近くの交番にやってきた。
すると、交番になぜか本当に犬のおまわりさんが居て、
そこに迷子の子猫が来ていた。

「あのさ…、俺…、迷子になっちまってるみたいで…」
「親御サンは?」
「・・・・・わかんねぇ」
「名前は?」
「・・・・・・・それもわかんねぇ」
「じゃあ、とりあえず名前はタロウ…」
「…って、何がとりあえずだよっ!!しかもネコにタロウとか、マジあり得ねぇしっ!!」
「ん〜、安直にネコらしく、ミーちゃんとか?」
 「うわ…っ、今、マジでさぶイボ出たっ!!」
「なら、ミノルとか?」
「はぁ? なんでミノル?」
「ん? 今日貼ったポスターの犯人の名前」
「勝手に犯人にすんなよっ!!!!」
「今、拘留部屋空いてるから、良かったら泊まって行きなよ。
今日はもう遅いし、晩メシにカツ丼おごるから、ね?」
「何が…ね?だよっ!!監禁してカツ丼食わせてっ、
迷子で記憶喪失のいたいけな俺様に、一体、何を吐かせる気だぁっ!!」
「うーん、愛の言葉?」
「ワケわかんねぇっ!!」
「まぁ、そんな冗談はさておき」
「…って、冗談なのかよっ!!」
「最初は痛いと思うけど、慣れると大丈夫だから…」
「とかって、な、な、何の話だよっ! 痛いとか慣れるとかって!!」
「うん、だから布団と畳ハナシ」


「・・・・・・・・・・・・・は? 布団と畳?」


「ここの布団固いんだよねぇ、畳みも硬いし。だから、慣れないと痛いんだよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうかした?」
「な、なんでもねぇよっ!!!!!」
「顔が真っ赤だけど?」
「う、うるせぇぇっ!!!」
「じゃあ、とりあえずココではなんだし、布団と畳の硬さでも確かめに行こっか?」
「あぁ…って、え?」
「カツ丼はその後でおごるよ。なんだったら、カレーもつけるし」
「ほ、ホントに硬さを確かめるだけ…、だよな?」
「・・・・・うん」
「って、その微妙な間はなんだっ!!!」
「ほら、行くよ〜」
「とかって、離せぇぇっ!!!!!」
「痛くて起きられなかったら、次の日も泊まっていいから…」


「い、嫌に゛ゃあぁぁぁぁーー…っっ!!!!!!」


・・・・・・・・・何か、とてつもない犯罪の現場を見た気がした。
本当に世の中はおそろしいとしみじみ思った。
道を尋ねようと来たのだが、声をかけようとしたら、
なぜか、中華鍋の音がした気がして、死にたくないのでやめた。
布団と畳が硬くて起きられない哀れな子猫を不憫に思いながら、
自力で帰るべく歩き回ったら、行き先を示した看板を見つけた。


『左へ3秒、真昼の月』        『右へ2秒??????』