「なあなあ、瑠璃ちゃん。
そろそろ貴明迎えに行かへん?」

「別にええやん、さんちゃん。
貴明なんて放っておいたらええねん。
それにるーこさんがおるから、そのうち来るって」

「それじゃ、あたしが行ってくる〜♪」

「ら、らめれす!!
それはシルファの役目なのれす!!」

「何よ、ひっきー!!
アンタはずっとやってるんだから、たまには姉に譲ろうとか言う気持ちはないわけ!?」

「あーぱーめいろろぼに、そんなのはいらないれす!」

「グルルル・・・」

「ウゥゥゥゥゥ・・・」

「ミルファちゃん、シルファちゃん。
騒がしいですよ。」

「だってぇ・・・」

「このあーぱーが・・・」

「もう・・・
ケンカ両成敗です。
反省していなさい。
貴明さんへは私が行って来ます☆」

「お姉ちゃーん!!」

「イルイルー!!」

「冗談です(状況が許せるなら、是非そうしたかったのですが)
瑠璃様・・・
朝食の準備の続きは私達がやっておきますから、珊瑚様と行ってください」

「な、何言っとんねん!
ウチは別に・・・」

「あらあら・・・
貴明さんに食べてもらおうと、全てご自分の料理を出そうとする瑠璃様も可愛いですけど・・・
時にははっきりとアピールするのも大事ですよ」

「何やねん、アピールって!?
ウチはそんなもんしたくないもん!」

「珊瑚様、ここは私達に任せて行ってください」

「それじゃ、頼むなー
瑠璃ちゃん、行くでー」

「ちょ、ちょっと、さんちゃーん!」

 

「やっと行ったねー
瑠璃ちゃんも素直じゃないねー」

「それでこそ瑠璃様なんです!!
あのツンツンして、時にはぶっきら棒に甘える姿こそ最高なんです!
ご飯3杯はいけます!!」

「・・・お姉ちゃんにはいつもツンツン所か、怒られてばかりじゃない」(汗

「その前に、シルファたちは食べられないれすよ」(汗

「気持ちの問題です!!」(キッパリ

「そ、そう・・・なんだ・・・」

「い、イルイルも人のこと言えないれす」

「コホン!
何はともあれ、朝食の準備をしますよ。
仕上げ程度ですが、食器を並べてください」

「はーい」

「はいれす」

 

「何しとんのや、このごうかんまー!!」

 

「あらあら・・・
瑠璃様、今日も絶好調ですね」

「でもさー
あれがご近所様たちに誤解している一番の理由だと思うなー
そのうち、貴明はここに来なくなっちゃうよ?」

「その時は、皆で貴明さんのお家へ押しかければいいんです♪」

「さすがお姉ちゃん!!
冴えてるー!!」

「ら、らめれすー!!
ご主人様のお家は・・・その・・・」

「独り占めは許さないからねー!!」

「ほらほら、本当に準備を始めないと間に合いませんよ」

「「はーい」」

 


2005・2008 Leaf 『ToHeart2 XRATED&ToHeart2 AnotherDays』

「パニック・ハート」
 第11話・意地っ張りと本音


 

「イタタ・・」

「大丈夫、貴明?」

「ご、ご主人様・・・」

「だ、大丈夫大丈夫!
これくらい、どうってことないさ!!」

「ふん!
そんなヘッキー、放っておけばええねん」

「ダメやで、瑠璃ちゃん。
悪い事したら、ちゃんと謝らなー」

「ウチは悪ない!!」

朝、るーこのベッドで寝ている時(何も疚しいことはなかったぞ!!)、瑠璃ちゃんの強襲を受けてしまう。
まあ、普通に考えたら『誤解』するもの仕方ないけどさ。
得意の蹴りが不幸にも腹部にジャストヒットする。
事情は苦しむ俺を放って、るーこが説明した(恥ずかしいことも全て)
羨ましそうにする珊瑚ちゃんと、さらに真っ赤になる瑠璃ちゃんが印象的だった。

「ご主人様、これ・・・」

「あ、ありがとう、シルファちゃん」

昨日からメンテナンスを終えたシルファちゃん達は、珊瑚ちゃんたちの家にいた。
シルファちゃんが俺の制服を持ってきてくれていたので、今日はここから登校らしい。
腹部がダメージを受けているので、朝食は食べれない。
シルファちゃんが持ってきてくれた水が精一杯だ。

「あかんで、瑠璃ちゃん。
せっかく貴明のために一生懸命ご飯作ったのに、そんなんしたら」

「ちゃ、ちゃうって!
ウ、ウチはさんちゃんとるーこさんに作ったんや!
貴明なんて知らん!!」

瑠璃ちゃんの言葉は当然だけど、そうハッキリと言われたらさすがにショックを受ける。
これでも、少しは仲良くなったと思っていたのに・・・

「あらあら・・・
瑠璃様、心無い事を仰るから貴明さんが落ち込んでしまいましたよ」

「後悔先に立たずだな」

「えっ?」

いやいや、気にしないで瑠璃ちゃん。
雄二よりマシとは言え、所詮俺もそれくらいの男さ・・・
下手な慰めは心を傷つけるだけですよ、イルファさん。

「ああ、もう!!
貴明も男やったら、それくらいでピーピー言うんやない!!
う、ウチが、ア・・・アーンしたるさかい、早う食べ!!」

「いや、だから、胃が・・・オグッ!!」

暴走状態の瑠璃ちゃんは、当然こちらの言葉も聞かずに一直線。
アーン所か、断ろうと口を開いたのに無理やりご飯を放り込まれる。
イルファさん、ニコニコ笑わないで止めてください。
ミルファちゃん、そんな羨ましそうに見ないで!
シルファちゃん、水はもういいから!!
珊瑚ちゃんも準備万端みたいに、瑠璃ちゃんの後ろに並ばないで!!
るーこ、原因の一つなんだから一人で黙々と食うな!

結局、朝食は全部食べさせられてしまった・・・(汗
うう・・胃が痛いです(泣

 

 

「それで、瑠璃ちゃんが不機嫌なわけね」

「いいなー、瑠璃ちゃん。
最近、このみもタカ君と一緒に寝た事ないなー」

「・・・寝ないぞ。
そんなに期待の目をしても」

「タカ君のケチー」

「そういう問題じゃない!!」

今回俺達は(俺・珊瑚ちゃん・瑠璃ちゃん・ミルファちゃん・るーこ) マンションから出発し、
途中で皆と合流する。
そして今朝の事を話して(これも誤解無い様に話したぞ)、
呆れたタマ姉と期待に満ちた眼差しを向けるこのみがいた。

「でもさ、やっぱり先輩ってへっきーっすね。
普通、可愛い女の子と添い寝してたら、それはもう獣の様にガバチョといくはずなのに・・・」

それ・・・
たぶん普通じゃないよ、よっちゃん・・・(汗

「で、でも、信用してくれたんだから、そんな事出来るはずが無いよ」

「くあー!!
この良い子ちゃんぶり!!
さすが先輩!!
もう、男を返上するべきっす!!」

「あのね・・・」(汗

どないせいっちゅーねん。

「チエさん。
タカ坊は『答え』を出さない限り、そんな関係にはならないわ。
分かっているでしょ?
それに朝から話す内容じゃないわ」

「てへへ・・・
ごめんなさいっす」

「先輩・・・
ツンデレ?」

「違ーう!」

俺よりタマ姉が言う方が説得力があるのもいつものこと。
それとちゃるさん、そういう事じゃないから(問題もズレてるよ)

「瑠璃・・・
いい加減に機嫌を直したら?
珊瑚も手伝いなさいよ」

「ウチは全然気にしてないもーん!!
いつも通りや!!」

「瑠璃ちゃんの意地っ張りはいつもの事やからなー
ウチより貴明に慰められた方が嬉しいんとちゃう?」

「あのね・・・
それは今は逆効果だって言ってんのよ」

郁乃が懸命に説得しているけど、効果は無し。
マイペースの珊瑚ちゃんに疲れてきた様子。
俺も一歩離れた瑠璃ちゃんから、威嚇するような視線を感じる・・・いや、突き刺さってる(汗
これは長引きそうだ・・・

「瑠璃ちゃんもさー
貴明の事もすきすきすきーなのに、どうしてああなのかな?
好きだったら、側に居たいし何かしてあげたいと思わないのかな?」

「それは人それぞれですね。
想いの伝え方は違いますから。
でも、根本に思うことは皆さんと一緒のはずです」

ミルファちゃんの言葉に優季さんがフォローを入れる。
人それぞれでも、キックは無いんじゃないかなぁ(しみじみ

「るーこもさ・・・
ちゃっとやりすぎなんじゃない?
それはルール違反だと思うな」

「それについては謝る。
だがな、想いが抑えられなかったのだ」

由真も突っ込むがそれ以上の答えをるーこが返した。
恥かしいから、聞こえない振りをするけど。

「ささら先輩・・・
私たちももう少しアピールをするべきなんでしょうか?」

「そうですね・・・
今度、話し合いましょうか、愛佳さん」

もう限界を超えてるからやめてください!!
これ以上されたら、倒れるぞ!!

「ほらほら、皆。
歩くスピードが落ちてるわよ。
急がないと遅刻するわ」

『はーい』

いつもいつも、まとめてもらってすみませんタマ姉。

「タカ坊もビシッとしなさいよ。
貴方は私たちの中心で、大事な人なんだから」

・・・ご忠告、痛み入ります。

 

それからも、解散後もこのみ達から聞くと瑠璃ちゃんの機嫌は変わらずじまい。
昼食も、瑠璃ちゃんは時々唸りながら睨んでくる。
本当にこれは長いな。
いつもなら、蹴り一発で文句を言った後は機嫌を直すのに・・・
他に何かに悪い事したかな・・・?

 

 

そして放課後・・・

「わーい!
貴明とデートやー☆」

「・・・」

「あ、あははは・・・」(汗

このままじゃ埒が明かないということで、理由を聞くために(ご機嫌伺い?)デート・・・
いやいや、珊瑚ちゃんも一緒だから寄り道する事になった。
放課後には少し落ち着いたらしいけど、まだまだ瑠璃ちゃんの機嫌は降下したまま。
俺としては、皆で行った方が気が紛れると思ったが・・・

『いい、タカ坊?
瑠璃ちゃんの不機嫌の原因は、私は何となく予想がついているわ。
でも、タカ坊は自分で気付きなさい。
珊瑚ちゃんも一緒に行くから、頑張りなさい』

らしい。
気付けと言われても・・・

「なあ、貴明〜
どこ行く?」

「そうだなー
ゲームセンターはどうかな?」

「それ、いいなー!
瑠璃ちゃんもかまへんよな?」

「・・・さんちゃんが良いんなら、ウチも文句言わん」

「よ、よし!!
それじゃ、行こうか!!」

雰囲気を誤魔化すように、張り切った声で目的地に向かう。
途中で、珊瑚ちゃんは俺の右腕へ組んできた。

「えへへ。
ほら、瑠璃ちゃんも」

いや、それはさすがに無理でしょ?
ずっと機嫌は良くならない上、睨んでたんだよ?
それを・・・

「る、瑠璃ちゃん!?」

予想外に黙ったまま、左腕を掴んできた。
さすがに腕を組むまではいかないけど、握ったまま離さない。

「え、ええから、早ういくで!!」

「うわわっ!
わ、分かったから引っ張らないで!!」

「それやったら、ウチも引っ張ろー
ほらほら、貴明ー♪」

「珊瑚ちゃんまで・・・」

瑠璃ちゃんの行動を見て、組んだ腕を解いて手を握り同じようする。
俺の目の前には、笑顔で俺の右腕を引っ張る珊瑚ちゃん。
左腕を引っ張るのは、ぶっきら棒でも頬が赤くなっているのが分かる瑠璃ちゃん。
これはこれでいいかもな・・・
それぞれ2人の顔を見て、そんな事を思った・・・

 

そして少しは機嫌も回復したのか、会話もしてくれるようになりゲームセンターへ着いた。
中に入ると、珊瑚ちゃんは手を解いて中へまっしぐら。
それは子供を思い浮かべる光景だった。

「さすが珊瑚ちゃん。
一直線だったね」

「いつものことや。
さんちゃんはゲーム好きやけど、前までは行くのはダメやったからな。
理由は環さんと同じや
ウチ等2人だけやったら行かへんけど、貴明や皆がおるんやったら安心や」

「頼りにされて光栄だよ」

「っ!
そ、そういう意味で言ったんやない!
ウ、ウチ等でも平気や!!
貴明なんか、そのまま入り口で立ってたらええねん!!」

あっ・・・
いかん、また瑠璃ちゃんを怒らせてしまった(汗
まだまだ機嫌が直ったわけじゃないのに・・・
でも、どういう言葉で反応するか分かりにくいから、こっちもどうしたらいいか・・・
先に入ってしまった瑠璃ちゃんの後を追うように、俺も中に入る。
ゲームで気が紛れて、機嫌が戻ればいいけど・・・

 

そして・・・

「やっぱ、いややー!
さんちゃんのイジワルー!!」(泣

「瑠璃ちゃんも楽しんでるなー」(無自覚

「あ、あはは・・」(汗

予想通り、珊瑚ちゃんがプレイするのはお約束のガンシューティング。
今の時代、ゾンビを打ちまくる系は古いと思うけど、何故かココにはあるのだ。
だからこそ、珊瑚ちゃんが来れば一度はこれをプレイする。
その度に瑠璃ちゃんが絶叫するのだ。

「た、貴明〜!
そんな所で笑ってんと、代わってやー!!」

「了解。
珊瑚ちゃん、いいかな?」

「もちろんやでー」

銃を押し付けるように渡され交代する。
俺も大抵は交代でプレイさせられるから、腕は上がっている(それでもるーこには勝てないけど)
結構調子もよく、今日は最高記録で終了。

「今日は良いとこまでいけたなー。
これやったら、もうすぐ全面クリアー出来るでー」

「そうかな?
これでるーこと同じくらいになれるかな?」

「どやろーなー
るーちゃん(るーこ)は、もっと正確で速いからなー。
クリアできても、まだまだやでー」

「うっ・・・
そ、そうなんだ」(汗

さすが、るーこ。
あの最高記録は今も破られていない。
道はまだまだ険しい・・・

「るーこさんも貴明も何でそんなん出来んねん・・・」

「瑠璃ちゃんも楽しんでるやん?」

「ううぅ・・・
さんちゃ〜ん・・・」(泣

ホラー系→怖がる→楽しんでいる、という式が成り立つ珊瑚ちゃんには、
瑠璃ちゃんも楽しんでいるらしい。
瑠璃ちゃんの半泣きで怖がっている姿はマジだ。

「ほら、珊瑚ちゃん。
次は瑠璃ちゃんの希望を聞こうよ?」

「ええでー
瑠璃ちゃん、どれにする?」

「うーん・・・
それやったら・・・さ、ヌイグルミ・・・取ってくれる?」

「もちろん!」

おずおずとお願いする瑠璃ちゃんに当然頷く。
遊園地に行った時に取ったヌイグルミを今も大事にして、
度々取ってあげているヌイグルミも並べて大切にしているらしい。
さすがに私室までは入った事は無いので、イルファさんから聞いただけだけど・・・
まずは移動して目当ての機械の前に行く。

「それじゃ、リクエストあるかな?」

出来るだけ欲しいものを取ってあげたいし、機嫌も良くなるだろう。
・・・お願いだから、難しいものを指定しないでくれ(懇願

「えーっと・・・
あれやけど、いけるかなぁ?」

元々決めてあったらしく(交代した時にだろう)、リクエストのヌイグルミを指す。
見た限り、何とか取れる・・・かな?

「たぶん取れるよ。
珊瑚ちゃんはどれにする?」

「ウチも同じもでええよー。
瑠璃ちゃんとお揃いや」

えっと・・・
同じ機械ではもう無いので、違う機械を調べる。
すぐにヌイグルミを発見し、これは最初に指したモノより簡単そうだ。

「うん、これも大丈夫。
それじゃ、チャレンジといこう」

「ファイトやでー」

「・・・」(無言でも視線には『絶対取りや』と言っている)

それぞれの応援を受け、100円と投下。
さて、いくらで取れるかな・・・

 

「ありがとうなー、貴明☆」

「あ、ありがと・・・」

笑顔満面に喜ぶ珊瑚ちゃんと、ヌイグルミを抱きしめてお礼を言う瑠璃ちゃん。
それぞれが精一杯のお礼に、俺も嬉しくなる(取れたまでの金額は聞かないで)
カバンには入らないくらいの大きさだけど、そこで瑠璃ちゃんが取り出したのは何と『エコバッグ』。
瑠璃ちゃん曰く、今日は俺の家で夕食を作るらしく材料を買いに行く予定。
それなら、エコバッグは必需品らしい。
さすがシルファちゃんにエコバッグを教えた瑠璃ちゃん。
でも、学生カバンの中にエコバッグ・・・
そのアンバランスさが瑠璃ちゃんらしい(苦笑

「次は何をしようか?
買い物に行くなら、後はそれほど時間があるわけじゃないけど・・・」

「それやったら、占いしよーやー
前にタマさん(環)達がやってたら気になってたんやー」

占いか・・・
前回のピンポイントなお告げが出たアレか・・・

「さんちゃん、占いなんて眉唾やで。
しかも機械やん。
アテにならへんて」

「まあまあ、いいじゃない。
遊び半分だし、ゲームと同じ感覚でやってみようよ」

「・・・元々、さんちゃんが言うたことやから反対せえへんよ」

意外と気にするのは瑠璃ちゃんかもしれないな。
珊瑚ちゃんは良い結果には喜び、悪い結果でも軽く流しそうだし・・・

「確か、あそこにあったから移動しようか?」

「りょーかいやー☆」

「ふ、ふん!
ええで、受けてたったる」

瑠璃ちゃん、ケンカじゃないんだから・・・(汗
そんなに意気込まなくても・・・

 

占いゲームをプレイする前に瑠璃ちゃんの希望で、一人ずつ入ることに決まる。
最初のチャレンジャーは、勿論珊瑚ちゃん。
隠しの布で、こっちからはどうなっているか分からない。
そして、出てきた彼女は更なるご機嫌で何故か俺に抱きついてきた・・・

「まずはウチやー
はい!」

渡れた紙を珊瑚ちゃんを引き離してくれた瑠璃ちゃんと一緒に読む。

 

『今は幸運の女神が側にいます、何も恐れる必要な張りません。
想い人にさらなるアタックをしましょう。
チャンスをモノにする絶好の機会です』

 

「い、良いことばかりやなー
さすがさんちゃん」

「えへへ・・・」

・・・マジで?
ただでさえ、一杯一杯なのにさらなるアタックを受けろと仰るのですか?
そして、再度抱きつかれる(後ろから)

「今度は瑠璃ちゃんやでー
早く行かんと、時間のうてしまうで」

「わ、分かってる・・・
貴明!!
もし、さんちゃんにえっちぃことしたら蹴るからな!!」

「・・・今の体勢を見てくれ」

「さんちゃんが望んだ事やから、大目に見たる。
それ以上は、もしくは貴明から手を出したら・・・」

「しない、しません、絶対に!!」

「ええぇー
貴明やったら、ウチ構わなへんで」

だから、そこで問題発言しないでくれ!!
頬を摺り寄せないで!!

「る、瑠璃ちゃん!!
そんなに心配ならさ、逆に早く済ませてきた方がいいよ!!
約束するから!!」

「そ、そっか?
それやったら、済ませてくるからな。
・・・信じるで?」

「もちろん!」

「瑠璃ちゃんと貴明のいけずー」

瑠璃ちゃんを待っている間、約束通り会話しながら待つ(手は出してないぞ!!)
そして数分後・・・

「〜〜〜〜っ!!」 (真っ赤

こちらも何故か真っ赤になりながら唸るように、戻ってきた。

「瑠璃ちゃん瑠璃ちゃん、結果どないやった?
見せてーなー」

「だ、ダメだで、さんちゃん!
こればっかりは、いくらさんちゃんでも!!」

背中から降りた珊瑚ちゃんは当然知りたがる。
持っていた紙を奪われないよう、あっちこっちに避ける瑠璃ちゃん。
それほど必死になるとは・・・
何が書いてあるのか、逆に気になるぞ?

「取ったでー!」

「ああー!!
ダメ、さんちゃーん!!」

テクテクとこっちに来た珊瑚ちゃんは、俺に結果の紙を渡す。
瑠璃ちゃんに蹴られる前に見てしまおう。


『貴女は今、少し落ち込み気味です。
しかし想い人が解決をしてくれるでしょう。
ただし、それを待つのではありません。
自らも積極的になりましょう』

 

??
これで、真っ赤になる理由が分からない。
それよりも悩み事の方が気になる。
これが朝からずっと怒ってる理由かな?

「瑠璃ちゃん、何か悩み事があるの?」

「っ!!
何もあらへん!!
早よう、自分もやってこーい!!
このへっきー!!」

「うわわっ!!」

「さんちゃんもホント、素直やないなー」

どっちにしても、蹴られて機械の前に飛ばされる。
どうやら珊瑚ちゃんは、原因を分かっているみたい。
後で聞いてみよう。
取り合えず、俺も入力っと・・・

占いの結果を見て、俺は固まるしかなかった・・・
取りあえず、外に出ると2人とも興味津々な態度に俺は黙って紙を渡す。
それを見た珊瑚ちゃんたちは、複雑そうな視線を向けてくる。

「貴明〜、ファイトやでー」

「え、えっと、そ、その・・・
ま、まあ・・・ご、ゴメン」

逆に励まされたり、謝られてしまった。
だって、内容がさ・・・

 

『・・・・・・頑張れ』

 

だけだぞ(汗
お金を払って、これだけの言葉っていうのもダメなんじゃないか?
というより、占いですらもないぞ?

「そ、それじゃ買い物に行こうか?
ジッとしてても仕方ないし」

「そ、そうやな。
さんちゃんもええか?」

「ええよー
もう十分遊んだし」

最後に妙な雰囲気の中、俺達はゲームセンターを後にする。
心の中で、もう2度とあの占いはしないと決意しながら・・・

 

 

買い物を済ませ、自宅に着く。
途中で珊瑚ちゃんがお菓子を欲しがったけど、食事前なので瑠璃ちゃんがOKを出さなかった。

「それじゃ、さっそく準備するからな。
飲み物くらいはええけど、間食はあかんで」

「はーい・・・」

「分かってるよ。
瑠璃ちゃんのご飯も美味しいから、期待してるよ」

「ふ、ふん!
煽てたって、何もでないんやからな!!」

照れくさそうに文句を言いながら、キッチンへ行く瑠璃ちゃん。
リビングのテーブルにコーヒー(俺用)とホットミルク(珊瑚ちゃん用)を置き、ソファに座る。
珊瑚ちゃんも隣に座って、またしても抱きついてくる。
くっ・・・
惑わされるな、貴明。
ここで大声を出したりしたら、瑠璃ちゃんにバレてまた怒られる。
今までの経験を思い受けべろ!
ここは軽くスルーするんだ!

「さ、珊瑚ちゃん。
夕食が出来るまで何をしようか?」

「だいじょーぶやでー
そう思て、これを持って来たんやー」

ガサゴソとカバンから取り出したものは、一本のDVD。
もちろん雄二ではないので、怪しいものじゃないだろう。
渡されたパッケージに書かれているタイトルは・・・

「ゲームセンター○X?」

「そや。
これ、めっちゃ面白いで。
貴明も見て欲しいから持って来たんや」

ああ、確かにチラッと聞いたことあるよ。
芸人が昔懐かしのゲームをプレイして、エンディングを目指すというモノだったよな?
レンタルショップでもあるらしいけど、珊瑚ちゃんが取り出したものは買った物だ。

「これって、時間が長いから暇つぶしにちょうどええねん。
それじゃ、用意するなー」

抱き付いていた手を放して、ビデオデッキにセットする。
それは場所は違うが、昨日のるーこと同じような光景だった。
ん?
同じ?
一瞬嫌な予感を感じるが、始まったので気のせいのことにする。
また、戻ってきた珊瑚ちゃんに抱きつかれたけど・・・

 

「ご飯出来たでー
何や、さんちゃん。
それ持って来たんかいな」

「そやー」

「結構面白いね、これ」

最初は知らないゲームからだったけど、
リアクションが面白いし何度も失敗した後のクリアは興奮してしまった。
面白かったというのが、正直な感想だ。

「ウチはそんなにゲームが好きじゃないから、何度も見いへんからなー
ミルファは見事にハマって、ゲーム機を買おうとダダこねたわ」

「ああ・・・
その光景が浮かび上がるよ。
それで、どうなったの?
あの本体は古いから、そこら辺じゃ売ってないんじゃない?」

「それ以前の問題や。
イルファが成績が上がったら考えてあげるとか言ってな。
成果はない」

「そ、そう・・・」

まるで子供扱いだな。

「それよりご飯や。
ご飯は出来たてで食べるのが、一番美味しいんや」

「分かってるよ」

「はーい」

俺と珊瑚ちゃんもイスに座る。
テーブルの上には、予想以上にたくさんの種類があった。

「うわー!
いっぱいやー!」

「ご、豪勢だね、瑠璃ちゃん」

「た、偶にはこういうのもいいやろ?
せやから、気にせずに食べてや」

「うん。
それじゃ、いただきまーす!!」

「まーす!」

俺達は箸を持って、思い思いの料理に手をつける。
その美味しさは予想以上だった。

「美味しいよ、瑠璃ちゃん!
これだったら、いくらでも食べられるよ」

「ホンマ、美味しいなー」

「お、美味しいのは当たり前や!
一々褒めるんやない!」

明らかな照れ隠しだと分かるけど、今は食事に夢中。
瑠璃ちゃんも『行儀が悪いで』と一言だけで、後はニコニコと主に俺を見ている。
それに気付かなくて、そのまま満足するまで食べ続けた・・・

 

「はあ・・・
もうお腹一杯だ・・・」

「それだけ食べたら、そらそやら。
それじゃ食器を片付けるからな」

「ウチも手伝うでー」

「さ、さんちゃんはええよ!
それやったら、貴明を馬車のごとく働かせたらええねん!!」

いやさ・・・
手伝えといえば手伝うけど、それはないんじゃないかな?

「ウチも貴明の役に立ち足いし、瑠璃ちゃんの手伝いもしたいんやー
ダメ?」

「うっ・・・
しゃ、しゃーないな・・・
今回だけやで?
それと刃物は触らんようにな」

「了解やー」

双子の姉妹はそれぞれ食器を持って、台所へ向かう。
えっと・・・
俺も手伝った方がいいのだろうか?

 

 

洗い物を済ませ(門前払いだった)、もう遅い時間になった。
送っていこうと声を掛けるが、予想外の言葉が珊瑚ちゃんから出た。

「今日は貴明の家でお泊りやー♪」

一瞬、昨日のデジャブを感じてしまった。
これがビデオを見る前に感じた嫌な予感か・・・
どうして、そこで注意しなかったのだろう!!
俺のバカ!!

「る、瑠璃ちゃんも反対だろ!?
ほら、いつものように!!」

『姐さん、頼みます!!』というように瑠璃ちゃんを押し出すが・・・

「る、るーこさんはOKでウチ等はあかんの?」

えっ、ええー!?
なんですか、さらなる意外なお言葉!?

「あんな・・・
瑠璃ちゃんは、るーさんが羨ましかったんや。
それに朝ごはんも張り切って作ったのに、あんなんになってしまったやろ?
せやから、瑠璃ちゃんはずっと不機嫌やってん」

「さ、さんちゃん!?」

「その分、晩ごはんに気合いれたというわけや。
どうやった?
瑠璃ちゃんの愛情が込もった手料理は?」

「も、もうやめてー!!」(真っ赤

そ、そうだったのか・・・
朝の現場(?)を見た時は大変お怒りだったけど、後の不機嫌はそういう理由だったのか・・・
さすがに予想できないよ(この男だけだ)

「で、でもさ!!
着替えとかどうするの!?
さすがにこの家には無いでしょ!?」

「それやったら心配なしやー
もう少ししたら、いっちゃんたちが来るから」

すでに決定事項!?
周りは全て敵!?

「ちゃんとお礼もあるでー」

「お礼?」

首を傾げる俺に珊瑚ちゃんはニコニコと笑いながら、爆弾発言をする。

「あんな・・・
ウチも瑠璃ちゃんも貴明がすきすきすきーやで。
ううん、それ以上や。
こういうんのを『愛している』っていうんかなー」

「なっ!?」

驚きのあまり固まっている俺に、今度は瑠璃ちゃんの番らしい。

「ほら、瑠璃ちゃんも言わな」

「う、うん・・・
貴明・・・
ウチもこれでも感謝してるんやで。
貴明がおらんかったら、ウチ等どうなってたか想像も付かん。
こんな性格やけど、貴明を想っているのは信じてや。
い、一度しか言わんから、よく聞きや!!
ウチ・・・ううん、私は貴明が好きです!!
あ、愛してる!!」

「っ!!」

自らの告白で極まったのか、俺の首に手を回してキスをしてくる。
もうパニック状態に陥り、瑠璃ちゃんが離れても呆然としたまま。
さらに・・・

「瑠璃ちゃんだけズルイー
ウチもするー!!」

「〜〜〜っ!!」

珊瑚ちゃんまで、キスをしてくる。
当然、俺は避けることが出来るはずが無い。
この時ばかりは、瑠璃ちゃんも怒鳴らずに俺に抱きついてくる。
いや・・・
神様、仏様・・・
こんな下らない俺にどうして、皆はこれほどの想いを伝えてくれるのでしょうか?
それに答えるにはどうしたらいいのでしょうか、教えてください・・・(切実


 

おまけ

そのままどうしていいか分からず、そのまま2人を抱きしめた。
その時・・・

 

ガチャ・・・

 

「お邪魔しまー・・・
ああー!!
さんちゃんと瑠璃ちゃんが、貴明に抱きついてるー!!」

「ええっ!?
瑠璃様、私にもぜひ!!
いえ、貴明さんと一緒に抱きしめてください!!」

「え、えろえろ主人様ー!!
オシオキなのれすー!!」

「いや、これはね・・・」

言い訳しようにも、現場を見られては効果は無い。
気が動転して抱きしめたままだし(珊瑚ちゃんは気にせず、瑠璃ちゃんはあうあう言ってる)

「うぇーん!!
貴明ー!!
あたしもギュッと抱きしめてー!!
ううん、抱きしめちゃう!!」

「何を言ってるのれすか、このあーぱーめいろろぼ!!
そ、それはシルファの役目れす!!」

「お黙りなさい!!
これは姉の特権で、私の役目です!!」

「お姉ちゃんおーぼー!!」

「そうれす!!」

目の前に繰り広がる姉妹喧嘩に、俺はただこう思った。

『泊り込みはもう決定されたも同然だろうな・・・』

と・・・

 

結局、全員が泊り込み、夜遅くまで騒がしかったのは言うまでもない。

 

 

第12話へ続く

 


パニハー第11話、珊瑚と瑠璃です。
自分の気持ちに真っ直ぐな珊瑚、意地っ張りな瑠璃を書いてみました。
いかがでしたでしょうか?
やはりツンデレは難しいですね(汗
さり気なく、メイドロボ三姉妹も登場。
こっちの方が書いて楽しかったのは、何故でしょうか?(汗
最近買ったんです、ゲームセンター○X。
最初はレンタルで見たのですが面白くて、全部購入しちゃいました(笑
仕事の後、家に帰って楽しみがあるというのは良いですねぇ・・・
今まで載せていたサブヒロインの甘々ですが、一周(ヒロインとして登場したのも含めたら)しましたので終了の予定です。
載せても人数的に中途半端になってしまいますし・・・
でも、登場事態は出来るだけ出したいと思います。
さて、次回はついに来ました、タマ姉です。
ラングさん・こうりさん・風車さん、ご感想ありがとうございました!!