潜入!ホーンテッドマンション@レッジョカラブリア

ホーンテッドマンション外観

■レッジョ到達

アズーリ戦を観るためにレッジョカラブリアへ向かう。レッジョカラブリアはイタリアの最南端、長靴半島のつま先にあたる場所で、かの有名なシチリア島の対岸にある街だ。ローマからは列車で7時間。朝6時すぎに発ち13時すぎの到着である。この日の夜は8時すぎに試合観戦という忙しいスケジュールだ。ローマで泊った修道院からの出発(ドミトリーの部屋だったので朝5時半に起きて、真っ暗闇の中で支度をした)とテルミニ駅での食料調達に時間がかかり、危うくESに乗り遅れそうになった。

ESでは隣の席の爺さんと手持ちの会話集を使いながら適当イタリア語でミュニケーション。いたく気に入られてしまったようで、ローマで買ったのだというワインを分けてくれた。かなり美味かった。英語もイタリア語もロクに出来ない私達にスペイン語まで教えてくれた。分かるかっつーの。日本語にも興味深々であったため、「ありがとう」と「美味しい」を教えてあげた。イタリア語では「美味しい」が英語での「good」や「nice」に近い汎用的に使える単語であるため、「美しい景色」も「美味しい景色」になってしまった。まぁ今後日本語を使うこともそうそう無いだろうから、特に訂正しなかった。とにかく陽気な爺さん@70歳であった。お蔭様で特に暇を持て余すことも無く、レッジョに到着した。

この日の至上命題は宿探し。なにしろレッジョ行きを決めたのが日本を発つ3日前の夜であったことから、この土地に関しての情報はほぼ皆無。ホテル情報はおろか、地図すら無いという無用意周到ぶりであった。地図やガイドブックはイタリアのほかの土地の本屋でも買おうと思えば買えたのだが、ケチって買わなかったのだった。(イタリア語の凡例が分からなかったという話もあり。)そこで頼みの綱である駅のインフォメを訪れてみる。・・・昼休みだった。マップすらもらえない。まったくこの国は!と悪態をついてもどうなるわけでも無いので、駅周辺を適当に歩いてみる。しかし、もともと数少ないこの街のホテルはアズーリ戦を控えて当然のごとく満室の嵐であった。

30度近い暑さの中、必死の思いで歩き回って海岸線から1本逸れた道でホテルを見つけた。空室があるかを聞いてみると、受付のお姉さんは私達の顔をしばし見つめ、若干の躊躇いを見せたものの、答えは「・・・Si」。た、助かった〜!砂浜で野宿は辛いからなー、もう探し回るのも嫌だー・・・という思いで一杯の中、部屋を確認せずにココに決めてしまった。

この安堵感が束の間のものであると、この時は露とも知らずに・・・

■本当にあった怖い宿

お姉さんに案内された部屋を見て徐々に笑顔が引き攣っていく私達。
こ、この雰囲気は・・・例えるならばディズニーランドのホーンテッドマンションを更に風化させて湿っぽくした感じ、あるいは「弟切草」の洋館の部屋そのまんま、と言えば、分かる方には分かって頂けるだろうか・・・?

座ったら呪われそうな椅子かび臭さの漂う空気。暗ぁ〜い照明。壁紙のはがれた隙間から崩れかけている壁(叩いたらパラパラと砂が・・・)。座ったら確実に足が折れて崩壊しそうな椅子。壁には曲がった額に収められた少年の絵が飾ってある。普通に怖い。必要以上に大きな鏡もある。余計に怖い。蛇口をひねれば赤い水(錆)だし、数ヶ月は放置されていたっぽいカピカピのタオルが置いてある

・・・ここまで並べてもネタみたいだが全部本当の話。かなりヤヴァい空気が満ち満ちている。「瘴気に満ちた」とはこういう雰囲気の事を言うのだろうか・・・。

しかし、これだけでは終わらない。トドメは部屋の中に存在する”中2階部屋”の存在だった。この部屋はシングル2部屋とその2部屋をつなぐ廊下で構成されているツインルームだ。そしてその廊下からはバスルームと件の中2階へ続く階段があるのである。しかし、部屋の説明の際、この”中2階”についてホテルの人は一切触れずに去った。説明無し。

・・・あ、怪しい。怪しすぎるよ!!!!

そこでその階段を上がってみることにした。そもそも宿泊する部屋の中の一部なのだから、入ってはいけないということは無いだろうし。そう思いながらドアノブを回してみる。カギは開いていた。中に入ると一層カビ臭さが増す。

・・・ぐぁぁああぁっ、見なければ良かった・・・。

そこはまったくの廃墟と化した「元スイートルーム」。
ダブルベットが枠を残して破壊され、床は板が剥き出し。電気配線は引きちぎられ、鏡は叩き割られている。その他、部屋の中の設備だったと思しき物は全てが破壊されていた。そして何よりもぞっとしたのは、クローゼットだったと思われる棚の上に無造作に置かれていた

13」と書かれた部屋のカギ。

・・・うひぃー。もう駄目です。無理です。ごめんなさい。
と、ひたすら何かに謝りながらその部屋を後にした。

な、何なんだココは!!?稲川順二の特番か!?夜中に記念写真なんか撮ったら自分たちのほかに色々と沢山賑やかに写ってくれそう。アンビリーバボーかUSOに投稿したら即採用だな。

謎の中二階が存在するディアナホテル「2号室」 見取り図 

この素晴らしい部屋を一通り見て回ったところで、同行のN氏(怖いモノ全般嫌い)は相当に怯えていた。私の場合はまぁ深夜のホラー映画だろうがバイオハザードだろうが、そういうのは一人でも割と平気な人間ではあるけども、それは「モニターの前の自分は安全」という大前提があるからであって・・・リアルで危ないのは出来れば遠慮願いたい。

こんなところに2泊かぁ・・・と2人揃って頭を抱える。空気が重い。非常に重い。とにかく一旦、辛気臭いこのカルト部屋を出よう、と言う意見で満場一致し、部屋に荷物を置いてロビーへ向かった。

と、ホテルの入り口付近で女性2人の旅行者とすれ違った。すれ違いざまに聞こえてきた言語は日本語だった。日本人だ!と言うことで、思い切り心細くなっていた私達は彼女達とコンタクトを取ることにした。窓から隣の部屋の窓(空いていた)に向かって日本語で呼びかける。今思えば不審この上ない奴らであったが、その時は必死であった。

呼びかけに応じて出てきてくれた彼女達も、同じアズーリの試合の観戦が目的だと言う。「ここ滅茶苦茶ヤバくないですか?」と聞いてみると首をかしげる彼女達。彼女達の部屋に通してもらうと、そこは・・・ごく普通のツインルームだった。一部屋に2つのベッド。バスルームにはバスタブも付いている。照明も可愛く明るく、ちょっと古いがイイ感じのホテル、といった風な部屋であった。オイオイオイ、何で隣の部屋なのにこんなに構造が違うんだよ!!・・・ホテルに辿り着いたとき、受付でお姉さんが躊躇った訳が大変よく判ってしまった。やっぱり私らの部屋が禁断の部屋なんだろうな・・・。お礼を言って彼女達の部屋を出た。「何かあったらこちらに駆け込んでいいですよ」、と言われたのが心強い。

って、何かあったら困るんだけど!!
ちなみに彼女達に私達の部屋を見せたら絶句していた。そりゃそうだ。隣がこんな幽霊部屋って知ってしまっただけでもきっと嫌だったろうなぁ・・・すみません。

明日はあっちに部屋を変えてもらおうか・・・?とN氏と相談しながら、ホテルを出た。駅前のバールで揚げパンとパスタとコーラを昼食に頼む。適当に頼んでみたら量が多すぎてお腹は限界まで一杯になった。パスタの形が大きな貝殻型だったのが印象的だった。試合の時間までは特にすることも無いので、とりあえず一旦あの怪奇部屋に戻ることにした。

ざっと準備を整えて試合開始2時間前到着を目安にホテルを出た。スタジアムまではこのホテルから2、30分歩けば着く距離だ。私がローマで買ったアズーリの純正マフラーを首に巻いて繰り出すと、道行く人のほとんどから視線が集まる。何故日本人がこんな所でイタリア代表の試合を見に行くのか。理解不能なのだろう。そりゃそうだわな。しかし視線は概ね好意的なもので、声をかけてくる人もかなり多かった。道行く車の中からさえもクラクションを鳴らし窓から身を乗り出して手を振ってくれる。わき見運転どころの話ではない。それでも事故らないのはこの街では車の速度が30km程度しか出ていないからか。走っている車の大半が暴走車のミラノとは大違いだ。なお、この街では「日本語」=「ナカムーラ、ナカムーラ」である。俊輔は偉大なり。

スタジオ・オレステ・グラニッロにたどり着くと、駅周辺で2種類のアズーリポスターを無料で配っていた。イタリアにしては太っ腹である。ありがたくもらった。また、ここでイタリア代表のパチユニを購入。飾ってあったネスタユニを指差して「これをくれ」と言ったのにオヤジが在庫から出してきたユニはカンナバーロ。「ノーノー、ネスタのをくれ!」と再度言うとオヤジは「ああ、ネスタはいい男だもんなー、ごめんなー。」と頷きながら飾ってあったネスタユニを売ってくれた。ごめんなさいカンナバーロ。彼が嫌いなわけじゃなく、ネスタのが欲しかっただけなんです本当。ちなみにパチユニが存在する選手は前線の有名選手とネスタ・カンナバーロ、ブッフォンくらいだった。市場の原理は厳しい。

席はメインスタンド1階席中央、すぐ横がVIP席・記者席という、かなりの良席だった。この日のチケットはミラノダービーの際にチケットを頼んだ業者のKさんが個人的に実費のみで取ってくれたものである。いい人だ。

メインスタンドのど真ん中にネスタユニ×2の東洋人ということで、スタジアムでも死ぬほど目立っていた私達。周りを通り過ぎるイタリア人からもナカムーラナカムーラと声がかかる。ネスタユニなんだけどね・・・私らはナカムラさんじゃねーよ、と(日本語で)言いつつ、笑顔で適当に返しておく。ふと通路に目をやると、帽子を目深にかぶったオッサンが私達に手を振っている。あぁまた俊輔好きのオッサンか・・・愛想振りまくのもいいかげん飽きてきたなぁ、などと思いつつ適当に手を振る。と、それを見ていた隣の席のオバちゃんが大興奮。「ちょっと!あれ○○先生じゃないのっ!?」と私達や周りの人にしきりにアピールしはじめた。すると周りもみんな大騒ぎ。でも誰だかサッパリ知らない私達は頭の上にクエスチョンマーク出しっぱなしである。何やら結構な有名人だった模様。そのオッサンはVIP席の方へ去っていったが、俳優さんか何かだったのか?これは最後まで分からなかった。そういえばスタジアムの外ではテレビ中継のリポーターのお兄さんにも手を振られた(普通逆だよ・・・)。あれくらい何者か分かりやすい人だったら良かったんだけど。

>NEXT


戻る