すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「指輪物語 王の帰還」 J・R・R・トールキン (イギリス)
                       <評論社 文庫本>  【Amazon】 (8) (9) 全9巻セット

仲間と別れ、ガンダルフとともにミナス・ティリスに行くことになったピピンは、デネソールに忠誠を誓い、 ゴンドール国の兵士となった。ベレゴンドや、その息子ベアギルとも親しくなり、待遇も悪くないのだが、 メリーと離れた淋しさや、体が小さいために戦いに参加できないための焦燥感がつきまとっていた。一方、 ローハン国でセオデンに忠誠を誓ったメリーも、同じ気持ちでいた。そんななか、アラゴルンらは「死の道」 を進み、ゴンドール国内、ローハン国内の領主たちは兵を引き連れミナス・ティリスに集まり、サウロンの ハラド軍との激しい戦闘がはじまった。その頃、フロドとサムは……。
にえ 「指輪物語」の第3部「王の帰還」です。これでひとまず、「指輪物語」は完結します。
すみ さすがにラストになってくると、戦闘は激しくなってきたよね。亡くな る人あり、寒気のするような恐ろしい攻撃ありで。
にえ しかも、各地から応援軍がたくさん駆けつけてくるから、いっきに 登場人物も膨れあがって、それも大変(笑)
すみ でも、武将の一人一人をぜんぶ覚えないと困るってことはないから、 このへんは軽く把握しとくだけでよいんじゃない?
にえ イムラヒル大公だけ要チェックかな。ドル・アムロスの騎士たちを 引き連れてきたこの人は、ゴンドール国の執権デネソールの親戚だから、けっこう発言が多いし、名前も よく出てくるし。
すみ そうそう、デネソールといえば、大変なことになっちゃうよね。
にえ うん、悲劇のドラマだったね。父親であるデネソールの息子、ボロミ アとファラミアに対する愛情はちょっと複雑でもつれてて、そこから哀しい結末に向かっていってしまうの。
すみ 恋愛のドラマもあったよね。でも、いかにもロマンティックって感じじゃなくて、 意外にもシビアで大人な意見交換のような恋愛だったから、ちょっと驚いちゃったけど。
にえ 驚いたといえば、この第3部では、だれそれと名乗った人が、じつは あの人だった!みたいな驚かせてくれるところもあったよね。
すみ ひとつは戦闘中に驚かせてくれるんだけど、これはかっこよかった。 「指輪物語」全体のなかでも山場というか、一番絵になるシーンじゃないかな。
にえ あとの驚かしは、指輪戦争の終ったエピローグ部分でのお楽しみ。そ れにしてもこの本、本編が終ったあとのエピローグが長いよね。
すみ うん、普通の本だと、一番盛り上がるラストが終ったら、あとは短く しめのエピローグがついてるだけだと思うんだけど、このシリーズだと、「王の帰還」下巻の半分ぐらいが エピローグだった。
にえ みんな幸せに暮らしましたとさ、って感じじゃなくて、もうひとつ番外編の エピソードを紹介するって感じだったよね。
すみ そこで、「旅の仲間」あたりで出てきて、その後、忘れかけていた 登場キャラが意外なかたちで再登場して、驚かせてくれるの。
にえ おお、あいつか〜なんて驚きつつ、忘れかけていた登場キャラの 末路を知ることができたりして、なんか最後まで読んだことへのご褒美みたいでもあったね。
すみ それにさあ、このエピソードがついてることで、なんかひとつにまとまったなって 感じもした。最初はホビット族という小さなかわいい種族が旅をするファンタジーの世界だったでしょ、 それが善と悪の激しい戦闘となって、世界が広がり、戦記物のようになった。それが、ラストでまたファン タジーに戻ったみたい。
にえ それにしても、読んでるあいだは登場キャラとか地名とか、把握するのに 苦労させられたし、長い長い物語だったけど、終ってみると、もう終わりなの?って淋しくなったよね。
すみ 舞台だった中つ国ってすごく広いし、いろんな種族が住んでいるし、 歴史も長いでしょ。読んでるあいだに、さまざまな過去のエピソードの断片とか、今回はあまり取り上げられなかった種族の話とか、 チラッチラッと見せつけられたから、なんだかまだちょっとしか知ることが出来なかったって気がしてくるのよね。
にえ ああ、これはしょせん、中つ国で起きたさまざまな出来事のうちの、 たったひとつに過ぎなかったんだな。やっと私はそのひとつを知っただけなんだなって思えてくるのよね。
すみ 長い小説を読んだっていうより、中つ国というひとつの完成した 世界に入っていたって感覚が強いから、出ていくのは淋しいって気がするのよね。これがハマっていく 初期症状?(笑)
にえ 読むのが大変でもあったけど、奥行きは広いし深いし、冒険物と戦記 物が一つになったようなおもしろいストーリーだったし、登場キャラも建物とか小物とか、すべてが魅力的だったし、 種族とか歴史とか、もっと知りたくなってくるし、トールキンが作り上げた中つ国っていう大きな世界で遊 ばせてもらったって感じだったよね。
すみ ちょっと金髪至上主義みたいな、そういう時代を感じる部分はあった けど、でも、中つ国はほんとに壮大な永遠に存在する世界だと思った。読者である私たちにとっては、 これを読んで終わりじゃなくて、これが中つ国への旅の始まりかな。