【Flower】 P9 (啓X拓)  可愛い話を書きたいのー(>_<) 頑張るっす!


 しばらくそうして固まってから、拓海はポカポカと啓介の胸を叩き始めた。
「お、おい!藤原!…いて…痛てーって!」
「…俺!…俺、何かバカみてーじゃないか!あんたの一言で、泣きそうになったり、嫌になったり、ムカついたり……」
「お前なぁ……人がせっかく勇気出してコクったってのに・・・」
 啓介が『その言い種はねぇだろう』と続ける前に、拓海が力一杯叫んだ。
「なのにっ!・・・何でこんなに嬉しいんだよ〜っ!!」
 う〜と唸りながら、拓海は赤くなった顔を上げた。下唇を噛んで、キッと睨む。興奮で少し潤んだ大きな瞳で。
───その時の拓海の顔を、啓介は一生忘れないと思った。

「・・・おい、コレ・・・夢じゃねーだろうな?」
 ペタペタと、啓介は拓海の存在を確認するかのようにその頬に触れた。
「っ!…あ、あんたなー!フッザけんなっ!〜もう、俺帰るっ!!」
 プンスカ怒って、拓海は啓介からバッと離れてしまった。そのまま、スタスタと歩いていく。放っておいたら本当にココから家まで歩いて帰ってしまうだろう。
 啓介は急いで追って、何とか拓海を捕まえた。腕の中でジタバタ暴れる体を引きずって、FDの元まで戻る。拓海は観念して大人しくなったが、ご機嫌は最悪らしい・・・。

 まあ、取り敢えず、気持ちは伝えられたし、脈もかなり有りそうだし。拓海を怒らせたのは少し残念だけど、今日のところは十分満足だ。
 啓介は拓海をドウドウと宥めて、もう1度声を掛けた。
「そんな怒んなって。…ちゃんと家まで送るからさ。ほら、乗れよ。」
 自分はこんなに怒ってるのに穏やかに笑う啓介が憎たらしくて、拓海はぷいっと横を向いた。自分でも可愛くない態度だと思うけど、悔しいものは悔しいのだ。
「やだ」
「やだって……お前なぁ…」
(ちくしょー、マイッタ!こんな時まで可愛いじゃねーかっ)
 簡潔な拓海の返事に、啓介はふぅっと溜息をついた。心の中では白旗を上げまくりである。きっと今夜はどうしたって眠れない。
 そして、ナビの扉を開けて、もう1度、拓海に乗るよう促した。

 その時、車内から良い香りが漂ってきた。
「あ、忘れてた。」
 あれだけ急いで花屋に準備させておいて、あんまりな言葉である。
「…まあ、もう要らねーて言やぁ、要らねぇけどなぁ。俺、今日、これ渡す為に来たんだよなー」
 何やらブツブツ言いながら、啓介は拓海を入れる為に開けたドアに自分が上半身を突っ込んだ。そして、ゴソゴソと車内を探っている。
「……?」
 拓海はそんな啓介に怒りを削がれて、何してんだろ?とチラチラ啓介の様子を眺めていた。
「あった、あった。下に落ちてやんの。」
 言いながら、啓介は何か紙の固まりのような物を車内から取り出した。そしてソレをズイッと拓海の手元に押しつける。

「これ、お前にやる。」
「…何これ?ゴミ?」
 それは、どう見ても新聞紙の固まりで、拓海は首を傾げた。花屋の親父は乱暴な運転で花びらが傷つかないように丁寧に花を包んでいたのだ。
「違うって。…開けてみろよ…」
 ガクッと肩を落として、啓介は拓海の手の中にあるモノを指さした。言われた通り、拓海はペリペリとそれをめくってみる。
 すると、姿に見合わない程の芳香と共に、小さな白い花が幾つも幾つも顔を覗かせた。
「・・・これ・・・」
 拓海はそれを見て絶句した。男の啓介から男の自分へのプレゼントとしては、かなり変だ。
「アニキだけ贈ってんのってムカつくからさ、自分も贈れば気がすむかなーって思ったんだよ。だから、貰ってくれるだけでいいからさ。」
 鼻の頭を照れくさそうに掻きながら言う啓介をポカンと見つめて・・・しばらくしてから拓海は肩を震わせた。啓介が気づいた時には、ソレは爆笑になっていて……。

 夜中にいきなりやってきて、ワケ分からない事を言って、告白までして、最後のオチがコレである。
───何考えてんだよ?この人!
 可笑しい。可笑しくて堪らない。
「…なっ!…何だよ、どーして俺だと笑うんだよ!…ったく、どーせ…似合わねーよ!」 キザな真似が似合わないから笑われたと思って、今度は啓介が拗ねた。(コドモか、あんたわ…(-_-;))
「いえ…すんません、そーいうワケじゃ・・・ねーけど・・・」
 ヒーヒー笑いながら言う拓海のセリフには、説得力なんて全然ナイ。

(この人、どーやってこの花買ったんだろ?涼介さんなら、何となく分かるけどっ)

 ひとしきり笑ってから、新聞紙にくるまれた、地味な、でも、可憐なその花を拓海は見つめた。
可笑しくて仕方ない。でもそれ以上に、嬉しいと思う気持ちは強くて・・・。
「・・・有り難うございます。嬉しいですよ、コレ・・・」
 照れくさそうに言って、拓海は花の中に顔を埋めた。かすかにする土の匂いが、何だか啓介の不器用な暖かさに似てる。
 そんな事を考えて尚更嬉しくなって、拓海は笑った。
とても幸せそうに。本当に、幸せそうに・・・。

 自分が1番大好きな拓海の笑顔が見られた途端、啓介は機嫌を直した。
「そっか・・・」
 ニッと、啓介も満足気に笑った。啓介のコロコロと表情が変わるトコは、何度見ても厭きない。大人なのに、子供みたいだ。
 拓海は又、クスクスと笑い出した。
「何だヨー。さっきから、お前は…」
「…っ…だ、だって、啓介さん…って・・・ホント、可愛いですよねー」
 再び爆笑してそう言った拓海に、啓介は真っ赤になって怒りだした。
「なっ!何だとぉ!てめっ、ヨリによって何てサブいコト言いヤがる!」
「だって…可愛いですよー。」
 涼介が時々楽しそうに啓介のコトを『可愛だろ?』と言う理由が分かる。
「こんのっ!…まだ言うかー、このヤロ!…そんな口、塞いでやんぜ!」
 言うなり、啓介は拓海の腰を掬うようにして浚った。
「…えっ?」
 啓介の顔がみるみる間近に迫って、拓海は言葉を失った。反射的にぎゅっときつく目を瞑る。

 でも、啓介の顔は残り5センチの位置で1度止まった。拓海はソロリと瞼を上げる。もう間近すぎて、お互いの表情はよく判らない。
「…いいか?」
 掠れたように小さな声で尋ねられて、拓海は花束を片手に、もう片手を啓介の肩に廻した。そしてもう1度、頬をほんのり染めながら軽く瞼を閉じて、くいっと心持ち顎を持ち上げる。
 
 そうしてすぐに、2人のシルエットがゆっくりと重なった。絵本の挿し絵のようなその1シーンを、輝く月だけが照らし出していた。

End.

ううっ…何かゲロ甘ちっくで恥ずかしー\(>_<)/ジタバタッ
でもまあ、可愛い話って目標は達成できた…かな?(^-^;)

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