「優季さん・・・
用意したものです、どうぞ」
「うわぁ・・・
ありがとうございます!」
「それにしても、珍しいすっね。
ちゃるが一般ウケのものを作るなんて・・・」
「いいえ、よっちさん。
これは私のワガママで作ってもらったんです。
すみません」
「別に構わない。
たまにはこういうのも悪くない。
それに、優季さんがモデルだったから良いモノが出来た」
「ああ・・・
優季さんは美人だから、何着ても似合うっすねー
それに比べて、私達はお色気担当っす・・・」
「あ、あの・・・よっちさん?」
「悲しむな、よっち。
私達には私達しか出来ないことがある。
それで先輩を追い込めば良い」
「なるほど・・・」
「だ、ダメですよ!!
貴明さんは、その・・・」
「うんうん、分かってるっすよー
先輩は皆のモノですから」
「独り占め・・・いや、2人占めはしない」
「そ、そうですか・・・」(安心
「やっぱり、優季さんも可愛い所もあるっすねー
頬擦りしたくなっちゃいましたよー」
「したらダメか?」
「ダメです!!
もう・・・
1つ違いとはいえ、年上をからかわないでください」
「はーい・・・」
「すまなかった・・・
それで、報酬は?」
「・・・ちゃる、クールだね」(汗
「これはこれ、それはそれだ」
「フフフ・・・
分かってますよ。
後日、とびっきりの紅茶とお菓子をご馳走しちゃいます☆」
「やったー!
優季さんの紅茶は美味しいですし、期待大っすよ!!」
「よっちは何もしていない。
よって、報酬を受ける権利もない」
「そ、そんなぁ〜!!」(泣
「確かにそうですね。
では、ちゃるさんだけに用意しますね」
「で、でもでも!!
こういう場合は、流れ的に私も呼ばれるんじゃないっすか!?」
「年上をからかう悪戯な子には何もありません☆」
「うう・・・
ちゃる〜!
私達、親友じゃない!!
ご配慮に預かるのも一蓮托生じゃない!!
ね!? ね!? 」(必死
「女の友情と言うものは儚いな・・・」
「う、うわぁ〜ん!!」
「冗談ですよ、よっちさん。
もちろん、貴女もご招待します」
「やったー!!」(嬉
「やれやれ。
食い意地が張っているからこそ、その栄養分が胸に行くのだろうな」
「なんだとー!!」
「まあまあ、ケンカしないでください。
私だってそれほど・・・」
「気にする事はない、優季さん。
プロポーションならダントツだ。
サイズは作る時に聞かせてもらったからな。
自信を持ってもいいぞ」
「あ、あの・・・
その・・・」(恥
「いいもんいいもん。
どうせ私って・・・」(泣
「ふむ・・・
少し苛めすぎたか・・・」
2005・2008 Leaf 『ToHeart2 XRATED&ToHeart2 AnotherDays』
「パニック・ハート」
第8話・ご奉仕しちゃいます、ご主人様☆
「・・・起きてください」
ん?
朝か?
でも、今日は休みなんだからもう少し・・・
「・・・もう。
ほら、貴明さん!」
昨日は調べ物でインターネットで情報収集で、就寝するのが遅くなってしまった。
そのせいで、まだ眠い。
「後、五分・・・」
「お、お約束ですね・・・」(汗
「それじゃ、一時間」
「それもお約束ですよ!
そうではなくて、起きてください!」
ううん?
いつものシルファちゃんなら、足蹴りが出てもおかしくない状況なのに・・・
それに口調が違うような?
寝ぼけたまま何とか起き上がり 、擦りながら目を開くとそこには・・・
「おはようございます、貴明さん☆」
何故か『メイド服』を着た、優季さんが満面の笑顔で立っていました(汗
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゃっ!
だ、大丈夫ですか!?」
一瞬で目が覚めて、驚きのあまりベットが落ちてしまった。
それが今日一日の始まりだった・・・
発端は少し前、優季さんが良い紅茶が入ったのでご馳走させてほしいと言われた。
もちろん俺も二つ返事でOKしたが、その後の言葉が曲者だった。
『それでもし宜しければ、私も貴明さんのメイドをやらせてください。
一日だけでいいですから』
まさしくそこはカオス。
意外な人からの意外な言葉に驚く人たち。
『私もー』と賛同する人たち(ご想像は出来るでしょう?)
そんな中、一番反発したのはやっぱりシルファちゃん。
『らめれすー!!
ご主人様のお世話をするのはシルファらけらもんー!!』
そんな駄々(?)を言い続け、つい先日姉二人に両手を掴まれて引き摺られるように連れていかれた。
『あーん!
ご主人様ー』(泣
『はいはい。
シルファちゃんもこれから慣れなくてはいけませんよ。
度々貴明さんが女の人を連れ込む時に、追い出されちゃいますから』
『ぴひゃ!』
『あたしだってちょっち複雑なんだから、ひっきーも我慢しなさいよ』
『ご、ご主人様のアンポンターン!!』
とりあえず、イルファさん。
その『女の人を連れ込む』と言う表現は止めてください(汗
「はぁ・・・
そういうことでしたか」
「すみません。
ちょっと張り切っちゃいまして、早く来すぎてしまいました」
そして現在、優季さんに起こされて理由を聞いている。
朝の8時前に来てベルを鳴らすが、当然俺は熟睡の為に気付かず。
そこで『何故か』全員に配られている『合鍵』を使って、入った。
「始めは物凄く納得できなかったけど、
こういう時には皆が合鍵を持っていて、良かったと思うよ」
「フフフ・・・
信用していただいて嬉しいです」
ちなみにこの『合鍵』は全員と言ったが、正確には一家。
例外に、姫百合家と小牧家はそれぞれ1つずつ。
愛佳と郁乃にはそれぞれ渡してもいいと思っているが、曲者が姫百合家。
珊瑚ちゃんやミルファちゃん、イルファさんに合鍵を渡すなんてとてもとても・・・(恐
姫百合家の分は瑠璃ちゃんが管理している。
瑠璃ちゃん曰く、
『最近、夜中にミルファが合鍵を盗ろうしてかなわん。
しかもな、最近はイルファも一緒に泥棒の頭巾を被ってやで?
あまりなお約束に怒りを通り過ぎて、呆れたわ』
本当に恐ろしい。
「それで、そ、そのメイド服は?」
「これですか?
せっかくなので、ちゃるさんに頼んでみたんです。
そしたらこれほどのものを作ってくれて・・・
どうですか?」
軽く一回転して、スカートの裾が少し捲れ上る。
改めて優季さんを見ると、確かに似合っている。
最近の流行らしいミニスカではなくロングスカートと長袖、色も黒で統一されている。
エプロンと袖の部分が白で、後ろから見えているリボン結びがアクセントになっている。
もちろん、カチューシャもつけている。
「も、もちろん、似合ってるよ」
「よかった・・・」
むしろ、似合いすぎてドキドキが止まらないです(汗
雄二が見れば暴走間違い無しですよ。
いや、アイツは最近ずっと暴走気味か。
「それでは、朝食を用意してますので降りてきてくださいね?
ご主人様☆」
「ゆ、優季さん!!」
「フフフ・・・
では、失礼します」
笑顔を見せて退室する優季さんに、俺はようやく気が抜けた。
なんだか、今日の優季さんは張り切っているいるというか、いつもより軽くなっているというか・・・
のそのそと着替えながら、妙な不安を感じた・・・
朝食は洋食を中心にしたもの。
それなら充分美味しそうだし、実際美味しかった。
だが、問題はそうじゃなかった・・・
「はい、『あーん』してください」
「じ、自分で食べられるから?」(汗
「あら?
聞いた話しですと、ささら先輩にされたのでは?
ああ!
学園で愛佳さんにしてあげてたように私に?」
「・・・あーん」
「はい☆」
ゴメン。
愛佳の時は突然だったけど、冷静に女の子に『口を開けて』なんて言えません(汗
『あーん』自体を断れれば、万々歳だけど・・・
「はい、次です」
ニコニコとご機嫌に進めてくる優季さん(メイド服着用)に断るなんて、出来る筈はなかった。
「はい、牛乳です」
「さ、さすがに飲み物は自分で・・・」
さすがにそこは断りました(汗
「ご馳走様でした」
「お粗末さまでした。
いかがでしか?」
「もちろん、美味しかったですよ」
「ありがとうございます☆」
朝からにしては、ちょっと食べ過ぎたかな?
本当にダイエットでもしようかな・・・
「どうぞ、食後の紅茶です。
それとも、コーヒーが良かったですか?」
「いいよいいよ、紅茶で。
それで、この紅茶が・・・?」
「いいえ。
あれはとっておきなので、3時のお茶会に出そうかと・・・」
「そっか。
優季さんさんがそこまで言うなら、楽しみだぁ」
今も飲んでいる紅茶もかなり美味しいし、期待が膨らむ。
「それでは食器を片付けますね」
「それは悪いよ。
これくらいは自分で・・・」
「いいえ。
これは『メイド』のお仕事ですから、ゆっくりしていてください」
「でも・・・」
「それにこの後は、お掃除もしちゃいますから」
「いいって!!
さすがにそれ以上は!!」
「シルファさんは毎日していることですよね?
なら、仕事を引き継いだ私がするのは当然の事です」
当然・・・なのか?
違う違う!!
誤魔化されるな、河野貴明!!
「だから、優季さん・・・」
「はいはい。
早く移動してくれないと、お掃除の邪魔ですよー」
優季さんに背中を押され、リビングから追い出されてしまった。
『手伝わせて』とすら言わせてもらえなかった・・・
俺って、そんなに役立たずかなぁ?
結局、優季さん一人で掃除を済ませてしまった(汗
鼻歌しながら、掃除機を使っている優季さんの姿にちょっとクラッときた。
何度も手伝おうとアタックするが、のらりくらりとかわされた。
最後には・・・
『オイタばかりしていると、メッしちゃいますよ☆』
彼女の人差し指で額を突かれ、その子供への対応にショックを受けて部屋へ戻った(閉じこもった言うな!)
そのまま昼食になり、優季さんと一緒にいただいた(和食だった)
優季さんも特に嫌がらずに、同席してもらってよかった(朝食は先に食べてきたらしいので一人だった)
その後の予定は食べてばかりだが、3時のお茶会までゆっくりしようと考えていた。
しかし、またもや優季さんは意表をついた行動をなされた。
「はい、どうぞ☆」
「はい?」
何故か正座して、太ももをポンポン叩き『どうぞ』と言われているのだ。
しかも右手には耳掻き・・・
なにをするのか分かってしまう自分が悔しい。
それでも、念の為に伺う。
「あ、あの・・・
つかぬ事をお聞きしますが・・・」
「はい?」
「な、なにをなさるのでしょか?」(汗
「耳掃除に決まっているじゃないですか☆」
や、やっぱりー!!(絶叫
そ、それだけは!!
「だ、大丈夫です!!
綺麗ですから、やらなくて構いません!!
ほら!!
地べたに座ったら、スカートも汚れるじゃないですか!?
立ちましょうよ!!」
「貴明さんはこういう場合は、
恥ずかしくてウソを言っちゃう時がありますから信用できません。
私が直接チェックします」
再度、太ももを叩いて『おいでおいで』と催促する優季さん。
雄二なら二つ返事で突撃するが、俺にはそんな度胸は・・・
優季さんも嘘と言うが、今回ばかりは根拠がある!
「ですから、前にシルファちゃんにしてもらいましたから綺麗な筈です!」
「え?」
「あっ」(汗
優季さんが驚きで固まり、俺も今更ながらまずい言葉だと理解した。
一瞬の静粛・・・
そして・・・
「貴明さん、どうぞ☆」
「・・・はい」
さらに深い笑みを浮かべ、幻覚なのか漫画チックな怒りマークが見える・・・
このとき『口は災いの元』と痛感した・・・
「痛かったら言って下さいねー」
「は、はい」
結局、こうなってしまった・・・
ああ・・・
太ももの柔らかさ(決して太っているわけじゃないよ)と温もりとか、
彼女からの石鹸やら色んな匂いで早くも限界です!
「そんなに固まらないで、リラックスしてください」
「わ、分かってはいるんですが・・・」
それは無理です(断言
妹兼家族のシルファちゃんの時でもかなり緊張気味なのに、優季さんなら限界なんてすぐに超えます・・・
「あら?
本当に綺麗ですね。
残念です」
「シルファちゃんはどっちかと言うと、スキンシップが目的ですから」
「ああ、なるほど。
シルファちゃんなりのアピールですか。
はい、反対に向いてくださいねー」
「は、はい」
会話している間に少しは落ち着きを取り戻し、言われたとおり向きを変える。
それでハッと気付く。
目の前には優季さんの身体が目の前にあり、恥ずかしくて上を向くとさらに、その・・・(恥
そこのところは武士の情けでノーコメントということで、目を瞑る。
『煩悩退散』と念ずる以上に、優季さんの耳掻きにが気持ちよくてそのまま・・・
「貴明さん?
フフ・・・
朝も眠そうでしたものね。
お休みなさい」
「ほら、先輩の寝顔ってかわいいすっねー」
「可愛い・・・」
「ホントですね。
毎日見ているシルファちゃんが羨ましいです」
ん?
ああ、そうか・・・
確か優季さんに・・・
「それなら、今度は私達がしてみるっすよ!」
「なら、シルファちゃんの説得も頑張ってくださいね」
「う・・・」
「彼女は先輩の世話をするのが生き甲斐みたいなものだ。
そう何度も変わるのは可愛そうだ」
それにしても、何か会話が聞こえるような・・・
優季さん一人じゃなかったっけ・・・
「あっ・・・
そろそろ先輩が起きそうっすね」
「どういうリアクションを取るか、楽しみ」
「もう、二人とも・・・」
うっすらと眼を開けると、黒髪の優季さんは分かる。
その他に緑髪や亜麻色の髪が見える・・・
意識が段々とハッキリしてきて、それはニヤッと笑うよっちゃんといつも通りのよっちだった。
・・・えっ?
「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
状況を理解した瞬間、悲鳴を上げながら起き上がる。
それさえも予測していたのか、覗き込んでいた2人はあっさりと避ける。
いや、お互い頭突きしなくて良かったんだけど、何か釈然としない気持ちがある。
「な、なんで!?」
「どうしたんですか、せ・ん・ぱ・い?
そんなに慌てちゃって☆」
「あ、あの・・・」
「先輩の聞きたいことは分かる。
理由は簡単。
少し前に私達も先輩の家に遊びに来た。
それに優季さんからの報酬もある。
よっちは完全にお零れだが」
「お零れ言うなー!!」
視線を優季さんに向けると、にこやかに笑っている。
「お二人が訪ねてきた時は、膝枕していたでしょう?
動けなかったのですが、携帯で連絡して合鍵を使ってもらいました」
「静かにとかなり念を押されたっす。
そのぶん、いいもの見れちゃいましたけどねー」
「な、なななな!!」
「どうどう、先輩。
寝起きに血圧が上ると、身体に悪い」
だ、誰がそうさせているのか分かっているのだろうか(汗
それに、俺としては怒るというより恥かしかっただけなので、これ以上は諦めた。
もし、藪を突付いて蛇が出てきても困るし・・・
「それでは、私はお茶会の準備をしますね」
「は、はい。
お願いします」
「期待しますっすー」
「右に同じ」
パタパタと台所へ行く優季さんに、残り3人は一声かける。
見えなくなった途端、よっちゃんがスススッと近づいてくる。
「それで先輩、どうですか?」
「どう・・・って?」
「またまた〜
優季先輩のメイド姿ですよ☆
もしかして、もう襲っちゃいました?」
「お、襲っていません!!」
「なーんだ・・・
相変わらず、先輩はへっきーですね」
「いや、常識の範囲だから」(汗
さらに近づき、俺の腕を抱え込む。
もちろん、彼女の胸の感触が・・・
「そうですよねー
私がこれほどアピールしてもかわしちゃうんすから」
「それが先輩だ」
ちゃるも反対の腕を抱え込む。
このダブル攻撃に我を忘れる・・・ということはなく、少し強引に振り解く。
いつまでも同じと思うなよ。
これでも、日々成長(?)しているのだから!
「2人とも・・・
いつまでもそんなことしないで、手伝える事があれば手伝おうよ」
「むっ!
先輩、それは挑戦と受けとるっす。
ちゃる!
フォーメーション・W・K!」
「了解」
再びガシッと両腕を掴まれる。
恥ずかしさは依然とあるが、今度もスルーしてみせる。
しかし、今度は一味違った。
2人の顔が俺を挟むように近づき・・・
チュッ♪
「なっ!!」
「いぇーい!
成功!!」
「成果も上々」
頬にキスをされた・・・
更なる予想外に真っ赤になってしまう。
「こらー!!」
「きゃー☆
先輩が怒ったっすー!!」
「心外だな。
私達の気持ちを表しただけなのに」
「そ、そうっす!!
これは言わば、親愛と乙女の想いを込めた素敵なキスっすよ!!」
「・・・さらにからかう気持ちが何割入っている?」
「・・・えへ」
「・・・ノーコメント」
それで分からない俺でもない(というより、誰でも分かる)
誰かこの2人のからかうクセを止めてください(泣
「うーん!
おいしいっす!!
さすが優季先輩の一押しっすね!!」
「よっち。
お茶会というものはもっと静かに堪能するものだ」
「構いませんよ。
貴明さんはどうですか?」
「もちろん満足だよ。
でも、ちょっと残念だな。
皆にも飲んでほしかったかも」
「今回は量がそれほど手に入らなかったもので・・・
次回は任せてください」
軽くポンと胸を叩き、約束してくれる優季さん。
うんうん、お菓子と紅茶をパカパカ堪能している2人とはえらい違いだ。
って、ほとんどない!?
「ちょ、ちょっと、2人とも!!
俺の分はともかく、優季さんの分は置いておいてよ!!」
「「あっ」」(汗
「い、いえ・・・
私より貴明さんが・・・」
テーブルの上には紅茶はともかく、用意されたスコーンなどのお菓子はほとんど残っていない(一個か二個)
優季さんの反応を見ると、それ以上はないようだ。
気まずい雰囲気になり、原因の二人は席を立つ。
「そ、それじゃ、私達はこれでお暇するっす!
ご馳走様でした!!」
「・・・ご馳走様」
一人は慌てて、もう一人は静かにドアへとダッシュ。
そうは問屋は下ろさない。
「ちょっと待って、2人とも」
「は、はい〜」(汗
「・・・」
振り返る彼女達の心境は、額から流れる一筋の汗が物語っていた。
2人に近づいて・・・
「「あっ・・・」」
口周りを拭いてあげる。
全く、そんな顔で外へ出るといい笑いものだぞ。
「後は、優季さんに言うことがあるでしょ?」
「「・・・ごめんなさい」」
優季さんと俺に頭を下げて謝る。
それぞれ下げている頭に手を乗せて撫でてあげる。
「優季さん?
彼女達も反省しているみたいだし、これで許してあげて」
「許すも何も、私は別に怒ってなんていませんよ。
ちゃるさん、よっちさん、席にお戻りくださいな。
紅茶はまだありますから。
お喋りしながら飲む紅茶も美味しいですよ?」
「本当に面目ないっす」
「反省」
彼女達も優季さんの言葉に、俺と一緒に席へ戻る。
それからは夕方になるまで、思い出話に盛り上がった。
ちゃるとよっちゃん、このみとの出来事とか、俺と優季さんの小学生時代など・・・
たまにはこういう時間もいいものだなぁ・・・
夜もふけ、ちゃるとよっちゃんは帰って再び優季さんと二人っきり。
晩御飯も作ってもらい(下ごしらえは済んでいた)、お風呂も入った。
さすがにイルファさんやミルファちゃんのように乱入はなかった。
内心、風呂まで入ってしまい、何時ごろに帰るのだろうかと思っていた。
だが、それもパジャマ姿の彼女自身の言葉で氷解。
『出来れば今日は貴明さんのお家に泊めてほしいと・・・
ダメですか?』
あまりな大胆発言にひっくり返った(比喩にあらず)
もちろん反対しましたよ?
彼女の親がどう思うかとか、色々・・・
しかし、それも軽く返された。
『私の両親も承諾済みですよ。
貴明さんを信用していると言っていました』
彼女は貴明にはそう言ったが、深い意味は異なる。
正確には、
『話に聞く彼なら間違いは起こさないし、起こせないわ。
まあ、一応別室で鍵さえ掛けておけば何も言いません。
おそらくそれも無駄でしょうけど。
フフフフフ・・・』
以上が親のコメント。
可愛い一人娘が男の家に泊まるのに、この反応。
貴明が彼女達の親からもどう見られているかよく分かる。
「はい、これでおしまい」
「フフ・・・
やっぱり、小さい頃の貴明さんは可愛いですね」
「やめてよ。
何処にでもいるような、ただの悪ガキだよ」
思い出話の余韻が続き、用事が終わった後に俺の部屋で、アルバムを見ている。
一枚一枚に興奮する優季さんに可愛いと思いながら、全てのアルバムが見せ終わった。
軽く溜息をつき、お茶を啜る(寝る前なので紅茶ではない)
「こうして成長していく貴明さんの写真を見てると、
何だかずっと見守っていたお姉さんな気分になっちゃいます」
「それはタマ姉で充分だよ」
「そうですね・・・
私もずっと、貴明さんと一緒に思い出を築きかったです。
これらの写真の横に私が写りたかった・・・」
「優季さん・・・」
彼女がもし引越しをせずにそのまま残っていたら、確かにそんな未来があったかもしれない。
「でも、優季さん。
あの時があったからこそ、再び俺達は出会えた。
妙な再会だったけど・・・ね?」
「そうですね・・・」
本当に不思議な再会だった。
夜の学園で倒れている女の子。
そこから段々仲良くなり、最後には交通事故から助けられる。
それで後悔している時、突然のもう一度の再会。
「今は充分幸せですから、満足です☆
今日は私のワガママを聞いてくださってありがとうございます」
「あれはワガママと言うより、俺が楽をさせてもらっただけじゃ?」
「いいえ。
私が望んだ事を貴方は叶えてくれた。
それが嬉しいんです」
ポスッと肩にもたれ掛る優季さん。
その表情は安らぎに満ちていて、俺も慌てたりせずに彼女の肩に手を乗せる。
一瞬驚いた顔を見せるが、すぐに落ち着いて身体ごとさらに近づく。
「貴明さん・・・」
「ん?」
呼びかけに顔を向けると、優季さんの顔がかなり近くにあった。
さらに彼女の顔はさらに近づき・・・
「ん・・・」
「っ!!」
キスをされてしまう。
そんな状況にパニックになっている間に、優季さんはゆっくりと離れて告げる。
「私、草壁 優季は河野 貴明を愛しています。
ずっと・・・転校してから想っていました。
私はいつでも『河野』の名前を、正式にもらう覚悟があります」
「えっ!?」
「そ、それではお休みなさい!!」
ガバッとベットへ直行し、布団を頭まで被る優季さん。
確かに部屋というか、ベットを譲ったから俺が出て行かなくてはならない。
でも、この状況で放って置かれても正直困る(汗
俺が取った行動は・・・
「・・・お休みなさい」
電気を消して、挨拶だけ返し出て行った・・・
何だよ?
へっきー?
もういいよ、それで・・・
でも、こういう場合にどうしたらいいか、誰か教えてくれ・・・(困
おまけ
「かーっ!!
だから先輩はへっきーなんすよ!!
そこまで来たらもうガバッと頂いちゃうのが礼儀ってもんすよー!!」
「い、いえ・・・
さすがにそこまでは・・・」(恥
「でも・・・
先輩が求めてきたら、答える気はあるのでは?」
「そ、それは、その・・・」(恥
「マズイよ、ちゃる。
段々ライバルと差が開いてきてるよ?」
「確かに・・・
あの時、頬ではなく直接するべきだった・・・」
「でも・・・
ファーストキスをそんなあっさり上げちゃうのも考えものっすよ?」
「新しいフォーメーションを考える必要がある」
「よし!
ならば、さっそく考えるっす!!」
「うむ」
「貴明さんが私を・・・
でも、まだ高校生だし・・・
ううん、今はかなり進んでいるみたいだし・・・
でもでも・・・」(恥
パニハー第8話、優季です。
夏で脳が溶けかかっているのか、妙な話になってしまいました(汗
コンセプトは『メイド服を着て貴明に尽くす』だったのですが、行き過ぎたような・・・
ちなみに、ある情報サイトで優季のフィギア(メイド服)の画像が公開されていて、
『ネタになるかな?』と見た途端に『これで行こう!!』と決めました。
衝動的ですみません(汗
容量も少し短いですが、本来はこれくらいを予定していました。
今までのが長すぎたんです。
さて、次回はまーりゃんです。
彼女の暴走をお楽しみに・・・
ラングさん・風車さん・こうりさん、ご感想ありがとうございました!!