魔王じゃないもんっ!
「第8話 太ってないもんっ!」


−1−

 午後6時半。
 家族全員で座っても余裕のある、大きなダイニングテーブルに並ぶ料理は今日も盛りだくさんだ。

 真央特製サラダ。
 レタスをベースに、水菜、ルッコラ、スライスタマネギ、紫キャベツ、パプリカ、トマトなど、色とりどりの野菜が入っており、見た目も美しく、真ん中にこんもりと盛られた、茹でたカボチャのマヨネーズ和えが、さらにサラダの魅力を引き立てている。
 ドレッシングも真央特製。
 酢と油と塩胡椒、数種のハーブに加え、ベーコンとトウガラシのみじん切りを炒めたものを加えており、その香ばしさとピリっとした刺激が生野菜をもりもり食べさせてくれる。

 メインのおかずはミックスフライ。
 豚フィレ、アジ、イカリング。牛肉のスライスでキンピラゴボウを包んで揚げた変わり種もある。もちろん忘れちゃいけないエビフライも、思わず生唾が出てくるキツネ色に仕上がっている。
 なんとフライにかける二種類のソースもお手製だ。
 一つは中濃ソース。ふんだんに野菜を使った中濃ソースは市販のものとは比べ物にならないコクと香りを備えている。
 もう一つはタルタルソース。
 ゆで卵とタマネギのみじん切りは大きめで、しっかりと存在を主張。細かいみじん切りにされたパセリが香りとわずかな苦味を与え、さらに絞りたてのレモン果汁が全体を引き締める。それらをまとめるマヨネーズは、酢と卵黄とオリーブオイルで作った。このまま食べても美味しいソースだが、魚介類の生臭さを消し去り、うま味を与える見事な一品である。

 さらに、野菜たっぷりポトフが加わる。鶏ガラにホタテの貝柱を隠し味に加えた、うま味たっぷりのスープを吸った野菜の旨さは感動ものだ。

 見た目、栄養バランス、味。
 どれをとっても一級品。

 だがそれだけではない。

 会話と笑顔のあふれる家族の雰囲気が、最高の調味料なのだ。


「ごちそうさまー」

 食事が終わり、満足そうな出門家の面々。美味しい料理と楽しい会話は食欲を増進させ、たくさん並んでいた料理はキレイに平らげられていた。
「ふーお腹いっぱい」
 満足そうにお腹をさする真央。
「影森のシューアイスに新作が出てたから買っておいたんだけど、今日は食べられないかな?」
 そんな様子に翔太が少し残念そうに言った。
 真央は、「今日は流石に食べ過ぎたかも、動くのも苦しい」なんてことを考えていたのだが、シューアイスと聞いて思考が一変する。

 すなわち、甘いものは別腹。

「食べる食べる!」

 影森のシューアイスというのもポイントが高い。
 影森は三反にある「影森ケイキ」のことを指す。この店は、真央が住む地域では有名な洋菓子店だ。個人経営の小さな店だが、その味は素晴らしく、洋菓子通の人が遠路はるばるやってくることもあるらしい。
 味もさることながら、斬新な新メニューが続々追加されるのも人気のひとつだ。

 結局その日の夕食は、新味「アンニンミルク」と「ティラミス」を胃に収め、満腹+αの状態で終了した。


戻る 2へ