【恋の予感】 P14 (啓X拓)・・・いつものノリの話(笑)

───そして、ある日の高橋家。(相変わらずいきなりな場面展開…)

「んもぅー、カッワイイわ〜。ウチの子になんなさい。」
 やっぱり…と、啓介は頭を抱えた。
この母に拓海を見せたら絶対こうなると思っていたのだ。
・・・くそー、今日は家にいねぇハズじゃなかったのかよ!!
 余談であるが、涼介は拓海が来る時はこっそり教えると母に約束をしていたのだ。
啓介はもちろんその事を知らなかった。

 心で憤激しながら、啓介は母を睨んでやろうと顔を上げた。
すると、その先では何と母が拓海に抱きついているではないか!

「ああーっ!・・・てめっ!触んじゃねぇ!!」
・・・オレだってまだなのに! と啓介は心で叫ぶ。
 啓介のそんな気持ちを見透かしたように、母はちろりと啓介に目をやるとふふんと笑って、さらにぎゅうっと拓海を抱きしめた。
 甲斐性なしめ!と言ってるような顔をしている。

 ……だが、流石は高橋兄弟の母である。拓海に気づかれるような失態は晒さない。
「ヒドイわ、啓介!・・・お母さんに向かって。」
よよよ…と、どっからどう見てもワザとである泣き真似をする母に、しかし拓海は騙された。
 ジロリと啓介を睨んでくると、ぎゅっと庇うように母を抱きしめ返す。
「啓介さん!」
 拓海に叱られて、一瞬啓介は怯んでしまう。
・・・くっそー、汚ねー手ぇ使いやがって・・・この女は悪魔かー!!
と内心、啓介は叫んでいた。
 兄は状況を面白がっているだけで頼れない。その目が笑ってるのは明白だった。

「わ・・・悪かったよ!・・・でも、さっさと放せよな!」
 啓介は、バッと母の腕の中から拓海を奪い取った。
奪い取られた拓海は啓介の腕の中でキョトンとしている。

 その大人げない啓介に、流石に母も呆れた。
・・・このへんが潮時かな。
 これ以上からかうと、確実に啓介は拗ねるだろう。
・・・21にもなって子供みたいなんだから。
 自分の性格は棚の上に上げて、小さく溜息をつく。
共に、どうやら己のことをわかっていないようだ。・・・似たもの親子である。

「何よ。イイもん。・・・じゃ、後でまたね!」
 ちゅっと拓海の頬に素早くキスをして、母はさっとその場を離れた。
「ぎゃああー、何しやがるぅー!!こんの、くそババァッ!!」
 思わず啓介は怒鳴ってしまった。ちなみに拓海は真っ赤になって固まって、石になってしまっている。
「くそババァとは何よ!このバカ息子!甲斐性なし!あたしがいなかったらあんたまだ凹んだままだったわよ!この意気地なし!」
 ボカっと遠慮なしに啓介の顔にパンチを入れて、母は怒鳴り返した。
女のくせに拳である!
ついでに、啓介の1言に対して、3言を返している!
 目の前で繰り返される母と弟のバトルを涼介は満足して見守っていた。
こちらもかなりイイ性格をしているようだ。

 拓海は2人の言い合いに、オロオロと目を彷徨わせている。
ど・・・どーしよう・・・もしかして、オレのせいか?
 きょろきょろとする拓海の姿に、くすっと涼介は小さく笑んで、ポンと拓海の頭に手を置いた。いつも啓介にしているのと、同じように。
「大丈夫。じゃれてるだけさ。・・・あれですごく、仲が良いんだ。」
 ・・・ずいぶん激しいじゃれ方だが、涼介が言うならそうなのだろう。
「・・・はぁ。そーですか。よかった。ケンカしてるのかと思った。」
 涼介の微笑みに頬を染めて、拓海はポリポリと頬を掻いた。
何故か赤くなってしまうのは、いつものコトである。

 その姿に、涼介はまたフッと笑った。
・・・ホント、素直だな。これは面白いかも…。
 どうやら涼介の中に『新しいおもちゃ』が増えたようである。

「あ、アニキ!狡いぜ!抜け駆けすんな!」
 啓介のそのセリフに、涼介は肩を竦め、拓海は不思議そうな顔をした。

 その拓海の仕草に、この場にいる3人はすぐさま状況を理解した。
・・・やっぱりな。藤原が、啓介の気持ちを理解してるとは思えなかったんだ。
 涼介は冷静に判断を下し、啓介の顔は心なしか青い。

・・・も・・・もしかして、コイツってこっち方面も鈍い?
「啓介さん?」
 どうしてそんな顔をするのかと、拓海は小首を傾げた。
その仕草は可愛い。目に入れても痛くないほど可愛い。だが、しかし・・・
・・・分かってねぇーっ!分かってねぇよー!〜〜そりゃねぇゼ!神様!

「ふふふ、ご愁傷様〜」
 母は楽しそうに笑って、啓介の肩をポンと叩いた。
「じゃ・・・ま、せいぜい頑張れよ、啓介。」
 涼介も笑いながら反対側の肩をポンと叩くと、名残惜しそうな母を伴って、部屋を出て行った。

 残されたのは、啓介と拓海の2人である。
「・・・頑張るって、何を頑張るんですか?」
 今日は何か他に用でもあるんですか?・・・と、全く何も気づいていない拓海が啓介に問いかける。
 その言葉に、啓介はガクっと頭を落とした。

・・・オレって不幸かも。
 ほんのちょっと、そう思った。
だがしかし、諦める気なんてさらさらないのが、高橋啓介だ。

───この先、拓海に恋の予感が訪れる日が来るか否かは、どうやら今後の啓介にかかっているようである。

End.

・・・母、大暴れ(笑)…ま、これは当初からの予定通りやし!
丸く収まってよかったよかったわー。(←収まったのか、オイ)
・・・え?これじゃ、啓介が不幸?そうかな〜(-_-?) 楽しそうやん。
ふふふ、じゃあ、そういう貴女のために次回は甘々です!(←ホントかよ)
【地上の星】でお会いしましょう。砂吐く覚悟で読んでくれぃ(笑)

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