目の前にいる恋人に向かって、もしも胸の奥にある気持ちを伝えるなら…、
 好きだとか大好きだとか…、愛してるとか…、そんな言葉になる。
 だが、口にした言葉が同じでも人の想いはそれぞれで…、
 同じ形の想いは、どこにもないんじゃないかと思う事があった。
 そう思ったきっかけは、おそらく中学から一緒の学校に通っている友人の…、急激な変化。中学時代に一緒に執行部をしていた久保田誠人は、初めて会った時から愛想は悪くないが何事にも興味がなく、どこか冷めた印象だった。
 間違っても…、感情にまかせて人を殴ったりするタイプじゃない。
 殴る事はあっても、恐ろしいほど冷静だ。
 見ていると冷たい何かが、背筋を這い上がってくるほどに…。

 『ヒトを殴るのは感情じゃなくて…、拳デショ?』

 いつだったか、あまりに淡々と無表情に人を殴るので、何を思いながら殴ってるのかと聞いた事がある。すると、誠人は俺の質問にそう答えて軽く肩をすくめた。
 人を殴るのは拳…。
 確かにそうかもしれないが、誠人に公務を執行された生徒は精神的に何かダメージでも受けているのか、再犯率が低い代わりに保健室通いをしたり登校拒否になったりする者が多い事を考えると…、その言葉に同意してうなづく事はできなかった。
 誠人も人間である以上、まったく感情を持っていない訳じゃない。
 だが、それを感じる事は…、とても難しかった。

 「一体、何を考えてらっしゃるんですか?」

 生徒会本部で椅子に座りながら、目の前に置かれた書類を片手にぼんやりと考え事をしていると、そんな橘の声と一緒に暖かな湯気が頬をくすぐる。いつも絶妙なタイミングで出される橘のお茶は、香りも良く温度も丁度良かった。
 「いや、別に何も…」
 そう答えて出されたお茶を一口飲むと、橘が感情の読みづらい微笑みを浮かべて俺を見る。しかし、すぐに続けては何も言わずに窓辺に移動すると、椅子に座っている俺に背を向けて外を眺めた。
 「どうやら、いつの間にか下校時間になっていたようですね…。執行部の皆さんも、今からお帰りのようですよ?」
 「もう…、そんな時間か」
 「書類整理に目を通すのは、明日になさったらどうです? 考え事をしながらでは、日が暮れるどころか夜になってしまいますから…」
 「職務怠慢だな」
 今日中に目を通しておくはずだった書類を机に置きながら、俺がため息混じりにそう言うと橘がこちらを振り返る。けれど、窓の外に何かあるのか…、すぐにまた視線を戻して外を眺めた。
 だから、窓の外に何が見えるのか気になって、俺も椅子から立ち上がって窓辺に向かう。すると、橘が俺の方に向かって手を伸ばした。
 「時には考え事をしたり、ぼんやりする時間も必要ですよ…、人には…。そうする事でわかる事もあるでしょうしね」
 「確かにそんな事もあるかもしれないが、それにも限度はあるだろう」
 「限度…、ですか? でも貴方に限っては、それはありませんから…」
 「なぜ、そんな事がわかる?」
 「わかりますよ」
 「俺にはさっぱりわからんが?」
 俺が正直にそう言うと、橘は小さくクスリと笑う。
 そして、伸ばした手を窓辺に立った俺の肩に置いた。
 「そんなに考え込まれなくても答えは簡単です」
 「簡単?」
 「貴方が限度を超えてぼんやりできないのは…、いつも傍に僕がいるからですよ。ぼんやりしすぎたら、今みたいにお茶を入れて止めて差し上げますから、それまで安心してぼんやりなさってください」
 いつも傍に…、微笑みながら橘はそう言ったが…、
 俺は肩に置かれた橘の手の上に、自分の手を重ねたりはしなかった…。
 ここが学校だというのもあるが、いつも俺を気遣ってくれる橘の手は…、時々、なぜかとても重く感じられる。そんな風に思いながら窓の外を見ると、そこに時任の肩を抱くようにして歩いている誠人の姿が見えた。
 「あの二人も、今から帰るようだな」
 「そのようですね…」
 「・・・・・」
 「どうかしましたか? 会長?」
 「あぁ、いや…。別に何という訳じゃないんだが、そういえば誠人と時任は一緒に暮らしていたなと…、そんな事を思い出しただけだ」
 俺はいつも一緒にいる二人を眺めながらそう言ったが、橘は何も言わない。
 何も言わずに、俺と同じように帰っていく誠人と時任の背中をじっと見つめていた。
 二人の背中を見つめながら思い出すのは、三週間前に見た光景。
 その時の誠人の、怒りと殺意に満ちた目。
 床に散った赤い血と…、倒れた時任…。
 時任の脇腹を傷つけたナイフは、生徒ではなく教師の手に握られていた。

 「・・・桂木ちゃん、救急車呼んでくれる?」

 時任の傷口にハンカチを押し当てながら、近くにいた桂木に向かってそう言った。
 いつもよりも低く…、そして静かな声で…。
 一緒に暮らすほど、時任に執着している事を知っていた俺はそれがとても以外だった。この場合、俺の知っている誠人なら、一瞬で蹴るか殴るかして倒しているだろう。
 だが、その時の誠人は…、たた何もせずに傷を負った時任を抱きかかえていた。
 時任を切りつけた犯人は、すでに駆けつけた松原と室田が捕らえ…、
 桂木が救急車を呼ぶために、職員室に走っていく。
 その様子を少し離れた場所から見ていた俺は、一緒にいた橘をその場に残して誠人いる場所へと歩み寄った。
 
 「一体、何があったんだ?」

 俺が見た時、すでに時任は倒れていた。
 だから、誠人に事情を聞こうとそう話しかけたが、誠人からの返事はない。
 誠人は時任を抱きかかえながら、松原達に捕らえられた犯人を見ていた。
 まるで瞬きを忘れたかのように、じっと犯人を見ていた。
 そんな誠人の目を見ていると、背中に冷たい何かが走る。
 けれど…、その冷たさはいつもと少し違っていた。
 ・・・・・・何か様子がおかしい。
 そう思った俺は、おい…と声をかけて誠人に向かって手を伸ばす。
 だが、俺の手は誠人に触れる前に止まった。

 「・・・・・・・くぼちゃん

 聞こえた誠人を呼ぶ、時任の小さな声…。
 てっきり気を失っているとばかり思っていたが、意識があったらしい。
 俺がその声にハッとして視線を誠人から時任に移すと、時任の右手が久保田の制服の袖を…、ぎゅっと強く握りしめているのが見えた…。
 しかし、そうしているのは痛みに耐えるためじゃない。それがわかったのは、誠人の握りしめられた拳が、強く力を込めすぎて白くなっているのに気づいたせいだった。
 誠人は犯人を殴るつもりで、拳を握りしめているのでない。
 犯人を殺すつもりで…、拳を握りしめている…。
 そして、そんな誠人の殺意に気づいて止めたのは時任だった。

 「ごめん…、ね…」

 時任の呼びかけに答えるように、誠人がそう言う。だが、その声が少し震えているのに気づいた俺は、犯人から時任に視線を向けた誠人の顔を見る事ができなくて…、
 ・・・・・・・俯いてぎこちなく視線をそらせた。
 鳴り響く…、救急車のサイレン。
 時任を抱きしめて動かない誠人…。
 泣いているのかいないのか…、見ていないのでわからない。
 だが、今の誠人は俺の知っている誠人ではなかった…。
 二人が病院に向かった後、犯人である教師がナイフを向けた相手は、本当は別れ話を持ち出した恋人である二年の生徒で時任ではなかった事…。そして、それをとっさにかばったせいで時任が犠牲になってしまった事を知ったが…、
 俺は病院に行ったにも関わらず、屋上にいた誠人にそれを伝える事ができなかった。

 ガツ…っ!!!

 感情的に…、激しい感情のままに…、
 コンクリートの壁に叩き付けられた、誠人の拳…。
 屋上のドアを開けた瞬間に見えた、その光景が今も目に焼きついている。時任の命に別状はなかったが、壁に拳を叩き付けた誠人は犯人ではなく自分自身を責めているように見えた。
 時任が切り付けられた時、そばに居なかったのだから仕方が無い。
 何事にも抜け目のない誠人でも、たまにはそういう事はあるだろう。
 だが、誠人は時任を守れなかった自分自身を許せないらしい。次の日に見ると病院の看護婦に治療でもされたのか手に白い包帯が巻かれていたが、なぜかその白さがとても痛々しく俺の目に映った。
 ・・・・・お前のせいじゃない。
 そう言ってやりたかったが、おそらく何を言っても俺の言葉ではダメだろう。
 実際、心配した桂木が何か言ったらしいが、まるで効果がなかったらしかった。
 「アレはダメよ」
 「ダメとは…、何がだ?」
 「身体はココにいても心は空っぽ、もぬけの殻…」
 「つまり心ここにあるず…、か」
 「それでも学校に来てるのは、たぶん時任に怒られでもしたんでしょうね。自分の代わりに学校に行ってノート取って来いとか…、まぁ、そんなトコでしょうけど」
 「・・・・・・命に別状はないはずだがな」

 「それでも久保田君は心配なのよ。あんな事があった後だし、自分がいない間に時任がいなくなる気がして…」

 桂木とそんな話をしたのは、時任が退院する前の放課後の生徒会本部。
 公務の報告を受けたついでだったが、中学時代を知る俺にとって…、桂木の語る誠人は別人としか思えない。いつの間に、こんなに変わってしまったのかと驚くばかりだった。
 
 「そんなに気になりますか? 久保田君の事が…」

 俺が最近起こった出来事を思い出していると、橘が耳元でそう囁く。
 その声はいつもの穏やかさを保っていたが、隣に橘がいるにも関わらず他の男の事を…、誠人の事を考えている俺を静かに怒っていた。
 「貴方はいつも…、まるで僕から逃げる口実を探すように久保田君の名前を口にするんですね。それとも、僕を嫉妬させて怒らせて乱暴されたいんですか?」
 「ち、違う…っ、そんな事はない…、お前の勘違いだ」
 「だったら、僕にキスしてください貴方から…」
 「しかし、ココは学校で…」
 俺がそう言うと橘の顔から、一瞬にして微笑みが消える。
 そして、ぐいっと後ろから髪を引っ張られて…、強引に唇を奪われた。
 「や…っ、やめろ…っっ!」
 「やめて欲しいなら、もっと上手い逃げ口上を考えてください。ココが学校だからなんて…、そんなヘタな言い訳は聞けませんよ…」
 深く口付けられて…、口内に舌を差し入れられて…、
 しかし、それをやめろと叫びながら、嫌だと思わない自分がいる。
 それは俺が橘を好きで恋人だから、悩むまでもなく当然だが…、
 なぜか、逃げる口実を探しているという橘の言葉を俺は否定できなかった。
 「貴方はココに僕の欲望を受け入れて…、鳴いてよがって…。それから、僕に激しく突き上げられながら、欲望を撒き散らしてイくんです…。自分がそういう身体だという事を…、忘れたわけじゃありませんよね?」
 「な、何を…っ、何をするつもりだ…っ」
 「何をなんて野暮な事は聞かないでください。忘れたのなら今ココで…、久保田君の背中を眺めながらイかせてあげますよ。その方が…、興奮してイイでしょう?」
 「・・・うっっ!!ぐっ、あぁ…っっ!!」

 「痛みに歪んだ、その顔…、とても色っぽくて素敵ですよ…。僕は貴方を得るためなら貴方以外のモノなら、なんだって捨てられる…。家も家族も地位も名誉も…、何もかも…」

 そう言いながら顔を歪ませてるのは…、俺じゃなく橘の方だ。
 いつも沈着冷静で穏やかな微笑みを絶やさない…、それが常なのに…、
 これでは、せっかくの綺麗な顔が台無しじゃないか…。
 橘にまるで強姦されるように犯されながら、なぜかそんな事を思う…。
 俺の肩に置かれる手も、こうして橘に抱かれる事も…、
 何もかもが…、重く感じられて…、
 それはもしかしたら、お互いに抱いている想いの差…、想いの重さの違いかもしれないとそう感じた瞬間、まるで何もかも知っているかのように橘が俺の身体を責め立てるように強く激しく突き上げた…。
 








 キンコーン…、カンコーン…。

 昨日の事があるせいか、今日は俺の隣に橘の姿はない。あの後…、俺も橘も何も言わずに身づくろいをし生徒会本部を出て、別々に学校を後にした。
 たまにこんな風に酷く抱かれることはあるが、こんな事は始めてだった。
 もしかしたら、俺があんな事を考えたりしたから…と思いかけたりもしたが、口に出しては何も言っていないのであり得ない。だったら、橘は何が原因で朝から一度も俺の前に姿を現さないのだろう…。
 校内にいるのだから、探し出して直接聞けばいいだけの話だが…、
 なぜか…、どうも気が進まなかった。
 会いたくないわけではないのに、橘を想うと肩が重くなる。
 歪んだ橘の顔が脳裏に浮かぶ…。

 「俺と別れれば…、あんな顔をしないで済むのにな…」

 誰に言うでもなく、そう小さく呟く。
 すると、なぜか泣きたい気分になって、そんな自分に自分で驚いた。
 そんな気分になるのは…、たぶん俺が橘を好きだからだ。
 だが、だったらなぜ橘を重く感じなければならない…。
 これとそれとはまっかく関係がないのに、誠人が拳を壁に打ち付けている姿を見た日から、俺の中で何かがおかしくなってしまったような気がしてならなかった。
 
 「・・・・・・・・はぁ」

 まるで迷路に迷い込んでしまったかのように、今日の朝から同じ事ばかりを考えている。そうしている内に無意識にため息が出で、俺はなんとなく自分の教室に向かう廊下の途中で立ち止まった。
 ・・・・・・今日は本部に行きたくないな。
 生徒会長にあるまじき発言だが、そう思わずにはいられない。
 今、橘と会っても…、どんな顔をすればいいのかわからなかった。
 何事もなかったかのように接するのか、それとも昨日の事を責めて怒鳴るのか…、
 考えていると自分の眉間に皺が寄るのがわかる。すると、そんな俺に向かって…、廊下の反対側から歩いてきた時任が不審そうな顔をしながら声をかけてきた。
 「さっきから、なに難しいカオして廊下見つめてんだよ、しかも廊下のど真ん中で…っ。考えごとなら、せめて廊下の端に寄ってからしろ、通行の邪魔だろっ」
 「あ…、あぁ、すまん」
 時任に注意されるまで気づかなかったが、どうやら廊下の真ん中で考え事をしていたらしい…。た、確かに考えるまでもなく迷惑だな…。
 そう思った俺は、素直に時任の言葉に従って廊下の端に避けた。
 だが、通行の邪魔にならない場所に移動したら、なぜか酷く疲れた気がして考える気力も失せる。そのせいか、口からまたため息が出てしまって…、俺は右手で軽く額を押さえながら窓辺に立った。
 すると、時任がそんな俺の横顔をじっと見る。そして、何を思ったのか俺と同じように廊下に端に移動し、壁を背にして寄りかかった。
 「なに、ユウウツな顔でため息なんかついてんだよ? 何か困ったコトでもあったのか?」
 「・・・・・・」
 「松本?」
 「・・・・ため息はさっきと違って、別に迷惑ではないだろう。だから、ため息をつこうつくまいが私の勝手だ…、君には関係ない。わかったら、私に構わずさっさと行け…っ」
 俺がそう言うと、時任の顔が少しムッとした表情になる。
 そして、時任をムッとさせた俺の方は、自分の口から出たイラついた声と心配して話しかけてくれた時任に対する心無い自分の返事に驚いていた。
 こんな事を言うつもりはなかったのだが、自分で思うよりもずっと…、この重苦しい気分は重症らしい。俺は額に当てた手で軽く顔を撫でると、その手を下に降ろして細く長くため息をついた。
 「・・・・・すまん、これは八つ当たりだ」
 「らしくねぇぜ、そーいうの」
 「あぁ、そうだな」
 そんな会話を時任と交わしながら、俺はこうして時任と二人で話をするのは初めてかもしれない事に、ふと気づく。そういえば、今まで誠人と一緒に居る時に会った事はあるが、一人きりでいる時に会った事が…、正確には時任が一人で居る所を見た事があるかどうかすら怪しかった。
 「そうか…、誠人がいないせいか…」
 思わず俺がそう呟くと、時任が誠人の名前に反応して警戒するように、わずかに眉間に皺を寄せる。そんな時任の表情を見ていると、なぜかいつもよりも大人びて見えた。
 年齢よりも老けて見える誠人の傍にいるせいか、今まで俺の目に時任はかなり子供っぽく映っていたが…、こうして改めて見るとそうでもない。しかし、昨日、誠人の手が乗っていた肩はやはり細く頼りなく見えた…。
 震えた声、時任を抱きしめる腕…、そして壁に叩き付けられた拳…。
 今までどこに隠していたのか、不思議になるほどの誠人の激情を…、
 この細い肩は支え切れるのだろうか…、
 重くはないのだろうか…、
 そう思った俺は無意識に手を伸ばして、時任の細い肩に触れていた。
 「・・・・・重くはないのか?」
 「重い? 重いって何が?」
 「肩に乗せられた誠人の手を…、重く感じる事はないのか?」
 「久保ちゃんの…、手?」
 「別に、単純に重さの事を言っている訳じゃない…。言葉にするのは難しいが、自分に向けられている想いの重さ…のようなものを、この肩に重く感じる事はないのかと聞いているんだ…」
 俺がそう言うと、時任は肩に置かれた俺の手をじっと見る。
 何かを想うように…、考えるように…。
 時任が入院していた間、誠人はまるで抜け殻のようで…、
 そして退院してからは、いつも以上に時任の傍に張り付いていて離れなかった。
 たぶん…、時任をケガを負った時の後遺症だろう…。
 壁に叩きつけた拳の傷は癒えても、心の傷は癒えてはいない。
 だが、時任は肩に置いた俺の手を振り払うと、いつもの調子で…、
 いつもの時任らしい笑顔で、明るく元気に笑った。
 「なぁに言ってんだよっ。べっつに肩に乗せられたくらいで、久保ちゃんの手が重いワケねぇだろっ」
 「だから、私は別に重さの事を言っているワケでは…」
 「それはさっき聞いたっ!」
 「・・・・・・なら、つまり、そういう意味で重くないと言っているのか? あの誠人の拳の傷を、そんな風に思っているのか…、時任…」
 笑顔で誠人の手を重くないと言い切る時任を前に、俺の声が自然に低くなる。
 あの日の誠人を思い出すと、時任の明るい笑顔が憎らしかった。中学の頃の誠人を知っているからこそ、時任と出会ってからの誠人の変化を壁に叩きつけた誠人の想いを時任には知っていて欲しかった…。
 誠人をこんな風にしたのはお前だと…、時任に言ってやりたかった。
 中学時代からの友人として…、友として…、
 だが、時任の笑顔があまりにも明るくて眩しくて…、俺は憎らしいと思っているはずなのに何も言えなかった。
 「なぁ、松本…」
 「なんだ?」
 「さっきから重い重いつってるけど、重いのは俺の肩じゃなくてアンタの肩の方じゃねぇの? さっきから、ずっと肩が下がりっぱなしだぜ?」
 「・・・・・・・・っ」
 時任にそう指摘され、俺は驚いて動揺して肩を揺らす。
 すると、時任は小さく息を吐いて、自分の左肩に自分の右手を置いた。
 「あのさ…、何がそんなに重いのかしんねぇけど…。マジで俺は久保ちゃんの手を重いって思ったコトは一度もねぇよ」
 「・・・・なぜだ」
 「なぜって…。だったら、なんでアンタは自分の肩に乗せられた手を重いなんて思ってんだ? それに重いなら、そんな情けねぇツラしてねぇでちゃんと言えばいいだろ?」
 「そんな簡単な…、単純な問題じゃない」
 「だったら、なおさら言わなきゃダメなんじゃねぇのか?」
 「・・・・・・・・・」
 「アンタの肩に手を乗せてるヤツは、アンタにそんなカオさせたくて乗せてるワケじゃねぇよ…、きっと…」
 「だが、そうだとしても…、俺には重すぎる。そう感じるのは、俺の想いはあれほどに重く深く…、ないせいだ。俺はアイツのために、何もかも捨てられる自信はない…」
 重くのしかかる…、想い…。
 それを失いたくないと思いながらも、その重さに心が軋む。 
 歪んだ橘の顔が脳裏に浮かんで…、俺は拳を強く握りしめた。
 橘がそうだったように、俺も橘にあんな顔をさせたかった訳じゃない…。
 あんな苦しそうな顔を…、絶対にさせたくない…。
 でも、どうすればいいのかわからなかった。

 橘…、俺とお前はやはり一緒にはいられないのか…。

 そう心の中で呟くと、胸がとても痛くて苦しい。
 けれど、もっと痛く苦しくなる前に、そうした方がいいのかもしれない。
 だが、そう思いかけた瞬間に、時任が自分の歩いてきた方向を見ながら、俺の肩を軽くポンッと叩いた。
 「捨てられねぇから、同じじゃねぇからって…、想ってる気持ちが浅いとか重くねぇとかそんなコトにはならねぇよ…。たとえ、久保ちゃんみたいに拳を握りしめられなくても…、俺はそんな風には思わねぇ…」
 「しかし…、俺は…っ」
 「だってさ、俺にとって久保ちゃんは一番だし特別だし…、それ以上なんてどこにもねぇだろ? だから、それでいんだよっ、それにお互いに一番なら他に何があるってんだ?」
 「・・・・・・・」
 「重い重いって言ってるヒマあったら、アンタの肩に手を置いてるヤツに同じ数だけ好きだって言ってやれよっ。そういう気持ちは何を捨てられるかとかじゃなくて…、好きだって言って好きだって言われて…。それから抱きしめたり抱きしめられたり…、一緒に泣いたり笑ったりして…、通じ合って繋がってくもんだろ?」
 時任はそう言うと少し照れたように顔を赤くして、歩いてきた方向に向かって走り出す。すると、その方向にはこちらに向って歩いてくる誠人の姿があった。
 誠人は時任が自分の方に向かって走ってくるのを見ると、柔らかく優しく微笑む。
 俺の方からは時任の背中しか見えないが…、誠人が微笑んでいるという事は…、
 きっと…、時任も同じように微笑んでいるのかもしれなかった。
 やがて、仲良く肩を並べて歩き始めた二人の姿は俺の目に眩しく映って…、
 誠人ではなく時任の伸ばした手が誠人の肩に置かれるのを見た俺は、口元に笑みを浮かべながら…、とても穏やかな気持ちで生徒会室に向かう二人の後姿を見送った。

 「良かったな…、誠人…」

 二人は心から…、繋がっている。
 だからもう…、誠人が感情の無い拳で人を殴ることはないだろう。
 そう感じた俺は、二人の強い絆を羨ましく思った。
 俺と橘にはない強さが…、時任と誠人にはある…。
 握りしめていた拳を開いて、顔の右半分を覆うように押し当てると肩の重さや息苦しさがぶり返してくる。だが、覆われていない左半分にある目が…、信じられない光景を視界に捕らえた瞬間…、俺は肩の重さや息苦しさを忘れた。
 俺がふと視線を向けた窓の外、そこにある中庭…。
 その場所で二人の男が抱き合って、顔を寄せていた。
 一人は確か同じ三年の男子生徒で…、もう一人は顔が見えない…。
 けれど、俺はもう一人の顔を確認もせずに中庭に向かって走り出していた。
 こんな…、こんな事があっていいのか…っっ!!
 こんな事が許せるのか…っっ!!!!
 許せない…っ、許せるはずがない…っっ!!!!
 たとえ、何もかも捨てられなくても…っ、俺の一番はお前で…っ、
 お前も俺が一番だと言った…っ!!

 だから…っ、だから絶対に許してなどやるものかっっ!!!!!

 走り抜けた廊下の先、中庭に続く灰色のコンクリート。
 その上を靴音を立てて走ると、音に気づいた橘がこちらを向く。俺はそんな橘の頬を勢い良く平手で引っ叩くと胸倉をぐいっと掴むと息がかかるほど近くに顔を寄せ、呆然としている橘を睨みつけた。
 「どういうつもりだ…っ!!!」
 「・・・え?」
 「俺というモノがありながらっ、お前はなぜ中庭なんかで他の男と抱き合っているんだっっ!!俺を好きだと言ったのは嘘なのかっ!!!!」
 「ちょ、ちょっと…、待っ…」

 「あんなに何度も俺を抱いたクセにっ、俺を犯したクセに…っ!!! お前ナシではいられない身体にしたクセに…っっ!!! 今さら俺を捨てるつもりかっっ!!!」

 中庭に響き渡る俺の声…。
 橘の顔は呆然から唖然とした表情に変わり…、
 橘と抱き合っていた男子生徒が、何か言いたそうに口をパクパクさせる。
 やけに静かになった中庭で、俺は襟を掴んだまま橘を睨み続けていた。
 すると、橘は俺に叩かれて赤くなった頬に手を当て…、少し首をかしげる。
 そして…、やっと今の状況を理解したようにわずかに目を見開いた。
 「今…、なんて…」
 「こんなに近くで言ったのに聞いてなかったのか? だったら、もう一度言ってやるから良く聞けっ!!他の男と浮気なんて、絶対に許さないと言ったんだっっ!!!」
 「・・・・・・僕が他の男と浮気?」
 「今、ココで抱き合ってキスしていただろうっ!!!」
 
 絶対に許してなどやるものかっっ!!!!

 俺は橘にそう目で言葉で叫ぶ。
 すると、橘は何かとても楽しい事があったように、いきなり声を立てて笑い出した。
 しかもっ、肩まで声まで震わせて…っっ。
 橘に笑われた俺は、もう一度、引っ叩くためにもう一度手を振り上げる。
 だが、その手は橘の言った一言で振り下ろしたくても振り下ろせなくなった…。
 「こんな風に感情的になって平手で頬を引っ叩くなんて、叫ぶなんて貴方らしくありませんね…。でも僕は大好きですよ…、そんな貴方も…」
 「他の男と抱き合ってキスしておきながら…、な、何を今さら…っ!!」
 「僕は貴方以外の男とキスなんてしてませんよ」
 「嘘をつくなっ! 俺はあそこの窓から見ていたんだぞっ!」
 「あぁ、あの窓からですか…。あの位置からだと僕の背中しか見えませんから、見ようによってはキスしてるように見えるかもしれませんね」
 「・・・・??」
 「あそこでオロオロしている彼は、気分が悪くて倒れかけた俺を支えてくれただけです」
 「気分が悪くて…、倒れた?」
 「ですが、心配はいりません。昨日、ちょっと眠れなくて少し寝不足なだけですから…」
 そう言って微笑んだ橘の目の下には、クマができている。
 顔色もあまり良くない…。
 そのせいか、俺の叩いた頬の赤さが鮮やかで…、
 橘の優しい微笑みが、とても切なくて…、
 俺は襟を掴んだ手の力を緩めると、額を橘の胸に押し付けた。
 「・・・・・すまん、俺が悪かった。気が済むまで、殴っていいから許してくれ」
 「何をおっしゃるんですか…。謝らなくてはならないのは、貴方ではなく僕の方です。昨日はつまらない嫉妬のために、僕は貴方に酷い事を…」
 「いや、酷い事をしたのはお前ではなく俺だ。お前はいつも俺の事を大切に想ってくれているのに…、俺はそんなお前の想いを重いと感じて逃げていた…」
 「・・・・・・・・」
 「だが、ようやくわかったよ…。俺は与えられるばかりで与えようとしなかったから重かったんだ…、一番大切な事を忘れていたんだ…」
 「会長…」
 橘にもらった切ないくらい暖かで大切な想い…。
 けれど、俺は同じ気持ちを抱きながらも、もらった想いの大きさに怯え…、無意識の内に自分の想いを胸の中に封じ込めていた。そのせいで想いを告げる回数は減り、抱きしめられても抱き返す腕を伸ばす事に迷い…、キスを拒み橘を傷つけ…、
 しかし、今はもう迷う必要も逃げる必要もない。
 橘の想いの重さに肩を落としたりもしない…。
 俺は勘違いをして頬をひっぱたくほど…、橘が好きだから…、
 今さらのようにそんな事に気づいたから、俺は迷うよりも逃げるよりも…、橘をぎゅっと強く抱きしめたくてたまらなかった…。

 「好きだ…、橘…。世界で一番…、お前が好きだ…」

 少しだけ顔を上に上げて橘と見つめ合いながら、そう告げて自分から橘の唇に自分の唇を寄せる。すると、橘の両腕が俺を引き寄せ背中を強く抱きしめ…、まるでお互いの想いを伝え合うようにキスが深くなった…。
 学校の中庭でした橘のキスは、今までのキスの中で一番気持ち良くて…、
 泣きたくなるほど優しいキスだった…。

 「僕も世界で一番…、貴方が好きですよ…」

 耳元でそう囁かれて、顔が身体が熱くなる。だが……っ、そのわずか数秒後、俺は別なイミで火を吹きそうなほど顔が赤く熱くなるのを感じたっ。
 「・・・・・なぁ、橘」
 「なんです?」
 「さっきの勘違いで気が動転して、すっかり失念していたんだが…。ココは学校の中庭だったな…、確か…」
 「はい」
 「…っという事は確認するまでもなく、さっきのは騒ぎはすべて誰かに見られていたという事になるな?」
 「ええ、そうなりますね…。それに、貴方は気づいてらっしゃらないようでしたが、さっきから中庭に面する窓には騒ぎを聞きつけた生徒達が集まってきて鈴なりですし…」

 「なっ、なにぃぃっっ!!!??」

 橘にそう言われて振り返ると、いっせいに窓から覗いていた顔が室内引っ込む。だが、窓から人影が消えても俺の恥ずかしい告白も橘とのキスも、何もかも大勢の生徒達に見られ聞かれていたのは間違いない…。
 うう…っ、何ていう事だ…っっ。
 衆人環視で恥ずかしい事を叫んだ上にっ、キスまで…っ!!!
 穴があったら入りたいとはっ、まさにこのことだっっ!!
 「知っていたならっ、な、なぜ早く言わなかったんだ、橘っ!!!」
 「めったに聞けない貴方の本音が聞けるチャンスを、くだらない理由で潰したくなかったんですよ。それに、これだけ堂々と付き合っていると公言しておけば、さすがに悪い虫もなかなか寄り付けないでしょうしね」
 「そのかわり、不純同性交遊で退学になったらどうするんだっっ!」
 「なりませんよ。ウチのホモカップル人口、生徒教師を問わず半端じゃありませんからね。すねに傷を持つ身で、自らを陥れるような真似は普通しないでしょう? それに万が一、何者かが密告したとしても、中庭でキスしてたくらいでは誰も相手にしませんよ」
 「・・・・・・・・そうか」
 「良かったですね、退学にならなくて」
 橘はそう言うと、うれしそうに楽しそうにニコニコと笑う。いつも微笑んでいる事はあっても、こんな風に年相応に感情を表に出して笑うことはめったになかった。
 ・・・・・・・・こんな風に笑うと綺麗なだけではなく、とても可愛い。
 思わず橘の顔をぼーーっと眺めてしまったが、笑顔でさっきの件を誤魔化されてしまった事にハッと気づいて、穴に隠れる代わりに頭を抱えて俺は叫んだ。
 「全然良くないっ、良くないぞっ!!!退学にならなくてもっ恥ずかしい発言を聞かれっ、恥ずかしい所を見られたのは変わりないっっ!!」
 「そういえば、貴方をエッチな身体にしたのは僕だって言ってましたよね?」
 「うっ、あ…っ、お、俺はそんな事まで言っていたか?」
 「えぇ、思い切り叫んでましたよ」
 「・・・・・・・・はっ、恥ずかしくて死にそうだっっ」
 「ふふふ…、貴方をエッチな身体にしてしまった責任は一生かけて果たしますから、どうか安心して僕に身も心も任せてくださいね」
 「そ、そんな責任は果たさなくていいっっ!」
 「愛してますよ…、隆久」
 「・・・・っっ」
 橘に役職名でも苗字でもなく、名前を呼ばれると…、
 別に初めて呼ばれた訳でもないのに、いつもどうもくすぐったくてダメだ。
 それを知っていてわざと名前で呼んだ橘は、してやったりとばかりににっこりと微笑む。その微笑みに少々ムッとしたが、今回の件、恥も外聞も捨てれば悪い虫が減るという点では橘に同意だった。
 俺はそうでもないが、橘の下駄箱に手紙を入れたり告白したり、人気のない場所に呼び出して襲おうと目論む輩は校内に少なくない。だから、これで少しでもそれが減ってくれるなら、恥ずかしい思いをしただけの価値はあるに違いなかった。
 まったくっ、確かに橘は綺麗で美人だが俺よりも背は高いし、身体は制服を着ると着やせして見えるが、実は鍛えているせいで筋肉質でガッチリしているし…!
 どうしてコイツが抱きたい男ナンバーワンなのか、まったくもって非常に理解に苦しむっ!一見、優しそうに見える瞳も、眼鏡を外せば眼光も鋭く攻め攻めしいというのにっっ!
 しかもっ、その上、顔に似合わず絶倫で昨日の生徒会本部に限らず、隙あらばセクハラされ押し倒されっ、何度、泣かされたことか…っっ!!!!!
 「・・・・・・会長」
 「な、なんだ!?」
 「今、会長が何を考えてらっしゃるのか、僕にはわかりますよ…、ふふふ…」
 「お前は超能力者か…っっ」
 「いいえ、違いますよ。僕は超能力者ではなく、貴方への愛と欲望に溺れる平凡なただの男です」
 「・・・・・・橘」
 「はい?」
 「そ、そういうセリフは、誰もいない場所で言ってくれ」
 「無理ですよ。言ったでしょう? 僕は貴方が思っている以上に平凡な男なんです。好きな人が目の前で可愛い事を言ってくれたのに、平然としてはいられませんよ」
 「ちょっと待てっ、俺の腕など引っ張ってどこに連れて行くつもりだっ!!」
 「会長は僕の部屋とホテルと、どっちがいいですか?」
 「たーちーばーなっっ」
 微笑みながら問題発言を連発する橘に、頭痛を感じた俺が怒鳴る。
 だが、熱くなっている身体と違って頭の方は冷静らしい。
 橘は顔から少し微笑みを消すと、眼鏡を外して俺の瞳を見つめた。
 「さっきの件で、この後、校内は騒ぎになります」
 「・・・・・・・・・」
 「それで、この機会に二人で愛の逃避行…というのをしてみたいんですが…、僕と一緒ではお嫌ですか?」
 「・・・・・お前にそう言われて、俺が嫌というはずはないだろう。愛の逃避行と言うのは、愛している相手とするものだからな」
 俺がそう答えると橘がいつもとは違う…、男っぽい声で瞳で笑う。そうして俺は、そんな橘の声に瞳に誘われるように、高校に入って初めて病気以外の理由で学校を早退をした。
 後日、本部に来た誠人と時任に聞いた話だと…、どうやら俺の恥ずかしい叫び声はかなり広い範囲まで届いていたらしい。橘と俺がそういう関係だという事を気づいていた、もしくはそうではないかと疑っていた人間は実は結構いたらしく…、騒ぎは思ったよりも早く治まったが、その影響か今年の抱きたい男ランキングに俺の名前が10位内にランクインした。
 それを見た橘は浮かべた微笑みの裏側でかなり不機嫌になっていたが、俺はこの結果に満足している。1年の時から常に1位を記録していた橘の順位は、執行部の松原にその席を譲って2位に転落していた。
 「この際ですから…、眼鏡をやめてコンタクトにするのもいいかもしれませんね」
 「だが、コンタクトが苦手で眼鏡にしていたんじゃなかったのか?」
 「いいえ、本心を誰にも悟られないように隠すためですよ」
 「・・・・・・」
 「ですが、本心を隠していたために、貴方を他の誰かに浚われる事だけは避けたいですから…。そろそろ…、本気を出します」
 「それは…、怖いな」
 「そうですか?」
 「あぁ、お前は怖い…。いつも俺の心を掻き乱して、お前の何もかもを独占したいと願う醜い俺の欲望を引きずり出す」
 生徒会本部で、いつものように橘が入れてくれたお茶を飲みながら俺がそう言う。すると、橘は持っていた抱きたい男のランキング表をビリビリと四つに破ってゴミ箱に放り込んで身を屈めると…、俺にキスをした。

 「僕も貴方が怖いですよ…、貴方を愛してる分だけ…」

 俺の想いと橘の想いは…、似ているようでどこか違っている。そんな部分は好きだと愛していると同じ言葉を口にしていても、やはりあるのだろう…。
 俺達がどう頑張っても、違う二人の人間でしかないように…。
 けれど、だからこそ形の違う俺達の想いは、まるでパズルのピースをはめるようにピッタリと噛み合う事もあるのかもしれない。そうして出来た形はやはり形が違うせいで、すごく歪で不恰好に違いないという気がしたが…、
 俺は橘に抱きしめられながら、橘を抱きしめた。
 繋がり合った想いの形がどんなに歪でも、その相手が橘ならいい…。
 どんなに醜くても、どんなに不恰好でも…、


 それが…、愛のカタチなら…。


                                             2007.1.14
 「おもい…」


                     *荒磯部屋へ*