ソファーに座ってタバコ吸ってたら、いきなり肩が重くなった。
 それがなぜかっていうのは、肩を見たりしなくてもすぐにわかる。
 その重さは間違いなく、俺の隣りでぼんやりしながら座ってた時任の重さだった。
 
 「…時任」
 「・・・・・すぅ…」

 すっかり寝入っているみたいで、名前を呼んでも全然反応がない。
 肩に寄りかかってた時任は、眠ったせいで身体の力が段々抜けていって…。
 最後には俺の膝の上に頭を預けて、静かに寝息を立て始めた。
 何も人に寄りかかって寝なくてもいいのにって思わないでもないけど、時任は寄りかかって寝るのが好きみたいで良くこうやって居眠りしてる。
 いつも眠りに落ちるみたいにゆっくり俺に寄りかかってきて、それから目を閉じてた。
 その様子は、まるで暖かさを求めて擦り寄ってくる猫みたいで…、見ているといつも頭を撫でてやりたくなる。
 そういう時は気のせいじゃなくて、ホントに猫ひろって来たのかもって気がした。
 まぁ、猫というにはかなり大きすぎだったりするけど…。

 「う…ん…」
 
 時任が小さく寝返りを打つと、手が片方だけソファーから落ちる。
 だからその手を拾い上げるように握りしめて、細い指に自分の指をからめてみた。
 すると眠っているはずなのに、時任がそれに反応するように少し微笑んだ気がする。
 だから、眠っている時任に微笑み返しながら、もう少しだけ握る手に力を込めた。
 
 いつも名前呼ばれて、返事するみたいに…。

 眠っている時任の柔らかくてさわり心地のいい髪を反対の手で撫でて…。
 ゆっくりと頭を落さないように屈み込んで額にキスを落して…。
 そして体温を確かめるように、時任の肩の辺りに今度は俺の方が寄りかかった。
 膝を占領して眠ってるこのワガママ猫がいて…。
 立ち上がれなくて困ってるはずなのに…。
 眠っている猫の顔を見ていたら、もう立ち上がりたくなくなったから…。

 「おやすみ…、時任」

 外はまだ日が高くて、ベランダから下を覗けば排気ガスを撒き散らしながら車がたくさん走ってる。
 人も街も何もかもが眠る気配すらなくて、忙しく動き回ってて…。
 けど、そんな騒がしさも忙しさも何もかもが、この部屋までは届いて来なかった。
 自分から窓を閉めたのか、それとも知らない内に隔離されてしまったのか…。
 そんなことはわからなかったけど…、このままでかまわない…。
 何があっても何が起こっても…、たとえ眠りがこの部屋を支配してしまっても…。
 こうして静かにこのぬくもりがそばにあるのなら、それでいい…。
 でも膝で眠ってしまってるこの猫は、そう思ってないんだって知ってた。
 この猫の瞳はちゃんと前を向いてるから…。
 だからいつか…、たぶん…、ここから出たくなってしまうんだろう。

 「くぼちゃ…ん…?」
 「ん?」
 「なに…?」
 「なんでもないから…」
 「すぅ…」
 「また寝た?」
 「・・・・・・・」

 こうやって抱きしめて…、キスして…。
 そうしてるのが、たまらなく暖かくて気持ちいいから…。
 だからせめて今だけでも、こうやって猫のような君を抱きしめて眠らせてください。


                                             2002.10.16
 「猫」


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