久保ちゃんの姿が見当たらないと思ったら、生徒会室にいた。
 俺に何も言わないでいなくなることとかないワケじゃないけど、やっぱ、どこで何してんのか気になっちまうんだよなぁ。
 なんかわかんないケド、そういうのってちょっとムカツク。
 あんな風に、気持ちよく寝てる姿みたらなおさらってヤツ。
 「久保ちゃんのバーカ」
 そんなこと言っちゃっても、まだ起きねぇ。
 俺がいるのに気づかないのも、ムカツクのを更に上乗せ。
 こうやって、学校では珍しく二人きりって時間がムダに過ぎてんのも、その上 に乗せて三倍。
 
 頭撫でてやってんのに、こいつ無反応っ!

 更に四倍。

 「久保ちゃん・・・」
 耳元で囁いても無視かよっ、無視っ!!
 
 加えて五倍。
 
 くそっ、眼鏡取ってやる!!
 眼鏡かけて寝てんなよなっ!
 眼鏡取っても起きねぇでやんの、コイツ!!
 
 寝ぎたないので、積み上げて六倍。
 
 「く、ぼ、ちゃんっ、てばっ」
 昨日、そんなに起きてたっけなぁ?
 ちよっと、ココんとこに・・・・・。
 
 
 マジかっ!!
 首筋にキスしても反応がねぇ!!
 俺様がここまでしてやってんのに、この態度!!!
 
 二倍増しで、八倍。
 
 ・・・・もしかして、どっか具合悪いのか?
 なんかちょっち心配になってきたじゃねぇかっ。
 額に手を当てても熱は無し。
 ・・・・よかった・・・・。

 うぅっ、こうなったらトコトンやってやるっ!!
 まずはココっ。

 ・・・・頬にしてやったってのに、なんてふてぇ野郎だ!!
 俺様にココまでさせるとは許せんっ!!
 
 あぁっ、もうムカツク×九倍じゃんかっ!!
 
 ムカツク、ムカツク、ムカツク〜!!

 もういいっ、もうこれで起きなきゃもう知らねぇ。
 今日は口きいてやんないからなっ!!

 「これで終わり、だからなっ・・・・・」

 ・・・・あれ??
 なんか、久保ちゃんの身体が・・・震えてる???

 「あ゛〜!!! 何やってんですかっっ!!!」

 げっ!藤原っ!!
 み、見られたかっ、さっきの・・・。
 「うっせぇなっ! このバカっ!」
 「バカなのはあんたの方でしょうがっ! 久保田先輩に何しようとしてたんですかぁっ!!」
 
 あっ、セーフだったみてぇだな。
 よかったぜ。

 ・・・って、あの〜、久保ちゃん?
 あ゛っ、ま、まさかっ、てめぇ〜!!

 「ずっと起きてやがったなぁ!!」
 「うん、起きてたケド。せっかく時任くんがサービスしてくれてるから、おとなしくしてようかと思ってさ」
 「誰がサービスだっ!」
 「だってさ。俺のこと好きって聞いても答えてくんないでしょ? 言葉で言ってくんないなら、態度で示してもらわないとね?」
 「くっ、く、く・・・・」
 「く?」
 「久保ちゃんなんか大っ嫌いだぁ〜!!」
 「説得力ないなぁ、そのセリフ」
 「うっせぇ、バカっ!!」

 「あ、あの〜」

 「藤原っ、てめぇは黙ってろっ!」

 「さぁて、見回りにでも行きますか」
 「あっ、待てよ久保ちゃん!」
 
 帰ってから、覚えてやがれっ!!!

                                             2002.2.12
 「言葉より簡単なこと」


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