聖夜のサンタ

プロローグ

 窓の外から聞こえてくるリズム。 私はそっと目を閉じて、そのリズムを少しでも大きく感じられるように耳を澄ます。

 シャンシャンシャン。

 ベルの音。
 退屈な日々に忘れていた感情。

 ワクワクする気持ち。
 ドキドキする気持ち。

 こんな私の胸だって高鳴らせてくれる。
 きっと窓の外は、イルミネーションに彩られてキレイだろう。

 今年こそは……。

 私は色の無いこの部屋で決意する。
 今年こそは、絶対に。
 そうじゃないと寂しすぎるから……。

 大好きな人と……。

 そのために何ができる? 何をすればいい? こんな私に何が出来る?

 二人で……。

 想像するだけでドキドキして、幸せな気持ちになれる。
 だけど、急に現実を思いだしギクリとする。
 躍っていた心が沈む。

 私みたいな人間が、こんなことを望んではいけない。許されない願いなのだ。
 考えれば考えるほど絶望的になる。

 だけど……だけど……。

 ベッドの横にあるフカフカした赤い服を着た人形を手に取る。

 望んでもいいですか?

 サンタ・クロース。
 子供の頃から一度もプレゼントをくれなかったあなた。

 今年こそ……今年だけは……。
 私にください。
 私の願いを叶えてください。

 私はよい子じゃありません。
 だからジッと待っていることなんてできません。

 だけど、お願いします。

 聖夜の夜に。
 愛しい人と二人……。






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