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戦場の×× ラストステージ act1
「そうか・・・・三村と一緒だったのか。」 秋也のこれまでのあらすじを話した。 三村と合流したこと。 その三村が、脱出の方法があると言ったこと。 遭遇したクラスメイト。 そして、そのクラスメイトの生存状況。 桐山に襲われ、三村と別行動になったことを。
弘樹はそれらをすべて聞き終え。 数分ぶりに探知機の液晶画面を見た。 先ほどから、一定間隔でそうしていたように。 数メートル離れたところに、誰かいる。 「うん。でも・・・・無事、か、どうかは・・・」 「いや、どうやら無事みたいだぞ、どこぞのサードマンは。」 秋也の頭を撫でると、弘樹は微笑んだ。 探知機に写っているのが、三村である確証はどこにも無かったが、 なんとなく、そんな気がした。 ―――――――嫌な、予感が。
そして、それは的を得ていたのだ。
「七原・・・?いるか?」 「三村!!」 秋也は、三村の姿を見るなり、顔を緩めるどころか、引きつらせた。 腕、脚、腹のあたりが、真っ赤に染まっていたのである。 しかし、一番に顔を引きつらせたかったのは、三村の方だった。 実際は、特に表情の変化もなかったが――― 杉村弘樹が、七原秋也と一緒にいたので。
「俺は、そろそろ行く。」 三村の、ある程度の治療を済ませると、弘樹が言った。 血の量は多かったが、腹に弾は当っておらず。 幸い、腕と脚だけで済んでいたのだ。 「な、何でだよ!一緒にいた方が・・・さっき、三村が脱出の方法を知ってるって、言っただろ?」 秋也に目をやり、弘樹は、三村の方をむく。 そして、ゆっくりと。 重みのある声色で言った。 「少し、七原と話がある。」 「なんだよ?俺がくるまで二人で話してたんじゃねぇの?」 脚の怪我をさすりながら、三村がいつものおどけた感じで答える。 目は、真剣そのものだった。 「七原に伝えておきたいことがある。七原を借りても構わないか。」 真剣な目つきで言うと、三村は仕方ないと言ったように、オーケーサインを出した。 「杉村・・・何?」 「門のところで話そうか。」 三村がもたれかかっていた、倉庫のところから離れ、 弘樹は秋也を門のところまで連れ出した。
「何だよ、杉村。」 「いいか、今から、いくつか質問に答えてくれるか?」 「構わないけど・・・」 門のところまで来、三村の姿が見えなくなったところ。 弘樹は秋也と向き合い、ゆっくりと言葉をつむいだ。 表情が、なんだか険しかった、普段より。 まぁ、今はこんな状況だし。 「七原は、三村とずっと一緒にいたんだな。」 「そうだけど。」 「三村は、大木と飯島を殺した。」 その言葉を聞いて、秋也は少し声を荒げた。 「大木は、仕方なかったんだよ!俺がしっかりしてなかったから・・」 「ただの確認だ。カッカしないでくれ。それで、飯島は?」 「・・・・・・・・・信用できないって・・」 まだほんの2、3時間前の出来事に。 秋也は俯き加減になった。 死体を思い出す。 「・・・・・七原、三村が、瀬戸と、清水を追ったと言っていただろう。」 「杉村・・・何考えてんだよ、幾ら鈍い俺でも・・・そんな風に聞かれたら、」 「ちゃんと思い出してくれ。瀬戸と、清水、二人はもう死んでいるんだ。七原と三村に遭遇した奴は、もう皆死んでいる。」 いつになく真剣な表情と言葉に、秋也はごくりと唾を飲んだ。 「・・俺らがやったって言いたいのかよ」 「違う。少なくとも、七原はクラスメイトを殺したりしてない。そうだろう?」 “少なくとも”そう言った弘樹の言葉が引っかかった。 「・・・・三村がやったって?そう言いたいのかよ、杉村。」 秋也は弘樹を見上げると、下からギッと睨みこむ。 月明かりが生み出す陰影のおかげか。 弘樹はそんな秋也にゾクリとした。 それでも、話をすすめる。 「いいか。さっき、三村を見たとき、感じた。あいつは、正常じゃない。」 「なんでそんなこと言えるんだよ?俺ら友達だろ?」 強い、意思の塊のような視線に、弘樹はまたゾクリとした。 けれど、ここで引くわけにはいかない。 「それじゃ、具体的に話そう。瀬戸を見つけた時にはもうダメだった、三村はそう言ったんだろう?銃声はしなかった。七原と遭遇し、瀬戸に逃げられた、三村が追った。三村一人が帰ってきた。」 「・・・・・」 「しかも短時間だ。他の誰かと三村が遭遇したわけでもない。三村は瀬戸の死体を見た。食料を持って帰ってきた。つまり、三村以外の人物が瀬戸を殺した可能性は低い。こんな状況じゃ、水は貴重だからな。現に、七原達も大木や南の食料を手にしている。」 「それは・・・」 淡々と述べる弘樹に、秋也は返答できなかった。 肯定も否定も出来ない。 秋也の心臓はバクバクと心拍し始めた。 額に汗が滲んでいた。 「違う例を上げても構わない。何故瀬戸は逃げた?あいつらは昔からの親友だ。それだけに、三村の異変に気付いたからじゃないか?」 「怖かったんだよ、瀬戸は、きっと。」 様子を見て取った弘樹は、 それでもなお三村のフォローをしようとする秋也に。 少し心が痛んだ。 しかし、きちんと言うべきことは言う事にしている。 弘樹は秋也の両肩に手を置くと、言い聞かせるよう、言った。 「目を覚ますんだ、七原。三村は“やる気”になったんだ。七原の知らないところで殺人を犯している。清水を追ったとき、銃声が聞えたんだろう。もう、あいつ意外にいないじゃないか?」 「撃たれたから撃ち返したんだよ、三村は!」 「七原・・・はっきりと言わせてもらうぞ。」
「三村は、七原に特別な感情を抱いている。そのために、人を殺したんだ。」
「だから、今のウチに逃げるぞ。あいつと一緒にいるのは―――危険だ。一人でいるよりも。」
目を見開いた秋也が、固まった思考を回転させようとした。 その時だった。 カチンと、何か金属の。 乾いた音がした。 音の方に恐る恐る視線を向けると。 ―――――拳銃を構えた三村が笑みを浮かべていた。 その銃口は弘樹の左こめかみに向けられている。
「さっきから言いたいこと言ってくれんじゃん?杉村クン。」 「・・・盗み聞きとは、悪趣味だな。」 拳銃を向けられているというのに、弘樹は冷静だった。 そっと秋也から手を離すと、両手を上にあげ、ホールドアップを示した。 それから、二歩後退。 当の秋也はと言うと、玄関にもたれかかるように、呆然とその様子を眺めていた。 頭がついて来ない。 何がなんだか、さっぱりわからなかった。 「ホラ、お前の所為で七原が怯えちゃってるデショ?なんてことしてくれんの。」 相変わらずの笑顔で、三村が弘樹に銃口を押し付けた。 「反省した?杉村クン。したなら、そっから10歩下がってくださる?」
そんなやりとりを目前に秋也はぐるぐる渦巻く頭を整理しようと試みる。 三村は俺を守ってくれてて。 脱出すると言って。 でも、飯島は信じられないから殺して。 杉村も俺を心配してくれてるわけで。 でも三村とは別行動をしろと訴えて。 二人とも俺のために色々してくれてるわけであって―――。
考えれば考えるほどわからない。 でも。 飯島を殺した三村。 弘樹に銃を向けた三村を見てしまった今。 三村と二人でいるのは怖く思えた。
「三村、銃を降ろせ。」
第一声がそれだった。
「俺、今の三村と二人でいるの、嫌だ。・・・・はっきり言って、怖い。」
スゥと。 三村の笑みが消えうせた。 「は・・・今まで守ってやったのに、それはないんじゃないの?七原。」 「銃を降ろせっていってんだろ。」 怒気の含まれた声に、三村はゆっくりと銃を下ろす・・・ 「悪いけど、俺、杉村と行く。でも、三村と殺し合う気とか、ないから。あつかましいかもしれないけど。」 顔をあげ、はっきりと口にされたその言葉は。 三村の心を思い切り貫いた。 何かが壊れる音が。 暗闇に響いたような。 そんな気がした。
あんまり長いので2ペーシにしました・・・・ |