【暁の協定2】SP (涼X拓&啓X拓? )タイトルに偽り有り(笑)
(SPECIAL SCENE 宣戦布告! )
───午前2時。草木も眠る時刻である。
キキィーッ
高橋家の前で止められた車のブレーキ音に、拓海はスッと薄く目を開けた。
───啓介にキスされても起きなかった拓海が・・・である。
「・・・・・」
拓海は何も言わず、そのままムクリと体を起こす。
隣で眠っていた涼介は、突然起きてしまった拓海につられて目を覚ました。
同じく体を起こすと、ベットサイドの灯りを付けて拓海の顔を覗き込む。
「藤原?」
見たところ、拓海の目は開いてない。
───また、寝ぼけてるのだろうか?
「オヤジ・・・来た。」
ボソリと拓海は言う。相変わらず、舌っ足らずな声だ。単語しか言わない辺り、やはり寝ぼけているのだろうか。
「え?」
「・・・オヤジ・・・」
いつにもましてボケーッとしているが、再びうわ事にように呟く拓海の視線を追う様に、涼介は窓から外を覗き込んだ。
「・・・やられたな。」
深く嘆息しながら、涼介は呟いた。
「ふぁー、・・・ア、アニキ?」
結局、涼介の部屋に毛布を持ち込み床に転がっていた啓介は、動き出した兄にあくびをしながら声を掛ける。
その兄の隣で眠っていたハズの拓海は、ごそごそとアブナイ足取りでベッドを降りようとしている。
身に付けているのは、涼介のパジャマだ。借り物なので、少し大きい。
そのまま、フラフラと開いてない目で歩き出そうとする拓海に驚いて、啓介は飛び起きると拓海を自分の腕に捕らえた。
「・・・お、おい、藤原?・・・アニキ!何だよ、一体・・・」
啓介にはワケがわからない。しかも、拓海が寝てるか起きてるかもわからない。
涼介は啓介に苦笑して見せた。
「───やられたぜ?啓介。」
言いながら、窓の外を親指で指し示す。
啓介はヒョイとその先を覗き込んだ。門の外に人影が立っている。
「・・・ゲ!・・・マジかよ。」
はぁ、と大きく溜息をついた。
───もちろん、門の外に立っていたのは拓海の父親、藤原文太である。
「仕方ない。連れて行くぞ。」
涼介はまだ啓介の腕の中でモゾモゾしている拓海の手を引いて歩き出した。
「あーあ、ったく、たまんねーな。」
啓介は諦めの溜息をつくと、拓海の服を抱えて兄の後に続いて部屋を後にした。
階下に降りると涼介はすぐ玄関を開ける。
扉から漏れる光に気づいた文太が、煙草をふかしながら、よいしょと中に入って来た。
「今晩は。悪いなぁ、夜中に。・・・世話かけてばっかってのも気が引けっから、ウチのバカ、引き取りに来たんだ。」
その文太の言葉に涼介は呆れたように溜息をついた。
「今晩は。まさか、来られるとは思いませんでしたよ。・・・それにしても、どうやって来たんですか?」
藤原家自慢のハチロクは、現在はこの高橋家のガレージに収まっているのに。
「ん?・・・ああ、ダチにちょっと乗っけてきてもらったのさ。」
ハチロクねぇーしな・・・
笑いながら文太は言ったが、とんでもない事である。
こんな夜中に、息子を迎えに来る為だけに、誰かを叩き起こしたのである、このオヤジは。
(ちなみに起こされた可哀想な人はもちろん店長(笑))
『やっぱり、一筋縄ではいかない人だな。』
涼介は心の中でしみじみと呟いた。
啓介よりも誰よりも、もしかして1番の強敵はこの父親なのだろうか?
「オラ、拓海!・・・ったく、寝てんじゃねぇ!起きろ!帰るぞ。」
文太は、啓介の隣で首をコクコクしながら突っ立っている拓海に近づきながら声を掛けた。
そして、ちらりとその足に視線を走らせる。
「・・・どれ、足、見してみろ。」
そう言うと、イキナリ拓海の足を掴んで上げさせる。
当然、拓海は体勢を崩して、今夜2度目の尻餅を付くことになった。
「───ってー。何すんだ、このクソオヤジッ!」
いくらなんでも、コレでは拓海も目を覚ます。涙ぐみながら、父親に文句を言い立てた。
───わざとだ。絶対。
端から見ていた兄弟は揃ってそう思った。…もちろん、口には出さないが。
いつもこうやって、この父親が息子で遊んでいる姿は容易に想像がついた。
「男がコレくらいでガタガタぬかすんじゃねぇ。…何だ、大したことねぇな。」
口は悪いが、やはりホッとしたのだろう。文太は口元を綻ばした。
「オラ、帰んぞ。・・・まったく、人様に迷惑かけてんじゃねぇよ。」
文太はそう言うと、拗ねた顔で自分を見上げている息子に手を差し出す。
拓海はぷぅっと頬をふくらませ、それでもその手を取ってイキオイをつけて起き上がった。
「ホラ。」
啓介は拓海に服を差し出した。
拓海はソレを受け取って、自分が着ているパジャマの襟をつまむと、
「あ・・・コレ・・」
どうしようという顔をして、涼介の顔を伺った。
「いいさ、着て行けよ。・・・気をつけてな。」
涼介は微笑を浮かべながら、軽く拓海の頭を撫でてそう答えてやった。
「すいません、お借りします。…今日はホントにお世話になりました。」
拓海は2人に向かってペコリと頭を下げた。
「・・じゃ、コレで・・・」
今度はニコリと2人に微笑いかけると、そのまま靴を履いて外へ向かった。
文太はいつもの読めない顔で、そんなやりとりを見守っていた。
「あ、オレ、ハチロク玄関に回して来る。」
靴箱に置いたままのハチロクのキーに気づいた啓介は、そのキーをひっつかんでガレージに向かった。
「・・・悪かったなぁ。ウチのが世話かけちまって。」
残った涼介に、ニヤリと笑いながら、説得力のないセリフと述べた。
「いいえ、お気になさらずに。」
同じくフッと笑いながら、涼介は文太に答えた。
そのまま、お互い何も言わずに、探るように互いの顔を眺めていた。
「車、回しましたケド・・・」
いつまでも出てこない文太に、戻ってきた啓介は声を掛けた。
「おお、ありがとさん・・・じゃ。」
軽く挨拶して、文太はそのままハチロクの元へと向かった。
───何だか2人の間に、静かな火花が散っていたように思ったのは、自分の気のせいだろうか?
啓介がちらりと兄の顔を伺うと、兄は苦笑して見せた。そして、スッと自分も見送りのために外に出た。
拓海は既にナビシートに収まっていた。もう、うつらうつらと夢見心地の様である。
ホント、寝付きが良いようだ。
「じゃあ、今日はありがとさん。」
シートに腰を下ろした文太は、窓を開けて2人に礼を述べた。
「いいえ・・・お気をつけて。」
涼介が答えると、文太はフゥーと銜えていた煙草をフカした。そのまま、2人を見て意味ありげにフッと笑うと───
「まだまだ・・・だな。言っとくケド・・・ウチの息子はやんねーぞ?」
奪れるモンなら奪ってみな、とニヤリと笑いながらそう言った。
とんでもないオヤジから飛び出した、これ又、とんでもないセリフに、流石の高橋兄弟も絶句した。───そのスキに、
「じゃあな。」
そう言い残すと、甲高い音をたてて、あっという間にハチロクは見えなくなった。
「・・・すげー、オヤジ。まいった。」
啓介は額に手をやり、空を仰いだ。
とんでもない伏兵が居たものだ。・・・この兄だけでも大変なのに。
「・・・宣戦布告、というワケか。・・・相手にとって不足はないな。」
余裕の態度を崩さずに、口元に笑みを浮かべると、涼介は隣に立つ弟と視線を交わした。
どうやら、おもしろくなりそうだ。
2人してほくそ笑む、高橋兄弟であった。
End.
そういうワケで、別にオヤジ公認じゃなかったのでーす。(^-^)
最強のライバルはやっぱりオヤジ?兄弟VSオヤジの明日はどうなる!
乞うご期待!(うそです。ジョークですぅ(>_<) )
・・・というわけで暁の~は終わり!読んでくれた人には大感謝!(^-^)
しかし、このSPECIALは遊びすぎ?(笑)・・・ごめんしゃい。(-_-;)
次は可愛い啓X拓の話を目指したいなぁ。(^-^)
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