「さて・・・
あたしが言いたいことが分かるかね、さーりゃん?」

「???」

「首を傾げて不思議そうな表情で見ない!
せっかく苦労してたかりゃんを数日リサーチしたんだぞ!」

「・・・相変わらず暇ですね、まーりゃん先輩」

「くはー!!
冷静なツッコミに呆れた視線!
さーりゃんも微妙にたかりゃんに似てきたぞ!
いつの間にか、たかりゃん色に染まってきたのか!?
あちしの色はもうシミ程度なんだな!?」

「いえ、環さんからのアドバイスです。
『まーりゃん先輩が暴走したら、冷静に一歩下がりなさい。
それで少しは対応できるし、あの人のテンションが下がれば言うこと無しよ』
って・・・」

「ぐぬぬぬ・・・
さすがたかりゃんを幼少の頃から調教したタマりゃん、恐るべし。
あの冷静なツッコミはさーりゃんにまで伝授されているとは・・・」

「いえ、皆さん全員です」

「だー!!
皆して俺をイジメて楽しいか!?
全員サドか!?
Sなのか!?」

「先輩に大人しくしてほしいだけです」(キッパリ

「ふ、ふん!
まあいい・・・
今度は別のアプローチで、引っ掻き回してやるからな!
これで勝ったと思うなよー!!」

「それは由真さんのセリフです」

「そんなことはどうでもいい!!
いいか、さーりゃん!!」

「はい?」

「たかりゃんのファーストキスが奪われたのは知っているだろう?」

「ええ。
最初はイルファさん、次にミルファさんでしたね?」

「甘い!!
リサーチした結果、末っ子のシルファちゃんもだ!!
しかも!!
なんと、ヘタレの代名詞・たかりゃんからキスしたんだぞ!!」

「・・・・・・」

「ファーストキスも、自分からのキスも全てメイドロボに持っていかれているのだぞー!!
やはりたかりゃんはメイドロボマニアだったのか!?
人類全ての野望を叶えたのか!?」

「貴明さんにそんな野望はありません」

「あ、あれー、さーりゃん?
ヤキモチ焼いたり、『たかりゃんを殺して私も死ぬー!!』とかないのかや?」

「どこの昼ドラですか?
貴明さんは皆さんを平等に大切にしてくれています。
仲間ハズレなんてありませんし、シルファさんの事情も大体イルファさんから聞いてますから」

「いかん、いかんぞ、さーりゃん!!
そんな受身なんて!!
もっとこう、アプローチをせねば!!」

「アプローチ?」

「そうだ!!
押して押して押しまくれ!!
いいか、具体的にはだな・・・」

「は、はい・・・」(すっかり流されてる

「まずは・・・で・・・・・・だ!」

「えっ!
そこまで・・・」(恥

「さらに・・・こう・・・だぞ!」

「はう・・・」(照

「最後に・・・したら・・・完璧!!」

「・・・・・・」(ショート

 


2005・2008 Leaf 『ToHeart2 XRATED&ToHeart2 AnotherDays』

「パニック・ハート」
 第5話・ピュア・アタック


 

シルファちゃんとのことがあってからの週末。
ミルファちゃんは『貴明からちゅーして!!』とお願いされ、周りの皆も騒動になって大変だった。
土曜日になって、いつも通りシルファちゃんに起こされた(休みだから少し遅くだった)

 

プルルル・・・プルルル・・・ガチャ

 

「はい、河野です」

「むぅ」

顔を洗った後、リビングに入ろうとすると電話が鳴った。
いつもシルファちゃんがでるけど、こういうタイミングだったから仕方ない。
だからシルファちゃん、そんなに睨まないで(汗

『あー、テステス。
本日も快晴なり』

 

ガチャ

 

「ろうかしたのれすか、ご主人様?」

「間違い電話かイタズラ電話だよ、きっと」

不思議そうに首を傾げるシルファちゃん。
意味不明の電話には違いない(現実逃避)

 

プルルル・・プルルル・・・

 

「・・・いいのれすか?」

「・・・出るよ」

再度鳴る電話にこの先にある騒動の予感に溜息を出す。

「何ですか、まーりゃん先輩?」

『ひどいぞー、たかりゃん!
あたしと分かっていて切ったのかー!
イジメだ、イジメ!
裁判に訴えるぞー!!』

「それで何のご用ですか?
こんなに朝早く・・・」

『うわっ!
あっさり流したな、このやろー!
まあいい、よく聞くがいいたかりゃん。
さーりゃんとデートするのだ!』

「はあ?」

何故?
急に何を言い出すんだ、この人は?

『デートスポットなどはさーりゃんに伝えてある。
突然のデートの予定を立てるのは、たかりゃんには無理だろう』

実際、思いつかないから何も言えない自分が悲しい。

『ちなみにさーりゃんはとっくに待ち合わせ場所にいるからな。
断るなんて考えないように』

「な、何ですとー!?」

時計を見るとまだ9時にもなっていない。
そんな早い時間から待っているのか!?

『フフフ・・・
広場で待ち合わせをする美少女。
しかし、さーりゃんにナンパをあしらうことが出来るかな?
どう思う、たかりゃん?』

「・・・・・・」

そんなの考えるまでもない。

『さあ・・・
行くがいい、たかりゃん。
哀れな子羊を救うのだー!!』

「その子羊を放り込んだ人が言わないでくださいー!!」(絶叫

電話を切り(叩きつけて)慌てて部屋に戻る。
一刻も無駄に出来ない。
急いで着替えて財布を掴み玄関へ戻る。

「ろ、ろうかしたのれすか、ご主人様?」

「ごめん、シルファちゃん!!
ワケは後で説明するから!!」

状況を知らないシルファちゃんが説明を求めるけど、無論そんな時間は無い。

「えっ? えっ?
ちょ、朝食はろうするれすか?」

「それもごめん!!
食べている暇は無いんだ!!」

「ええ!?」

靴を履き準備完了。

「後で連絡して事情を話すから!!」

ドアを開き外へ飛び出す。
ささら先輩、間に合ってくれ!!

「ご、ご主人様のあんぽんたーん!!」(絶叫

後ろからドアを閉まる直前、シルファちゃんの怒声が響き渡った。
そのセリフ、まーりゃん先輩に言ってくれ・・・

 

自分が信じられないような時間に広場につき、見回してもささら先輩の姿も形も無い。
周りを直接調べても、同じく待ち合わせしている訪ねても結果は変わらず(着たばかりの人が多い)・・・
完全にお手上げ状態になってしまい、ベンチに座って息を整える。
時計を見ると10時半・・・
時間もかなり経ってる・・・
仕方ない、皆に協力を頼むしか・・・

「貴明さん?」

「??」

突然呼ばれて顔を上げると、キョトンと不思議そうな表情でささら先輩が立っていた。
って、ささら先輩!!

「さ、ささら先輩!!」

「は、はい!!」

突然の展開に立ち上がって思わずガシッと肩を掴んでしまう。

「無事でしたか!?
何もありませんでしたか!?」

「は、はい・・・」

「しつこいナンパとか変な勧誘とか遭わなかったですか!?」

「い、いえ・・・
特には・・・」

切羽詰った俺の質問に頬を赤くして返答してくれる。
肩を掴んだままとか、顔を近づけ過ぎたのが原因だけどそこまで気が回らない。

「知らないおじさんにクラゲをあげるとか、
何処とも無くカエルが現れて負いかけているうちに迷子にならなかったですか!?」

「・・・貴明さんが私をどう思っているか良く分かったわ」

「あっ」(汗

気が動転して、いらないことまで言ってしまったらしい・・・
冷静になったささら先輩も俺の手を外し、一歩下がる。

「別に私はナンパはされて知らないおじさんに声を掛けられたこともありません。
私は今来た所ですから。
貴明さんこそどうしたの?
待ち合わせの時間には間に合っている筈なのにそんなに疲れて・・・?」

「はっ?」

今来た?
待ち合わせ?
間に合ってる?

「え、えっと・・・
ささら先輩、ちょっと確認いいですか?」

「ええ、かまいませんが・・・」

うん、ここは状況を確認しよう。
何となく予想がついているような気がするが・・・

「ささら先輩は何時に待ち合わせと?」

「11時ですけど・・・
少し遅かったですか?
すみません、こちらも準備がありまして・・・」

「い、いえ、それはかまわないんですけど・・・
連絡方法は・・・?」

「まーりゃん先輩が任せろと言っていたので・・・
元々この・・・で、デートも先輩が提案してくれたのですけど」

「・・・・・・」(ガクッ

「ああっ!!
ど、どうかしたの!?
貴明さん!?」

予想通りの結果に再びベンチに倒れるように座り込む。
全ては・・・

「グッモーニン!!
さーりゃん、たかりゃん!!」

突然沸いて出た人物が全ての原因!!
そんな反省の無いどころか、笑顔満点のまーりゃん先輩に・・・

 

ゴツン!!

 

「っ〜〜〜〜いったーい!!」

頭にゲンコツをしてもバチはあたらないはずだ。
むしろこの人こそバチを願う。

「な、何するんだ、たかりゃん!!
暴力だぞ!!
DVだぞ!!」

「そんな仲にはなっていません」

全く、何がDVだよ・・・

「あの・・・
貴明さん、一体・・・?」

事情が分からなくてオロオロしているささら先輩に事情を話す。
聞くうちに戸惑いからすまなさそうな表情に変わり、まーりゃん先輩を睨む。

「そういうことなの・・・
申し訳ありません、貴明さん。
まーりゃん先輩に任せたばっかりに・・・」

「ささら先輩は何も悪くはありませんよ。
・・・反省無しですね、まーりゃん先輩」

諸悪の権化は何処からか出したのか、説明している間にベンチに座ってジュースを飲んでいる。
ああ・・・ホントに何とかしてください、神様(切実

「ん?
どうかしたか、たかりゃん?
このジュースがほしいのか?
いいぞ、舐るように間接キスするがよい」

「いりませんし、しません!!
俺が言いたいのはどうしてこんなことをしたのかということです!!」

「先輩、私も聞きたいのですが?
さすがにイジワルが過ぎます。
何ですか?
ナンパは怖いですけど、知らないおじさんには着いていきません」

気にしてたんだ・・・(汗

「えへへへ・・・
デート前にちょっとしたアクセントをつけようかと・・・」

「「・・・・」」

「な、なんだよー、二人してアホな子を見るような視線は・・・?」

いや、アホな子でしょう実際。
俺の色んなものを返せー(脱力

「それで、慌てまくる俺を楽しそうに見ていたというわけですか・・・」

「いんや・・・
さーりゃんをストーカーしながら来たから、たかりゃんはよく知らん」

最悪だ!!
最低で最悪ですよ、この人!!

「まあ、俺の出番もココまでだし後はたかりゃんに任せる。
しっかりとさーりゃんをエスコートするように」

「・・・ついてきませんよね?」

「ひ、ひどい!
たかりゃんは私を信じていないのね」(うるうる

「全く」(キッパリ

「くはー!!」

いつまでもまーりゃん先輩と漫才モドキをしていても仕方が無い。
早く移動するか・・・

「行きましょうか、ささら先輩」

「ええ」

まーりゃん先輩を置き去りにして広場から離れる。
ホントにこのトラブルメーカーを何とかしてください・・・

「あ、あれ?
ホントに置いていくのか?
もう少し付き合ってくれてもよかないかい?
あのー・・・
もしもーし・・・」

 

 

広場から離れてどこに行こうかと聞くと、ささら先輩は任せてとばかりサクサクと進む。
・・・何故か腕を組んで(汗
一応、理由を尋ねると・・・

「ミルファさんの話し以来、羨ましくて・・・
何時か機会があればと・・・
ダメ・・・ですか?」

「・・・かまいませんよ」

シルファちゃんもそうだったし、まさか全員!?
勘弁してください(泣
ささら先輩が持っていた荷物を変わろうかと思ったが断われ、そんなやり取りをしながら着いた目的地は・・・

「水族館・・・」

うん、これも予想通りだった。
彼女が行きたい場所と言えばココしかないだろう。
そのうち、水族館の人と顔見知りになっているのではないだろうか。

「あっ・・・
ちょっと待って、ささら先輩」

「??
どうかしたの?」

「いえ、入る前にちょっと腹ごしらえを・・・
ささら先輩もどうですか?」

前に郁乃と一緒に食べたメロンパンが今日も出ていたので、買いに行く。
さすがに朝食抜きだったからなぁ・・・

「・・・それじゃあ、一口。
でも、貴明さん余り食べ過ぎてはダメですよ」

「わかってますよ」

ささら先輩の体質も少しづつ改善され、手作り料理も食べれるようになってきた。
お気に入りは俺が作った料理らしい。
何故だ?
タマ姉やイルファさん達の方がよっぽど美味しいのに・・・
最近はシルファちゃんに任せっきりだし、たぶんお弁当なんてもう作れないだろう。

「どうぞ、先輩」

「・・・・・・」

買ってきたメロンパンを先に食べてもらおうと渡すが、受け取ってくれない。
何か考えるような仕草をしたあと、赤くしておずおずと『お願い』を口にする。

「た、貴明さんが食べさせてください」(恥

「ええー!!」

こ、こんなオープンな所でですか!?
だ、大胆になりましたね、ささら先輩・・・
って、違う!!

「ダ、ダメでしょうか?」

「さすがにそれは恥ずかしいですよ・・・」

「わ、私もそうですけど、お、お願いします」

お願いする先輩にあることに気づく。
まーりゃん先輩の卒業式から少し経った頃からのアプローチ(ぜんぜん分からなかったけど)からは違って、
俺でも分かるように積極的になってきた先輩。
恥ずかしいのは向こうも同じだし、俺がウジウジしていたら申し訳ない。
ここは男としてやるべきだろう。

「わ、わかりました。
で、では・・・」(恥

「あ、あーん」(激恥&真っ赤

メロンパンを一口サイズに千切って差し出し、ささら先輩は軽く口を開ける。
口に入れたときに進みすぎたのか、指に唇が当たってドキドキする。
もう一杯一杯です!!
許容量オーバーです!!

「た、貴明さん・・・
も、もう一口いいですか?」

「えっ」(固

再度のお願いに一瞬考えるが、開き直ってもう一度渡す。

「ど、どうぞ・・・」

「あーん・・・(パクッ
もう一口・・・」

「・・・・・・」

結局、メロンパン一個全てささら先輩が食べてしまった・・・
あまりの恥ずかしさに空腹感なんて飛んださ。
先輩、積極的になりすぎです・・・

 

周りの生暖かい視線に気づき、逃げるように水族館に入館する。
入った後、足取りが軽くなりスイスイ進むささら先輩が向かった先は・・・

「クラゲ・・・」

「可愛いですよね」

ココまで予想通りに行動する彼女も珍しいのではないだろうか・・・
ウットリと軟体生物を眺めるささら先輩。
飽きないのだろうか?
飽きないんだろうなぁ・・・

「貴明さん、このクラゲは・・・」

「いえ、何度も聞いていますからもう分かってます」

「イジワル・・・」

イジワルとかじゃなくて、来る度にや学校でも聞いていれば嫌でも覚えるさ。
誕生日にクラゲの図鑑でもプレゼントしようか(半分冗談で半分本気)
2人揃ってクラゲを観察し(一人はウットリ・もう一人はボーっと)していると、
見知った声で名前を呼ばれ背中に重みを感じた。

「あー!
貴明やー!」

「あかんで、さんちゃん!!
貴明に触ったら子供が出来るでー!!」

「ウチ、貴明の子供ほしいなー」

「なっ!!
さんちゃんから離れろ、ごうかんまー!!」

「・・・瑠璃ちゃん、お願いだからいきなり疑われるようなこと言わないで」

「珊瑚さん、瑠璃さん、こんにちわ」

「こんにちわですー」

「え、えっと、こんにちわ」

後ろを振り向くと双子の姉妹、背中に抱きついている珊瑚ちゃんとプリプリ怒っている瑠璃ちゃんがいた。
いや、珊瑚ちゃん?
顔をスリスリと擦りつけるのはやめてれないかな?
瑠璃ちゃんの目もつり上がってきてるし(汗

「二人とも、珍しい所で会いましたね」

「長瀬のおっちゃんにチケットをもろーてなー」

「貴明が来てるんなら、今日はパスしたのに」

「クスクス」

瑠璃ちゃんも相変わらずだけど、本気で言っているわけじゃないと分かっている。
その証拠にささら先輩も、俺たちを微笑ましそうに見ている。
まだ背中に乗ったままの珊瑚ちゃん、怒りから諦めに変わり微妙に近くによって来ている。
ソワソワして俺の手をジッと見ている(顔も少し赤い
不意打ち気味に一撃使用としているのだろうか?
そんな瑠璃ちゃんは急に不思議そうな顔をして、何かを思い出したよう珊瑚ちゃんと会話する。

「ん?
なあ、さんちゃん・・・
確かシルファから電話で貴明がどうした・・・って、電話が掛かってきたなぁ?」

「うん。
いっちゃんもみっちゃんも話しを聞いた後、飛び出していったんよー
だから、瑠璃ちゃんと2人だけになってしもうたん。
今日までがチケットの有効期限やなかったらズラしたんやけど」

「あっ」

わ、忘れてた・・・(汗
シルファちゃんには後で連絡すると言っていたんだ。
2人の内容からすると、イルファさんとミルファちゃんも俺を探しているらしい。
こ、これはまずい。

「ごめん、ちょっと電話をしてくるから」

「は、はい、わかりました」

珊瑚ちゃんを下ろし公衆電話を探す。
怖いけど仕方がない。
大半はまーりゃん先輩が悪いけど、連絡しなかったのは俺のせいだし。
うう、前みたいに拗ねないといいなぁ・・・

「どうせ、シルファにえっちぃことして家を追い出されたんや」

「そかなー
しっちゃんなら拒まないと思うけどー
それなら、皆呼んでくれたらよかったのに」

「み、み、皆!?
珊瑚さん、それは・・・!?」(真っ赤

「ウチはそんなんしたくないもーん!!」

「もう、瑠璃ちゃん、素直やないなー」

あの、皆さん・・・
決してシルファちゃんにそんなことはしてませんし、盛り上がらないでください(汗

 

「おかえりなさい、貴明さん。
シルファちゃんと連絡つきました?」

「え、ええ・・・」(疲

「しっちゃん、何て言ってたん?」

「・・・ノーコメントで」

「こっぴどくおこられたようなやなぁ、長かったし。
そらそやろ、心配しているのに連絡は来ない。
やっときたと思ったらデートやし」

「・・・瑠璃ちゃん、すごいね。
ほとんどあってるよ」

「事情を知ったら誰でも分かるわ、アホ」

「返す言葉もございません・・・」

すごかった・・・
それしか言えないくらいシルファちゃんだった。
電話に出た途端、『ご主人様!?』と叫ばれ宥めるのに時間がかかり、
訳を話すと怒鳴り散らし散々だった。
帰りたくないなぁ・・・

「そ、それより、珊瑚ちゃんたちはどうする?
このまま一緒に回る?」

ささら先輩も2人ならいいと思うし楽しいだろう。

「それがなー
さっき、まー・・・うむっ!」

「ええんや、貴明。
せっかくのデートなんやから、ウチらはええよ!」

珍しいことに、瑠璃ちゃんが珊瑚ちゃんの口を塞ぐという実力行使にでた。
しかも無駄に清清しい表情で断ることもまた珍しい。
何かあったのだろうか?

「ぷはっ!
瑠璃ちゃん、なにするんー?」

「ごめん、さんちゃん。
でも、それは内緒やで」

「ああー
そやったなー」

意味深な会話に首を傾げ、ささら先輩を見ても首を軽く横に振る。
???

「それやったら最後に貴明にギュッとしてもらうー
貴明分の補充や」

「ええっ!?」

「さんちゃん!?」

なに、その成分?

「ウチだって、いっちゃん達から話しを聞いて羨ましかったんやー
それくらいええやん」

両手を上げて、アピールする珊瑚ちゃん。
そこでイルファさん達を引き合いに出されると断りづらい(キスしたし)

「瑠璃ちゃん?」

「・・・好きにせー
こんなになったさっちゃんは諦めへん」

こういうときこそ諦めないで加勢してよ!!

「・・・ささら先輩?」

「・・・宜しいのではないかと。
次に私もしていただければ・・・」

無理です!!

「お願いやー」

キラキラと気体に満ちた表情をしてのお願い。

「・・・分かったよ、少しだけだよ?」

「やったー!」

断りきれない自分が虚しい。
それとも断られさせない笑顔の珊瑚ちゃんが悪いのだろうか?

「ほな、お願いなー」

ピョンと正面から抱きついてくる珊瑚ちゃんに軽く抱きしめる。
珊瑚ちゃんは幸せそうに、瑠璃ちゃんは唸り声を上げ、ささら先輩は羨ましそうにしている。

「はい、お終い」

「ありがとうなー」

満足したのかニコニコと離れてくれた。
だが、『次』と言うものがあるとは思わなかった。

「次は瑠璃ちゃんの番やでー」

「はい!?」

「分かってるで、瑠璃ちゃん。
さっきから我慢しているのがみえみえや。
腕も繋ぎたかったんやろー?
貴明がすきすきすきーなんやから、正直になりー」

「うわっ!」

瑠璃ちゃんの背中をドンと押され、正面にいる俺が受け止めしかない。
慌てて離そうとするが反して服を掴まれてしまった。

「えーと・・・瑠璃ちゃん?」

「・・・今だけなら許したる」

俯いたままでの精一杯のお願いに、抱きしめることで答える。
珊瑚ちゃんの時のより長くなってしまったのは気のせいだ。

「そ、それじゃ、ウチらはもう行くなー!
イルファたちにはうまく言っておくからなー!!」(激恥

「さ、さんちゃーん!!」

離れた途端、珊瑚ちゃんの手を引いて離脱していく瑠璃ちゃん。
よくわかないけどイルファさん達のフォローしてくれるのはありがたい。
恥ずかしい思いをしてまで頑張った甲斐があった。

「貴明さん・・・」

「・・・・・・」

さて、ささら先輩は断りきれるだろうか・・・
皆さん、予想してください・・・(笑

 

 

結局断りきれずに抱きしめてしまった・・・
誰だよ、予想通りと言う人は?
それからはささら先輩はくらげの観賞を続け、
俺はまたもや周りに気づき、少し離れたイスに座って買ってきたジュースを啜る。
俺ってこうして女の子に慣れされていくのだろうか?
前は話すことすら苦手だったのになぁ。
それが腕を組んだり、抱きしめたり、き、キスですよ?
このまま進んだら・・・(想像中
ブンブンブン(首を振る
ない!!
そこまでは無い!!
絶対・・・きっと・・・たぶん・・・(汗

「貴明さん?」

「うわっ!!」

「きゃっ」

妙な考え(妄想?)をしているとささら先輩が軽くしゃがみこんできた。
突然の距離の近さに驚き大声を出してしまう。
その声にささら先輩も驚いてしまった。

「ど、どうかしたの?」

「い、いえ、なんでもありません。
先輩こそもういいの?」

さすがに何を考えていたなんて言えるはずがない(汗
すみません、ささら先輩、皆。
俺は汚れた男になってしまった。

「え、ええ・・・
貴明さん、お腹空きませんか?
朝食も食べてないし、メロンパンも結局私がいただいてしまって・・・
時間も遅いくらいですよ?」

「もうそんな時間ですか?」

「はい」

時計を見ると2時を過ぎている。
トラブルばかりで正直あまり空腹感はない。
でも、ささら先輩も空いているかもしれないし、昼食にしようか。

「そうですね。
それじゃ、売店に行きましょうか?」

「は、はい!」

「???」

何故か緊張と気合が入った返事をしてくる。
食事するだけなのになぁ・・・

 

売店に着いて席を確保し、何にするか決める。

「先輩は何にしますか?
買ってきますよ?」

「た、貴明さんはどうするのですか?」

「俺はレジで見て決めようかなっと・・・」

水族館だし、魚以外なら今は拘りはないな。

「そ、それならお弁当を作ってきたんです。
もし、よかったら・・・」

「えっ!?
ささら先輩が!?」

「はい・・・」

驚いた・・・
朝言っていた準備はこれだったんだ
料理の練習していたことは知っていたけど、実際に手渡されたお弁当箱を受け取ると感無量になる。
作る所か、手作りの料理自体を食べることが出来なかったのに・・・
確かにささら先輩は良くなりつつある。
これも皆のおかげだ。
これこそ断ったらバチがあたるだろう。

「もちろんいただきますよ」

「はい、どうぞ。
召し上がってください」

蓋を開けると率直に言って綺麗だった。
色とりどりだし、バランス的にも考えられていることがよく分かる。
どれ、まずは一口。

「いただきます」(パク

「・・・・・・」(ドキドキ

「うん、おいしいですよ」

「あっ・・・」

緊張した雰囲気が和らぎ、安心した嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

「ウソじゃなくて、ホントにおいしいですよ。
ちょっと和食が多いですね。
いえ、イヤなんじゃないですよ?
ちょっと気になって・・・」

確か和食って難しいんじゃなかったかな?

「フフフ・・・
分かってますよ。
料理は環さんから教わったんです」

「へえ、タマ姉に・・・
だから和食なんだ」

タマ姉が今の状況になる前から、作るお弁当は和食のみだった。
雄二もよくぼやいていたっけ(その後、注意かアイアンクローをもらってたけど)
ん?
雄二?

「ささら先輩、何処で練習しましたか?」

「えっと・・・
家の時もありましたし、環さんのご自宅にお邪魔した時もあったわ」

「タマ姉の家に行った時に、その・・・雄二は?」

アイツなら絶対暴走し邪魔したんじゃないか?

「初めて伺った時にエプロンがどうか自分なら何やらと言っていたけど、
環さんが雄二さんを連れて席を外してから一度も見てないわ」

雄二・・・(汗
余程の折檻を受けたのだろうなぁ。
もしかしたらシルファちゃんとの買い物の時に出会った時も、ささら先輩との練習をしていたのだろうか?
食事抜きって言ってたな・・・
満足に食べているのだろうか?
今度、食堂で何か奢ろう。

「気に入ってくれてよかったわ。
環さんにはお墨付きだったけど、初めて食べてもらうと緊張するわね」

「これだけ美味しかったら充分ですよ」

「いいえ、まだまだ改善の余地はあるの。
環さんもまだ付きあってくれると言ってくれましたし、今度イルファさんにもご教授してもらうんです」

「へえ・・・」

今のいきいきしたささら先輩は本当に楽しんだろう。
そうじゃなければ、こんな笑顔は出来ない。

「私の目標は貴明さんが作ってくれたお弁当に追いつくことなんです。
と言っても、追いつけることが精一杯で超えることなんて出来ないと思いますけど」

「ええ!?
いくらなんでもそれは・・・
もう、充分に超えてますよ!!」

目標にするものを間違ってませんか!?
あんな短時間での練習のお弁当なんて、比べることもおかしいですよ!!

「いいえ・・・
そんなことはないわ」

混乱する俺にささら先輩は姿勢を正し、真剣な雰囲気を纏う。

「貴明さんのお弁当を頂いた時は申し訳ないと思うと同時に嬉しかった。
一口しか出来ずにそれどころか出してしまったけど、あの味は忘れないわ。
一生ね」

「先輩・・・」

「ありがとうございます、貴明さん。
お弁当を作っていただいて、そして私と出会ってくれて・・・
貴方が屋上に来てくれて出会わなかったらと思うと、心が痛い。
まーりゃん先輩や両親とも和解出来ず、一人ぼっち・・・」

「・・・・・・・」

俺も想像する。
もし、ささら先輩に出会うことが出来なかったらと思うと・・・
彼女が一人になってしまうなんて、絶対にダメだ!

「まーりゃん先輩と笑いあって、ライバル以上に友人として大切な皆さんも周りにいて、大好きな貴方が側にいる。
本当に幸せ・・・
貴方を愛して・・・います」

「っ!!」

何で皆はこんな俺にここまで想ってくれるんだろう。
優柔不断で皆の気持ちなんてこれっぽっちも気づかない俺なんかを・・・
今でも誰が一番好きなんて分からないし、もしくは考えないようにしているバカな男を・・・

「ささら先輩・・・
俺も貴女と出会えてよかったと思うし、好きだけど誰かを選ぶことが出来ない。
ゴメン・・・
先輩はそこまで言ってくれてるのに、こんな答えで・・・」

「いいんですよ。
変に誤魔化したり、気を使って諦めてといわれるよりずっとマシよ。
今の貴明さんが思うままの答えが聞けてよかった」

ささら先輩は強くなった。
俺なんかよりもずっと・・・
今度は俺の番だな。

「あら、やだ・・・
恥ずかしい話しをしてしまいましたね。
食事を続けましょうか?」(恥

「そ、そうですね」

会話も声自体は普通だったから周りには聞こえていない。
こんな話し、聞かれてしまったらしばらくはココに来れないだろう。
誤魔化すようにお弁当を食べていると・・・

「ごふっ!!」

「貴明さん!?」

むせてしまった(汗
ささら先輩も立ち上がって背中を摩ってくれる。

「す、すみません・・・」

「急いで食べるからですよ、はいお茶」

「ど、どうも」

差し出されたお茶を飲み干し、一息つく。
全く何をしてるんだか・・・(呆

「ジッとしてください。
口の周りも汚れてますよ」

「そ、それくらい自分で拭きますよ」

「ダメです」

ぴしゃりと言い、拭いてくれる先輩。
何か急に子ども扱いになったような気が・・・

「はい、綺麗になりましたよ」

「ありがとうございます」

「後、もう少しジッとしててくださいね」

「はい?」

そのまま和やかにお弁当を食べ終わるはずだった。
けど、最後の最後に先輩はとんでもない爆弾を置いてくれた・・・

「ん・・・」

「っ!!!」

俺の頬を両手で挟むように掴み、そのままキスをされる。
頭が真っ白になって何も考えられない。
ピクリとも動かなくてジッと受け入れる。
静かに離れた後のささら先輩は、照れても嬉しさと楽しさがこもった眼差しを向けている。

「これは私の気持ちも表れです。
言葉だけじゃなくて、行動も大事だと皆さんに教えられましたから。
それとこれからは『先輩』はいりません。
名前で呼んでください」

「ささら・・・さん」

「本当は呼び捨てがいいんですけど、今はそれで満足します。
いつかそう呼ばせてみせますね☆」

いや、もう・・・
強くなった所じゃない・・・
負けたよ・・・
そしてこれからもお願いしますね、 『ささら』・・・

 

 

おまけ

 

「やっほー
お疲れのようだね、たかりゃん」

波乱万丈な出来事があった水族館から出てきた俺達を出迎えたのは、
イヤラシイ笑みを浮かべたまーりゃん先輩だった。

「どうしてこんな所にいるんですか、まーりゃん先輩」

「もちろんつけていたに決まっているじゃないか」

親指を立ててカッコいいポーズを決めて、非常に不謹慎な言葉を出した。

「あの・・・
いつから・・・」

「うん?
最初からに決まっているじゃないか?
いつベストショットが取れるか分からないだし」

何か聞き捨てならない言葉が・・・(汗

「最初はさーりゃんにたかりゃんの浮気をチクった時から始まりだった・・・」

「いきなり嫌な出だしですね・・・
浮気云々とかつっこんでいいですか?」

「ダメ」

腕を組んで偉そうに喋りだすまーりゃん先輩。

「そこはタマりゃんとたかりゃんに調教されたさーりゃん、あっさり流した。
そこで一計した。
もっと積極的にならなくてはとアドバイスしてデートを仕組んだ」

ささらさんを見ると軽く頷く。
アドバイスは本当らしく、だからいつも以上に積極的というか大胆だったんだ。

「それじゃ、お弁当やその・・・き、キスもですか?
それはちょっとやりすぎじゃないですか?
ささらさんの体質は知っているでしょう?」

「おっ?
いつのまにたかりゃんは、さーりゃんを『さん』付けで呼ぶようになったんだ?」

「そ、それはいいんです!!」

ニヤッと意地悪・・・いや、邪悪に歪む。
これ以上弱みをみせてはいけない。

「まあいい。
さすがのあたしだってさーりゃんが嫌なことをやらせたことはない」

「今までのトラブルを思い出して言ってください」

「あれー?
どうだったかなー?」

「まーりゃん先輩・・・」

さすがのささらさんも咎めるような視線を向ける。

「とにかく!!
あちしはデートを仕組んだり面白半分にアドバイスしたが、そこまでしろは言っていない!!
全てさーりゃん自身がしたことだ!!」

「ええっ!?」

慌てて振り向くとささらさんは真っ赤になって俯いている。
色々と思い出したのだろう。

「そこで話しは戻るが、2人の数々の場面をこのデジカメで撮っておいたのだー
ちょっとしたお小遣いが無くてなー
どうだ、さーりゃん?
買わないか?」

「お、お願いします!!」

「ちょっと待ってください!!」

結局、何?
小遣い欲しさに仕組んだの?
フ、フフフ・・・

「・・・まーりゃん先輩」(怒

「な、何かな、たかりゃん?
そんな怖い顔して?
そんなに見つめられると照れちゃうぞ?」(恐々

今の俺には泣き落としも誤魔化しも効かない。
覚悟はいいですか?

「没収!!」

「だ、ダメだぞ!!
これは今後の金なる木と脅迫ネタなんだ!!
い、痛い痛い痛い痛い痛い痛いー!!」

「貴明さん!!
一度だけ写真の現像をさせて!!」

反省の色無しの子悪魔に米神をゲンコツでグリグリ。
最後はまーりゃん先輩の悲鳴とささらさんの大声が周りの視線を集めた・・・

 

 

第6話へ続く

 


パニハー第5話、ささらです。
『AnotherDays』と違い、 『XRATED』はそれぞれのストーリーも文句は無く良作だと思ってます。
ささらは『XRATED』からの新キャラですが、楽しめたと思います。
最後の学園での戦いは小さい頃見た『僕らの7日間戦争』を思い出しました。
(タイトルもうろ覚えですし、内容を知っている人が何人いるやら?)
さてSSですが、内容は『ささらが積極的になり料理の体質が改善されている』をメインにしました。
本編での遠回しのアピールも良かったのですが、このSSでは逞しさも要求されますので(笑
ちょっといき過ぎたかもしれませんが、ほのぼの・らぶらぶ・コメディの3点が出来てよかったです。
まーりゃん先輩もすらすらと楽しく書けました。
次回は委員長こと愛佳です。
ラングさん・ノネムさん・こうりさん・風車さん、ご感想ありがとうございました!!