1.下痢のあれこれ

<恐い下痢>

ハムの下痢は、どの飼育書でも「危険な病気」と位置付けられています。
下痢することによって、脱水症状を起こしたり、栄養の吸収が悪くなって衰弱してしまうことが危険な理由のようです。
そういった激しい下痢のほとんどは、病原性の原虫,細菌,真菌などが、お腹の中で大発生しています。
整腸剤を飲ませただけでは、まず治りません。
病院で検便してもらって、何が原因なのかをつきとめて、それに効く薬を出してもらう必要があります。
何もしないでいたら症状はひどくなるばかり。手遅れになったら助かる可能性はかなり低いでしょう。
このタイプの下痢の特徴は、うんちが異様に臭いです。病原によってニオイは微妙に違いますが、とにかく臭い。

<軟便体質のハムって本当にいるの?>

検便で病原性のものが何も見つからないのに、うんちが柔らかいハムがいるらしいです。
わが家では、ハムを今まで50匹以上飼育してきましたが、今のところそういった個体に出会ったことはありません。
軟便をするハムは、必ず何かしら病原性のものが見つかるか、もしくは腸内細菌のバランスを崩していました。

●軟便体質と思われる症状について
・過敏性大腸炎
・下痢や軟便が続いた後の腸のヒダの荒れ。

「軟便体質のハムには繊維質の多いラビットフードを与えると効果がある。」という民間療法があるそうです。
どうなんでしょうねー? ラビットフードを購入する前に検便した方が良いかもしれません。
下痢はハムにとって命取りです。軟便も甘く見てはいけません。
素人判断せずにまずは病院へ。病院にハムを連れて行くのがストレスになるのでは?と心配ならば、便だけ持って行けば良いでしょう。
それに、ラビットフードもいろいろで、繊維質が多くても塩分が多めのものがあったりするので、銘柄を吟味する必要があると思われます。

<1週間の壁から仔ハムを救おう!>

ペットショップから幼い仔ハム(とくにゴールデン)を連れてくると、元気な子を選んだつもりなのに、1週間も経たないうちに下痢して亡くなってしまった・・・という経験がありませんか?

生後4週齢前後の乳離れして間もない時期に、問屋→ショップ→飼い主、と移動や環境の変化を強いられて、ストレスから体力が弱ったところに細菌感染などを起こすのが原因ではないかと私は思います。

大人のハムですら命を落とすことがある下痢、仔ハムでは手遅れになる場合が多いです。
でも、飼い主さんの努力で助けることは充分可能です。

発見し次第すぐに病院で診察を受け、治療を開始するのがまず第1ですが、すぐに連れて行けない場合も少なくないでしょう。
そういった場合、せめて自宅でできる限りの応急処置をしてあげましょう。

<自宅でできる応急処置>
●保温
衰弱してくると、体温が下がってしまいます。それを防ぐために保温が必要です。
わが家では、台所用のホットパネル(足温器?)にタオルを数枚乗せて、ケースを置いて保温します。
ちゃんと温度を測っていないですが、適度に^^; 手の感覚でちょっと熱いかな〜ぐらい。
夏でも保温が必要です。

●補液
激しい水様性の下痢では、急速に体の水分が奪われてしまいます。
弱っている時は自力で水を飲めなくなってしまうハムが少なくないです。
脱水症状を起こさないためにも、補液をしてあげましょう。
わが家では薄い砂糖水か、普通の水に、動物用ミヤリサンを混ぜて使うことが多いです。
補液しながら整腸剤も飲ませられるので、一石二鳥かなと^^;
ポカリスエットなどのスポーツ飲料を使う飼い主さんも多いようです。
スポイトか注射器(針がついてないもの)を使って、口に垂らして飲ませます。
1回に飲んでくれる量はたかが知れています。こまめに飲ませてあげましょう。

●食事
下痢の仔ハムのためのエサは、消化の良いものを与えましょう。
ペレットは水でふやかしたり、くだいたりして食べやすく。野菜もニンジンをすりおろしたり、カボチャをチンしてペースト状にしたり。
食欲が落ちている場合が多いと思われるので、とにかく何かしら口にしてもらうために、いろんなものを用意して試してみて下さい。
傷みやすいものはこまめに取り替えてあげましょう。
少しでも食欲のある子は助かる見込みが高いです。


<わが家のケース>
ホームセンターから買ってきた26gしかないちっちゃな長毛ゴールデンの仔ハム「うっちぃ」。
わが家に来た初日は、与えられるエサすべてに興味を示し、ガツガツ食べて、よく遊んでいました。
ところが翌日の昼頃、うんちまみれになっているのを発見。水様性とまではいかないものの、下痢をしていました。
とてもくさいうんちです。
病院の診察時間まで4時間。私はかなり動揺していましたが、できる限りのことをしてやろうと、上記のような応急処置を施しました。
発見が早かったので、ぐったりしている様子もなく、食欲も少しあり、野菜なら口をつけてくれました。
病院での診察の結果、原虫と細菌が見つかり、それぞれの薬を出してもらいました。
病院から帰ってきても保温を続け、その日のうちに下痢は落ち着きました。
食欲はそこそこあるけれど、遊ぶほど元気ではないようで、よく眠っていました。
念の為5日間は保温を続け、監視を続けましたが、すっかり回復しました。
早期発見ですぐに原因を退治することができたからだと思います。


<水様便>

下痢の症状が重くなると、水様便になってしまいます。私は初めてそれを見た時、オシッコだと勘違いするほどでした。
正常なうんちは黒っぽいですが、水様便は黄色くてオシッコのように見えなくもないのです。
私の勘違いのせいで、ハムを1匹なくすハメになりました(>_<)

ここまで下痢の症状が重くなってしまうと、1日2日で健康な体に戻してやるのは難しいです。
時間をかけてじっくり、ハムと飼い主さんが一緒になって頑張る必要があります。難易度は高いですが、ハムの生命力と飼い主さんの根気があれば、助けられない病気ではありません。
保温と補液は必須です。それから、複数のハムを飼っている場合、他のハムに感染させないように、飼い主さんは手洗いをいつも以上に丁寧に行って下さい。

<わが家のケース>
忘れもしないある年のゴールデンウイークのこと。1才9ヶ月弱のゴールデン3兄弟が次々に激しい水様便に苦しみました。
原因は細菌でした。私の手から感染したのでしょうか。
症状は、まず食欲が落ちて、数日後に激しい水様性の下痢を起こすのです。
激しい下痢のために肛門が噴火口のように真っ赤に腫れ、血がにじんでしまいました。
当然元気がなく、口びるや手足が紫色に青ざめ、体温も低下。
体重は1日に15gも減少しました。毛並みはぼさぼさ、はれぼったい顔。
食欲もなくて、寝たきりでエサ皿からエサを持ち帰ることもできません。
でも、私は、2才を目前にした3兄弟を下痢で亡くすわけにはいきません。
とにかく補液を続けました。動物用ミヤリサン入り砂糖水です。幸いスポイトから水をうまく飲めるコたちだったので、1回の補液で2mlも飲んでくれました。でも補液をしている最中にも肛門から"水"が出てきてしまいます。
まさしくミルク飲み人形???(-_-;)
当時、私は強制給餌に自信がなかったので、彼らのわずかな食欲に賭けるしかありませんでした。
すりおろしニンジンに粉にしたペレットをふりかけたり、固めの温泉卵を作ってあげたら、少し食べてくれました。
ヒマワリの種は殻をむいてやっても食べてくれませんでした。
巣材は1日最低2回は換えました。換えてやらないと、水様便でじっとりしめってしまうのです。
体重は落ち続け発病3日目には30g近く体重が減りました。それでも食欲が徐々に出てきて、チンしたカボチャをすりつぶしたものにペレットの粉を混ぜた団子を食べられるまでになりました。
うんちも少し形のあるものが出るようになりました。顔色も良くなって、だいぶ良くなってきたかな?と思えるようになった発病5日目。噴火口のように腫れあがった肛門の傷にかさぶたができたのが原因なのか、肛門が塞がってしまい、うんちがまったく出なくなってしまいました。
またもや食欲も落ちて、元気がありません。肛門から少し出血しています。
病院でうんちを搾り出してもらっても進展なく、約1日半糞づまりが続いた後、自然に便が出るようになりました。
肛門の傷の完治まではかなり時間がかかりましたが、3週間ほどかけてすっかり元気になりました。
この3兄弟は結局2才5ヶ月〜2才8ヶ月半まで生きました。

<直腸脱>

私が下痢で一番恐いと思っているのは、直腸脱です。
激しい下痢が長く続くと、力みが原因で直腸が肛門から飛び出してしまうのです。
こうなると自宅では治してあげることはできません。
病院に連れて行っても助かる確率はかなり低いようです。

家でできる応急処置としては、濃い砂糖の氷水を布などに浸して、腸をそっとくるんでやると、じょじょに腸が戻っていくのですが、あくまでも一時的な応急処置にすぎません。
体まで冷やさないように気をつけて。うまくやらないと毛皮が砂糖水でベッタベタになります。

わが家では、これまで3匹のゴールデンをこれで亡くしました。
手術しても助けるのは難しいようです。下痢をした時には「腸よ、出るな〜」と念じるだけです(念じたところでどうにもならんが)。

<ジアルジア>

ジアルジアとは、原虫の仲間です。これを潜在的に持っているハムスターは少なくないと思われます。
日和見感染なので、免疫が高い状態であれば、発症しませんが、何らかの原因で免疫が落ちてくると、ジアルジアが活動開始し、増殖するので、軟便もしくは下痢を引き起こします。

<ジアルジアとは?>
原虫の分野はまだ研究が進んでおらず、分類もはっきりしていませんが、一応人畜共通感染症と言われており、ハムスター⇔人間に感染する可能性もあるそうです。
シスト(嚢子)と栄養型の2つの姿を持ちます。シストの状態では活動しないかわりに駆虫薬などが効きにくいです。
栄養型のみが活動(悪さ)できます。

<治療法>
駆虫薬を飲ませて駆虫し、同時に整腸剤を飲ませてジアルジアに荒らされた腸を整えて下痢を止めます。
駆虫薬の投与は通常10日間連続投与ですが、1回でまとめて投与する「一括投与法」もあります。
わが家ではたいてい一括投与で治療しています。飼い主が飲ませる必要がないので楽^^; 
ただし副作用で1〜2日は食欲が落ちてしまうので、その間のケアが大変。


<治療の問題点>
ハムスターは食糞するので、思うように駆虫薬が効かないことが少なくありません。
駆虫薬は嫌気性の細菌も殺す効果があるため、腸内細菌のバランスを崩してしまい、
カンジタなどの真菌が増殖して、真菌性腸炎を起こす可能性もあります。
さらに駆虫薬の投与により、内臓に負担がかかったり、ストレスを感じたり(駆虫薬がげろ苦なんです(>_<)して食欲が落ちたり、元気がなくなったりする場合もあるので、投与中には注意が必要です。

わが家では、治療の効果が見られない場合、整腸剤のみを続けて、駆虫をやめることもあります。
経験的に、比較的体が丈夫な個体ならばゆっくりと時間をかけて、自己治癒力で克服していけるケースも少なくないように思えます。
また、原虫がいてもうまく共生できる個体もいます。
(一生下痢に近い軟便で2才6ヶ月半生きた子もいるし、軟便でも160g以上体重があって元気な子もいるし^^;)

<性成熟とジア発症>
ジア治療に悩むハム友達とのメールのやりとりで教えていただいた話です。

「性成熟する=卵子や精子を外にまく」ということから、その時期は原虫にとっても子孫をまきちらすチャンスとしてここぞとばかりに活動を始めるきっかけになります。
さらにメスの場合、発情時に精子を受け入れるために一時的に免疫力が低下します。


たしかに経験的にうちのハムたちにも当てはまります。
生後1〜2ヶ月の時期には、免疫力を落とさないようなケアや、注意深い観察が必要でしょう。

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