【暁の協定2】P1 (涼X拓&啓X拓? )タイトルに偽り有り(笑)
(SCENE 1 赤城)
「かー、今日はまぁまぁだな。」
調子よく走れている自分に満足しながら、啓介は一休みする為に車を降りた。
さっき、上っていくハチロクとすれ違ったきり、下ってるトコは見てないので、拓海も一休みしてるハズだ。
───今日は土曜日。
結局、Redsuns1軍の主要メンバーに秋名のハチロクが加わる形で構成された新チームの練習走行日だ。(この話ではそういうコトにしておいて下さい。)
何度か赤城に通ってきて、ようやく拓海もこの峠に慣れたらしい。
・・・と言っても、最初から、尋常じゃねー走りしてたケドな。
───啓介は初日の練習走行日の事を思い出していた。
「秋名のハチロク現る」の情報をドコから得たのやら、練習初日にも係わらず、すごい数のギャラリーが集まった。地元、赤城の走り屋連中は元より、見覚えのない余所の峠の奴らまでウロウロしていた。
おまけに、Redsunsの2軍メンバーまでも勢揃いで、ものすごい人数だ。
まぁ、しゃーねーか。今までほとんどアイツを見る機会なんて無かったしなぁ。
地元の秋名でも、夜は滅多に峠に現れないし、バトルの時は時間ギリギリに来る。
おまけにバトルが終わると車も止めずにさっさと帰る。
───だから『秋名のハチロク』のドライバーは今でも、顔も名前も知られていない。
おかげで、勝手な憶測が飛び交っていて、『昔の有名なラリースト』だの何だの、とにかく、かなり『オッサン』だと思われているようだ。
くくっと啓介は笑いを漏らす。
・・・オッサンどころか、あーんなガキなのにな。余りのギャップに笑っちまうゼ。
そんなことを考えながら、啓介は視線を泳がせて拓海の姿を探した。
すぐに、こんもりと人垣の出来ている場所を見つけ出す。───アソコだな。
足早に近づいていった先には白いFC。涼介の車だ。
そのボンネットに軽く腰掛けている兄の隣に拓海がいた。
「啓介。」
近づいてくる自分に気が付いた兄が声を掛けてくる。
「・・・アレ?藤原のヤツ、寝ちまったのか?」
人差し指で、思わず拓海の頬をつついてしまう。むずがる子供のようにうーうー言いながら、拓海はますます涼介の方へ身を寄せていった。
「こら、止めないか!」
そんな拓海を優しい微笑みで見つめながら、涼介が啓介の手を遮った。
・・・全く、アニキは藤原には優しいっつーか……激アマだぜ。
それは啓介だけでなく、Redsuns全員の感想だった。知らぬは拓海ぐらいだろう。
・・・・まぁ、対して藤原は激ニブだケドな。
そういう啓介も人のことは言えず、いつの間にか笑みを浮かべながら、拓海の寝顔を眺めていた。
藤原拓海というヤツは、初めの頃は警戒しているのだろうか?少し取っつきにくい感じがするのだが、付き合っていくと別にそうでもない。慣れてくるとすごくイイ。
意外とよく微笑うし、素直でスレてないトコがイイ。何より、懐いてくるその仕草が
子猫のようでめちゃ可愛い。
そのくせ、車でかっ飛ばす時は、トンデモナイ速さと闘争心を見せるのだ。普段と運転時のイメージがここまで違うヤツもめずらしい。
───しかし、そのギャップこそが、拓海の1番の魅力なのだろう。
赤城最速のスーパースターと呼ばれた自分達ですら、もうメロメロだった。
(いやーん、メロメロなのは私ですぅ〜(>_<) )
「アニキ、コイツどうする?」
拓海の頭を優しく撫でながら、啓介は兄に声をかける。視線は拓海から外さないで。
涼介はフゥッと小さく溜息をついた。
「どうするも何も、今日はもう止めるしかないだろう?俺とお前で送ってくぞ。これじゃ起こしてもまともに帰れるかどうか……事故でも起こされたら困るしな。」
そう言うと、涼介はそっと拓海を抱き上げた。なるべく、振動を与えないように。
「俺がハチロクでコイツ乗せて行くから、お前FDで付いてこい。」
「え?ズルイぜ、アニキ。俺もそっちがイイ・・・」
「だめだ。お前の運転じゃ起きてしまうだろ?」
あっさりと却下を下されて、啓介はチェッと舌打ちした。
「悔しかったら、もっと上手くなれ。・・・史浩、ハチロクのドア、開けてくれ。」
前半は微笑しながら啓介に、後半は側に居た外報部長にそう言うと、涼介は開けられたドアの中にそっと拓海を降ろした。
流石の拓海も、その振動に薄く目を開けてキョロキョロと辺りを見回した。
どうやらまだ、寝ぼけているらしい。
「ん・・・なに・・・?」
拓海は目元をこすりながら、舌っ足らずな声を出すと、ぼーっとした顔で涼介を見上げてコトリと首を傾げた。
「起きたのか?・・・俺と啓介が送って行くから・・・もう少し寝てていいぞ?」
ポンポンと軽く頭を叩きながら、優しい声で涼介が促すと、
「・・・ん・・・」
コクンとうなずいて、拓海はまた眠りの縁へと落ちていった。
やはり寝ぼけていた様だ。
いつもの拓海なら、涼介達に迷惑かけまいと、『大丈夫です』の1言を強情に言い張るコトだろう。
そんな拓海の頬を軽く撫でて、愛おしそうに微笑すると、涼介は隣にいる史浩に声をかける。
「・・・じゃ、後、頼んだぞ。コイツ送ったらすぐ帰ってくる。」
「あ・・・ああ。」
一応、返事はしたものの、史浩は開いた口が塞がらなかった。
涼介とは長い付き合いだが、コイツ、こんな顔も出来たのか・・・
気に入ってるようだとは思っていたが、まさかこれ程とは・・・・・
いやはや、流石は『秋名のハチロク』だ・・・
───妙なところで感心している外報部長であった。
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