寺山修司・今月の一冊(20078月)
『戯曲 青森県のせむし男』


(角川文庫/昭和51530日初版発行)
 


 

今から40年前の1967年、日本のアングラ演劇史において、伝説となる劇団が誕生した。演劇実験室天井桟敷である。旗揚げメンバーは、劇作に寺山修司、演出にのちに東京キッドブラザースを主宰する東由多加、美術に横尾忠則、制作に九條映子(現・九條今日子)、出演に丸山明宏(現・三輪明宏)、萩原朔美などである。その後、天井桟敷は、スタッフ・役者を変えながら、寺山の死まで17年間にわたって活動し、その作品性も次々と変化していくのだが、その出発点において提唱されたテーマは「見世物の復権」であった。「為になるけど面白くない」「ただ戯曲に書かれたことを再現しているだけ」の現代劇を脱し、「幼い頃、お祭りの夜に見世物小屋を覗いたときのような、何が起こるかわくわくするような気持ち」を舞台上に取り戻そうとした。そのため「演技が上手い俳優よりも、存在自体が俳優であるような人が集まるのが理想」として、劇団員の募集にあたっても「俳優募集」という言葉を使わず、「怪優奇優侏儒巨人美少女募集」という言葉を使った。

この本には旗揚げ作品の「青森県のせむし男」をはじめ、そのテーマを体現する天井桟敷の初期の作品が収録されている。子を捨てた女と母を知らぬせむし男の物語である「青森県のせむし男」、姥捨ての因習を扱った「青ひげ」、犬神憑きの血筋の悲劇を描いた「犬神」、現代における肉体性の喪失を描いた「大山デブコの犯罪」、海外で何百回と上演され、天井桟敷の初期の代表作となった、「劇場の中の暴力」を描いた「邪宗門」、そ理由は表現の過激さからだろう。

 

 


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2007
年7
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