2月22日にゃんこの日、お祝い参加vv


荒磯ニャンコ騒動 〜前編〜




 ・・・・・・なにかモゾモゾする。
 
 せっかくいい気持ちでヒトがベッド寝てんのに、さっきから太ももとかわき腹のヘンで動くなにかがあって…、モゾモゾしてて気持ちいい・・・・じゃなくてっ! 
 気持ち悪りぃというか気色悪りぃっていうかっ、マジでイライラしてきたぁぁぁっ!!!
 けど、まだ眠くて目ぇ開けるのがメンドくさいっっっ!!!
 ・・・・・・でも、なんかちょっち目ぇ覚めてきたけどモゾモゾってマジでナニ?
 もしかして、む、虫とかそーいうヤツだったりしたりなんかして…、ソレってヤバくない?
 刺されたりとか毒があったりとかして・・・・、なーんてなー…。

 なんて・・・、ごちゃごゃ考えてるよか早く起きればいいだけじゃんっ!!

 ベッドの中でモゾモゾしてる謎の物体、つーか謎の生物に起こされた俺はそこまで考えてやっとベッドからガバッと起き上がる。すると突然、目の前に巨大生物がぬっと現れたっ!!
 けど、正義の味方な俺様は反射的に巨大生物に向かってパンチを繰り出すっ。
 すると、そのパンチは巨大生物に見事に命中したっ!!!

 「さすが俺様っ!!やっぱ最強っ!!!」

 いつもは寝起きはあんま気分が良くなくてサイアクだけど、今日は朝から見事なパンチが決まったおかげで気分爽快っ。巨大生物に気を取られてモゾモゾのコトを忘れた俺は、すがすがしい気分でせいいっぱい伸びをした。
 この瞬間までは、今日はいい気分でなんかいいコトありそうなカンジ。
 でも、倒したはずの巨大生物が床からムックリと起き上がるのを見た瞬間、伸びをするために伸ばした俺の腕はそこでピタリと止まった。

 「朝から元気だねぇ…、時任…」

 ブラインドが閉まってて部屋が薄暗かったし、いきなりぬっと目の前に出てきたから思わず殴っちまったけど…、巨大生物はどこかの惑星から来たんじゃなくて…、
 元からココに住んでたヤツだった…。
 俺に殴られた頬を抑えながら立ち上がった巨大生物…、久保ちゃんは不気味な微笑みを浮かべながら俺を見る。すると、なぜか部屋の温度が2、3度下がった気がして俺の身体がブルッと震えた。
 久保ちゃんがこーいう笑い方をする時は、かなり怒ってる。
 ぜっってぇっっ、怒ってるっっ!!!
 だから、復讐される前にささっと起き上がろうとしたら、久保ちゃんの腕がバッと伸びてきて俺をベッドに押さえつけた。
 「チコクしそうだから起こしに来たんだけど、殴られたってコトは起きたくないってコトだよねぇ…。なのに、なんで起きようとすんの?」
 「そ、それは起きたくないからとかそんなのじゃなくて…、ただちょっち間違ったっつーか…」
 「間違ったって何と?」
 「きょ、巨大生物とモゾモゾ…」
 「モゾモゾ?」

 「…ってっ! そーいえばモゾモゾを確かめるために起きたんだったっ!!」

 やっと起きたホントのワケを思い出した俺は、久保ちゃんに押さえつけられたままで毛布を床に投げ落として自分の足元を手で探りながら見る。すると…、俺の太ももの辺りに何か黒くて長いモノがあった…。
 しかも太ももに当たるとモゾモゾするけど、触ってみるとフサフサしてる。
 はぁ? なんだよコレっ?! とか思って黒くて長いモノを引っ張ると、なぜかズキンと尻の辺りに痛みが走った。
 「いっ、いってぇぇっ!!!」
 「なにやってんの、お前?」
 「なにやってんのって、そんなの見りゃわかるだろっ!」
 「わかるって何が?」
 「だーかーらっ、さっきからモゾモゾするもんがなんなのか確認してんだっ」
 俺が痛みで涙目になりながらそういうと、久保ちゃんはじーっと俺が握ってる黒いモノを見る。そして、いきなり黒いモノの先っぽを指でくすぐった。
 「・・・・・・モゾモゾってコレ?」
 「ぎゃはははは…っ、くっ、くすぐってぇ…ってっ! なんでモゾモゾをくすぐって俺が笑うんだよっ!!」
 「うーん、それは繋がってるからだと思うけど?」
 「はぁ? 繋がってる?」
 「このフサフサした黒いしっぽとお前が…」
 「しっぽって…、まさかあのネコとかイヌとかについてるしっぽのことか?」
 「そうそう、ソレ」
 「なぁんだっ、そっかぁ…」
 「うん」
 長い黒いモノがしっぽなら尻から伸びてても不思議はないし、引っ張ったら痛いのも当たり前。なんか不気味な虫とかそんなヤツかと思ってたけど、しっぽなら刺されないし毒とかないし、べっつに問題ねぇじゃんっ。
 ・・・・・・・なーんだっ、良かったぁ。

 「…って、いいワケねぇだろっ!! オレっっ!!!」

 ネコとかイヌにしっぽがついてても不思議はねぇけど、俺様はニンゲンだっ!!
 思いっっっきり不自然でいいワケねぇっつーのっ!!
 で、でも…、なんでしっぽなんか生えてきたのかわかんねぇし、どうやったら元に戻るのかもわかんねぇし…、いったいどうすりゃいいんだ…。
 まさか…、ずっとこのままってコトはねぇよな…。
 なんて、そんな風に考えてっと、すっげぇ不安になってくる。
 確かにしっぽがついてるだけで、手とか足とかフツーだし変わりねぇカンジだけど、しっぽがついたままなんてイヤだ。寝てるとさっきみたいにモゾモゾするし…、そーいやっ、制服のズボンとかトランクスとかどうやって履くんだよ…っっ。
 とか、俺様がうなりながら悩んでると久保ちゃんが抱きしめながら慰めるように頭を撫でてきた。
 「べつにしっぽついてても害なさそうだし、きっと治るよ」
 「そ、そっかな?」
 「うん、きっとね」
 「・・・久保ちゃん」
 「なに?」
 「さっきは殴ったりしてゴメンな…」
 「いいよ、べつに気にしてないし」
 「・・・・・・・うん」
 いきなり尻にしっぽが生えちまってどうしようとか思ってたけど、久保ちゃんの声を聞きながら頭を撫でられてるとキモチが落ち着いてくる…。
 俺がこんなになっちまっても久保ちゃんは驚かないし、俺を見捨てたりもしなかった。それがなんかすっげぇうれしくて…、ちょっとなんかくすぐったくて…、
 ずっと久保ちゃんとこうしてたい気分になる。
 でも…、何度も何度も撫でてくる手がなーんかオカシイ・・・。
 なんか・・・、かなりイヤーな予感がする。
 始めは撫でられてんのが気持ち良かったけど、あんまりしつこく撫でてくるとさすがにうっとおしくなってくる。しかも、俺の頭を撫でてる久保ちゃんはなぜかすごく…、今まで見たことがないくらい楽しそうに見えた。
 「なぁ、久保ちゃん」
 「ん?」
 「なんで、さっきからずっと頭撫でてんの?」
 「さぁ、なんでだろうねぇ? たぶん、時任がネコみたいにカワイイからでしょ?」
 「・・・・・・・」

 ・・・・・・・・・ネコみたいに。
 
 そう久保ちゃんが言った瞬間に、俺は縄抜けみたいに久保ちゃんの腕の中から抜け出すと素早くドアを開けてバスルームにダッシュする。そして、洗面台にガツッと両手を置くとついてる鏡の前に立ったっ。
 すると…、頭の久保ちゃんが撫でていた辺り…、
 そこにしっぽと同じ色の耳らしきモノが二つもついていたっっ!!!!

 う、ウソだろ・・・・・・・。

 ココロの中でそう呟きながら、ネコの耳としっぽのついた自分の姿を呆然と見つめる。
 けど、いくら見つめても触っても耳もしっぽもなくならなくて…、
 この日から治るまでの間…、俺はしっぽと耳付きなネコ生活をすることになった。
 「もしも治らなくても、俺がずっと飼ってあげるから・・・」
 「…って、勝手にヒトのコト飼ってんじゃねぇぇっっっ!!!」


 バキィィィィッ!!!


 ついてんのは耳としっぽだけだけど、・・・・・やっぱ前途多難。




 
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