【愛しさと切なさと】 P1 (啓X拓) すっごく書きたいシーンがあるのさ。…ふふふ
──────いっそ出逢わなければよかったと思うほど苦しい恋をしたのは、これが初めてだった。
(SCENE 1 啓介の憂鬱)
「う……あぁッ!!・・・んぅ」
ねっとりと、濃密な空気に包み込まれる中、荒い息づかいとあえかな声が狭い部屋に響きわたっている。
いつ、何が、どうして、現在の状況に至っているのか…?
こんなコトにならないよう、注意に注意を払って行動していたはずなのに・・・。
だが、そんなコトはもう、頭の片隅でだって、考えられなかった。
「はあっ…ん!…け…けいっ…!!」
悩まし気に響く声に脳髄が痺れて、今はただ一つのことしか考えられない。
「拓海…」
深い声で、組み敷いた相手の名を囁きながら、啓介は体を押し進めた。
「や!ああっ」
途端に切ない声を響かせて拓海の躯が目に映るほど大きく震え、逃げを打とうとするのを、グッと腕の力で押さえ込んだ。
すると、拓海は息苦しさに堅く閉ざしていた瞳を開けて、ぼんやりと啓介の目を見上げてくる。
視線が絡まったその瞳は、こんな時なのに酷く透き通って見えた。
───初めて秋名の頂上で言葉を交わしたあの時と同じ、透明感を讃えた薄墨色の瞳。
それは、自分の方を見ているはずなのに、どこか遠くて、酷く歯がゆい。
目の前に居て、こんなに熱く抱きしめているのに、そんな瞳をするなんて。
啓介は、そんな拓海を許さないと言うかのように、その細い肢体を力ずくで引き寄せた。
「あうっ!…や、痛っ!」
「拓海…。ダメだ、逃がさねぇ。」
強引な動きに痛みを感じて、逃れようとする拓海を更に抱き寄せて、啓介は結合を深めるように腰を進めた。
「…っ…はぁ……拓海、…拓海ッ」
グチュッと何度も淫靡な音を響かせながら、律動を速めていく。
「ヤッ!…む、無理っ…」
のし掛かる重い体に抗議するように、拓海は腕で啓介の肩を掴んで離そうとした。
でも、体制が余りにも不利で、力ではどうにも敵わない。
「うああっ!」
自分の中の奥深くで熱く滾るものに弱い場所を突き上げられて、拓海はグッと全身を強ばらせた。無意識にと立てられた爪が、掴んだままの肩に小さな疵を走らせる。
その痛みすら快感と受け取って、啓介は更に律動を速めた。
思考がクラクラと廻って、脳が痺れたような感覚に包まれ、体中が燃えるように熱い。
何も考えられず、ただ、その熱だけを追いかける。
夢中になってる車のことですら、今はもう頭にない。
ただ、抱きしめたこの細い躯を、手放さないように。
───隅々まで知り尽くしたい。
そんな、動物じみた欲求に、啓介は今、支配されていた。
───ゴールはもう、すぐそこだった。
高みを目指して、啓介は更に深くを抉るように攻めたてた。
自分のものと同様に屹立して、今にも暴発しそうな拓海のものにも指を絡め、強い刺激を与える。
「…アッ…ぅ、あああ───っ」
叫び声とともに、呆気なく弾けた拓海に強く締め付けられて、啓介もまた、その奥へと欲望の証を迸らせていた。
★☆★☆★
「うわっ!!」
大きな叫び声と共に、啓介はガバッと勢いをつけて起きあがった。
急激な目覚めに、まだ体が落ちつかず、強い鼓動が耳の奥で鳴り響いて五月蠅いくらいだ。
いや、落ちつかないのは体だけじゃなく、脳も沸騰しそうなくらい混乱している。
───今、自分は何をしていた?
───ここは何処だ?
───今日は何日だ?
数々の疑問に自問自答していくうちに、急速に啓介の意識は現実を認識した。
「……ったく、またあの夢かよ・・・」
勘弁してくれ…と頭を抱えて、啓介はその場で頭を垂れて己の髪をわし掴んだ。
もう、青い中学生でもあるまいに、何で今更…と思わずにはいられない。
朝1番、起き抜けに下着を洗う歳なんて、もうとっくに過ぎたはずなのに。
ぐっしょりと全身にかいた汗が気持ち悪い。濡れた下着は更に気持ち悪い。
今日はシーツも洗わなければならないだろう。
憂鬱な気持ちを吐き出すように啓介は大きな溜息をついた。
(今朝の目覚めも最悪だぜ…)
啓介はここのところ、ずっと、安らかな眠りやさわやかな目覚めとは無縁の生活を送っていた。
そう。ひとつの恋心を自覚してしまった時に、啓介から安穏な日々は失われたのである。
夢は願望の現れと言う。
それは、間違いではないだろう。
啓介は今、身を以てそれを思い知っていた。
(俺は……そんなにも抱きてぇのかよっ!アイツを!!)
自分自身への憤りに、啓介は拳をグッと握った。
恐らく、生涯で最も強力なライバルであり、そして、今後、同じチームで共に戦うだろう人物を脳裏に思い描いて、啓介は自分自身を責めずには居られなかった。
───何故、こんな気持ちに気づいてしまったのだろう。
自分も相手も、破滅させてしまうかもしれないような、危険な恋。
決して抱いてはいけない感情だった。
本来なら、”恋”というものの対象候補にすらならない存在のはずなのに、何故、自分の心は彼を選んでしまったのだろう?
───ダメだ。こんなのは普通じゃない。俺はどうかしてるんだ。
そう唱えて、何度も何度も、心を打ち消そうとした。自分をごまかそうとした。
こんな感情を持つのは、酷く拓海を侮辱しているようで苦しかった。
でも、そうと分かっていても、この恋を捨てられない自分が、啓介はただ不甲斐なくて、悔しかった。
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