「久保さん・・・」

「グー・・・」

「久保さん」

「・・・んが?」

な、何だ?
人がいい気持ちで寝ているのに・・・(授業中)

「久保さん、権造さんから回ってきました」

前の席の奴(権造の手下その・・・2だっけ)が4つ折にした紙を渡す。

「何だ、これ?」

「さ、さあ?
僕も回すようにしか言われていないので・・・」

紙を渡すとさっさと前を向く手下その2。
・・・真面目な奴。
まあ、それはいいとして・・・
何なんだ、この紙は?
あいつは見かけによらず真面目だ。
授業中にこんな事はしないはずだが・・・
権造を見ると『とにかく読め』とあいつなりにジェスチャーしている。
・・・とりあえず見てみるか。
そう思い、紙を広げてみると・・・

 

『晶子さんに恋人はいるだが?』

 

と、書いてあった。
もう一度権造を見てみるとあの図体で照れていやがる。
気味悪いからやめろ(汗
・・・まあ、言いたいことは分かる。
あいつは晶子に惚れ込んでいるからな。
今まで聞いてこなかったのが不思議なぐらいだ。
その事にようやく気付き、いても立ってもいられなくなったんだろう。
あいつは不器用だから、一つ気になればそれしか考えられないからな。
・・・そろそろ権造にも現実を見てもらうか。
俺も紙を用意して(ノートを切った)簡潔に『いる』と書いてやる。

「おい」

「は、はい?」

再び手下その2を呼ぶ。

「これを権造に回せ」

「わ、わかりました」

さっき書いた返事の紙を渡す。
さて、用事も済んだ事だしもう一眠りするか・・・
6時間目の授業だが、眠いものは眠い。
目を瞑り、寝ようとすると・・・

「な、なにーーーーーー!!!」

権造の大声(本当に大きいぞ)が眠気を吹き飛ばす。
・・・あのバカ。

 


2002 elf 『あしたの雪之丞&勝 あしたの雪之丞2』

「幸せなる日々」
 (第2話・晶子は怒ると怖い)


 

「ま、勝、『今度こそ』詳しく話すだべ!」

「わかったから、目の前まで近づくな!」

権造が大声を上げた授業も終り放課後になった。
すぐに権造は俺に問い詰めに来たが、運悪くその本人の晶子が教室に来た。
と言っても、元々買い物の約束(荷物持ち)があったからな。
だが、晶子の方も担任から手伝いに借り出された事を知らせに来たらしい。
それほど時間が掛からないということもあり、終るまで待つことにした。
晶子は『必要ないから預かってて』とカバンを預けてもういない。
それで『今度こそ』と言うわけだ。

「『権兵衛の夢、短くして消ゆ』・・・ね」

「あ、あきら、そんな事言っちゃだめよ」

いつも時間を潰している水島はもちろん、今日は時間があるのか由美子ちゃんも一緒だ。

「・・・で、なにから話せばいいんだ?」

「しょ、晶子さんに恋人がいるというのは本当だべか?」

「認めたくないと言う事はよくわかる。
だが、権造君。
正真正銘、本当の本当の事だ」

「ガビーーーーン!!」

おお、ショック受けてる受けてる。

「まあ、あれほど良い女の子だもん。
いてもおかしくないわね」

「そうね。
でも、意外と言えば意外かな?」

これでもかというほど権造を苛める俺たち3人(気付いていない者約1名)

「ど、どんな男だ!?」

ようやくショックから帰ってきた権造が問い詰めてくる。

「オデより強い男か!?」

「当たり前だ」

「オデよりカッコイイ男か!?」

「話にもならん」

「グッ・・・」

再びショックを受けるが今度はすぐに帰ってきたな。

「ねえ、久保勝。
それって、もしかして・・・」

「・・・ああ。
今、お前が考えている奴だ」

水島の奴、雪之丞の事に気付いたか?
転校してきたばかりの権造は知らないはずだが、雪之丞の事は有名だったからな。
ここまで言えば解って当然か。

「ど、どこのどいつだ!?
晶子さんが選んだ男は!?」

・・・知らないというのは罪だな。
いや、ある意味知らないほうがいいかもしれんが・・・

「いいか、権造。
よく聞け」

「お、おお」

少しもったいぶらせてやる。

「元涼月学園生徒で、今は鹿島学園に転校した雪村雪之丞だ」

「・・・!」

何だ?
雪之丞の名前を出すと権造より由美子ちゃんがビクッとした。
水島も彼女の方を見ている。
・・・雪之丞と何かあったのか?

「鹿島学園の雪村雪之丞だな?」

由美子ちゃんに声を掛けようとするが権造の声が遮る。

「ああ」

「そうか、わかったべ」

確認すると、教室を出て行こうとする・・・
ってちょっと待て!

「ご、権造!
どこに行く気だ!?」

「どこって、決まってるべ!
その雪村雪之丞に会って来るだ!!」

「・・・会ってどうする気だ?」

「もちろん、決闘だ。
本当に晶子さんに相応しいか確かめるべ!!」

・・・ま、まずい。
このままこいつが雪之丞の所に行って決闘なんぞしたら・・・
雪之丞が負けることはまずないが、もしケガでも負ったら晶子に殺されてしまう(汗
ここは、なにがあっても止めなくては!!

「ま、待て、待て待て、権造!」

「なぜ止めるだ、勝!?」

晶子に殺されるからだよ!!

「い、いきなり殴りこみもないだろ。
せ、せめてどういう奴か知ってからでも遅くないだろ?」

「・・・それもそだな」

ふう、これで最悪の事態は回避された。
これから、どうにかして殴りこみだけは止めなくては・・・

「それでどうするの、久保勝?」

水島も興味があるのか先を諭す。
由美子ちゃんも何事もなかったようにしている。
・・・気のせいか?

「そうだな・・・
まず、写真でも見てもらうか」

「勝の家に行くだか?」

「いや、写真はここにある」

そう答えて、晶子のカバンをあさって生徒手帳を取り出す。

「ねえ、何で久保勝がそこに写真があることを知ってるの?」

「ふ、兄の情報網を舐めるなよ」

「うわ、ストーカー」

「アホ。
あいつが俺に見せた後に入れているのを見たからだ」

誤解を解きながら生徒手帳を開いてその写真を見せる。

「へえ・・・」

「・・・」

「ど、どいつだ?」

三者三様にリアクションを返す。
この写真は晶子が転校する時に撮ったものらしい。
鹿島学園の制服を着た雪之丞や晶子はもちろん、あの憎っくき春日せりなや親しい奴が写っている。
それにしても、雪之丞を含めて男は3人で女が7人か・・・
相変わらずだな、雪之丞・・・

「この人ですよ、権造さん」

俺が答える前に由美子ちゃんが写真の中の雪之丞を指す。
さすがに由美子ちゃんでも知っているか・・・

「こ、こいつが、し、晶子さんの・・・」

おお、権造の全身が震えて穴が開くぐらいに睨みつけてるよ。

「ちょっと、見えないでしょ、権兵衛」

水島が権造が持っていた晶子の生徒手帳(写真)を取り上げて、由美子ちゃんと見る。

「わかったか、権造?
これが現実だ」

「ま、勝・・・」

ものすごく情けない顔しているな。
気持ちはわかるが・・・

「・・・あれ?」

「これって・・・」

「どうした、2人とも?」

写真を見ていた2人が変な声を出すから訊ねる。

「写真の下にもう一枚あったから・・・」

「そうなんですよ、久保さん。
知っていましたか?」

写真がもう一枚?

「いや、知らねぇな。
貸してみな、水島」

水島から生徒手帳を取って、下の写真を取り出す。
その写真は・・・

「ほう・・・」

鹿島学園の校門前がバッグの雪之丞と晶子のツーショットだった(しかも腕組)

「晶子さんと雪村さん、本当に付き合っているんですね」

「由美子・・・」

つらそうに俺の手にある2人が写る写真を見る由美子ちゃんと、
気遣うような水島。
やはり、雪之丞と・・・
もう一度聞こうとするが、同じく権造に止められる。
それも最悪な行動で・・・

「晶子さんとの2人だけの写真!?
こんな奴と写らなくても、オデが一緒に撮ってやるで!!」

 

ビリビリビリ・・・

 

俺の手から取り上げてその写真を破く・・・
そんな中でも、晶子の部分は無事というのは見事というか・・・
・・・待て。

「こ、こら、貴様、何をするか!!
や、止めろ!!」

必死に止めるが暴走した権造を止めるのは至難の業だ。

「あーらら、わたし知らない」

「ど、どうしましょう?」

女2人は傍観者になって見守っている。
た、頼むから権造を止めてくれ!!

 

 

「勝、すまねぇ」

「謝って済む問題じゃないぞ」

あれから10分間暴走し続けた権造をようやく止めたが、
写真はそれはもう無残になってしまっている(雪之丞の部分のみ)
破片を集めてセロテープで繋げたが、どう見ても不自然さがあるのは言うまでもない。
それを机の上に置き俺達4人で囲んでいる状態だ。

「権造、お前がやったんだからお前が責任を持てよ」

「そ、そんな、勝!?
おめえも付いて来てくれねえべか!?」

「元々はお前が悪いだろ!!」

「そ、それはそだが・・・」

俺の最もな言い分に言い返せない権造だが・・・

「・・・そうもいかないんじゃない?」

水島がポツリとそのひと言を出す。

「どういう事だ?」

「確かに破ったのは権兵衛よ。
でも、その写真を取られたのは久保勝」

・・・なに?

「な、何が言いたい?」

「ようするに、あんたも共犯」

な、何だと!!

「それなら、この写真を見つけたのは水島じゃないか!!」

「それを言ったら、そもそも晶子ちゃんのカバンをあさって写真を出した
久保勝が原因の元になるわよ」

「グッ・・・」

それを言われたらそうかもしれん・・・
ま、まずい・・・
このままでは・・・

「ど、どうする?」

普段使わない頭をフルに使って解決策を考えるが、
浮かぶはずがなく皆に意見を求める。

「素直に謝った方がいいですよ。
真剣に謝れば晶子さんも許してくれますよ」

由美子ちゃん・・・
そうは簡単にいかないんだよ。

「そうだ、勝。
晶子さんがこんな事で怒るはずがねぇべ」

てめえがやったんだろうが、てめえが!!

「それならどんなにいい事か・・・」

今までの経験からそれで済まないと断言できる。
あいつ、最近雪之丞の事になると見境がつかないからな・・・(怯

「おい、水島はどう思う?」

「・・・ああ」

こ、こんな時にもダレた口調はやめろ!!
こっちは命が掛かってるんだぞ!!(マジ

「わたしも最終的には謝るしかないと思うけど、
久保勝はそう考えていないんでしょ?」

「よ、良くわかってるじゃねえか」

「だって・・・
今のメンバーで晶子ちゃんの事を一番知っているのはあんたでしょ」

「まあな・・・」

「どういう事だ、勝?」

「久保さん?」

「いや、どう言えばいいか・・・」

今の俺の頭の中には『晶子に雪之丞の事でからかわない』と刻み込んでいるから、
今更、どう言えばいいかわからん。

「ねえ・・・」

「ん?」

水島?

「わたしが久保勝が晶子ちゃんを怒らせた例を出すから、
それに答えて」

「それに何の意味があるんだ?」

「これなら、わたし達にも晶子ちゃんがどれぐらいで怒るかわかるでしょ?」

「おお、なるほど!」

「さすが、あきら」

「んだんだ、そうするべ」

全員一致で水島あきらの『晶子の怒り度チェック』が始まる。

 

「質問その1」

「おう」

「朝に久保勝が寝ぼけて晶子ちゃんを襲ったら?」

「ブッ!!」

な、なんつー質問を(汗

「お、おめえ、朝からこんなことしてただが!?」

「する訳ねえだろ!!」

・・・しかけた事はあるが。
もし、相手が俺じゃなくて雪之丞だったら(あのカタブツではまずないが)抵抗しないだろうな・・・
逆に嬉々として受け入れるか?

「権兵衛も横やり入れない。
・・・で、どうなの?」

「そ、その場は怒るが、学校に出る時には収まってるぞ」

「うわ、晶子ちゃんったら寛大ね」

「・・・(ポ)」

「晶子さんもこんな兄貴を持って・・・」

「だからやってねえって!!」

俺をどんな目で見てるんだ、こいつは?

「権兵衛は黙ってなさい。
質問その2・・・」

「あ、ああ」

「お風呂場で晶子ちゃんが入ってるのに、間違えて入ったら?」

「・・・・・・」

そ、そんな質問しかないのか?

「早く答えないと晶子ちゃんが帰ってくるわよ」

「わかったよ。
怒って注意するが謝ればその場で許してくれるぞ」

気にせずにいこう・・・
気にしたら負けだ。
・・・あいつだったら、晶子は一緒に入ろうって誘うだろうな。

「質問その3、着替え中を見てしまったら?」

「悲鳴を上げて、物を投げてお袋からグー」

・・・雪之丞の部屋はアパートだからせまいからな。
今度、詳しく聞くか。

「質問その4、Hな話をしたら?」

「赤くなって、話題を変えるか逃げる」

恥ずかしがり屋だからな、晶子は。
・・・経験済みのくせに。

「質問その5・・・」

 

・・・この後、10問続くが日常的なのもばかりだ。

 

「ふぅん、怒りはするけどそれだけか・・・」

「さすが、晶子さんだべ」

「優しいんですね」

それはそうだろう。
基本的に逆鱗に触れていないんだからな。

「で、ここからが本番」

「おう」

「晶子ちゃんと雪村君の仲を冷やかしたら?」

「三日間飯抜き」

「「・・・・・・」」

「・・・久保勝にとってはまさに死活問題ね」

即答する俺に固まる権造と由美子ちゃん。
水島は予想していたのか特にリアクションはない。

「二人っきりの時間を潰したら?」

「一週間口も利いてくれん」

あの時は参った・・・

「デート当日に邪魔したら?」

「睨み一つで邪魔自体出来ん」

あれは怖かったぞ・・・(怯

「・・・もういいわ」

「もういいのか?」

俺としてはまだまだあるんだが・・・

「充分、晶子ちゃんに雪村君の事で怒らしてはいけないって、
皆わかったから」

「「・・・・・・」」

相変わらず2人は『信じられないという顔』でこちらを向くが、
俺は首を横に振る。
こうして、『晶子の怒り度チェック』は成功と言えば成功で終る。

 

 

「ま、勝、どうするだ!?」

「だからそれを今考えるんだろ!」

ようやく権造にも晶子の恐ろしさがわかったのか、
雪之丞の事より今の事で頭がいっぱいらしい。

「久保さん、この写真の事以上に晶子さんを怒らせた事はありますか?」

「・・・いや、ないな」

「ようするに全く予想がつかないと?」

「ああ」

小さいことは多数あるがここまでは・・・

「大人しい子に限って怒ると怖いからね」

「うるさい、水島。
それより何かないのか?」

悔しいがこの中で晶子の予想がつくのは水島しかいない。
(俺は気付く時は後に戻れない時だからな)

「やっぱり最初が肝心じゃないの?」

「最初?」

「そう、初めにどれだけ怒らせないようにするか。
それによって収まるか爆発するかが決まるわ」

な、なるほど。
確かに怒りを緩めたら被害は少ない。

「で、その対策は?」

ワラにもすがる思いで水島を見る。
回避できたら何でもオゴってやるぞ!!

「謝り倒すしかないんじゃない」

「・・・おい」

結局はそれか。

「だって、結局は写真がこんなになってしまったのは事実だし」

と言って、写真を指す水島。

「怒り出す前に謝っちゃえば気が抜けて許してくれるわよ」

それしかないか・・・

「・・・たぶん」

「何か言ったか?」

「ううん、何も」

何か、水島が言ったような気がしたがまあいい。

「よし、権造!
晶子が帰ってくるまでに打ち合わせするぞ!!」

「わかっただ!」

権造と謝るタイミングについて話し合いを始めるが・・・

 

「お兄ちゃん、おまたせー」

 

・・・タイムオーバー(泣

 

 

「どうしたんですか、皆さん?
そんな驚いた顔して?」

そりゃあ、晶子にとっては疑問に思うだろう・・・
俺達4人とも同時に驚いているんだからな。

「あれ・・・」

晶子が何か気付いたような声をだす。
その目線を追ってみると机の上にある・・・

「うわっと!!」

慌てて、机の上にある問題の写真を取って後ろに隠す。

「こ、これは、その、あのな・・・」

「・・・・・・」

しかし、隠すのが遅かった。
権造も汗がダラダラ流れて固まっている。

(権造!お前からいけ!!)

(オ、オデに死ねというだか!!)

(元々はお前が原因だろ!!)

(勝も共犯だべ!!)

(いいから行け!!)

(ここは晶子さんの兄の勝が先に行くべ!!)

(そんな事関係あるか!!)

アイコンタクトで権造と話し合うが、お互いに言い合うだけで先が進まない。

「・・・お兄ちゃん」

お、俺っスか!?

「な、何だ、晶子?」(怯

「後ろに隠しているもの、出して」

ど、どうする!?
い、いや、あ、謝るんだ!!
今がチャンスなんだ!!

「し、晶子・・・」

「出して」

うおっ!!
怖え、怖すぎる!!
これが俺が事故った時の『コールド晶子』(命名兄)か!?
雪之丞、お前の気持ちがよく解るぜ・・・
これだったら逃げたくもなるな・・・
俺も逃げてぇよ(泣

「・・・はい」

ここは逆らうと危険と判断し写真を渡す。

「・・・・・・」(プルプル)

ふ、震えだしたよ!
怒り爆発何秒前って感じ?
周りを見ると由美子ちゃんはオロオロとしているだけだし、
権造も初めての晶子の怒りに怯えてる。
そうだ、水島は!?
ヤツを見ると手を上げて首を横に振っている。
・・・アウトっスか(汗

「お兄ちゃん・・・」

「な、なんスか!?」

「これはどういう事?」

「こ、これとは?」

まずい・・・
まずいですよ。

「どうして、この写真が出てて破けてるの?」

「そ、それはですね・・・」

「・・・・・・」

このままでは最悪の事態以上になってしまう・・・

「まあ、落ち着いてよ晶子ちゃん」

おお!!
助けてくれるのか、水島!!
そうだ、お前も無関係じゃないんだからな!!
かすかに見えた光が見えてきたぞ!!

「あきらさんは黙っていてください。
わたしはお兄ちゃんに聞いているんです」

・・・光は一瞬で消えてしまった。
水島もこれには驚いたのか一瞬固まりもう一度首を横に振る。
ふっ、短い人生だったぜ(泣

「じ、実はですね・・・」

今までの出来事を話す。
道連れとばかりに権造を出来るだけ悪いようにしながら・・・

「・・・というわけですよ」

「要するに、お兄ちゃんと権造さんが悪いんだね」

「晶子さん・・・オデはただ・・・」

権造も言い訳するが今の晶子に何を言っても無駄だ。

「買い物はいいから、2人とも少し付き合って」

冷たい声でそう言うと、俺と権造のベルトを掴んで(身長の差で襟首は無理)引きずっていく。

「それでは、お先に失礼します。
あきらさん、由美子さん」

「ほどほどにね」

「あ、あの・・・さようなら」

見送りされ、そのまま引きずられながら出て行く俺達。
・・・明日生きてるか?

 

 

後日、俺と権造は別々におしおきを受けた。
だが、お互いにその内容は語ろうとしない。
俺は最後には雪之丞に電話して助けを求め、生き延びた。
権造は白くなっていた。
これで、『晶子に雪之丞の事で悪くしてはいけない』と
水島、由美子ちゃん、権造の心に刻み付けただろう。
雪之丞、お前は偉大だぜ・・・

追伸1
結局、写真はネガがある事でその問題自体はすぐに解決した。

追伸2
諦める事が出来ない権造が鹿島学園に行くが、雪之丞どころか春日にボコボコにされた。
それ以来、鹿島学園に行くことは諦めたようだ。
ちなみに春日が晶子にその事を知らせ(権造の確認らしい)、再度おしおきを受けた。
・・・不憫な奴。

 

 

第3話・前編へ続く

 


どうもです、siroです。
今回は勝視点で、ついに権造に雪之丞の事がバレました。
普段から晶子は雪之丞の事になると暴走気味だと感じてほしく、
こんな話になりました。
機会があれば、雪之丞VS権造を書いてみたいと思います。
でも、晶子の出番も少ないし雪之丞すらでてこないので、
次の話も続けて書きました。
暴走はそれほどではありませんが、ラブラブです。
では、第3話・前編をどうぞ。