げっ、やられちまったー…。
 朝からやってんのにラスボスまで進まねぇ。
 コンテニュー画面見んのあきちまったぜ。
 しょうがねぇから、気分転換にアイスでも食おっ。
 そういや、まだ冷蔵庫に例のアイス残ってたよな?
 
 ドタドタドタ…。

 ああ、あったあった。
 これって久保ちゃんが箱買いしてきたヤツなんだよなぁ。
 まあウマイからいいけど。

 ピンポーン…。

 「開けて、時任」

 あっ、久保ちゃんが帰ってきた。
 
 ドタドタドタ…。
 ガチャガチャ、ガチャッ!

 「おかえり、久保ちゃん」
 「ただいま」

 帰ってきた久保ちゃんが右手にコンビニ袋持ってる。
 実は出かける前に一緒に行く?つって、久保ちゃんが言ってたけど結局行かなかったんだよなぁ、外暑いし。
 なんて俺がココロの中でブツブツ言ってると、久保ちゃんがコンビニ袋開けてそこから何か取り出した。
 そ、それってまさか…。

 「久保ちゃん」
 「なに?」
 「今、冷蔵庫に入れようとしてるソレって何?」
 「何って、アイスだけど?」

 久保ちゃんが手に持ってるアイスは、俺がさっき食おうとしてたアイスだった。
 前に箱買いしたアイス。
 それがやっとなくなったってのにっ!!

 「そのアイス買ってくんの何回目だかわかってんのか?」
 「さあ?」
 「四回目だっつーのっ!!」
 「あれ?そんなに買ってきてたっけ?」
 「とぼけんなっ!」

 ワザとやってんのかって思ってたけど、なんかホンキで知らなかったみたいなカンジしたから、俺は恐る恐る久保ちゃんにホントのトコどうなのかって聞いてみた。
 そしたら、久保ちゃんはアイスを冷蔵庫にしまってから首をかしげた。

 「別に買う気なかったんだけど、気づいたらカゴに入ってんだよねぇ」
 「無意識に入れてんのか?」
 「たぶん」
 「なんで?」
 「時任がうまいって言ってたからかなぁ。無意識の内にそれがインプットされちゃってるカンジ」
 「じゃあ、俺がうまいとか欲しいとか言ったら、無意識に買っちまうってこと?」
 「う〜ん、そうかも」
 「…ふーん」

 俺はそんとき、久保ちゃんが冗談で言ってんのかって思ってた。
 だから面白半分でテレビのCM見ながら、そこに出てるモンに向かって、いいなぁ欲しいっ、なんて言っちまったんだよなぁ。
 いくらなんでもこんなモン買わねぇだろうって思うヤツに向かって。


 「く、く、くぼちゃん…」
 「ん〜?」
 「なにそれ?」
 「なにって、時任が欲しいって言ってたヤツでしょ? コレの前に行ったら自然に買いたくなったから間違いないと思うけど?」
 「…返して来い」
 「いらないの?」
 
 「いいから、とっとと返してきやがれっ!!!」 

 うっ、うれしいけどうれしくないっ!!!
 なんか微妙なカンジするっ!!
 こういうのって、やっぱ…。

 「…久保ちゃん」
 「なに?」
 「そんなに俺の欲しいモノ知りてぇなら」
 「知りたいなら?」
 「わかるまで一生鏡でも眺めてろっ!!」

 あっ、ヤベっ、思わずなんかヘンなこと口走っちまったような気が…。

 「それってどういう意味?」
 「し、知るかっ!」
 「教えてほしいなぁ」
 「そばに来んなっ!あっち行けっ!!」

 「時任も鏡眺めて見る?俺の一番欲しいモノがうつってると思うから」

 
 欲しいモノはわりとお金で買えちゃったりするけど。
 一番欲しいモノはやっぱお金じゃ買えない。
 けど、買えないから欲しいっていうんじゃなくて、大切だから欲しいんだって…。
 そんな風に思いたいんだ。

                                             2002.6.26
 「アイスクリーム」


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