「わ、わわ!」
「晶子、大丈夫か?」
「大丈夫・・・じゃないかな。
ゆっくん、手伝って!」
「わかった」
海へ来て2日目・・・
今日は皆さんで釣りにやって来ました。
それぞれが釣り竿を差して一時間も経つと
釣れている人とそうじゃない人との差が出てきました。
私は前者で、今もゆっくんに手伝ってもらって苦戦中です。
「いいか、晶子。
合図したら一気に竿を上げろ」
「う、うん」
お、重いです。
手の感覚がなくなってきたよ。
でも、ゆっくんが手伝ってくれるから負けないもん!
「・・・今だ!」
「えい!!」
バシャ!!
「釣れた!
釣れたよ、ゆっくん!!」
「よかったな」
驚く事に何と3匹も釣れていました。
道理で重いはずです。
はあ、疲れたよ・・・
逆に全く釣れないせりなさんとお兄ちゃんは不貞腐れています(汗
大物狙いですからすぐに釣れるはずはありませんが(苦笑
日が暮れる頃には皆さんも満足するぐらい釣れて大喜び。
今夜は海岸でお魚パーティーです。
やっぱりこういう場所ではおいしさ倍増ですね。
ですが、結局せりなさんとお兄ちゃんは一匹も釣れずにヤケ食いしちゃってます。
それはもうガツガツと・・・(汗
「それもらい!」
「あっ!
それはオレが狙っていたんだ!
返しやがれ!!」
「ウッサイ!
アンタは魚の骨をガジガジ齧ってなさい!
イメージにピッタリよ」
「それを言うなら権造だ!!」
「オ、オデか!?」
ほらね(苦笑
「晶子ちゃん、これ焼けてますよ」
「あ、ありがとう、妙子ちゃん」
「どうもいたしましてです」
私も早く食べないと無くなっちゃうよ。
「おいしいね」
「はいです」
海ならではだね。
この後は露天風呂ですが、昨夜で堪えたのか平穏無事に気持ちよく入れました。
騒がしかったですけどね(困
三日目は朝から自由行動で夕食にバーベキューです。
さて、何をしましょうか・・・
2002 elf 『あしたの雪之丞&勝 あしたの雪之丞2』
「幸せなる日々」
(第10話・1つの決着と新たなる決意)
ー1つの決着・権造サイドー
「クソ!
ココにもいねぇだが」
オデは今、確かめたい事があってある男を捜している。
「権造?
どうした、ロビーでキョロキョロと?」
「オオ、勝か。
丁度よかっただ。
雪村のヤツ見なかったか?」
「雪之丞なら部屋にいたぞ」
「そうか、わかっただ」
少し前に部屋を捜した時にはいなかっただが・・・
よく分からん男だな。
「雪之丞に何か用か?」
「・・・そうだな。
勝には話しておくべきだな」
いつものオデとは雰囲気が違う事に気付いたのか、
勝が若干真剣な表情をだす。
「・・・晶子の事だな」
「ああ、そんだ!
晶子さんにあの男が相応しいか、守れるか確かめてやるだ!!」
「どうやって確かめる気だ?」
「もちろん決闘だ」
男同士に言葉など不要だべ。
「オイオイ(汗
そんな事をしたら、晶子と春日が黙っちゃいないぞ」
「ウッ・・・」(怯
勝の言葉で思わず怯む。
頭の中で、無表情な晶子さんと憤怒のピンクの山姥が迫ってくる所を想像しちまっただ・・・
「い、いや!
今回は大真面目だ!
今日を逃したら手遅れになるかもしれないからな。
晶子さんの為なら喜んで受け入れるだ」
そんだ!
明日には帰ってしまうから、今日しか聞き出すチャンスがない!
心の中では、お仕置きを怖がっているのは内緒だ(怯
「手遅れってな・・・
オマエは雪之丞と三日しか会っていないが、
それでもヤツの性格はわかっただろ?」
確かにこの三日間、雪村を見張っていたが晶子さんを大切にしている事はよくわかる。
だが・・・
「けどな、勝。
それは表面的な部分だ。
オデが知りたいのは本心だ!
実は心の底では晶子さんを騙し・・・っ!!」
ドンッ!!
「・・・オマエ、何を言おうとした?」
一瞬だった・・・
突然勝に襟首を掴まれて壁に叩きつけられ、首を抑えられた。
「ま、勝?」
勝の顔を見ると、今まで見たことがないほど怒りを表している。
「何を言おうとしたんだ、権造」
「何って・・・」
「晶子を騙している・・・そう言おうとしたな?」
「そ、それは・・・」
確かにオデはそう言おうとした・・・
よく考えれば、それは言ってはいけない言葉だと気付く。
「いいか、権造。
よく聞け」
「あ、ああ」
勝の両手の力が込もって息苦しいが、
オデは気にすることもなく話を聞く。
「オマエには悪いが、晶子の相手は雪之丞しかいないと思っている。
いや、確信している。
もし、雪之丞が他の女・・・春日辺りと付き合っていたら、
土下座でも何でもして別れてもらうだろう」
「・・・・・・」
あの勝が土下座するほどに、晶子さんと雪村の仲を・・・
「だが・・・
オレにとって雪之丞とは晶子の恋人の前に、幼馴染み兼親友だ。
小さい頃からな。
アイツはただ強いだけじゃない。
人の痛みをよく知り、何かあったら自分の責任だと思い込み傷付いていく。
強くて弱い・・・
それが雪村雪之丞という男だ」
「オ、オデは・・・」
「雪之丞を侮辱するという事は、晶子の想いとオレを侮辱すると同じだ。
権造、オマエほどの男なら言いたいことはわかるな?」
「・・・ああ。
済まなかっただ、勝」
雪村雪之丞か・・・
「わかってくれたら、それでいい」
勝は腕を解いて、二・三歩ほど後ろに下がる。
「ゲホッ、ゲホッ!」
「すまん、つい力が入っちまった」
「き、気にすることはねぇべ」
むしろ、この苦しさは今のオデに必要だ。
「まあ、いきなり決闘もまずいだろ。
取りあえず雪之丞の話しを聞いてみろ。
オレとは違って真面目だから、真剣にすれば話してくれるさ」
「オオ」
少しふらつく身体に鞭を打って、
部屋に戻ろうとするが勝が支えてくれる。
「オレもアイツの本心を聞いてみたいと思ってな。
付き合うぜ」
コイツもお節介の多い男だべ。
「すまねぇな、親友」
「気にするほどじゃないだろ」
親友と言う言葉に否定しない勝に感謝しながら、
雪村雪之丞がいる部屋を目指す。
ー閑話休題・妙子とちはるー
「やっぱり、夏と言えばカキ氷です!
ちはるちゃんもそう思いますよね?」
「それはいいんですが、さすがに食べ過ぎじゃ?」
「そうですか?
まだまだいけますよ?」
「えっ?
まだ食べるの?」
「はいです!」
「お腹壊しても知りませんよ、妙子さん」
「平気です。
妙子、自信がありますから。
ちはるちゃんもどんどん食べましょう!」
「私はもうお腹が一杯で・・・」
「大丈夫ですよ。
はい、どうぞ」
「うう・・・
晶子さん、雪村先輩、助けてください」(泣
ー1つの決着・雪之丞サイドー
「おーい!
雪之丞、居るか?」
「居るも何もさっき会ったばかりだろ?」
「それもそうだな」
「それで、どうした?
鷲淵の顔が固いようだが・・・」
久保と共に部屋に入って来た鷲淵が、
何か緊張しているように見える。
「ああ。
ついさっきな、このバカに折檻したばかりでな」
「オイオイ」(苦笑
「そんな事はどうでもいいんだよ。
それより、権造が訊きたいことがあるそうだ」
「オレに?」
「ああ、そんだ」
やはりな。
この表情を見れば誰でも何かあると思うだろう。
「・・・長い話しになりそうだな。
座ったらどうだ?」
「雪之丞、ついでに何か飲み物を出してくれ」
「わかった」
備え付けの冷蔵庫からジュースを取り出して、
それぞれに配ってから腰を降ろす。
「それで、訊きたい事とは何だ?」
「晶子さんの事だ」
晶子の?
「オメェは晶子さんの恋人だな?」
「そうだが・・・」
「それで、その・・・な・・・」
そこから先は中々言おうとしない。
迷っているのか?
それを見かねたのか久保が代わりに話しを進める。
「権造はな、晶子に一目惚れしたんだ」
「ほう・・・」
チラッと鷲淵を見ると赤くなって俯いている。
見ていても少なくても良い気分はしないので、久保に先を諭す。
「ココに来る前に、少しばかり勘違いしていた権造にヤキを入れてきてな。
オマエの本心を聞きたいそうだ」
「本心?」
どういう事だ?
「権造にも話したが、オレは晶子の相手は雪之丞・・・
オマエだと思っている」
「それは光栄だな」
「だろ?
結果、告白もせずにフラレたバカに教えてやってくれ。
オマエと晶子が乗り越えた辛さと絆をな」
そうだな。
これは晶子に選ばれた者の責任だ。
「・・・わかった。
久保は鷲淵に『あの事』を話したのか?」
「いいや。
それを話す資格があるのはオマエ達だけだ」
久保にも話す権利はあると思うが・・・
「そうか・・・
鷲淵」
「な、何だ!?」
緊張していたのか、突然声を掛けられたことに驚いたのか、
ビクッとしてガバッと顔を上げる(リアクションの激しいヤツだ)
「今から話すことを黙って聞いてくれ。
言いたいことは後で聞く」
「わかっただ」
俺は話す。
久保を意識不明にしてしまった事・・・
晶子に拒絶され、逃げるように転校した不甲斐なさ・・・
鹿島学園での春日達の出会い・・・
晶子との再会・・・
お互いに素直になれずに傷付けあった日々・・・
明男との勝負と1つの賭け・・・
試合後に晶子と結ばれた・・・
数日後に目覚めた久保との話し・・・
全てを・・・
「そんな事があっただか・・・」
久保は辛そうな表情をし、鷲淵は驚愕して少し呆然としている。
そんな様子に構わず鷲淵に右腕を突き出す。
「鷲淵、これは何に見える?」
「な、何って・・・
オデにはオメエの右腕にしか・・・」
確かに何も知らない・・・例え知ったばかりでもそう見えるだろう。
だが、オレは違う。
「これはな、久保からボクシングを奪った凶器だ」
「っ!?」
「オメエ・・・」
これは久保からの生きがいと時間を奪い、
晶子に苦しみしか与えなかったモノ。
「今でも時々思う。
オレはボクシングを続けていいのか?
それともいっそのことこの右腕を――――とな」
「・・・・・・」
「雪之丞、それは・・・」
「わかっている。
久保がそれを認めてくれた。
止める気はない」
「・・・そうか」
確かにそんな事を考えても何もならないと言う事はよくわかっている。
だからこそ、ボクシングを続けているのだから・・・
「鷲淵・・・
晶子が好きか?」
「あ、当たりめぇだ!」
「何があっても側にいてやれるか?」
「ああ!」
「例え、晶子自身から拒絶されてもか?」
「・・・・・・」
昔のオレはあの時に逃げてしまった。
今は違う。
「オレは晶子と約束した。
何があってもどんな事があっても側にいてやると。
これが本心だ」
話し終わるとノドが乾いている事に気付き、ジュースを1口飲む。
ただ話しただけでは乾かないはずだが、オレも緊張していたと言うことだろう。
「雪村・・・いや、雪之丞」
「・・・」
オレを名前で呼ぶと言う事は、
少しは認めてくれたのだろうか?
「どうやら、オデの眼は節穴だったようだ。
こんな素晴らしい男がいたとはな。
晶子さんを頼む」
そう言って深く頭を下げる鷲淵。
無論、答えは決まっている。
「まかせろ」
こうしてオレと鷲淵との話しは終った。
しかし、晶子に惚れる男がオレ以外にいたとはな。
意外とは言わないが驚きだ。
もしかしたら、晶子の方もこんなやり取りをしていたかもな・・・
まあ、それはないだろうな。
―雪之丞の進路・詩織サイド―
「詩織先生、ちょっといいですか?」
「あら、晶子さん」
土産屋で他の先生方にと悩んでいると、
晶子さんに声を掛けられた。
「それで、何かしら?」
「ゆっくん、どこに行ったか知りませんか?」
「雪之丞君?
ごめんなさい、知らないわ」
「そうですか」
あらあら、ガッカリさせてしまったかしら。
晶子さんには悪いけどこういう所は微笑ましいわ。
「詩織先生はなにをしているんですか・・・って、
見れば解りますよね、私ったら」(汗
「フフ・・・
学園の先生方にね。
晶子さんはもう買ったの?」
「は、はい。
食べ物などは帰る前にと思っているのですが、それ以外なら」
「気に入ったものはあったかしら?」
「もちろんですよ。
ゆっくんとお揃いキーホルダーを買ったんですよ。
後、お兄ちゃんはあそこにある旗(?)を買ってましたが・・・」
「それならせりなさんも買っていたわね。
気が合うのね、あの子達」
「あ、あはは・・・
ど、どうでしょう」
何か変な事を言ったかしら?
晶子さんが困った表情をしているけど・・・
「そ、それじゃ、私はゆっくんを捜しる途中なので」
「そうだったわね。
でも、こっちもちょっといいかしら?」
「はい?」
「教師が生徒の相談と言うのもおかしいけど、
雪之丞君の進路の事でちょっと・・・」
「ゆっくんの進路・・・ですか?」
「ええ。
お願いできないかしら?」
本来は生徒の進路なんて本人意外は保護者しか言ってはいけないけど、
晶子さんになら雪之丞君も許してくれるでしょう。
「わかりました。
いいですよ」
「ありがとう。
ココではなんだから、庭で出ましょうか?」
「はい」
さて、どこから話そうかしら・・・
―閑話休題2・春日独立愚連隊―
「あっ、これもいいわね」
「せりなちゃん、まだ買うの?」
「もちよ!
まだ足りないぐらいよ」
「せりな、この『特大打ち上げ花火』はどうだ?」
「いいわね!
それを10個ほどお願いね」
「こんなに買って今日中に全部使い切れるかな?」
「違うわよ、由希。
使い切るのよ!
あっ、おっちゃん。
ネズミ花火ある?」
「・・・達也さん」
「あきらめよう。
僕達じゃ、止められないよ」
「そうですか」
「おっちゃん。
後、手持ち花火を30個ほどお願いねー」
「・・・今夜、どうなるかしら」
「お互い無事でいることを願おう」
―雪之丞の進路・晶子サイド―
詩織先生にゆっくんの進路の事で相談したい事があると言われ、
庭に向かっている最中です。
その間、お互いに何も話さないというより詩織先生が考え中なので、
声を掛けることが出来ません。
何をそんなに考えているんだろ?
・・・もしかしたら、ゆっくんが留年しちゃうとか!?
でも、ゆっくんは早めに受験勉強しているから、
一学期の成績は格段に上がったと聞いています。
「・・・さん」
でも、本当に留年しちゃったら・・・
「・・・子さん」
もしそうなら涼月に戻ってもらって、
ゆっくんとクラスメート!(喜
「晶子さん!!」
「ひゃい!?」
詩織先生の声に驚いて、周りを見てみるといつの間にかお庭に着いていました。
「どうしたの?
お庭に着いてもボーっとしていたようだけど・・・」
「す、すみません。
ちょっと考えごとを・・・」
うう、恥ずかしいです。
「それで、雪之丞君の事だけど・・・」
「ゆっくん、留年しちゃうのですか!?」
「え?」
詩織先生の言葉を遮って、
思わず考えていた事を訊いてしまいました。
「あ、あの、違うんですか?」
「え、ええ・・・
彼は早めに勉強しているから成績は上がっているわ。
留年はしないから安心して」(苦笑
「そ、そうですか、よかったです。
あはは・・・」(汗
勘違いしちゃったよ(泣
どうしてこんな事考えたんだろう?
せりなさんの影響かな。
「なら、改めていいかしら?」
「ど、どうぞ」
岩に座って涼しい風を浴びながら、
詩織先生の話しが始まりました。
「晶子さんは雪之丞君の進路の事を、
どれだけ知っているの?」
「せりなさんと同じ『城誠大学』を目指していると・・・」
「そう・・・
やっぱりね」
やっぱり?
「何かあったんですか?」
「ええ。
実は夏休みに入る前に、谷沢さんという人が雪之丞君に会いに来たの」
「はあ」
谷沢さん・・・
昔に聞いたような・・・
「谷沢先生は『慶堂大学』のボクシング部の顧問をしていられるの」
「!」
思い出しました。
ゆっくんとお兄ちゃんがボクシングをしていた時に、
何度か聞いたことがあります。
「目的は雪之丞君を『慶堂大学』に来てくれないか・・・と言う事だったわ」
「えっ?」
私にはそんな事はひと言も・・・
「でも、彼ははっきりと断ったわ。
まあ、谷沢先生もあきらめていないようだけど」
ゆっくん・・・
「勘違いしないでね。
黙っていたのは雪之丞君なりに心配かけたくなかったから・・・」
「わかってます」
ゆっくんは優しいから自分一人で解決しようとする。
でも・・・
「それでも言ってほしかったです。
こんな時こそ、私がゆっくんを支えてあげたい」
「・・・そうよね。
だから私から晶子さんに知らせたかったの」
詩織先生・・・
「正直な話、ボクシングで上を目指すなら、
またとないチャンスだわ」
「・・・・・・」
「彼は断ったけど、私が見た限りでは迷っているみたい。」
「ゆっくんが・・・迷っている・・・」
「そう。
彼がはっきりと決めたならそれでいいと思う。
でも後悔だけはさせたくないの」
「はい」
「私じゃ、これが限界。
だから晶子さんが聞いてあげて。
お願い」
言葉が終ると、詩織先生は頭を下げる。
それは教師としてではなくて、同じ男性(ひと)を好きになった・・・
「頭を上げてください、詩織先生」
もちろん、答えは決まっています。
「まかせてください」
「ありがとう」
ゆっくん、貴方は何を悩んでいるの?
ボクシングなら続けてもいいってお兄ちゃんも私も認めているのに・・・
何がそうさせるの?
まだ、本当に立ち直っていないの?
ボクシングを続けているのは自分の為じゃなくて、お兄ちゃんへの償いなの?
教えてよ・・・
―花火大会―
ゴォォォォォォォ!!
「おい!
せりな、こっちに向けるな!」
「にしししし。
大丈夫よ、これぐらい!
すこーしヤケドするかもしてないけど」
せりなさん、手持ち花火を向けたら少しじゃすまないと思いますよ(汗
「ぎゃああああ!」
あっ、鉄平さんの服に火が着いちゃった。
そのまま海へ飛び込んで火を消したようですが大丈夫でしょうか?
「次、ネズミ花火!」
シュルルルルル!!
「こっ、こっちに来るんでねえ!!」
せりなさんの次の犠牲者は権造さんのようです。
権造さん本人は周りの花火から真剣に逃げているんでしょうけど、
私達から見れば踊っているようにしか見えません(苦笑
パパパパパパパン!!
「うおおおおおお!! 」
文字通り飛び上がった権造さんが、
鉄平さん同様に海へ飛び込んでいきました。
熱そう・・・
「出血大サービス!
打ち上げ花火10連発!
目標、久保勝!!」
「いい!?」
「ファイヤー!!」
ピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュンピュン!!
「だあああああああ!!」
これがまた、狙いを外さずにお兄ちゃんへ一直線へ飛んでいきます!
器用ですね、せりなさん。
「あきらさん・・・
お兄ちゃん達、いいのですか?」
「いいのよ、別に。
あれぐらいでへこたれる男達じゃないから」
「そ、そうね、あきら。
勝さんならきっと大丈夫ですよ」(汗
お兄ちゃん達を信用しているのか、自分が関わりたくないのか微妙な答えですね。
「由希さん・・・」
「ごめんなさい、晶子さん。
今のせりなちゃんを止める事は・・・」
「ここは鉄平達に犠牲になってもらおう」
由希さんに助けを求めても無理と断言され、友達を売る達也さん。
いいのかな、これで?
「あっ
妙子、線香花火を見つけましたー。
晶子ちゃんもちはるちゃんもやりましょう!」
「そ、そうしようか、ちはるちゃん」
「そ、そうですね」
そういう私もお兄ちゃんの悲鳴を聞き流して(だってせりなさんの餌食になりたくないもん)、
妙子ちゃん達と線香花火に火をつけます。
パチパチパチパチパチパチパチ・・・
「あー・・・
消えちゃったですぅ」
一番早く消えたのは妙子ちゃん。
確かに少し早いです。
「あっ、
私も・・・」
次にちはるちゃん。
唯一、まだ消えていない私の花火に視線が集中します。
でも・・・
「消えちゃいそう」
火が弱くなってきました。
頑張れ、頑張れ!
そう願っていると・・・
パチパチパチ!!
「持ち直しました!」
「晶子ちゃん、凄いです」
何と、本当に持ちこたえちゃいました。
こういう所が線香花火の見所です。
それでも、一分後には消えちゃいましたけど満足です。
そういえば・・・
「詩織先生、ゆっくんを知りませんか?」
さっきまで近くに居たのに、いつの間にかいなくなっちゃいました。
「雪之丞君なら、少し歩いてくると言ってたわ」
もう、ゆっくんたら。
「ここはいいから、行きなさい。
今から追えばすぐに追いつくはずよ」
「・・・ありがとうございます。
それじゃ、行ってきます」
さすが詩織先生。
追いかけると解っていたみたいです。
今なら丁度2人っきりなれるチャンスだもん!
「・・・雪之丞君の事、お願いね」
「はい」
それに進路の事も聞かなくちゃいけないし(ついでじゃないよ!)
そんな言い訳(?)を考えながら走ってゆっくんの後を追います。
―新たなる決意―
「あっ、居た。
ゆっ・・・」
浜辺に立っていたゆっくんに声をかけようとしたけど、
途中で言葉がきれてしまいました。
夜の海を見ているゆっくんの雰囲気が、
人を近づけさせない。
・・・カッコいい(赤
「晶子?」
「あっ・・・」
その光景をボー見ていると、ゆっくんが私に気付いて声をかけます。
「どうした?
こんな所で」
「その言葉はそのまま返すよ。
ゆっくんこそどうしたの?」
「いや・・・
ただ、海を見ていただけだ」
「そう・・・」
その場で腰を降ろし、
私はゆっくんの肩に頭を預けて、ゆっくんは左手で頭を撫でてくれる。
今気付きましたが、いつも私に触れる時は『左手』です。
ゆっくんは右利きなのにどうしてだろう?
「ねえ、ゆっくん。
訊きたいことがあるの?」
「ふっ・・・
何だ?」
「あー。
ゆっくん、今笑ったでしょ!」
真剣に訊きたいことがあるのに、
苦笑しているゆっくんにちょっと怒っちゃった。
「すまない。
今日は何故か聞かれることが多かったからな」
「そうなの?」
「ああ。
久保と鷲淵でちょっとな」
「へえ」
お兄ちゃんと権造さんが・・・
何を話していたのか正直言って知りたいですけど、
ゆっくんは教えてくれそうにありません。
「それで、訊きたい事とは何だ」
でも、今はそんな事よりも、
ゆっくんに問い出さなくちゃいけない事があります。
「・・・ゆっくん。
私に何か隠してない?」
「・・・いいや」
普通の人ならわからないかもしれないけど、
ゆっくんの視線が私から外れた事に気付きました。
これは何か隠しているときの仕草です。
「例えば進路の事とか」
「・・・はあ。
誰から聞いた?」
「詩織先生から」
「全部か?」
「うん。
全部」
「そうか・・・」
意外と簡単に隠す事を諦めたゆっくん。
私に秘密にしていたという憤りを必死に押させこんで、
話しを続けます。
「どうして、話してくれなかったの」
「すまない」
「謝るんじゃなくて、理由を聞かせて」
「オレの事で晶子に心配をかけたくなかった」
「でも、私は話してほしかった!!」
それもすぐに限界が来て立ち上がって大声でゆっくんに詰め寄った。
「私はゆっくんの恋人なんだよ!
ゆっくんが悩んでいたら一緒に悩みたい!
傷付いたら癒してあげたい!
辛いことや悲しい事があったら側に居てあげたい!
そんなに私じゃ、頼りにならないの!?
私は・・・私は・・・」
まだ言いたいことはあるのに声が詰まって、
ただ涙を流す事しかできません。
「晶子」
「っ!」
そんな私をゆっくんが抱きしめてくれました。
ゆっくんの温もりが・・・心を落ち着かせてくれます。
私もゆっくんの背中に手を回して抱きつきました。
「「・・・・・・」」
それから暫くして落ち着いたから離れて(それでも手を繋いで)、
もう一度腰を降ろします。
「ゆっくん、聞かせて。
何を考えているの、どうしたいの?」
「わかった」
海から夜の空の星を見ながら、
ゆっくんが話してくれます。
「わかっているようだがオレは迷っている。
だが、『慶堂大学』か『城誠大学』という事じゃない」
「どういう事?」
「オレは宇佐見との試合以来、ボクシングで本気になることが出来ない」
「でも、ゆっくんは鹿島学園で・・・」
「確かにボクシング部を開部した。
トレーニングも欠かさずやってきた。
それでも・・・な」
「・・・・・・」
ゆっくん・・・
「だが、晶子を守る為なら全力を出す。
あの時の二の舞はごめんだ」
「ありがとう。
でも、何で本気になれないの?
私もお兄ちゃんも認めているのに」
それじゃ、ゆっくんはまだ立ち直っていないの?
「原因はわかっている。
しかし、今は待つしかない」
待つ?
何を待つの?
「その原因は私じゃ、解決できないの?」
「・・・・・・」
そっか。
それなら・・・
「ねえ、ゆっくん。
これ以上言わなくてもいいよ」
「なぜ?」
本当は知りたいけど・・・
でも・・・
「私は本当にゆっくんが好きだから。
だから私は信じ続けるよ。
その原因が何かわからないけど、
何があってもゆっくんの味方だよ」
そう・・・
これが私の本心。
ゆっくんが好きと想うこの気持ちが全て。
だから私も待つ。
ゆっくんと共に・・・
「・・・すまない。
自分勝手な恋人で」
「ふふ・・・
それならお互い様だよ。
でも、解決したら教えてね」
「わかっている。
その時にわかるはずだ」
「うん。
楽しみにしてるよ」
新たな決意を胸に抱いて、
私たちはせりなさん達のところへ戻っていきました。
意外と長い時間がたっていたようです。
すると、お兄ちゃん・権造さん・鉄平さんが重なり合うように倒れていました(汗
あきらさん達は先に戻ったのか居ませんでした(詩織先生まで)
「ゆっくん、『コレ』どうする?」(困
「仕方ない・・・
運んでいくか」
「お疲れ様、ゆっくん」
そうして、旅行は終わりそれぞれの場所へ帰りました。
その後は騒がしかったですけど楽しく過ぎて行き、
2学期になり夏休みは終了しました。
ゆっくん、早く解決するといいね。
追伸:2学期に入ってから、お兄ちゃんはボクシング部に顔を出すようになりました。
明男君から聞くとトレーナーみたいな事をしているそうです。
どうもです、siroです。
やっぱりシリアスばかりじゃ疲れますね。
さてさて、今回は第2話のあとがきに書いてあった『雪之丞VS権造』と
第4話でsarenaさんのご意見の『晶子を大事に思う雪之丞の心理などを』のリベンジです。
どうでしたか?
何か賛否両論が出るかも・・・(汗
もしかしたら否定しかないかも?
それと花火大会も今一盛り上げが足りなかったかな。
色々反省していきますので、これからもよろしくお願いします。
次回ですが、たけぞうさんのリクエストで『鉄平VS権造』です。
一から考えていくので時間が掛りますが、しばらくお待ちください。
sarenaさん・たけぞうさん、ご感想ありがとうございました!
他の読んでくださったら、ラングさんの掲示板での方でよろしくお願いします。