先に久保誕「甘くて甘いモノ」を読んでからお読みくださいデスv
久保ちゃんの誕生日は、8月24日。 いつだったか忘れたけど、テレビで星座占いとかやってた時に、なんとなく聞いてから覚えてる。だってさっ、8月24日つったら、おとめ座だぜ?! おとめ座っ!! 久保ちゃんが乙女・・・、ぶくくくく…っっ。 ただの占いっしょとか言ってたけど、俺がバンバン机叩きながら大笑いしてたら、怒ったのか怒ってねぇのか、いまいちわかんねぇけど。 その日は、それからずーーーっと乙女?になりきりやがったっっ。 喋り方とか歩き方とかっっ、ぜんっっぷオンナっぽいカンジ…つかオカマ? 最初は腹筋壊れる勢いで笑ってたけど、な、なんかマジ顔で一日中やられると怖くなってきて! いつもヒマつぶしってカンジで流し見てた恋愛系なドラマを見ながら、乙女な久保ちゃんの頬を涙が流れ落ちるのを見た瞬間っっ、俺は腕にさぶいぼ状態で土下座した。 全世界の乙女座男子のヒトっっ、マジスイマセンデシターーっっ!!! いや、まぁ、実はアレは涙じゃなくて目薬だったワケだけどっ。 ううううう、今、思い出しただけでもオソロシイっっ! 誕生日に久保ちゃんが言ってたヤツよか、よっぽどホラーだったよな。こっち向かってニコ…とか笑顔向けられた時には、ぎゃーーって叫びたくなったし! なんつーか、久保ちゃんにはヤらしいっていうか、無駄にエロいっていうか、そういう笑顔が似合うよな、うんうん…。 けど、そういや…、こないだの誕生日の時は違ったよな…、 今、思い出しても無駄にエロくもヤらしくもなかったし、乙女でもなかった。 「・・・・・なんか、ちょっち心臓に悪かったかも」 俺がおめでとうって言ったら、久保ちゃんが笑顔になって…。 その笑顔を見たら、ちょっち心臓の鼓動が早くなった。 ・・・な、なんでかはわかんねぇけどさ。 そんでもって、ドキドキして心臓には悪かったけど、ああいうのは悪くねぇなって。来年も…、来年の8月24日もケーキ買ってきて、今度はもう少しロウソク減らしてコーティングされないようにして久保ちゃんを待とうって…、待てたらって思った。 だけど…、と見つめた先には右手があって、俺は無意識に息を吐いた自分に気づいてハッとする。でも、コレはため息なんかじゃない、そうじゃないって軽く首を横に振った。 「待てたらじゃなくて、待つんだろ」 そんな呟きと一緒にぐっと握りしめた拳に込めたモノは…、願いなんかじゃない…。 そうして、何となくリビングにあるカレンダーを睨むと、今日は9月8日。もうあれから二週間かぁ…って思いながら、床に置いてたポテチを数枚掴んで口の中に放り込んだ。 実はさっきまでゲームしてたんだけど、今は飽きて手持ちぶさたってヤツ。 面白そうな番組もしてなかったし、久保ちゃんもバイトに行ったまま、どーせ真夜中か明け方にしか帰って来ねぇし。あー、ヒマヒマっ、ヒマだーっ、ヒマすぎっっ! 今から行くつってもコンビニくらいで、どうすっかなとか床に寝転がりつつ思ってっと…、 俺の予想に反して玄関の方から音がして、それから廊下から良く知ってる足音がして、帰って来ないと思ってたヤツがリビングに入ってきた。 「あれ、バイトは?」 「思ったより、早く終わったから」 「ふーん…」 そんな会話しながら寝転がったまま、久保ちゃんを見る。そしたら、手に持ってたモノを、いつもメシ食ってるテーブルに置くのが見えた。 白くて四角くて、つい最近見たような大きさの箱を…。 だから、思わずガバッて起き上がると、久保ちゃんがゆっくりと箱を開ける。 箱の中身が何なのか見たくて知りたくて俺がテーブルに近づくと、久保ちゃんがクスリと笑うのが聞こえてムッして軽く睨んだ…けど、好奇心に負けてすぐに視線を箱に戻した。 すると、自分の目が驚きで見開かれていくのをカンジた。 「まさかとは思ったけど、やっぱコレって」 四角い箱の中身が、ケーキかもとは思ってた。 だから、俺が驚いたのはソコじゃなくて、もっとベツの…、 ケーキの上に乗ったチョコ板の文字。 ときとう君、おたんじょうびおめでとう…って、書いてあるんだけど…、 俺の思い出せる記憶の中に、自分の誕生日なんてない。 だから、ジョウダンか何かと思ったんだけど、久保ちゃんはケーキにロウソクを立てた。 「バイト帰りに新しいケーキ屋さん見つけたんだけど、ね。ウィンドウに貼られてたバースディ用のケーキがおいしそうだったから」 「…って、ソレで板チョコな上に、ロウソクまで立てんのかよ」 「いいんじゃない、ベツに」 「いいって何が?」 「お前の誕生日が、今日でも…」 新しいケーキ屋さん発見で、ケーキがウマそうだったから、今日が俺の誕生日。 …ってっ、なんっだソレっ!とか思ったけど、久保ちゃんロウソクに火ぃつけてるし、どうにもこうにもマジらしいっ。ユラユラ揺れるロウソクの炎を眺めつつ、俺はソレを吹き消すべきかどうかを迷った。 も、もしかして、コレ吹き消すとマジで今日が誕生日になっちまうのかっ?! ソレで困るとかそういうのは無いような…、あるような…、 だぁあぁぁっっっ、いきなりワケわかんねぇっ!! なんて、今日は俺の誕生日デシタっっ的ないきなり展開に叫びたい気分になってる俺を知ってか知らずか、久保ちゃんはいつもの調子でのほほんと…、だってと言った。 「・・・だって、祝われるだけで、祝えないなんて不公平デショ」 「ふこうへい?」 「お前も俺も産まれたから、ココにいる。だから、産まれてるなら誕生日は365日の中のどれかってコトは確かだし、なら今日でも良いかなって…、ね」 「そういうリクツなら、明日でも明後日でも良いってコトじゃんっ」 「じゃ、明日も買ってこよっか? なんなら、毎日お祝いしたって良いけど?」 「ドコに365日、誕生日祝うヤツがいんだよっ!!」 思わずそう叫んだ俺に、ほら、ココにとか自分指差した久保ちゃんは、たぶん絶対にマジで買ってくるに決まってるっ。そんでもって、毎日ロウソク立てて火ぃつけたりすんだっっ。 そんな気がするっっ、この予感はマジで外れる気がしねぇっっ! なんて、頭抱えたくなった俺の頭を、久保ちゃんはヨシヨシってなカンジに撫でた。 「ま、そんなカオしなくても、ホントに毎日ケーキ買ってきたりはしないけどね。そんなケーキ食ってたら、二人して糖尿病まっしぐらだし?」 「イヤだっっ、そんなのにまっしぐらな誕生日はイヤだあぁぁ!」 「うん、俺もソレはイヤだけど、365日くらいな気分なのはホント。きっかけはケーキだけど、そういう日を俺にもくれない? お前がおめでとうって言ってくれるなら…、いや、言ってくれなくても俺は言いたいから…」 「・・・っ、バカっ、何言ってんだよ。来年だって、再来年だって言うに決まってんだろっ」 「・・・・・うん」 勢いで来年も再来年もって言っちまって…、でも…、それを訂正をしないで口を閉じる。 来年も再来年もその先だって祝うんだっ、祝うに決まってるだろ!そんでもって、久保ちゃんが今日が俺の誕生日だっていうなら、来年も再来年もその先も祝われてやる! おめでとうって言って、おめでとうって言ってもらうんだ。 こないだの誕生日の時みたいに笑う久保ちゃんと、ケーキ挟んで笑い合って…。 そして、ソレは願いとか夢とかじゃなくて…、現実なんだ。 俺が産まれてココにいて、久保ちゃんが産まれてココにいるみたいに…。 「おめでとう…、時任」 ロウソクの火を吹き消して、さんきゅーって言って…、 チョコ板に書かれた文字を改めて眺める。 今日は俺の誕生日…、9月8日…。 誕生日なんて知らなくても生きてるし、年も取ってくけど…、 久保ちゃんと一緒にってカンジがして、なぜかすごくホッとして…、 けど、そんな俺の気分をブチ壊すように、久保ちゃんが知りたくなかったコトをそっと楽しそうに俺の耳に囁いた。 「9月8日ってコトは、コレでお前も乙女座だぁね」 「へっ?」 「乙女座は8月23日から9月23日…ってコトで良かったね、おそろいで」 「おそろいって、ま、マジでっっ」 「うん、だから今日は二人で恋愛ドラマでも見よっか?」 「い、今からロウソクの火を点けたらっっ!」 「一回消したら、もうダメ。無効だから」 「のぉおぉぉぉっっっ!!!」 今日が誕生日って何の罠だっっとか思いつつも、ま、いっか…とも実は思ってたりする。乙女座なのはアレだけど、久保ちゃんがケーキ買ってきてくれたのは今日だし、なら他の日なんか考えらんねぇし…、さ。 そんでもって、二人して乙女座で、恋愛ドラマで涙したりすんのかなって…、 恋に涙して泣いちゃったりすんのかなって思うと、腹筋壊れそうなほど笑いたくなって…、 久保ちゃんの頬に流れた目薬分くらい…、ちょっぴり胸が苦しくなった…。 ぶくくく…っ、それこそ乙女ちっくじゃんっっ。 なーんて笑いながらも、俺はその日に食べたケーキの甘さとちょっぴりの胸の苦しさを忘れるコトはなかった。 その日の久保ちゃんの笑顔と一緒に・・・・、 ずっと、ずーっと・・・・・。 |
『甘くて甘酸っぱいモノ』 2012.9.9 時任っっ!!!!!!おたんじょうびおめでとうなのですっっvvv (*>▽<ノノ゛☆パチパチvvvv ***ヾ(≧∇≦)ノ"***きゃあぁあっ♪vv ま、またしても間に合わなかったのですが(涙) ラブとおめでとうをモリモリ込めましたっっvvvv(≧∇≦) 時任サマっ、万歳なのですっ!!!!!!vvvv 季節小説TOP |