「はあ・・・
最近の私って、タカ坊に助言や忠告ばかりでラブラブしてないのよねー」

「だはは!!
そこまできたらもはや姑だな、姉貴!」

「うるさいわね・・・
お小遣い停止期間、延ばすわよ?」

「なぬっ!?
横暴だぞ!!
理不尽だ!!」

「時に女は理不尽なのよ」

「格好よく決めるな!!
これ以上延びたら、死ぬぞ!!」

「じゃあ、死ねば?」

「ええー!!
それは酷すぎるぜ、姉貴!!」

「冗談よ」

「ほっ・・・
でもさ、姉貴・・・
マジな話し、貴明は別に差別というか・・・
区別してないぜ?
ヘタレなりに頑張っていると思うけど?」

「分かってるわよ、そんなこと。
私が言いたいのは、タカ坊ともっと甘々な体験をしたいのよ!!」

「アッハッハッ!!
無理無理!!
アイツがそんな器用なこと出来るわけ無いじゃないか!!
は、腹、痛ー !!」

「・・・そう。
なら、教えてあげるわ
今まで私が育てたタカ坊が、どれほど成長したか!!」

「えっ?」

「今度の休みにデートして、直接確かめてあげる。
もしタカ坊が期待以下だったら、お小遣い停止期間を取り消しして、2倍払ってあげる。
先月と今月分ね」

「マジ!?」

「ただし!!
アンタが負けたら、まーりゃん先輩へのスケープゴートにさせてもらおうわよ。
ずっと」

「ずっと!?」

「ええ。
前に貴方達が下らない企てしてから、あの人さらに加速しているわ。
タカ坊に出来るだけ、心配の種は無くしておきたいのよ」

「お、弟への心配は!?」

「それこそ無いわよ。
もしかしたら、これをキッカケに恋が生まれるかもしれないわよ?
ついでに笹森さんも頼むわ。
いいわね、両手に花よ?」

「ぐはっ!!
何故かみょーにリアリティさを感じるのは何故!? 」

「さあ?
この先の未来じゃない?」

「ノー!!」

 


2005・2008 Leaf 『ToHeart2 XRATED&ToHeart2 AnotherDays』

「パニック・ハート」
 第12話・貴明をヘッキーと思いますか? イエス、ノー?


 

「で?
こういうことなったのか、タマ姉?」

「ゴ、ゴメン、タカ坊。
確かに売り言葉に買い言葉だったわ」

つい2・3日前に突然、タマ姉から・・・

『週末は私とデートよ!
プランは貴方に任せるから、しっかり考えておくのよ!!』

言われて首を捻った。
しかも、俺にデートプランを考えろときたもんだ。
俺にどうしろと?(普通誘われても、こういう場合は男が考えるものだ)
それでもタマ姉には皆を纏めてもらったり、苦労をかけたから俺なりに調べて待ち合わせの時計台に向かった。
しかしそこにはタマ姉だけでなく、雄ニもいて理由を聞いて脱力する。

「というわけだ、貴明!!
今回はそのヘッキーさを思う存分出せ!!
そして、俺をハッピーにしてくれ!!」

ニヤニヤと笑う雄ニがやけに憎たらしい。
タマ姉は雄ニに一瞥し、自信溢れる笑顔を浮かべる。

「タカ坊は私の期待にしっかり応えてくれるわ」

「でもさ、姉貴も事前に貴明に知らせたよな?
反則とまでは言わないが、ちょっとズルイじゃないか?」

「・・・だって、それくらい早く言わないと、
プランなんて考えられないじゃない?」

・・・・・・
あ、あのさ、タマ姉?
さっきまでの自信満々な笑顔から、その気まずそうな顔はなんでしょう?(汗
そ、そこまで俺の信用なし?
実際、ギリギリまでかかったから言い返せないけどさ。

「それじゃ・・・
説明も終わったことだし、俺はオサラバするから。
結果、楽しみにしているぜ?」

「あれ?
一緒に来ないのか?」

「バカ言えっての。
何が悲しゅうて、姉貴とお前のデートに参加しなきゃならん。
後で姉貴に聞くさ。
こういうことは真面目だから、姉貴は嘘や誤魔化しはしないからな」

「貴方が多すぎるのよ、雄ニ」

「へいへい、私が悪うございます。
それじゃーなー」

手をプラプラさせて、この場を後にする雄ニ。
タマ姉は俺の方を向いて、ニコッと笑う。

「私達も行きましょうか?
楽しませてよ、タカ坊」

「う、うん。
それじゃ行こうか」

「ええ」

ごく自然に腕を組んでくるタマ姉。
た、耐えろ、貴明!!
こ、これくらい、今まで皆とでも経験したじゃないか!!
それにタマ姉は、幼馴染だ!!(今は恋人候補の一人だけど)
気の持ちようは、まだあるはず!!

「クスッ。
顔を赤くしちゃって・・・
可愛い」

「グハッ!!」

た、タマ姉・・・
それ、トドメです・・・(泣
しかも指で頬をツンツン突付かないで・・・

 

 

〜貴明が考えたデートコース第一段・映画館〜

「へえ・・・
映画館ね」

「うん。
前売り券を用意しておいたから、買いに行かなくてもいいよ」

「準備万端ね。
よしよし」

見る映画のタイトルは『貴方の心に愛を』という、完全ラブロマンスだ。
洋画ではなく、日本で作られた物。
俺としては思いっきり苦手なジャンルだけど、今回はタマ姉がメインだから。

「飲み物とか先に買っておこうか?」

ジュースとポップコーンは必需品だろう?

「私はいいわ。
普段から間食とかしないし、集中してみたいから」

「そう?
座席指定だから急がなくてもいいけど、どうしようか?」

「そうねぇ・・・
時間があるし、他に何をやっているかプラプラ見に行きましょうか」

「了解」

タマ姉の意見に、壁に貼られているポスターや宣伝を見て周る。
一つ一つ反応して、『これは何?』と説明を求めるタマ姉が可愛いと思ってしまう。
そんな考えに、首を振って追い出す。

「どうしたの、タカ坊?
突然、首を振って・・・」

「な、なんでもないよ!
ア、アハハ・・・」

タマ姉は不思議そうにしていたけど、笑って誤魔化す。
言えるわけ無いじゃないか!!

「そ、そう?
そろそろ時間だし、席に着きましょうか?」

「そ、そうだね」

幸いタマ姉も気にせず(あえて流したかもしれないが)、時間も迫ったことだし中に入る。
でも、俺はせめてコーヒーでも買っておけばよかったと後悔する。

 

「クッ・・・」

映画が始まって15分(宣伝含む)で、早速眠気が襲ってきたのだ。
普段でも、余程ハマらなければ眠くなるって自分でも知っていたのに。
(るーこの時は懐かしさで気にしなかった)
それに調べ物で夜更かしが続いたし・・・

「・・・・・・」

タマ姉は映画に集中している。
こういうジャンルは時間も長い。
耐え切れるか?
いや、耐え切って見せる!
そして今度こそ『ヘッキー』のアダ名を返上するんだ!!
眠気が襲うたびに、太股の内側を捻って(確かここが痛覚の集まっている場所とか聞いた)誤魔化す。
ある意味、拷問だぞコレ(汗

 

「あら?」

思った以上に面白くて、真剣に見ていた途中で肩に重み感じて横を見る。
すると・・・

「タカ坊・・・」(苦笑

タカ坊が眠ってしまって、もたれ掛かってきた。
その寝顔に私は苦笑いが出てくる。
考えてみたら、タカ坊がこの手の映画に集中して見れなかったんだわ。

「無理しちゃって・・・」

周りを気にして、小声で呟く。
私としては、間の手すりがなかったら膝枕をしてあげたんだけど・・・

「こういう逆のパターンもいいものね。
せめて映画が終わるまでこのままでいてあげる」

タカ坊の頬を撫でて、映画に集中する。
せっかくタカ坊が選んでくれたんだから、しっかり見ないとバチが当たるわ。
無理させてしまったかしら?
うふふ、寝顔も可愛いわね。
雄二とは大違いだわ。
・・・えっと、周りは映画に集中しているわね?
ちょっとくらい、いいわよね?

 

チュッ♪

 

 

〜貴明が考えたデートコース第二段・ファーストフード〜

「ゴメン、タマ姉!!
起こしてくれてもよかったのに」

「構わないわよ、私は。
得したこともあったし」

「は?」

「こっちの話しよ」

やっぱり予想通り、眠気に耐え切れなくて眠ってしまった。
しかもタマ姉の肩にもたれる様にだ!!
立場逆だろ!?
俺にヘッキーの称号を外すなんて、夢のまた夢なのか?
いや、違う!!
まだ大丈夫だ!!
間に合う!!

「でも、昼食がファーストフードとは思わなかったわ」

「学生のデートじゃこの方がいいかなと思ったけど、口に合わなかった?」

「いいえ、たまにはこういうのも悪くないわ」

そう言いポテトを一口するタマ姉(アップルパイとポテトのセット)
昔は『こんな健康に悪い物なんて』とか言いそうだったけど、だいぶ丸くなったなぁ。
あっと、これは失礼か。

「やっぱり、お昼は混んでるわねぇ」

「そりゃそうだよ。
利用する人が多いから、休日だしね」

俺はハンバーガーを頬張る。
周りを見ても、俺達と同じようなデートと同じような組み合わせがよくいる。
あっ・・・
あの人達、『あーん』してたぞ(汗
こんな大人数の中でやるとは、チャレンジャーだな。
はっ!!
もしやイルファさん達と『あーん』した時も、ああ見えていたのか!?
うわー、恥ずかしすぎる!!
改めて考えると、俺ってかなりヤバかったのでは?
皆がお願いするから、やったりやられたりしたけど・・・
こ、今度から控えようかな?
一人で真っ赤になっていると思うけど、
気を逸らすために口にギリギリ入るくらいの大きさのハンバーガーを押し込める。

「あら?」

 

タカ坊が急に挙動不審になって、ハンバーガーを無理やり詰め込む。
私は『行儀が悪いわよ』と注意しようとしたけど、口の横にケチャップが付いている。
もう、こういうところはいつまで経っても子供っぽいというかなんと言うか・・・

「ほら、タカ坊。
口周りにケチャップが付いているわよ?
取ってあげるから、ジッとしているのよ」

「うわっ!?
ちょっ、タマ姉!?」

「いいから」

備えてあるナプキンを右手で取って、左手をタカ坊の頬を押さえて拭いてあげる。

「はい、取れたわよ」

「あ、ありがと・・・」

「タカ坊は十分格好良いんだから、身だしなみはしっかりね」

「う、うん・・・」

ポリポリとポテトを摘むタカ坊。
それを私は、多分微笑みながら見ていたと思う。
こういうのも幸せっていうのかしら・・・

 

 

〜貴明が考えたデートコース第三段・ウィンドウショッピング〜

こ、このままでは、雄ニに笑われる(汗
賭けとか関係なく、それはもう大笑いで・・・
『あーん』の第三者から見た光景に、あまりの恥ずかしさにショックを受けてしまった。
タマ姉に口を拭かれ、子ども扱い・・・
こ、今度こそ!!

「これなんてどうかな、タマ姉。
よく似合うと思うよ?」

「そう?
フフ・・・
タカ坊も言うようになったわね」

次の訪れたのは百貨店。
いわゆるウィンドウショッピングだ。
女性は見るだけでも楽しいらしいし、時間もあるからゆっくり周れる。
(もちろん、余程高くなかったら買ってあげるつもり)

「でも、私はこんなアクセサリーとか似合わないわよ」

「そ、そんなことないよ!」

今見ているのは、首飾りのコーナー。
元々は服を見に行くつもりだったんだけど、ちょっと寄り道。
手に取っている一つは、羽のアクセサリーの付いた物。
お世辞抜きでタマ姉に似合うと思う。

「そうかしら?
でも、今は最初の服を見に行きましょうか?」

「別にそんなに慌てなくてもいいよ。
時間もたっぷりあるし・・・」

「いいのよ。
それこそ、あとでまた来たらいいわ。
時間はたっぷりあることだし・・・ね?」

「そ、そう?
タマ姉がそう言うならいいけど・・・
俺も何か一つくらいプレゼントさせてくれよ?」

「その気持ちで十分よ、タカ坊。
でも・・・
せっかくだから、今回はお願いようかしら?」

「も、もちろん、任せてよ!」

「フフ・・・
他にもいろいろなお店もあるし、とりあえず服を見に行きましょう」

「了解」

タマ姉の意見に従って、俺達は服コーナーに向かう。
でも、女性の服は高いからなぁ・・・
出来れば、そこでプレゼントは・・・(甲斐性なし
だけど、行った先に俺はさっそく後悔した・・・

 

「タカ坊!!
つ、次はこれよ!!」

「ま、まだあるの?」(汗

「もちろんよ!」

「そ、そんな親指立てなくても・・・」

だって・・・
楽しみにしていたんだから、しょうがないじゃない。
一度タカ坊をコーディネイトしてみたかったのよー
こんなチャンスもう無いかもしれないんだから、全て試すわよ!

「ま、まさか、服は服でも紳士服で俺のとは・・・」

「あら?
言ってなかったかしら?」

「き、聞いていません」(疲

「ごめんね、タカ坊。
次はコレよ!!」

「ま、まだ続くの?」

「違うわ、『まだまだ』よ!!」

「た、タマ姉」(泣

その泣き顔がまたそそるわー
幼少の頃を思い出すわねー
・・・逃がさないわよ、タ・カ・ぼ・う☆

 

 

〜貴明が考えたデートコース第四段・お買い物〜

「つ、疲れた・・・」

「ご、ゴメンね、タカ坊・・・
調子に乗っちゃったわ」

あれからずっと着せ替え人形よろしく、何度も試着させられた。
しかもタマ姉が(俺ではない)気に入った何着かを購入した(俺払いでもない)
グッタリしてしまい、プレゼントを買うのも忘れていた。
何やってんだろ、俺?

「迷惑かけた分、今日は腕を振るうから期待していてね」

「タマ姉がそこまでいうんだから、期待が上がるよ」

「ええ。
まーりゃん先輩達が企てた時は、今一だったから洋食の勉強をしたのよ。
その成果を味あわせてあげる」

「楽しみだなー」

次は夕食の材料を買いにスーパーへ。
向かっている間も腕を組むのはタマ姉曰くデフォらしい。
胸の感触が気になるのは言わずもがな。

「食事は私の家でいいわよね?」

「大丈夫だよ。
シルファちゃんには夕食まで要らないって言ってあるから」

「シルファちゃんに悪いことをしたわね」

「あ、あはは・・・」

最近こういうことばかりで、ちょっとご機嫌斜めだからなぁ・・・・
フォローしておかないと(汗

「タカ坊、今は私を見てよね」

「う、うん・・・」

普通にそう言われてると、どう反応していいか・・・(恥

「クスクス・・・
真っ赤になっちゃって・・・
可愛いんだから、もー!!」

「ちょっ、タマ姉!!
く、苦し・・・」

ギュッとハグされてしまう(タマ姉の胸が顔に!!)
こういう反応がタマ姉をその気にさせてしまうんだろうな・・・
どうしろと?

 

「これとこれと・・・
あとは・・・っと」

スーパーに着いて、さっそく材料集め。
出来たらタカ坊にも食材の良し悪しの見極め方を学んで欲しいけど、今日は汚名返上の機会。
念には念を入れて、私が厳選する。

「あ、あの・・・タマ姉?」

「ん?
どうしたの?
何か欲しい物でもあったかしら?」

「そ、そうなんだ!!
ちょっと見てきたい物があるから、別行動してもいいかな!?」

「ダメよ」(即答

「何故に!?」

バレバレなのよ。
今も組んでいる腕が(当たっている胸が)気になるんでしょ?
でも離してあげない。
今日は私が独占するんだから。

「スーパーでも一度逸れたら、見つけるのに時間が掛かるかもしれないわ。
もう少ししたら移動するから、待ってなさい」

「そ、そんな子ども扱いな・・・」(汗

「それなら大人しくしていなさい」

「はう・・・」

ゴメンね、今日は私の方が我侭ばかりで。
雄二との賭けなんて、今はどうでもいいわ。
今は・・・今日は、タカ坊と2人っきりで幸せなんだから。

「お菓子は300円以内よ」

「・・・そこまで子ども扱いですか?
それに遠足じゃないんだから・・・」(ガックリ

「冗談よ。
ほら、拗ねないの。
食材は揃ったから、レジに行くわよ」

「わわっ!
カートを引いているんだから、引っ張らないで!!」

ホント、こんなに楽しいのは久しぶり。
皆と一緒に過ごすのももちろん楽しいけど、好きな人との2人っきりはまた別の楽しさがあるわ。
よし!!
気合入れて、おいしい料理を作らなくちゃ!!

 

 

〜貴明が考えたデートコース第四段・夕食〜

食事の場所は『向坂家』。
お邪魔した途端、タマ姉は台所へ直行。
その際・・・

『暇だったら、雄二の部屋で待ってて。
そ・れ・と・も、私の部屋で待ってる?
ちなみに下着類は箪笥の2段目よ』

『け、結構ですー!!』

というやり取りがあった(汗
雄二の部屋にも行く気はなく(何が出てくるか恐ろしい)、居間で静かにテレビを見て待つ。
本人は留守らしく(むしろ朝から追い出されたのだろう)、今日は帰ってこないらしい。
ここでも、2人っきり・・・
もう・・・いいかな、ヘッキーでさ。
皆もそう思っているだろうなぁ・・・
そんな葛藤を他所に、タマ姉は出来上がった料理を運んできた。
メインはローストビーフ、コーンスープにサラダにパン。
飲み物もお茶でなく、水(おそらくミネラルウォーター)
完全無欠に洋食だ。
しかも上品に並べる。

「それじゃ、いただきます」

「はい、どうぞ」

ナイフとフォークを手にして、さっそく一口(フォークなど使うのは久しぶりだ)
おっ・・・

「ど、どう、タカ坊?」

「お、美味しいよ、すごく!!」

「は〜、よかったー」

不安そうな表情で見守っていたタマ姉だったが、俺の反応を見て胸をなでおろす。
マナーはよく分からないけど、自分なりで工夫して食べ続ける。

「タマ姉もよくこれほどの料理が作れたよね。
苦労したんじゃない?」

「そんなことないわよ・・・
って、言いたい所だけど、それなりに苦労したわ。
今思えば、いい機会だったかもしれないわね、あの時のことは」

「タマ姉・・・」

「ほら、おかわりはまだあるから、遠慮しないで食べなさい」

「う、うん」

そう言って、タマ姉も食事を始める。
うん、やっぱり美味しい。

 

「ご馳走様でした」

「はい、おそまつさまでした」

よかったわ、タカ坊が美味しく食べてくれて。
頑張った甲斐があったわ。
タカ坊も満足そうだし、言うことなし。

「タマ姉なら、いつお嫁さんになっても大丈夫だよね」

「あら、嬉しいこと言ってくれるわね」

一瞬、雄二との賭けを気にしての褒め言葉かと思ったけど、そうじゃないみたい。
何気ない言葉で、自分が出した言葉の意味を理解していないみたいね。
その言葉は言う相手を選ぶべきよ、タカ坊?
まあ、私達以外に言ったら・・・クスクス(邪笑

「でも、私は・・・私達はタカ坊以外のお嫁さんになるつもりはないわよ?
いつでも、『答え』待ってるわよ?」

「っ!?」

「そろそろ『答え』も薄々決まってきたんでしょ?
懐の大きさを見せなさい」

「・・・・・・」

あらあら、固まっちゃったわね。
頑張れ、男の子。

 

 

〜貴明が考えたデートコース最終段・彼女の私室〜

そろそろ時間的にお暇しようかとしたけど、案の定引き止められた。
雄二が帰ってこない時点で予想していたけど、着替え(パジャマ)を持ってこられたら断れない。
タマ姉の表情も怖かったし(笑顔なんだけど、凄みがあった)
交互に入浴し(一緒に入ろうかと誘われたけど、断固断った)、案内された場所はタマ姉の私室。

「はい、どうぞ」

「ありがとう」

渡されたお茶を一口。
季節はもう冬に近い。
温まれたお茶が美味しい。

「私達がこういう関係になって、早数ヶ月・・・
時間が経つのは早いわねぇ」

「そうだね・・・」

皆の悩みが解決し、今の状況になっても騒がしくも楽しい日々。
しかし、それは皆へ『答え』を待たせている期間と同じ。
楽しかった反面、申し訳なさがでてくる。

「確かに、そろそろ『答え』を聞きたいと思う時もあるわ。
さっきも言ったけど、貴方も『答え』が浮かんでいるはずよ?」

「・・・・・・」

確かにそうだ。
誰にも言っていないけど、答えが二択になりつつある。
一つは『誰が一番とは選べないから、全て断る』。
これは今まで待っていてくれた皆にとっては最悪の答えだと、今の俺は分かっている。
なら、もうひとつの・・・

「ごめん、タマ姉・・・
言うとおり、『答え』はあるんだ。
たぶん、タマ姉が予想しているのと同じだと思う。
でも、もう少しだけ待ってくれないかな?
もう少しで決心がつくと思うけど、今はまだ・・・」

ここまで分かっているのに、今も決心がつかない自分は最低だろう(その答えすらもある意味最低だ)
でも、今は情けない表情を出さずにグッと力を入れる。

「だから・・・」

「いいのよ、タカ坊」

「えっ?」

タマ姉はこう言っては失礼だと思うけど、柔らかく微笑んでいた。
意外な反応に眼をパチパチする。

「充分答えは聞けたわ。
後は決心するタカ坊と、もっと頑張って迷う理由もないくらいに追い込む私達次第。
覚悟しなさい♪」

「あ、アハハ・・・」

俺って、もしかして自爆した?
でも、後悔はない。
今の気持ちを伝えきったのだから。

「それじゃ、私も改めて伝えるわ。
愛してるわ、タカ坊・・・
ううん、貴明。
昔からずっと・・・
今もこれからも貴方を・・・」

「タマ姉・・・」

「名前で呼んで」

「た、環・・・さん」

「今はそれで許してあげる」

笑いながら顔を近づけて来るタマ姉・・・環さん。
俺も誘われるように寄っていくが、環さんが寸前で止まる。
それは決して、拒否ではないと分かっている。
俺からしてくるのを待っている。
少し・・・かなり恥ずかしいけど、俺から抱きしめて口付けを交わす。

「ん!」

抱きしめられた事に驚きながらも、すぐに力を抜いて受け入れてくれる。
長いのか短いのか分からない感覚のなか、ゆっくり離れる。

「環さん。
俺も環さん・・・、皆が大好きだ。
あ、愛してると思う。
今はこれが最大限の『答え』だよ」

「貴明!!」

「ん!!」

精一杯の答えに環さんは感極まったのか、今度は彼女の方からキスをしてくる。

「んむっ!
ちょっと、環さん!!
ストッ・・・むー!!」

「んちゅ・・・
ストップなんてないわ。
一直線よ。
あむ・・・」

何度も何度も、キスの猛攻(笑)に成す術もなく受け入れさせられる。
た、環さんって、キス魔だったのか・・・(汗
この後、色々なモノを耐え切った自分を褒めて欲しい・・・

その日はお泊りはしたけど、それ以上は何もなかったぞ!!
本当だぞ!!

 

 

〜おまけ〜

「・・・と、いうわけよ。
嘘も隠していることも何もないわ。
ありのまま話したわよ」

「・・・・・・」

「雄二?」

「い、いや・・・
実の姉から惚気話を聞くというのは、これほどのダメージを受けると思っても見なかった」(汗

「惚気?
何処がよ?」

「・・・マジで言ってんのか、姉貴?」

「??」

「ま、まあ、いい・・・
で、賭けは俺の勝ちだな?」

「どうしてよ?
私の勝ちに決まっているでしょ」

「な、何で!!
話に聞いたアイツは映画館で寝るわ、子ども扱い、プレゼントを上げる所か貰う不始末、
腕組から逃げるは、ダメダメじゃないか!!
これをヘッキーとは言わずなんと言う!?」

「貴明は想いを正直に答えてくれたわ。
そしてキスも彼から出し、抱きしめてくれたのよ!!
貴方は出来るの?
冗談でもノリでもなく、真剣に告白出来る?」

「お、俺だって久寿川先輩に・・・」

「それは本気でも、同情があったんじゃないの?
もしくは見ていられなかったから」

「・・・・・・」

「これ以上は責めるみたいだから、言わないわ。
私が言いたいのは唯一つ・・・」

 

パチン!

 

「おっす!
オラ、まーりゃん!!」

「そのお供の花梨だよー」

「うわー!!
出たー!!」(絶叫

「事前に呼んでおいたのよ。
それでは、よろしくお願いします」

「まっかせてー!!」

「あ、あの、お姉さま?
話しが見えないんですが・・・
確か、スケープゴートにされるんじゃ?」

「この際、貴方も鍛えてもらうことにしたのよ。
まーりゃん先輩は旅に出るらしいから、ついでに連れて行って欲しいと頼んだのよ」

「ええー!?」

「最初の目的地は某大国だぞ!!
では行くぞ、2等兵!!」

「ちょ、準備とかはー!?」

「こっちで用意してあるモーマンタイ!!」

「やっぱ、某大国の方が情報が集まってるからねー
参加させて貰ったんだよ」

「くっ!」

「おっと、逃がさないわよ。
まーりゃん先輩、ロープでグルグル巻きしておいてください」

「アイアイサー!!」

「ついでに口を塞いじゃおー!」

「やめ・・・フグフグ!!」

「それでは、お願いしますね。
なんだかんだで、出席日数は十分ですから一週間くらいは余裕ですから」

「はいはいー!
それじゃ行くよー!!」

「アイアイサー!!」

「グムム・・・
プハッ!
俺には見える!!
このまま何故か無人島に漂着して、開いてはいけないフラグが立ってしまうんだー!!
いやー!!」

「変な電波でも受けたかしら、あの子・・・?」(汗

 

 

第13話へ続く

 


パニハー第12話、タマ姉です。
今回はあえて短めに纏めてみました。
シーン数を多くして、内容を短めにしてみましたがどうですか?
やっぱりシーン切り替えは少なくても、内容が多い方がいいでしょうか?
洋食のメインを考えて、一番にハンバーグが出てくる自分に意気消沈しました(汗
そして読んだことがある人は知っていると思いますが、少々風車さんが執筆しているSSの内容を少しお借りしました。
改めて、風車さんに許可のお礼を申し上げます。
次回は、流れ的にやはりこのみです。
ラングさん・こうりさん・風車さん、ご感想ありがとうございました!!