「イルイルとミルミルも、ご主人様とちゅ、ちゅーしたのれすか!?」

「でも〜
先にお姉ちゃんが貴明とちゅーしていたなんて・・・
あたしが貴明のファーストキスを奪ったと思ってたのになぁ」

「貴明さんには秘密と言われていましたが、ここは譲れません。
それにミルファちゃんが皆さんに言いまわりますし、貴明さんは・・・」

「隠し通せるわけないじゃない。
問い詰められたら、お姉ちゃんの事もバレちゃうよ」

「押しが弱いですから」

「弱いよね」

「フフフ・・・」

「アハハハ・・・」

「・・・・・・」

「あら?
どうしたのですか、シルファちゃん?
急に黙り込んでしまって」

「な、なんれもないれす!!」

「・・・はっはーん」(邪笑

「な、なんれすか?」(怯

「・・・羨ましいんでしょ?」

「ぴっ!!」

「あらあら・・・
シルファちゃんも随分成長しましたね。
ツンツンしていたあの頃が懐かしいです」

「な、なに言っているれすか、2人とも!!
シルファはちゅ、ちゅーなんて・・・」

「へぇー・・・
シルファは貴明とちゅーしたくないんだー
どうする、お姉ちゃん?」

「それは残念ですね。
貴明さんもショックを受けてしまいます。
・・・本当にしたくないのですか?」

「そ、それは・・・」

「「それは?」」

「し、したくないれす!!
シルファはご主人様とちゅーらんて、これっぽっちも思ってないんらもん!!」

「あーあ・・・」

「言っちゃいましたね」

「ぷ、ぷん!!
し、シルファはご主人様を起こしに行ってくるれす!!」

 

「・・・行っちゃった」

「もう・・・
どこまでも意地っ張りで不器用な妹なんですから」

「でも、背中を押すにはちょっとやりすぎたかな?」

「ええ。
少しイジワルがすぎたようです。
シルファちゃんもちゅーしたいって、丸分かりなのに・・・」

「どうしようか?」

「とりあえず、この話しはこれまでとしましょう。
後は貴明さんにお任せします。
幸い明日は祝日でお休みですから」

「一日学園に行くのも面倒だなぁ。
ついでに今日も休みにしちゃえばいいのに」

「それでも登校するのが正しい学生です。
別にミルファちゃんは行かなくても構いませんよ、ずっと」

「行かせていただきます」(敬礼

「よろしい」

「でも、貴明も大変だね。
シルファ、かなり怒ってたよね。
大丈夫なの?」

「相性は珊瑚様以上ですし、通称・へたれ度は最高なんですから!!」

「・・・前から思ってたけど、その『へたれ度』って本当にあるの?」

「もちろんです」(断言

「そ、そうなの・・・」(汗

 

「さっさと起きるれす!!
このえろえろご主人様ー!!」(激怒

「グハッ!!
ちょっ、シルファちゃん、なにっ・・・!!」

 

「もう・・・
シルファちゃんったら・・・」(溜息

「あたし、しーらないっと」

 


2005・2008 Leaf 『ToHeart2 XRATED&ToHeart2 AnotherDays』

「パニック・ハート」
 第4話・一途なめいろろぼ


 

ジリリリリリリリリ・・・

 

「ん・・・」

目覚ましの音に反応して寝返りをうつ。
ほとんど覚醒していない頭で手を伸ばし止めようとする。

「・・・・・・?」

あれ?
いくら手を伸ばしても横に振っても感触がない。
そういえば俺って、目覚ましなんてかけただろうか?

「うむ・・・」

のそのそと起き上がって枕元をみると時計はない。
しかし、未だに目覚ましのベルはなっている。
聞こえる音にも違和感がある。

「まさか・・・」

立ち上がってドアを開けると、3つの目覚まし時計が景気良く鳴っていた(汗
一つ一つ止めて、まさかと思いリビングに行くとそこには・・・

「・・・・・・・」

ダンボールに入って拗ねまくっているシルファちゃん(汗

「お、おはよう、シルファちゃん」

「・・・・・・おはようれす」

挨拶こそ返してくれるもの、態度は変わらずこっちも向いてくれない。
恨みますよ、イルファさんとミルファちゃん・・・(泣

 

それは昨日、朝に起こされた時からシルファちゃんの機嫌が悪いと思っていた。
原因自体はすぐに分かった。
ミルファちゃんが皆で食事中にキスしたことをバラしてしまったからだ。
何気にイルファさんもバラしてしまい、さらにヒートアップ。
その時の怒涛の皆のことは勘弁してください(汗
大変だったの一言では済まない。
それは忘れて、シルファちゃんだけどイルファさんから事情を聞いた。

「すみません貴明さん。
私たちがちょっとイジワルしすぎて、シルファちゃんの機嫌が悪いんです」

「はあ・・・」

「でも、解決方法はありますよ」

「な、何ですか?」(警戒

ポンと両手を叩き、イジワルな笑顔のイルファさんに悪い予感が・・・

「貴明さんがシルファちゃんにちゅ−をしてあげたら即解決です☆」

「無理です!!」

「何故ですか?
シルファちゃんがお嫌いなんですか?」

「・・・イルファさん、その質問は卑怯ですよ?
嫌いなはずないじゃないですか」

「あらあら、すみません。
ちゅーは最後の手段ですので、お嫌なら他の手段で頑張ってください」

「頑張ってって・・・(汗
協力・・・というか、元々の原因はイルファさんとミルファちゃんじゃないですか!」

「ですけど、私たちが混ざると余計にシルファちゃんが意固地になってしまいますし・・・
ここは『ご主人様』に頑張っていただこうかなっと」

「な、なぁ・・・!!」

「明日は休日なので、丸一日シルファちゃんに構ってあげてください。
皆さんには『何とか』了解を頂きましたので・・・
大変ですね、貴明さん☆」

「・・・・・・」(固

「ちなみに今日中にシルファちゃんの機嫌が直らなかったら、ちゅーですから頑張ってください」

「ちょっ・・・ちょっと!!」

 

頬をポリポリ掻きながらイルファさんとのやり取りを思い出して、少しヘコんでしまった(汗
昨日は皆がいたから、いつも通りの態度を取っていたが今はこの様子。
こうなってしまったシルファちゃんは中々手強い。
自分とは関係ないところで段々追い込まれてきているような気が・・・
いかんいかん、今はシルファちゃんだ。
会話しても無反応だが、ここは微妙な距離で刺激しないように続ける。

「そ、そういえば、お腹すいたなー
今日はシルファちゃんだけの手料理かー
楽しみだなー」

「・・・・・・」

「おっ・・・」

ちょっと白々しいセリフに、シルファちゃんはスクッと立ち上がって台所に向かう。
視線で後を追うと、味噌汁を温めてご飯をよそったり朝食の準備をしてくれている。
うん、これがキッカケに話しかけて少しは機嫌を直そう。
・・・しかし、この計画はすぐに挫折してしまった。

「・・・・・・」

「うあ・・・」(汗

朝食をテーブルに並べ終った途端、再びダンボールに戻って座り込んでしまった。
しかも無言で会話のひとつもない・・・
こ、これは手強い(汗
挫けてしまってはキスになってしまう。
仕方がない、キスよりマシだし褒めまくってご機嫌を取ろう。

「それじゃ、いただきまーす!!
・・・うん、おいしい!!」

「・・・・・」(ピクッ

ちょっと反応あり。
ココは攻め所か?

「鮭もこんがり焼けて香ばしいし、塩控えめで少し薄味がいいよねぇ。
こんな料理を朝から食べられるなんて、幸せだなー」

「ぴひゃ・・・」(ビクッ

よしよし良い反応。
今まではこちらを見ようともしなかったのに、チラチラと行ったり来たり繰り返している。
もう一息。

「これでイルファさんにもだいぶ追いついたし、もう一息だね」

「っ!!」(ビクッ!!

「あっ・・・」(汗

しまった・・・
せっかく良いところまでいってたのに、逆に背を向けてしまった。
しかも不機嫌から落ち込んだ雰囲気になってしまい、失言だったと気づいた。
ここは『シルファちゃんの料理が一番』と言うべきだった。
今から言っても効果なんてないし逆効果だ。
失敗したぁ・・・

「し、シルファちゃん・・・」(怖々

「・・・なんれすか?
イルイルより美味しくない料理しか作れない、らめっこめいろろぼに何か用れすか?」

「い、いえ、なんでもないです」(汗

「・・・・・・」

ダメだ、今の卑屈な態度な態度では何を言っても変に受け取られるだけ。
今だけは雄二の女の子に対する気遣いや、歯が浮くようなセリフがポンポンでてくることが羨ましい。
どうしたものかな、これは・・・

 

 

掃除も手伝おうとしても、予想通り断られてしまった。
勝手にやるわけにもいかなく、悩んでいる間に終わってしまった。
何気にいつもより早く丁寧なのは何故だろう?
頑張ったご褒美に頭を撫でてあげたら意外と喜んでくれた(態度は変わらずだったけど、表情は緩んでいた)
けど、用事が終わるとダンボールに戻ってしまう。
昼食の時も作ってくれた後は、むぅと唸るようにジッと見つめて(睨んで?)くる。
家にいてもこのままだろうし、気分転換とダンボールから出る切欠に外に出ようか・・・

「シルファちゃん、これからスーパーに買い物に行こうか?」

「ふん、そんな見え見えな考えれシルファは騙されなのれすよ。
ご主人様はシルファを見くびってますね」

断られるのは承知の上だし、返事を返してくれるだけでも良くなっている。
ここは失敗しないようにしないと。

「でも、シルファちゃん。
さっき冷蔵庫を見たけど、ほとんどないよ?」

「そ、それは・・・」

シルファちゃんがこの家に戻って来た時に、一緒に届けられた大きな冷蔵庫。
普段はシルファちゃんのみならず、イルファさんがよくチェックしているが今回に限ってほとんどない。
イルファさんのことだから先を読んでいて、あえて何もしなかったのだろう。
変な気遣いをする前に、こんな事態を起こさないでください(切実

「・・・今、他の女を思い浮かべたれすね?」

「そ、そんなことないよ!!」

何でこんなにも鋭いんだろう?(汗
凄いよ、D・I・A・・・

「そ、それよりさ・・・
唯一あるものは、念のためにと置いてあったカップラーメン。
だからといって、明日の朝には皆来るしこのままじゃダメだよね?」

「シ、シルファが行って来るれす。
シルファはもう一人で行けるのれすよ」

「うん、それも分かってるよ。
頑張ってるよね」

「と、とーぜんなのれすよ!
シルファは優秀なめいろろぼれす!!
ご主人様がのろむことはれんぶやりとけるれす!!」

ダンボールから立ち上がって、得意そう胸をはるシルファちゃん。
今は何とか一人で行くことも出来るけど、昔の怖々の態度を思い出すと笑いが込み上げてくる。
我慢だ、我慢(笑

「・・・なんらか、バカにされた気分れす」

「き、気のせいじゃないかな?」(汗

「そうれすか?」

「そうそう!」

本当にどうなっているんだが・・・

「俺が何が言いたいというと、シルファちゃん一人じゃ荷物が多すぎて持てないでしょ?
だから、一緒に行こうよ?」

「ら、らいじょうぶれす!!
シルファ、ちゃんと持てるもん!!」

「あの大きな冷蔵庫にある程度補充する量を?
俺でも一人じゃ無理だよ」

「・・・・・・」

ようはそれを言いたいだけなのに、微妙に脱線してしまった。
再び座り込んだシルファちゃんに手を伸ばす。

「ほら、一緒に行こ?
俺が買い物に行ってもよく分からないし・・・
シルファちゃんと一緒に来てほしいんだけど?」

「・・・しかたないれすね」

言葉では不機嫌そうでも、差し出した手を両手で握ってくれた。
もう一度立ち上がったシルファちゃんの表情は・・・

「ご主人様はらめっこご主人様なんれすから、シルファがめんろうみないと何もれきないのれすよ」

ちょっとぎこちないけど、今日始めてみる笑顔だった・・・

 

 

ようやくスーパーに買い物に出かけることが出来た。
シルファちゃんというと、何故か腕を組んで無言で歩いている。
もちろん初めは断ったが、根負けした。

『イルイルやミルミルが良くて、シルファはらめなんれすか?』

逆なでしないようにとか、怒らせないか関係なく白旗。
俯き加減で照れくさそうに、上目遣いに見つめるのだ。
これでダメなんて言えるはずがない。
・・・ああ、そうさ、ヘッキーだよ(開き直り

「それで何を買うのかな?
色々あるんでしょ?
晩御飯も決めてあるの?」

恥ずかしさを誤魔化すようにシルファちゃんに話しかける。
調味料やお米はあるけど食材はほとんどない。
そんな心配する俺に、シルファちゃんはニヤっと久しぶりにイジワルな笑顔が返ってきた。

「ぷぷぷ・・・
らから、らめっこご主人様なんれす。
いいれすか、めいろろぼはもちろん、主婦れも必要らけしか買わないものれす。
ご主人様は朝食こそ、皆さんの為にたくさんいります。
お昼はお弁当、夜はご主人様らけ。
こういうときは必要なモノや特価品を選んで、そこから料理を作るんれす。
これくらい、めいろろぼにとって当たり前なのれす!!」

「・・・色々大変なんだね」

シルファちゃんが来る前にはそんなこと気にしていなかったから、インスタントとかが多かった。
時々、春夏さんの好意でこのみと晩御飯をいただいたくらいだし・・・
あっ、あの時の焼肉おいしかったなぁ。
限界寸前だったし、あの時の感動は忘れない。

「あっ・・・」

「っ!!
な、なに!?」

もしかして、これもバレた!?
どれだけ鋭いの!?
嘘発見器でも仕込んでる!?

「タマタマです」

「タマ・・・?
あっ、タマ姉ね」

いつの間にかすぐ先に見えるスーパーの前に、買い物帰りなのか両手に荷物を持つタマ姉がいた。
よかった、違った・・・
いくらなんでもそこまで分かるはずが・・・

「ご主人様、変なこと考えてないれすか?」

「べ、別に!!」

「怪しいれす」

「ほ、ほら、タマ姉の所に行こうか!!
気づかずに行っちゃうよ!」

「ぴゃっ・・・
ご主人様、危ないれすー!」

腕を組んいるから動きにくいけど、強引にタマ姉の側まで走る。
シルファちゃんがちょっとつまずきかけたけど、無事に到着。

「あら・・・
タカ坊とシルファちゃん・・・」

「こんにちは、タマ姉」

「タマタマ、こんにちはれす」

シルファちゃんが呼ぶアダ名にタマ姉の表情も少し引き攣った。
シルファちゃんはイルファさんを『イルイル』、ミルファちゃんは『ミルミル』と呼ぶ。
その流れで他の皆もそういう感じで呼んでいるのだが(例外に珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃん)、タマ姉にはお気に召さないご様子。

「タマタマって・・・
あのねぇ、シルファちゃん?」

「なんれす?」

「その、『タマタマ』というのはちょっと・・・
出来たら別のアダ名を考えてくれないかしら?」

「??
どうしてれすか?」

「そ、それはねぇ・・・その・・・」

タマ姉が困る所を見るのも珍しいけど仕方がない。
『タマタマ』はなぁ・・・

「・・・気に入らなかったれすか?」(ちょっと泣き声)

「うっ・・・
そ、そんなことはないわよ」(困

「よかったれす!!」

「あ、あはは・・・」(汗

タマ姉の完全敗北。
ちょっと共感・・・

「タマ姉、いいの?」

「仕方がないじゃない、アレには勝てないわよ。
それに悪気はないと分かってるし、もういいわ」

「え、えっと・・・
なら、雄二は?」

「あの子なら、今頃痛感しているんじゃないかしら?
乙女を嘲笑う愚かさを・・・ね」(邪笑

「・・・・・・」(汗

「二人して何話してるれすか?」

「な、なんでもないよ!」

「ええ、そうよ」

「ちょっと妖しいれすけろ、タマタマを信用するれす」

『タマタマ』と聞いた雄二は本人が目の前にいるのに大笑い(咽るほど)していた。
ああ、雄二・・・
今頃自室の部屋で寝込んでいるんだろうな・・・
ま、自業自得か。

「し、シルファちゃんも買い物かしら?」

「はいれす。
ご主人様は荷物持ちれす」

「それは言わなくても分かるわ。
タカ坊もちょっと覚えてくれたらいいのに・・・」

あうう、申し訳ありません・・・(ペコ

「いいんれす、タマタマ。
ご主人様は今のままれ」

えっ?
なんで?

「どうして?
タカ坊が料理を覚えろとまでは言わないけど、もう少し・・・」

「ご主人様になんれもやってしまったら、シルファの仕事をもっていかれるれす。
シルファは今のご主人様を、その・・・(照
ら、らから、ご主人様は『らめっこご主人様』なんれす!!」

あ、あの、シルファちゃん?
それは俺に一生グータラになれと?
それはちょっと・・・

「プッ・・・!
フフフフ・・・」

「タマ姉?」

シルファちゃんの言葉に可笑しそう笑うタマ姉だけど、その眼はとても優しい。
その表情に思わずドキッとしてしまう。

「愛されてるわね、タカ坊。
私も頑張らなくちゃね」

「負けないれす!」

「私もよ。
シルファちゃんがそうしたいならしなさい。
その分、私がタカ坊を鍛えてあげる。
女はね・・・
尽くすだけじゃなくて、良い男に育て上げるのも仕事なの」

「そうなのれすか?
教えられるれす」

「ありがとう。
まずはね・・・」

いつの間にか、俺をどう調教(?) する会話が続いた。
俺はどうすればいいんだろう・・・

「あら・・・
いけない、もう帰らないと」

「もう帰るれすか?」

「ええ。
元々買い物してすぐ帰るつもりだったから。
雄二も昼食抜いてるから、早めにしてあげようと思ってたから」

正確に言えば『抜かされた』だろうな・・・

「タカ坊、ちょっと来なさい」

「??」

チョイチョイと手招きするタマ姉に近づくと・・・

「えい☆」

「「っ!!」」

思いっきり抱きしめられました・・・

「うーん・・・
やっぱりタカ坊の抱き心地は最高ね!」

「ちょっ、タマ姉!!」

む、胸が顔に当たってます!!
顔も近いって!!

「明日のお弁当、気合入れて作るから期待しててね」

耳元で呟くくらいの小さな声で聞こえたタマ姉の言葉。
内心、気にしていたんだ(汗

「タ、タマタマ、離れるれす!!
お店の前れなんてハレンチれすよ!!」

「ちょっとしたスキンシップじゃない・・・
残念」

渋々といった感じに離れるタマ姉とプンプンと怒っているシルファちゃん。
間に挟まれる俺は物凄く居心地が悪い。

「これ以上は時間もシルファちゃんも危ないから帰るわね。
また、明日」

「う、うん・・・」

「・・・さよならです、タマタマ」

2人揃って離れていくタマ姉に手を振る。
見えなくなり手を下ろしたらシルファちゃんがキツイ一言が飛んだ。

「えろえろご主人様、早く買い物を済ませるれす」

「・・・はい」(泣

否定したいけど、色んな意味で今は出来ません・・・(気落ち

 

「さて、まずは何処から見に行こうか?」

「何を買うかは広告を見てチェックしてます。
最初は野菜れす」

カートを引く俺は、先に行くシルファちゃんの誘導に沿って進む。
シルファちゃんが主婦よろしく、広告を見ているのか・・・

「これとこれはらめ・・・
後は・・・」

無造作にカゴに入れようとせず手にとって調べたりしている。
俺には全部同じようにしか見えないけど・・・

「これがいいれす」

ようやく決まったのか、納得した食材を放り込み次に進む。
パンも選び抜いて、レジでお金を払い持ってきたエコバックに入れる(資源を大切にね)
でも、冷蔵庫がほぼ空なのにこれだけしか買わないのだろうか?

「シルファちゃん、買い物はこれでお終い?」

「いいえ、まられすよ。
このスーパーで安いのは買ったものらけれす。
次はお肉が安い所に行くのれす」

なるほど、しっかりしてる・・・(苦笑
イルファさんも同じようにしているのだろうか・・・(想像中
いかん、何故か近所の奥様会議にとけ込んでいるシーンが出てきた(違和感なし)
そういえば、ココのスーパーってシルファちゃんと初めて買い物した所だったな。
イルファさんもいて、変なアドバイスも貰ったっけ・・・

「ねえ、シルファちゃん・・・
さっき、タマ姉が言った『スキンシップ」で思い出したんだけど・・・」

「・・・タマタマの胸の感触をれすか?
それともミルミル?
ろうせ、シルファは胸はないんらもん」

「そ、そうじゃなくて・・・」(汗

まだ引き摺ってる・・・
もしかしたら胸の大きさを気にしているかも。
そういうフォローは俺には出来ないって。

「ここのスーパーはシルファちゃんと初めて買い物した所でしょ?」

「はいれす。
イルイルもいました」

「それでタマ姉が言っていた『スキンシップ』で思い出したんだ。
帰ったら色々遊ぼうか?」

「えっ?」

「スキンシップさ。
あやとりとかしたじゃない。
他にもちょっとした遊びや、家にある映画を見るのもいいかな?」

イルファさんが言っていた『ズッコンバッコン』は問題外。
イルファさんもそんなセリフ言わないでくださいよ(汗

「え、えっと・・・
そ、それなら、ちょっと変かもしれないれすけろ、やりたいことあるれす」

「いいよ、なんだい?」

物凄く照れているシルファちゃんに断る考えはない。
気楽に了解する。

「そ、それなら、その前にやることがあるれすから、アパートへ寄るのれす!
ご主人様は買い物を頼むれす!!」

「へっ?」

状況が分からない俺にシルファちゃんはメモと財布を押し付け、
普段のオドオドした雰囲気はなく爽快に走っていった。
このままでは埒が明かないのでメモを見るとちょっと立ちくらみをしてしまう。

「シルファちゃん・・・
いくら安いからって・・・」(泣

寄るといっても後ひとつくらいと思っていたが、まだまだたくさんあった。
どういう順番に周っても結構距離がある。
しかも、量もあるので買えば買うほど重たくなるし生ものは最後の方がいいだろう。
シルファちゃん、最初に言ったじゃないか。
『俺でも一人じゃ無理だよ』 って・・・
タマ姉、これは何も言わずに買い物をすることが『いい男』なのだろうか・・・

 

 

「た、たらいま〜れす〜」

「お、お帰り〜」

何とか買い物を済ませ(本当に歩いたし重かった)家に帰ると、シルファちゃんはまだ帰っていなかった。
水分を補給し、買ってきたものを冷蔵庫に入れてばたんきゅー(古い?)
休憩中に少しするとシルファちゃんも何故か疲れた声で帰ってきた。
疲れた身体に鞭を打って出迎えると、やつれた(雰囲気ね)シルファちゃんがぐったりしていた。

「シルファちゃん、大丈夫?
何処か調子が悪いの?」

「『ご主人様を放ってなにをしているのれすか!!』って、イルイルにお説教されたれす」

心配する俺に単純明快な答えが返ってきた。
それは怒るだろうな、イルファさんなら。

「ふん、イルイルもあんなに怒らなくてもいいらないれすか。
そりゃあご主人様を放ってしまったのは悪かったれすよ?
らからって、あんなオシオキはないれす・・・」

「な、何されたの?」

「・・・言いたくないれす」

ホント、何したんですかイルファさん・・・

「そ、それで準備とかいうのは終わったの?」

「そ、そうれす!
イルイルのお説教もこの為に耐えたんれす!!」

バッと何かを取り出すシルファちゃん。
紙、メモ?
いや、カードだろう。
ハガキくらいの大きさのカードに、マス目が6つくらいある。
それだけなのにどこか見たことがあるような・・・

「ご主人様、これもれす」

「ああっ!!」

もう1つ取り出したスタンプにはっきり思い出した。
珊瑚ちゃんが『るー』のポーズをしているスタンプにカード。

「メイドロボ検定カード!」

「はいれす。
ちなみに最初のカードはちゃんと持っているれすよ。
シルファの大切な宝物らもん」

もう一枚取り出したのは全部埋まっているあのカード。
懐かしいなぁ・・・
もう、ずっと昔のことのように思える・・・

「それよりも、ご主人様!」

「は、はい!!」

突然の大声に、ビシッと姿勢を正す。
な、何?
思い出に浸っている間に、無意識に何か言ってしまったか・・・?

「今日かられすけど、よろしくお願いするれす。
ルールは前と一緒で、貯まったらお願いを1つ聞いてほしいんれす」

なるほど、これがシルファちゃんなりのスキンシップなのだろう。
お願いもあるようだしこういうのもいいかもしれない。
シルファちゃんのお願いならそんなことをしなくても構わないのに、
彼女自身が言いづらいし納得しないだろう。

「分かったよ、シルファちゃん。
それじゃ、さっそく晩御飯を頼むよ」

「はいれす!!
ちゃんとチェックしててくらさいね!!
あっ、これイルイルからの手紙れす」

「イルファさんから?」

「はいれす。
早く来てくらさいねー」

さっきまでの疲れ(精神的に)も何のその、気合充分なシルファちゃんは晩御飯を作りに行った。
俺は渡された手紙を見る。

『申し訳ありません、貴明さん。
まさかご主人様を置いてきぼりにするなんて・・・
初めはシルファちゃんにすぐにでも貴明さんの元へ行かすつもりでしたが、
一人では何処にいるか分からない人を探すのはまだ無理だと判断しました。
その分、たっぷりお説教しましたから☆
貴明さんもお疲れ様でした。
疲れが取れないようなら、シルファちゃんにマッサージをしてもらってください。
さて・・・
本題ですが、シルファちゃんもお願いがあって中々言い出せなかったんですよ。
こういう風にしないといえない意地っ張りな子ですから。
今日中という限定らしいのでハンコは少なめにしました。

貴明ー!!
あたしもその検定受けるー!!
も・ち・ろ・ん、相手は貴明☆
あっという間にクリアしちゃうんだから、楽しみにしててねー!!

ミルファちゃんにはそんな予定はありませんよ?

ガーン!!

貴明さん・・・
シルファちゃんのお願い、叶えてあげてくださいね』

手紙なのに会話のような感じがするのは気のせいか?(汗
ミルファちゃんも入ってるし・・・
ある意味、器用な手紙だ。

「ご主人様ー!!」

おおっと、早く行かないとまた拗ねる。
早くスタンプを押してあげて、お願いを聞いてあげるか・・・

 

それからは大変でした・・・
何が大変って、シルファちゃんが変な方向に行ってしまって・・・
たとえば食事中・・・

「ほ、ほら、ご主人様・・・
あーん」(恥

「い、いつもはしてないよね?」(汗

「こ、今回は特別なんらもん!
さっさと口を開けるれすー!」

「わ、分かったから、無理矢理突っ込まないでー!!」

 

食後も・・・

「寝そべってくらさい、マッサージれす」

「だ、大丈夫だよ、これくらい」

「ご主人様は荷物を持ったりいつもより歩いているれすから、明日は筋肉痛れすよ?」

「うっ」

「これはシルファのせいれすから、やらせてほしいんらもん」

「・・・それじゃ、お願いね」

「は、はいれす!
せーの・・・」

ゴキッ!!

「ぐはぁぁぁぁー!!」

「ぴゃっ!
ご主人様ー!!」

 

風呂場でも・・・

「ご主人様、背中を・・・」

「いいよ、それはいい!!
ホントにお願いだから!!」(切実

「ぷー」

 

その他色々あったけど(成功したり失敗したり)、ようやくスタンプが貯まった。
失敗は普段ならしないことばかりだけど空回りした結果。
今日だけというのが安心。

「シルファちゃん、お願いって何かな?」

「・・・なんれもいいれすか?」(恥

「うん、俺が出来ることならね」

「ご主人様しか出来ないれす・・・」

モジモジしているシルファちゃん。
しかし、俺しか無理とは・・・
なんだろう?
遊園地に連れて行ってほしいとか?
でも、それなら皆でも行けるし・・・

「「・・・・・・」」

あの、シルファちゃん?
言ってくれないと先に進まないんだけど・・・

「シルファちゃん?」

「ぴひゃ!!」

逆に驚き、むぅと睨まれた(汗

「今は無かったら今度でも・・・」

「っ!
あるれす!!
今から言うのれす!!」

効果覿面(笑
ちょっと意地が悪かったかな?

「イ・・・ル・・・ほし・・・」

「??
もうちょっと大きな声で言ってほしんだけど・・・」

「れすから・・・」

耳を近づけて聞き取りやすいようにする。
その瞬間・・・

「イルイルやミルミルにやったことをしてほしいんれす!!」

「うわっ!!」

大声にキーンと耳鳴りがする。

「し、シルファちゃん・・・
同じことって、何?」

頭を振って何とか聞き返す。
イルファさんとミルファちゃんと同じことと言われても、腕は組んだし他になんて・・・

「き、き、キスれす!!
シルファにもキスしてほしいんれす!!」

「はっ?」

今度ばかりは耳が痛いとか感じる余裕なんてない。
シルファちゃんの言葉で全てが止まった。

「キ、キス?」

「はいれす!!」

お互い真っ赤になってしまう。
あれ?
何か最初に戻ったんじゃ?

「ど、どうしてキスなのかな?」

「らって!!
ご主人様はイルイルとミルミルとキスしたれす!!
えこひいきれす!!
シルファはしてもらってないもん!!」

「あ、あのね、シルファちゃん・・・
それはあの2人に強引(?)に向こうからされたんだよ」

「知っているれす!!
ご主人様はへたれれすから!!」

やっぱりそう思われてるんだ・・・(泣
いいよいいよ、どうせ俺は・・・

「ご主人様はシルファが嫌いれすか!?」

「そ、そんなことはないよ!
俺もシルファちゃんが好きだよ」

「それなら、シルファにもキスしてくらさい!!」

「お、落ち着いて、シルファちゃん!!」

「落ち着けるわけないれす!!」

それからはシルファちゃんの感情のまま喋り続けた。

「イルイル達がキスしたと聞いたとき、ろれらけ羨ましくて怖かったかご主人様に分かるれすか!?
イルイルには瑠璃様、ミルミルは自由れ研究所に戻れるもん!!
らけろ、シルファにはご主人様しかいないんらもん!!
ご主人様は優劣をつけたり、差別したりしないのは分かっているんれす。
れも、不安なんれす。
いつか、シルファに飽きてしまうと・・・捨てられると思うと心が苦しいれす。
シルファはご主人様がらい好きれす!!
らからご主人様にもシルファをずっと好きれいてほしんらもん!!」

「シルファちゃん!!」

「ぴゃ!?」

恥ずかしさとか関係ない。
ただ、抱きしめた。
シルファちゃんは泣いていた。
例え、涙が流れていなくても確かに・・・

「大丈夫、大丈夫だから」

「・・・ご主人様?」

「俺は絶対にシルファちゃんに呆れたり、ましてや捨てたりなんか絶対にしない。
約束するよ」

「ご主人様・・・」

シルファちゃんは胸の内を全て出してくれた。
今度は俺の番だ。

「今は本当に誰が好きなんて分からない。
でも、こういうのも悪くないと思っている自分もいる。
シルファちゃんも皆も、同じくらい好きだよ。
どれだけかというと・・・」

「んっ!!」

シルファちゃんの顔を上げ、キスを交わす。
驚いたシルファちゃんもすぐに目を閉じて首に手を回し受け入れてくれる。
お互いを抱きしめたままのキス・・・
一瞬のようで長いような感覚の中、ゆっくり離れる。

「・・・これくらい好きだよ、シルファちゃん」

ああ・・・
後で素に戻ったら絶対大変なことになる。
今日も寝れないか・・・
明日、どうシルファちゃんに接しようかな・・・

「・・・シルファもご主人様の元に帰ってきてから、言いたいことあったんれす」

「何だい?」

うん、最近こういう時には後悔することが多いと最近気が付いた。
大事な所は大丈夫と思うけど、こういう場合は・・・

「シルファは、ご主人様がらい好きれす!!
愛していますれす!!」

「っ!!」

素に戻る前に、大胆な告白に完璧にフリーズ。
おまけに今度はシルファちゃんからキスをされる。
ホント、君たちは似たもの姉妹だよ・・・

 

 

おまけ

「あーあ・・・
とうとうひっきー妹も貴明とキスしちゃったか・・・」

「そうれす。
もうあーぱーになんて負けないんらもん」

「なんだとー!
あたしの貴明への愛は誰にも負けないのよ!!」

「それはシルファもおんなじらもん!!」

「・・・・・・」

「あれ?
どうしたの、お姉ちゃん?
いつもならさり気なく嫌味ったらしく入ってくるのに?」

「ミルファちゃんが私をどう思っているか良く分かりました。
それはあとで追求するとして、シルファちゃん?」

「なんれすか?」

「貴明さんとキスしたのよね?」

「さっきから惚気半分にそう言ってるじゃない?」

「ミルファちゃんは黙ってください。
いい?
肝心な所は、貴明さん『から』キスをしたと言う所です」

「っ!!」(ショック

「ぷぷぷっ。
そうれす、イルイルもあーぱーも不意打ちれしたんれすよね?
シルファは違うもん。
ご主人様からキスしてくれたんらもん」(自慢

「ず、ずるーい!!
シルファだけ!!
あたしもしてもらうー!!」

「それは無理れす。
あのヘタレご主人様にそんな度胸ないんれす」

「貴明さんはシルファちゃんに甘いです。
私はファーストキスはもらいまたし(奪った)、構わないのですが・・・
そう考えると、ミルファちゃんが価値観で言うとこの中で一番低いですね」

「きー!!」(絶叫

 

 

第5話へ続く

 


第4話、シルファです。
彼女のキャラクーにはかなり意表をつかれました。
体験版や雑誌などの事前情報も無くプレイしたので、こう来るとは思いもしませんでした。
最初こそ戸惑いもありましたが、すぐに慣れてこれがデフォルトと認識しています。
本編も貴明のヘタレ以外は楽しめました。
シナリオを担当してる人が3人くらいで、ミルファの担当とは違う人だそうです。
こういうのばかりだったらなぁ・・・
SSですが、やっぱりシルファの言葉使いが難しいです。
気を使ったり出来るだけやってましたが、それでも違和感があったらスミマセン(ペコ
シナリオでのダンボールに入って拗ねているシーンと、雨の中での葛藤が印象的でしたのでこうなりました。
最後がちょっちシリアスでしたが、ほとんどほのぼのと書けたので満足です(少しラブラブが少なかったですけど)
次回は『XRATED』に戻って、ささらです。
『AnotherDays』のキャラの方が慣れているのですが、こっちをさしおいて全てを出すわけにはいかないので・・・
ラングさん・ノネムさん・こうりさん・風車さん、ご感想ありがとうございました!!