に、「ホビットの冒険」を先に読んだ人は、「指輪物語」で、 あの石になったオークはまだ残ってたんだ〜ってうれしくなるだろうね。
すみ あとさあ、「指輪物語」で、ドワーフのグローインってのがチラッと出て くるんだけど、この本ではグローインは、ビルボの旅の仲間、13人のドワーフの一人なの。これは、「ホビ ットの冒険」で13人のドワーフを知ってから、「指輪物語」でグローインが語る、残りのメンバーのその 後を読むと、また楽しいんじゃないかな。
にえ とにかくそういう感じで、共通する登場キャラがたくさん出てくるし、 「指輪物語」ではあたりまえのようにビルボの友人だった登場キャラと、どうやって知り合ったかとかわ かるし、そういう喜びがたくさんあるの。
すみ ひとつだけ、両方の本を読んで初めてわかるなと思ったのは、つらぬき丸。 「ホビットの冒険」ではビルボがもらって使う剣、「指輪物語」では、ビルボからフロドに与えられる剣なんだけど、 片方の本しか読んでないと、すごい剣だなぐらいにしかわからない。でも、両方を読むと、つらぬき丸は不 思議な運命をたどった剣なんだなとわかるよ。
にえ もちろん、はずしてはならないのは指輪。「指輪物語」では一番重要 なアイテムなんだけど、ビルボがどうやってゴクリから指輪を奪ったか、この本を読めばよくわかるよ。
すみ こっちの本にもゴクリが出てきて嬉しかったよね〜。ゴクリのしゃべり かたはホント、かわいいんだもん。ちょっとだけゴクリの人生が違ってたけど。
にえ で、この本の話じたいなんだけど、これはもう子供向けだから、長め とはいえ、トントン話は進んでいくし、いろんな出来事が待ってるし、読みやすいし楽しいよね。
すみ 目的意識もな〜んにもないビルボが、間抜けなことをやったり、 とんでもないことをやっちゃったりするうちに、本当に立派な忍びの者になっていく姿が、ちょっと変だけど、 おもしろいよね。
にえ 子供の本とはいえ、当たり前のように魔法があったり、不思議な種族 住んでいたりする中つ国は、知る喜びをめいっぱい味あわせてくれるしね。
すみ ドワーフとエルフがどうして仲が悪いのかとか、そういう知識も増え たよね(笑)
にえ あと、小人の知識も増えたよ。白雪姫の小人はドワーフで、ガリバー に出てくるのはリリパットだなんて、知らなかった〜。
すみ それにね、意外と単純なお話ではなかったの。最初は、13人のドワ ーフと、頼りになる魔法使いと、ドジで間抜けだけど運のいいホビットが冒険をして、いろいろ怖い目に遭ったり、 すごい宝を手に入れたりする、それだけのお話かと思ったけど。
にえ うん、最後のほうでは、かなりひねりをきかせて、急展開だったよね。 まさかこんなことになるなんてと驚きもしたし、種族別の性格がはっきり出てたから、説得力もあったし。 なんか最後のほうだけ、これはもう「指輪物語」の世界だわ〜と思った。
すみ というわけで、「指輪物語」のあとに読んだ私たちは、そうとう楽しめ たのでした。