Believe
第一部 「事の始まり」

その事件は佐祐理さんの言った、たった一言の言葉から始まった。

「祐一さん、明日何か予定ありますか」
「いえ、な〜〜んにも入っていませんけど」
と祐一はな〜〜んにもというところを特に強調して答えた。
「じゃあ、明日佐祐理とデートしてください」
「……は、今、な、なんて言いましたか」
祐一は佐祐理さんの言った言葉が信じられず聞き返した。
「だから、明日佐祐理とデートして下さい。それとも嫌ですか」
と佐祐理さんがちょっと潤んだ目をしながら祐一に尋ねた。
すると祐一は首を横に何回も振り答えた。
「と、とんでもない喜んで行かせて頂きます」 「はい、それじゃあ明日の11時に駅前で待ち合わせしましょう」
祐一のしぐさを見てにっこり微笑んだあと佐祐理さんは待ち合わせの時間と 場所を告げ俺は帰路についた。
「明日は佐祐理さんとデート」
祐一はつぶやいた後しばらく考えた。
(名雪に知られたら、もし鮎や栞に知られたら、 真琴に知られた場合に発生する障害。
舞に知られたら絶対に付いて来る。その時に発生するだろうトラブル)
そして祐一の頭の中で一つの答えが導き出された。
「明日のデートは絶対に秘密にしておこう」
祐一はこぶしを硬く握り締め固く決心した。
(しかし、この時4人の者がこのやり取りを見ていた)

その一  その二

「相沢、貴様5人もの美少女に好かれていながら俺の女神、佐祐理さんにまで手を出すとは……」
左側の電柱の影でこぶしを握りながら怒っている馬鹿の中の馬鹿、北川君と
「相沢君……栞という私のかわいい妹と名雪の心をもてあそんだあげく、 捨てるなんて言い度胸しているじゃない」
「か、香里おまえ背中からどす黒い闇のオーラを放出してるぞ」
北川は、元いた場所から3歩ほど下がった場所から怯えながら香里に言った。
「北川君、今なんか言った」
北川は、首を横に振って自分は、何も言ってませんという事をジェスチャーした。
「北川君〜 明日の11時暇よね」
香里は、振返り北川を見ながら言った。
「すまん香里、俺明日は3ヶ月前から予約した堀江由衣のコンサートを見に行くんだけど」
と北川が鞄の中から取り出したチケットを香里に見せた。
「ふ〜〜〜〜ん、北川君は栞や名雪よりもコンサートを取るのね」
「それに、香里だって知っているだろ、俺がどれだけ堀江由衣が好きなのか」
「そう、もし明日付き合ってくれたら来週デートしてあげる」
その時北川の頭の中では、香里とのあま〜く甘美な妄想が頭の中を駆け巡った。
だが「すまん、香里確かにおまえとのデートは魅惑的な誘惑だが、
寒空の中 3時間かけて取った堀江由衣のコンサートを捨てるほど俺は人間出できていないんだ!」
北川は涙を流しながら香里に謝った。
「北川君」
その瞬間、北川は香里の後ろにスタンドがいるような気がした。
(俺は、その時の香里の顔を一生忘れない。あの赤く光ったあの目を…)
「だって、俺このチケット取るために三時間近く並んだんだぞ!」
北川は,怯えながらチケットを取った苦労を語りながら抗議した。
「知ってる、北川君? 近頃のゲームのヒロインって、 目からビーム出したりカードと杖で魔法使えたりするのよ」
その時、突如北川の持っていた缶コーヒーが宙に浮かび上がり破裂した。
「は、はははははははははは」
北川は,恐怖のあまり笑う事しか出来なくなった。
「ちなみに私も、美少女ゲームのヒロインの一人なのよね」
振返った香里の目は、まるで獲物を狙う肉食獣のような鋭い目をしていた。
その時、北川の頭の中で一つの答えが導き出された。
(逆らったら殺される)
「で、北川君。明日何か予定入ってる?」
香里は、にっこり笑いながら再び訊ねた。
「はい、明日はなんにも予定は入っていません」
その瞬間、北川の頭の中で堀江由衣は、闇の中に消えた。

その三

「祐一くんと佐祐理さん、明日デートするんだ」
あゆは大好きなタイヤキを食べながら歩いていたら、偶然にもこの場面に遭遇してしまったのだ。
あゆの心の中で二つの感情が激しくぶつかり合った。
一つは、祐一が明日のデートを楽しみにしているのなら邪魔しちゃいけない。
むしろ二人の中を応援してあげなくちゃという自己犠牲精神が土台となってできた気持ち。
もう一つは自分の祐一に対する気持ち。
この二つの気持ちは、あゆの心の中で激しくぶつかり合っていた。
「ただいま〜」
あゆは、気持ちを切り替えると元気よく水瀬家の玄関をくぐった。
「おかえりなさい、あゆちゃん」
「おかえり〜〜」
名雪と真琴が元気よくあゆを出迎えた。
「あ、名雪さん。真琴さん頼まれていたものちゃんと買ってきたよ」
そう言うとあゆは、いつもの羽根付きリュックの中から
コンビニの肉まん三つほど詰まったビニール袋を真琴に渡した。
「わ〜 肉まんだ〜 ありがとう」
真琴は、肉まんを受け取ると嬉しそうな顔をしながら階段を駆けて行った。
「あゆちゃん、私が頼んだ本は?」
「あ〜 名雪さんに頼まれた本もちゃんと買ってきたよ、はい」
そういうとあゆは、本屋の袋を名雪に渡した。
「でも、名雪さん。そんな本何に使うの?」
袋の中から本を取りだし、中の本の確認をしている名雪に尋ねた。
「あ〜 この本はね、祐一に何か作ってあげようかと思って」
そう言うと名雪は本を持って自分の部屋に戻って行こうとした名雪に、あゆは声をかけた。
「ねえ、名雪さん。
もしもだよ、もしも祐一君が名雪さんに内緒で他の女の子とデートし いるのを見たら名雪さんならどうする?」
「そうだね、帰ってきたら祐一に訳を聞いてみるよ。
それで納得できるなら、百花屋のイチゴサンデー三つで許してあげるって言うと思うよ」
名雪は、にっこりと笑いながらあゆに言った。
「でも、納得できなかったら……」
あゆは少し、しどろもどろしながら名雪に聞き返した。
「その時は,約束を破ったバツとして、はり千本飲んでもらうよ。
それも増量期間中だから畳針を」
そう言うと名雪は階段を駆け登り自分の部屋に帰っていった。

その四

その場にいた最後の一人は、 今もその場に残り、塀の上にいた猫を優しく抱きしめ、その背中を優しくなでていた。
「明日佐祐理と祐一が二人っきりで………………」
しばらく猫を抱きしめていたが、
しばらくするとその猫はピョーンと舞の腕の中から 飛び降りるとスタスタとどこかへと行ってしまった。
それを見つめながら舞は「ぽんぽこたぬきさん」と一言だけつぶやくと歩き出した。
以上同時刻に起こったことの補足回想でした。

さて場面は変わり時刻も進み現在水瀬家では、ご夕食の時間です。

「いただきま〜す」 ×4
「あゆ、そのコロッケいらないのか? だったら……」
そう言うと祐一は電光石火の早技であゆの皿の上にあった 秋子さん特製のカニクリームコロッケを奪い、
あっという間に自分の口の中へ入れた。
「あーーーーー僕のコロッケが」
あゆはコロッケの消えた自分の皿を眺めながら言った。
「祐一、あゆちゃんのお皿からおかず取っちゃ駄目だよ」
名雪が半分鳴きそうなあゆを慰めがら祐一に言った。
「え〜〜ん、名雪さん、祐一君が僕の事いじめるよ」
「よしよしあゆちゃん、もう泣かないの」
泣きすがりついたあゆの頭を名雪はさすりながら言った。
「うぐぅ…… どうして祐一君はいつも僕のおかずを取るの」
「それはな、あゆ、まいにち、まいにち、鉄板で焼かれているタイヤキさんの霊魂が
この時間になると俺に降臨してきてタイヤキ泥棒を懲らしめてくれと言うんだ」
「うぐぅ…… そんな事言うと祐一君の机にあった同人誌、
香里さんと栞さんに見せてその後トラの穴に売りに行ってやる」
とあゆは少し勝ち誇った顔をして祐一に言った。
「ど、どうしてその事を知っているんだあゆ」
祐一は少し怯えた顔をしながら鮎に聞き返した。
「この前、ピロが祐一君の机にセロハンテープを借りに行ったときに偶然にも発見してしまったんだよ」
と名雪の影に隠れながらあゆは言った。
「ねえ、あゆちゃん。その本ってコミケを舞台にした話や某ファミレスを舞台にしてあって、
意地っ張りな女の子や主人公の男の子を心配するポニーテールの女の子が出てたりする?」
名雪の質問を聞いた祐一の顔がドンドン青ざめていく。
「名雪さん、どうして本の内容の事知ってるの?」
「この前、真琴ちゃんが祐一の机の中に漫画があったけれど
分からない漢字があるから読んでくれって言われて読んであげたの」
グッサ
「祐一だって、男の子だもんね」
さらっと名雪は、キツイ一言を言った。
「効いた、今のはペガサス流星拳より効いた」 イスの上でうずくまっている祐一を見ながら真琴は言った。
「ほんと、祐一って最低の男ね」
そう言うと真琴は、祐一の皿から取ったコロッケを自分の口の中にほおばった。
「真琴、人の机をあさるな! ついでに俺の皿からコロッケを取るな!!」
祐一は隣の真琴の頭に拳を落とした。
「あう〜」
真琴は両手で殴られたところをおさえた。
「あ〜あ、俺のコロッケ達が… アムロ カミ−ユ ジュドー シーブック ウッソ俺がオマエ達の敵を討ってやるぞ!」
そう言うと祐一は、コロッケ達の名前を言いながら真琴の頭にげんこつを落とした。
「ダバ」ポカ「ショウ」ポカ「コスモ」ポカ「ケン」ポカ「エイジ」(僕の名はエイジこのお皿は狙われている)ポカ
「祐一さっきと名前が違う〜」
「名雪、止めないでくれ。オレには甲児達の仇を取るという義務があるんだ!」
俺は名雪の言葉を振り払い忍達の仇を取っていた。
「祐一さん、そんな事しなくてもコロッケならまだ沢山ありますよ」
秋子さんが、おっとりとした口調で祐一に言った。
「それじゃあ、あと5つください」
「私あと1つ〜」
「僕も、祐一君に取られた分を足してあと3つ」
「私はあと2つ」
「了承」
そう言うと秋子さんは台所に行きコロッケの沢山入った皿を持ってきて、
菜箸で俺達の皿の上に素早く指定した数を置いてくれた。

再び水瀬家で楽しい夕食の時間が流れ始めた頃、
美坂家では二人の(美)少女が 背中から暗黒のオーラを放出しつつ
明日の祐一と佐祐理さんとのデートを妨害する 計画が、刻一刻と作られていた。

「おねえちゃん、取り合えず捕獲用ネットと催涙ガスは必需品ですよね」
「ええ、その二つは第一作戦から〜第二十一作戦までは必要不可欠だからね」
香里はリュックにネットやら爆竹や煙だまなどを詰め込みながら言った。
(香里はなんだかんだいいつつ祐一に感謝していた。
祐一のおかげで栞は、生きる目標を持っただけでなく恋をしてそして彼は香里に奇跡を見せてくれた。
そう、自分が起こせなかった奇跡を…)
そんな彼だから香里は、祐一とくっ付くのは栞か名雪のどちらかであって欲しかったのだ。
だから香里はこの計画遂行に命を懸けていた。
その日の夜、美坂家の回りを通った人は後にこう語った。あの家から闇が放出されていたと…

PM11:00水瀬家の電話が鳴った。

「ハイ、水瀬です」
受話器を取ったあゆはそう答えた。
「あ、もしもし月宮さん」
「あ,香里さん? ちょっと待ってね。今、名雪さんお起ししてくるから」
そう言いあゆが受話器を置こうとしたしたその時。
「あ,待って今日はあなたに用があって電話したの」
「え、ボクに?」
そう言うとあゆは受話器に耳をつけ香里の話を聞いた。

30分後

「分かった僕もその計画に参加するよ」
あゆは何かを決心したかのように香里に答えた。
「分かったわ。それじゃ明日の10時半に名雪の部屋に集合でいいわね?」
「はい、でもなんで名雪さんの部屋に集合なの香里さん?」
あゆは、キョトンとしながら香里に聞くと香里は、「はぁ〜」とため息をついて答えた。
「いくらあなたでも、きっと休日の名雪午前中に起すなんて不可能だと思うからよ」
「た、確かに……」
先週の日曜日、秋子さんが出かけていた。その時、あゆは出前を取ることになった。
祐一が名雪に何を取るのかを聞くために30分懸けて名雪を起していた時の事を思い出した。
「それじゃあ明日10:30に」
「はい,香里さんお休みなさい」
あゆは受話器の向こうの香里にそう言うと 「おやすみなさい、月宮さん」そう言って二人は電話を切った。

こうして、何人かの少女達が幾つもの策略を練っていたその頃
名雪は、夢の中にいた。

二人は日曜の街のとあるファミレスの窓川の席で話していた。
「なあ、名雪。本当にこんなんでいいのか?」
祐一は、申し訳無さそうに言った。
「うん、私はこれで十分だよ。おいしいイチゴのサンデーと祐一がいればそれだけで十分だよ」
その名雪の言葉を聞き少々こっぱずかしくなる祐一。

そんな二人を見る二人の店員がいた。
「みてみて、耕治。あの二人幸せそうでうらやましいね」
「それじゃあ、あずさ今度の日曜日、そ、そのデートしないか?」
耕治はあずさに聞こえるか聞こえないか分からないほど小さな声で言った。
「うん、いいよ」
頬を少し赤らめながらあずさは答えた。
「はい、はい、はい。いくら恋人同士だからってお店の中でいちゃつくのはやめてね二人供」
涼子さんが突如現れて二人の間に立って注意した。
「す、すいません、涼子さん」
「すいません」
二人は、即座に謝った。
「それにね、二人ともお店にいる人みん〜なあなた達のこと見てるわよ」
涼子にそう言われたのと同時に二人は店内を見まわした。
するとほとんどの人が 二人と目が合った瞬間、即座に目をそらし下を向き耳を真っ赤にしていた。
(なお、この二人のデートの話は,リクエストがあれば書くかもしれません)
…………まずないだろうけど

「ねえ、浩平。この後何処に行こうか?」
「そうだな、そういえばこの前からやっている映画、面白いって言うからそれでも見に行くか瑞佳?」
瑞佳はミルクセーキを飲むのをやめ浩平に聞いた。
「それ、なんて映画」
「え〜と、確か永遠のある世界っていう映画だったよう気がしたな…」
その話を聞いた瑞佳は少し暗い顔をしていった。
「やだ、見たくない」
「どうしたんだ、瑞佳? どっかぐあいでも悪いのか?」
浩平は心配そうに瑞佳の方を覗き込んでみるとうつむいてた。
瑞佳の顔から大粒の涙が、スカートを掴んだ両手にぼろぼろとこぼれ落ちていた。
「やだよ、その映画見に行ったら浩平が消えちゃいそうだから見たくなんかないよ」
それを見た浩平の胸の中に一つの感情が湧き上がった。
「瑞佳、顔を上げてくれないか?」
浩平がそう言い、瑞佳が顔を上げた瞬間
浩平は瑞佳の唇に自分の唇をつけた。
「こ、浩平……」
瑞佳は、顔を真っ赤にして浩平に言った。
「浩平、お店の中の人みんながこっち見てるよ」 「瑞佳、おれは何処にも行かない例え永遠がある世界があったとしてもおれは、おまえを独りぼっちに絶対にしない。今のはその約束の証だ」
「浩平……………」
瑞佳は、また顔を真っ赤にしながら浩平を見た。しかし、今度の顔は泣き顔ではなく天子のような笑顔だった。
(ちなみにこれは、私の書いたONEの小説の一部です)
この他にもいっぱいカップルはいるのですが
(TO HEART リトマイ 痕 ファーストキス コミパ  REVIVE with you などなど)
そろそろ本編に戻るのでこれらは,またの機会に

「祐一………私、祐一と一緒でとても幸せだよ」
幸せそうな顔をして寝ている名雪ちゃん。
まさかこれが明日正夢しかも自分のいた所に他の女の人が座るなんて夢にも思わなかった。

第一部 「事の始まり」

第二部「そしてその日は,始まった」(途中)に続きます。


作者から

作者初めての作品です、なのでへたくそなのは許してください。
ついでに感想も教えてくださるととてもありがたいです。

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