「ねえ、ゆっくん。
夏休みの予定とかあるの?」

『俺たちも3年生だからな・・・
そろそろ受験勉強しなくてはならないし、クラブにもでないといけない。
だいたいはそれで終ると思うが』

「そうなの・・・」

終業式も一週間前に控えて、そろそろ夏休み。
今日もゆっくんと電話でお喋りです。
でも、お兄ちゃんは一週間補習です(せりなさんも
ゆっくんは元々歴史に興味を持っていたから、
せりなさんとおなじ大学の歴史関係のところに受けると聞いています。
・・・お兄ちゃんは勉強しなくて良いのかな?

「でも、せっかくの夏休みなんだよ。
偶には遠い所に遊びに行こうよ」

『わかっている。
どうせ、春日が黙っていないからな。
その時に連絡を入れる』

「・・・うん。
よろしくね」

もう、ゆっくんの鈍感。
本当は2人っきりがいいのに。

『クラブの方も土・日は休みにしてあるから、心配するな』

「ありがとう」

よかった。
もしかしたら、夏休みの間は来れないんじゃないかと思っていましたから。

『それじゃあ、明日な』

「うん。
おやすみ、ゆっくん」

 

ガチャ

 

よし!
明日、ゆっくんにどこか遠い所に遊びに行こうと相談(お願い)してみよう。
お泊りになっても、お兄ちゃんが着いてくるに決まっているからお母さんも納得するよね。
そう考えながら自分の部屋に向かいます。
・・・あっ。
今からでも、お部屋とれるかな?

 

 


2002 elf 『あしたの雪之丞&勝 あしたの雪之丞2』

「幸せなる日々」
 (第8話・皆で海へ行こう!!)


 

「ねえ、晶子ちゃん。
海、行かない?」

「はい?」

次の日に予告通りゆっくんが来てくれましたが、
何故かせりなさんも一緒でした。
取り合えず冷たいお茶を出してイスに座ると、いきなりせりなさんに切り出されました。

「だから、海よ、う・み。
夏の青春の代表!
ここに行かずにしてどこに行くというの!!」

「え? ええ?」

コブシを握ってググッと突き出されても、突然で軽いパニック状態です(汗

「春日、順を追って話せ。
晶子が少し混乱しているぞ」

ゆっくんのフォローのおかげでせりなさんも多少(ここがポイントです)落ち着いて、
お茶を一気飲みしました。

「だって、あのバ・・・お兄さんもいないみたいだし、今がチャンスじゃない?」

「今バレなくても、どうせその内分かると思うが・・・
晶子、久保はどうした?」

「お兄ちゃんなら、学校の帰りに友達と一緒に寄り道だって」

ゆっくんが来る日に寄り道なんて、おにいちゃんにしては珍しいことです。

「それで、どうして急に海に行こうなんて話になったの?」

「それはね、今朝の朝の事なんだけど・・・
教室で『夏休みはどうするの?』という話になったのよ。
そうしたら、この男は『受験勉強とクラブしか予定はない』何て言うのよ!
いい若い者がそんな事じゃいけないでしょ!?
だから、この私が皆で海に行きましょうって呼びかけたの」

「そ、そうですか・・・」(汗

おなじ事を考えていた事なだけに、乾いた笑いが出てきちゃいます。
でも、昨日の今日でせりなさんが言い出すとは思いませんでした。

「まあ、という訳だ。
春日を見る限り、断っても無理やり連れて行かれそうだからな。
俺はOKした」

「当たり前よ。
アンタは強制出席よ」

ゆっくん・・・立場ないね。

「場所はココから一時間ぐらいにある海。
決行日はある程度変えられるけど、8月上旬で3泊4日よ」

「えっ?
お泊りなんですか?」

「もちろんよ。
日帰りなんてつまんないじゃない」

3泊4日・・・
それも8月上旬・・・
今日計画したばかりなのに、そんな簡単に予約できるのでしょうか?

「でも、せりなさん。
今から旅館やホテルに電話しても空いてるとは・・・」

「チッチッチッ・・・
春日家の人脈を侮ってもらったら困るわ。
ココに来る前に、母様の知り合いの旅館に連絡したのよ。
すると、8月上旬に良い部屋が取れたわ。
おまけに料金が半額!
どうする、晶子ちゃん?
これほど好条件がそろっているのよ。
もちろん行くわよね」

今度は顔を突き出してくるせりなさん。
私の目の前まで近づけて、ゆっくんに聞こえない位の小さい声で・・・

「心配しなくても、雪之丞と2人っきりの時間も作ってあげるから」

 

ボムッ!

 

頬が赤くなるような事(実際なってますけど)を言ってくれました。
ゆっくんと夜の海で2人っきり
・・・いいかも。
はっ!

 

ブンブンブン!!

 

首を振って、今の考えをあわてて振り消します(汗

「ど、どうした、晶子?
赤くなったり、突然首を振ったり」

そんな葛藤に気付く事もなく、私の奇行(?)に少し引き気味のゆっくん。

「な、なんでもないよ、なんでもない
ハハハ・・・」

パタパタと手を振って誤魔化す私。
あう・・・
ゆっくんに変な所を見せちゃったよ(泣

「で、晶子ちゃん。
どう?」

せりなさんが強引に話しを戻してくれますが、
そのニヤニヤは止めてほしいです(汗

「あ、あの、私自身としては行きたいと思いますけど、
さすがにお泊りじゃあ、お母さんに相談しなくちゃいけないので少し待ってくれませんか?」

こういう事は保護者に相談しなくちゃいけません。

「なら、晶子ちゃん自身はOKということ?」

「は、はい」

「いよっしゃあ!!」

返答を聞いてガッツポ―ズするせりなさん。
そこまで私を参加させたかったのでしょうか?
一応言っておきますけど、『ゆっくんと2人っきり』という言葉につられた訳ではありませんよ。
・・・本当だよ!

「それじゃ、おば様の説得は雪之丞に任せるわ。
いい時間だし、そろそろお邪魔しないとね」

「え?
もう帰るのですか?」

てっきり、泊まっていくと思っていたのですが・・・

「うーん・・・
本当はもう少しいたかったけど、今日はお店を手伝わなくちゃいけないのよ」

せりなさんが言うには、野球のチームの応援ファンの集いの場所で、
今日の夜に試合がある時などは凄いそうです。

「そうですか、残念です。
久しぶりにゆっくんの学園生活の話しを聞きたかったのですが・・・」

「ごめんね。
その話しは旅行の時にゆっくりたっぷりロクデナシっぷりを話して上げるわ」

「おいおい・・・」(汗

せりなさんと冗談の言い合い(半分は本気)に呆れたような少し焦ったような顔のゆっくん。
でも、せりなさんの中では私は参加済みなんですね。
あ、そういえば・・・

「せりなさん、他は誰が来るのですか?」

「ああっと、言い忘れていたわね。
わたし、雪之丞、由希、鉄平、達也のいつものメンバーに詩織先生」

「詩織先生もですか?」

「そう。
来てくれるか分からなかったけど、案外喜んでOKしてくれたのよ」

「そうか?
確か、『せりなさん達はハメを外しすぎるから、私も行った方がいいかしら』
と言っていたぞ」

「うっさい!
余計なことは言わなくてよろしい!!」

さすが詩織先生。
よくわかっていますね(苦笑
・・・お兄ちゃんはどうするのかな?

「それにしても、お兄ちゃんは呼ばないのですか?」

「そうねぇ・・・
さすがに置いてきぼりわねぇ。
ま、あの男が参加したいと言った時にでも考えるわ」

あくまでもこちらから誘わないのですね(汗

「ほかにわからない事があれば、雪之丞にでも聞いてちょうだい。
それじゃ!」

「あ、はい。
また・・・」

「一応言っておくが、しっかり課題やってこい」

「わかってるわよ!」

そう言い残して力強くドアを閉めて行きました。

「あの様子なら、間部に写させてもらうな」

「そ、そう?」

ポツリと言ったゆっくんに苦笑するしかありません。

「さて、これからどうする?」

「それじゃあ、ピアノ弾いてあげる。
ほら、行こ!」

「おい、そんなに引っ張るな」

ゆっくんの手をとって、引っ張っていきます。
それからはお母さんとお兄ちゃんが帰ってくるまで弾いていました。

 

 

「いいわよ、行ってらっしゃい」

晩ご飯に皆揃っている時に、旅行の話を切り出しました。
すると、あっさりお許しが出ました。

「せりなちゃん達だし、詩織先生も連いて行ってくれるし、
何より雪之丞君が一緒なら安心だわ。
思う存分楽しんできなさい」

「ありがとう、お母さん」

お母さんが、そこまでゆっくんを信用してくれる事が何より嬉しいです。
さてっと・・・
お許しも出たことですし、色々準備しなくちゃ!

「おい、雪之丞、晶子。
オレには何もないのか?」

誘ってくれなかった事が不満だったのか、お兄ちゃんは少し拗ねてます。

「久保、オマエも行きたいのか?」

「当たり前だ!
オレを置いて行く気だったのか、雪之丞!?
それは冷たいだろ!!」

「そう思ったが、春日がこちらから誘うなと言われていたからな。
久保が行きたいと言ってから考えるらしい」

「なぜ、春日にそんな権利があるんだよ!?」

「泊まる旅館が春日のコネでとれたからだ」

「グッ」

そうなんですよね。
よく考えれば、お兄ちゃんがせりなさんにお願いしなくちゃいけない事ですから。
色々な意味でライバル意識を持っているお兄ちゃんが、頭を下げることに抵抗があるはずです。
せりなさん・・・
そこまで予想していたのでしょうか?

「そうだ、雪之丞。
4人ほどその旅行に追加できるか?」

「ん? どうだろうな・・・
それこそ春日に聞いてみなくてはなんとも言えん」

「お兄ちゃん?
もしかしてあきらさん達も誘うの?」

「ああ」

そうだね。
あきらさん達が着てくれたら、もっと楽しくなりそう。

「取り合えず、今夜に電話で聞いてみろ。
だが、説得はしないぞ」

「わーってるよ。
春日なぞオレに掛かれば恐れるに足らずだ!」

お兄ちゃんのその自信は何処から出てくるのでしょうか?
立場はこちらがお願いする方なのに・・・
どうなる事でしょうか・・・

 

 

そして、次の日・・・

 

「あーっはっはっは!!
甘い! 甘すぎるわ!!
これぐらいの腕で、この春日せりなに挑むなんて100年早い!!」

「も、もう一回だ!!」

「いいわよ。
何度でもかかってらっしゃい!!」

これでお兄ちゃんの10連敗です。
いつまで続くのかな?

「晶子、お茶をくれ」

「う、うん。
待ってて」

昨日の夜に、ゆっくんがせりなさんに電話をかけて事情を話してお兄ちゃんに代わりました。
人数分の件は簡単にOKしてくれたのですが(大きな2部屋らしいので特に問題はないそうです)、
お兄ちゃん自身の参加に中々OKしないせりなさん。
売り文句に買い文句が続いて、何故か『ゲームでお兄ちゃんが勝ったらOKする』と言う事になりました(汗
それで、今日もせりなさんが家に来ていただいているという訳です。
あっ、また負けた(苦笑

「はい、ゆっくん」

「すまない」

「それにしても、いつまで続くのかな?
この2人・・・」

「どうだろうな。
春日もこういうモノでは負け知らずだからな。
久保は旅行の事などとうに頭にない。
ただ、春日に勝つ事しかないだろう。
まだまだかかるな」

「そう・・・」

私とゆっくんはイスに座ってお茶を飲みながら、勝負の行方を見守っています。
はあ、つまんないな。

「ねえ、ゆっくん。
このままいても暇だし、買い物に付き合って」

「買い物?
しかし・・・」

「お兄ちゃん達なら、放っておいても大丈夫だよ。
お母さんもいるし」

「・・・それもそうだな」

「うん。
今回の旅行のいるもの見に行きたかったから。
お母さん、後はお願いね」

「ええ、行ってらっしゃい。
帰りにアイスでも買ってきてちょうだい」

「わかったー」

 

 

それから、夕方まで買い物に行ってきました。
帰ってくると白くなったお兄ちゃんと、こちらにピースしているせりなさんが立っています。
まあ、結果は言わなくても分かるよね?
さて、どうしましょう・・・

 

結局、お兄ちゃんは旅館の標準の値段でOKしました。
お兄ちゃんに内緒で教えてもらったのですが旅館には、
半額で登録して残りは資金にするそうです(汗
ちゃっかりしてます。

 

それから、あきらさん達に今回の話したら皆さんOKしてくれました。
何事もなく終業式が終わり、ついに夏休みです。
ある夜に妙子ちゃんから電話が掛かってきて、つい海の話しをしちゃいました。
後日に、妙子ちゃんも参加するという連絡が届きました。

 

そして、旅行当日・・・

 

 

追伸1
喘息の由美子さんの為に色々と旅館側にお願いして設備が調えられました。
(せりなさんのおかげです)

追伸2
せりなさんが、お兄ちゃんとゲームをしていた為、
月曜日に由希さんに泣きついたそうです(汗

 

第9話へ続く

 


どうもです、siroです。
遅くなってすみません(ペコペコ
3月に入ってから、私生活が忙しいもので・・・
さて、今回はラングさんとsarenaさんのネタを参考にさせていただきました。
この海水浴編は後、2話分ぐらい続く予定です。
次回は色々予定があるのでいつ頃になるか分かりませんが、
出来るだけ早くするよう努力します。
ラングさん、sarenaさん、たけぞうさん、ご感想ありがとうございました!
Lortさん、私の『それ散る』SSをそこまで気に入っていただいてありがとうございます。
HPの方も頑張ってください!!