映画・演劇鑑賞記録2004


2004年、これまでの鑑賞結果。随時更新中。
★は映画、☆は演劇等。☆〜☆☆☆☆☆で満足度を表わしています。あくまで個人的満足度ですので、鑑賞の参考にはならないかもしれません。念のため。


12月31日(金)
今年も一年、いろいろ鑑賞しました。演劇は42本、映画は95本。印象に残ったものを挙げると、演劇では、演劇集団・池の下『大山デブコの犯罪』、大駱駝艦『庭の秘密』、ダンス・エレマン『上海異人娼館』、『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』といったところ。『デブコ』は休養期間を経て、池の下が見事に見世物小屋の空間を現在に復活させてくれた。『庭の秘密』は、白馬村の河川敷を何十人という金箔・白塗りの役者たちが飛び回る様に圧倒された。『上海異人娼館』は宇野亜喜良の美意識を体現する女優たちが、ただただ美しかった。『ヘドウィグ』は三上博史の突き抜けた演技が最高。ぜひ再演をして欲しい。映画の方では、3部作を見事に締め括った『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』、深田恭子のキャラクター性が発揮された『下妻物語』、ストーリー的にも俳優の演技・特撮技術の面でも、1作目から”成長”した『スパイダーマン2』、ティム・バートンが大人になったと噂の『ビッグ・フィッシュ』など。


12月30日(木)
『Jam Films2』(監督 小島淳二、高橋栄樹、他)★
4篇の中編オムニバス映画。ミュージックビデオ界で活躍する監督を集めたということで、確かに映像的と音楽のコラボレーションの美しさは見事だが、それにしてもあまりにも物語が薄っぺらい。各作品30分近くあるわけだが、テーマ曲の流れる5分少々だけで足りるくらいの話しか語られていない。


12月22日(水)
『WXV 機動警察パトレイバー』(監督 高山文彦)★★★
『セブン』を思わせる二人組の刑事を主人公にしたサスペンス。主役メカのレイバーもクライマックスまでほとんどせず、人間ドラマ中心に物語は進む。ある女性科学者が、死んでしまった娘の遺伝子を開発中の生物兵器に組み込んだことで、怪物が生まれる。怪物は町を壊し、人を喰らうが、それでも彼女にとっては娘なのだ。やがて夜の雨の降りしきる中、怪物とレイバーの死闘が始まる。怪物が倒される様を見届けると、彼女は飛び降りて自ら命を断つ。さらに降りしきる雨。渋い。


12月21日(月)
通販で注文した『初恋地獄篇』のCDが到着。聴いてみると、2002年に上演されたミュージカル『さよならの城』はこのCDからかなりのフレーズを使っていることがわかった。

12月18日(土)
『エイリアンVSプレデター』(監督 ポール・W.S.アンダーソン)★★
2大クリーチャーが主役で恐らくそこに予算の全てをつぎ込んだとはいえ、明らかに華のない殺されキャラばかりの俳優の面々にしょんぼり。そういえばエイリアンは4作とも観てるが、プレデターは一回も観てないんだよな。双方の死闘は意外と淡々と進む。「どちらが勝っても、人類に未来はない」というキャッチコピーから、もっとガンガン殺し合いの戦争をやってくれるかと思っていたんだが。どちらかというと、「忍法十番勝負」のような感じで、一対一の戦いで、少しずつ双方の人数が減っていいクTレックスばりに動き、暴れ回るクイーンエイリアンは一見の価値あり。


12月16日(木)
SHINKANSEN☆RX『SHIROH』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり/会場 帝国劇場)☆☆
ロック・ミュージカルという触れ込みと山本タカトの宣伝画から「ロッキーホラーショー」や「ファントムオブパラダイス」のようなもっとアングラでヘビーなのを期待していたのだが、普通にミュージカルしていた。そして普通のミュージカルは生理的にあまり好きではないんだよなあ。それとB席しか取れず俳優が豆粒くらいの大きさにしか見えなかったというのもあって、いまいちノリきれなかった。普通の台詞によるドラマの部分はいつものいのうえ歌舞伎をしてて面白かった。橋本じゅんの千葉真一っぽい柳生十兵衛はハマリ役で、登場シーンに爆笑。剣を奮い戦略を練る天草の四郎と、歌を歌い民衆の心を奮い立たせる島原の四郎、二人の四郎は不思議な少女の幻影に導かれ反乱を起こすのだが、この少女の存在が何だったのかがいまいち消化しきれていない感じがした。物語を観終わった限りでは、民衆が皆殺しにされるために現れたようにしか見えないような気がする。
   
野田地図『走れメルス〜少女の唇からはダイナマイト!〜』(作・演出 野田秀樹/会場 シアターコクーン)☆☆☆

俳優陣では猫かぶりの深津絵里と大親分の古田新太、女流評論家の野田秀樹が突出した存在感。初期の野田秀樹の言葉遊び全開の世界。

12月11日(土)
『冒険者たち』(監督 ロベール・アンリコ)★★
1人の女と2人の男、3人の友情の物語。1人が欠け、2人目が欠け、最後に1人取り残される者。寂しくて悲しいラスト。

『若者のすべて』(監督 ルキノ・ヴィスコンティ)★★
家族のために何もかもを許してしまう弟と、許されないことばかりしてしまう兄。その間で、弄ばれ、蹂躙され、踏みにじられる娼婦のナディアが憐れでならない。彼女の「私にだって心があるのよ」という言葉は結局誰にも顧みられることなく、まさしく心のないモノのように扱われた挙句、殺されてしまう。家族のためには心を痛め、どんな苦労も厭わないが、家族以外のものは平気で犠牲にしてしまうロッコというキャラクターは、決して善人などではなく、悪人以上に始末の悪い独善者だと思う。


12月5日(日)
BS朝日スペシャル「唐十郎 さまよえる紅テントの怪人」を鑑賞。「水中花」の公演前というから2001年くらいの話だろうか。「バブル崩壊後、知的狼・知的ハングリーって感じの奴が、また観客の中に増えてきた」「唐十郎ってのは唐にいる十人の野郎どもって意味で、凄い奴等の集合体というような名前」「寺山さんと会う約束になってた時に急に盲腸で入院することになって謝りの電話をしたら、『唐、めったにない機会だから真夜中の病院ってのがどんな感じがよく見とけ』って言われたんだよ。あの人も煽るのがうまいね」など、素敵な発言がいろいろ聞けた。この人のバイタリティにはほんとに感服します。

12月4日(土)
毛皮族『お化けが出るぞ!!』(作・演出 江本純子/会場 全労済ホール スペース・ゼロ)☆☆☆
劇場が広すぎて寂しい。劇団がどんどんブレイクしていくのは嬉しいけど、やっぱり駅前劇場くらいの空間でぎゅうぎゅう詰めでやってる感じの方がいいな。『奴婢訓』かと見紛うような、迫力のオープニングが圧巻。女優さんがみんなきれいで、エロくて、体張ってて面白い。ジュンリーはカッコいいけど台詞のとちりが目立った。寺山修司の『星の王子さま』へのオマージュのようなシーンが出てきてニヤリ。しかしものの見事に予告と違う内容でした。

『ロミオとジュリエット』(作 W.シェークスピア/演出 蜷川幸雄/会場 日生劇場)☆☆☆

期待通りではあっても期待以上ではない蜷川幸雄の舞台。なんて言いつつもなかなか面白かった。こんなにもバカな(註:誉め言葉です)「ロミオとジュリエット」は初めてだった。台本通りなら二人はまだ中学生。つまるところ二人はまだ何も知らないバカな子供で、バカだからこそまっすぐに愛し、まっすぐに憎み、まっすぐに悲しみ、破滅へと進んでしまう。その姿が愚かであると思う一方で、そのバカさ加減が羨ましい。それは私たち大人と呼ばれる生き物が失ってしまったものだから。野球バカ、読書バカ、演劇バカ、そんな呼び名で、周りのことも、後先のことも何も考えずに、何かに夢中になっていたことが私たちにもあったはずだ。だがやがて、分別を身につけて、程度をわきまえて物事にあたるようになっていく、それは成長ではなく退化ではないのか?と、そんなことを考えながら観ていました。


11月27日(土)
『ハウルの動く城』(監督 宮崎駿)★★★
決してつまらなくはなかったのですがいまいち消化不良な感じ。明確な起承転結がない、錯綜した物語。唐突なハッピーエンドに、これでいいのか?


11月21日(日)
拙者ムニエル『不思議インザハウス』(作・演出 村上大樹/会場 本多劇場)☆☆☆
馬鹿馬鹿しくて底抜けに大笑い出来るモノを期待して行ったんだが、ちょっと違った。森の中の古い一軒家をめぐる不可思議な物語。『カメレオンズ・リップ』を彷彿とさせるというか、偽・ケラリーノ・サンドロヴィッチという感じの、シニカルなコメディ。


11月20日(土)
『雲のむこう、約束の場所』(監督 新海誠)★★★
涙が流れそうなほど、映像、音、声、スクリーンから感じ取れる全てのものがいとおしかった。プログラムでも触れられていたことだが、普通のアニメでは「背景」でしかないものが「風景」として、「BGM」でしかないものが「音楽」として、キャラクターやストーリーと同等以上の存在感をもって描かれている。作風は全く違うが、寺山修司の映像作品と似たような印象をうけた。だから読み解いていくというよりは、感じ取っていく作品であり、映像物語ではなく、映像詩とでもいうべきものだと思う。文学ではなく、ポエム。


11月14日(日)
『父と暮らせば』(原作 井上ひさし/監督 黒木和雄)★★★
井上ひさしの同名の二人芝居の映画化。原爆という重いテーマを描きながら、絶望の中にもユーモアを忘れず、死者への鎮魂歌であるともに、生きる者への応援歌にもなっている。泣けるいい映画だった。宮沢りえとと原田芳雄の広島弁の演技も素晴らしい。

『笑の大学』(原作 三谷幸喜/監督 星護)★★★
これまた三谷幸喜の二人芝居の映画化。舞台版で西村雅彦がやった役を役所広司が、近藤芳正がやった役を稲垣吾郎がやっている。役所広司のうまさにくらべて、稲垣吾郎は頑張っているとは思うが、やはり力不足な感じがした。


11月7日(日)
ダンス・エレマン『上海異人娼館』(原作 寺山修司/芸術監督 宇野亜喜良/会場 東京キネマ倶楽部)☆☆☆☆☆

緒川たまき演じる黒蜥蜴が、顔、体の曲線、衣装、演技、表情と全てにおいて美しくエロティックで出色の出来。その娼館の女主人としての艶やかな嘲笑は、娼婦や客だけでなく、舞台の枠を飛び越えて客席の私たちの心まで弄んでしまう魅力を持っていた。桜役の川井郁子、初々しい表情や演技とは裏腹の激情を持ったバイオリン演奏で劇場を揺さぶる。その他の俳優も素晴らしく、恋人を弄ぶ身勝手なステファン卿、朴訥な求愛をする少年王学、チャイナドレスで舞い踊る美しい娼婦たちなど、目に映る全てが最高のものだった。
   

シベリア少女鉄道『VR』(作・演出 土屋亮一/会場 下北沢駅前劇場)☆☆☆☆
今回のネタ元は「ER 緊急救命室」。『耳をすませば』の逆パターン。VR(ヴァーチャル・リアリティ)で「ER」ごっこをやっていた連中が、休憩中も音声を繋ぎっぱなしにしていたら、話はそのままで俳優の発する台詞だけ全く別物になっていて、そのギャップで笑えるというもの。今回も大いに笑わせてもらったが、ネタがわかった瞬間が一番面白くて、後は徐々に失速していく感じがした。もう一捻りほしいなあ。俳優陣は公演を経るごとにどんどんうまく面白くなっていて嬉しい限りだが、染谷景子さんはもう出ないのかな……


11月6日(土)
うずめ劇場『夜壺』(作 唐十郎/演出 ペーター・ゲスナー/会場 森下スタジオ)☆☆
北九州のアングラ劇団。唐の芝居をスタジオでやってもつまらないだろうと思っていたら、スタジオの中にテントを建てちゃうという離れ技が行われていた。見事。役者の肉体や演技には本家唐組ほどの迫力はないが、生演奏による劇半音楽が役者以上の迫力を持って舞台を盛り上げる。テントを突き破って出て行く、お約束のラストシーンにもぐっと来た。

庭劇団ペニノ『黒いOL』(作・演出 タニノクロウ/会場 新宿グリーンタワービル横 特設広場)☆☆
ビルの合間の、峡谷のような原っぱに突如出現した巨大テント。会場までの道が何かすさんでて怖いです。テントの中は巨大な舞台空間が構築されていて、そこでやや抽象的な物語が展開されていく。黒服のOLたちが広大な舞台空間いっぱいに蝋燭を立てて回ったり、田植えをしたり、泥水で洗濯物をしたり。ゴキブリホイホイの中で蠢くゴキブリの群れにも見えるし、死者を弔う喪服の死神たちのようにも見える。一応台詞はあるが、芝居というよりも、維新派や舞踏のような感じに近いかも。

『くりいむレモン』(監督 山下敦弘)★★★★
義理の兄妹による近親姦の恋愛物語。妹役の村石千春が「エロい、エロすぎる」というくらいエロい。表情、アングル、演技、声といったものでここまでエロくできるものなのか。一度セックスした後、お猿さん状態になってしまうところが、何やってんだかと思いつつ、エロ面白い。いいね、仲良くて。はしょり過ぎというくらい間の描写をすっ飛ばした演出が、臨場感を出しつつ可笑しさを誘う。最後が少し尻切れトンボな感じ。


11月3日(水)
『blue』(監督 安藤尋/原作 魚喃キリコ)★★★
市川実日子、小西真奈美による二人の少女の物語。どんなに慕っても相手の一番になれないというのは切ないなあ。


11月1日(月)
誰も知らない』(監督 是枝裕和)★★★
母親からアパートの一室に置きざれにされた、四人の兄弟の物語。これは大都会の中の十五少年漂流記だと思った。大人たちから見捨てられた場所で、子供たちは自分たちの力だけで食べ、眠り、生きていかねばならない。それは何物も自分たちを庇護してくれない過酷な生活である。だが一方で、大人の価値観に縛られることなく、自由に学び、遊び、成長していける。それはやっぱり楽園なのだ。そして兄弟の一人の死という苛酷を経験しながらも、監督はこういった映画の結末にありがちな、楽園の終焉を描かない。ただの悲劇な話なら、そこで映画は終わっただろう。だが子供たちは、自分たちの生活を終わらせない。たとえば、自然の中で土とともに生き夭逝していく人が不幸とは言い切れないように、死んだ兄弟が、我々のすむ世界とは違うもう一つの世界の中で、その短すぎる人生を精一杯生き抜いたのだと知っているからだ。だからいつでも終わってしまう可能性を孕みながら、そのはかない楽園が続いていく様を描いて映画は終わるのである。


10月31日(日)
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(監督 ヘンリー・セリック/原作 ティム・バートン)★★
ティム・バートンの作家性が最もよく出ている人形アニメの、デジタル・リマスター版による再上映。ビデオでは何度も観たが、劇場では初鑑賞。大きい画面で観ると、ブラウン管で観たときは気づかなかった発見がいろいろあってなかなか愉しかった。迂闊だったのは、間違って日本語吹き替え版を観てしまったこと。市村正規の演技の幅のなさが光りすぎ。やめましょうよ、新劇の俳優を声優に使うのは。

10月30日(土)
演劇実験室紅王国『聖なる侵入』(作・演出 野中友博/会場 下北沢「劇」小劇場)☆☆
太平洋戦争のBC戦犯として処刑された男と、その家族の物語。戦時下で命令されて仕方なくやったことだと、多くの戦犯は自分の罪を認めない。そんな中、男はただ独り聖書を読みふけり、神に問い掛けて自らの罪と罰について考える。それだけでは独りの聖人君子の話になってしまうが、死刑宣告をされた男が初めて口を開き、「神であるキリストはすべての人間の罪を背負って死にました。けれど私たちの神は、何も言わず人間になってしまった」と語るとき、男が問い掛けていた神が誰だったのか明らかになる。すなわちこれは『パンドラの鐘』と全く同じ、「日本が戦争に負けたとき、天皇は全ての罪を背負って死ぬべきではなかったのか?」という命題を持った作品なのだ。劇中何度も繰り返される、「我が神、我が神、何ゆえ我を捨てたまうや?」という問いかけが胸に残る。深い話だったが、作品的には前作より少し地味めだった。

唐組『眠りオルゴール』(作・演出 唐十郎/会場 雑司が谷・鬼子母神)☆☆☆
土砂降りの中の紅テント。老いてなおみずみずしさを失わない唐芝居。面白かったです。


10月21日(木)
『髑髏城の七人』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり/会場 日生劇場)☆☆☆☆
ドクロイヤーを締め括る、アオドクロバージョン。3時間40分の長丁場ながら、ひたすらゴージャスな内容で飽きさせない。白い長髪に白流しの着物の捨之介の美しい2枚目姿、銀の鎧とマスクで身を被った天魔王の重厚な姿と、市川染五郎が二役をカッコよく演じ分ける。月下に舞う姿は圧巻の美しさ。佐藤アツヒロのこぶしの忠馬、若さ溢れる熱い演技で、橋本じゅんに負けないキャラ立ち。いきなり新体操になっちゃう戦闘シーンに爆笑。掛け声に光GENJIの歌ったり、ローラー付の靴で舞台を滑りまわったりのセルフパロディが愉しい。弟分たちの死体に縋るシーンに涙。鈴木杏の狭霧、捨之介にいい子いい子される姿が可愛く心和む。光源氏計画もいいなあ。クライマックスの七人の立ち姿は圧巻。ただ「立つ」というだけのシーンがこれだけ美しく感動的なのは、それまでの3時間40分のドラマで描かれてきたものがここに詰まっているからだ。
   
少年王者館『こくう物語』(作 鈴木翁二/脚本・演出 天野天街/会場 スズナリ)☆☆☆☆
劇構造も時間も空間も自在に飛び越える天野天街の劇世界。「お客様にご案内申し上げます。携帯電話、PHS、……」の場内アナウンスもネタにされている。無限ループのシーンは今回も健在、ひねりを聞かせて何度も出てくる。


10月19日(火)
シベールの日曜日』(監督 セルジュ・ブールギニョン)★★
『レオン』や『ロスト・チルドレン』にも通じる、大人になりきれなかった青年と、子供ではいられなかった少女の物語。あらかじめ終わりを約束されたつかの間の蜜月は、悲劇的な結末を迎える。


10月17日(日)
恋の門』(監督 松尾スズキ/原作 羽生生純)★
大人計画の芝居のようなものを想像していたが、それほどエグくはなかった。微妙。コスプレイヤーのヒロインと、その周辺のオタクぶりが見ててイタい。途中から酒井若菜が宮村優子に見えてきた。『御法度』、『恋愛写真』と観てきたけど、松田龍平にはただの二世俳優じゃない魅力がある。松尾スズキ、ヒロインとのラブシーンは監督の役得か。主演俳優が豪華で、それだけでも見る価値あり。なぜかタコシェの店員がパンフでコラムを書いている。


10月14日(木)
キリング・ミー・ソフトリー』(監督 チェン・カイコー)★★
”男と女の間には、深くて暗い河がある”と、日曜に買ったばかりの野坂昭如のCDの歌詞を思い出しながら鑑賞。人はたとえどんなに愛し合っている恋人同士であっても、相手の心の中を
知ることは出来ない。恋愛はその相手の心を推し量りながらするゲームであり、それは時に命を懸けたゲームとなることもある。『レッド・ドラゴン』もそうだったが、どんでん返しの後にもう1回どんでん返しがあるサスペンスっていうのは、ものすごくドキドキするなあ。一緒に協力してどこかに埋まってるはずの死体を掘り起こそうとして、ようやく目的の死体が見つかった。なのに隣の奴はまだ穴を掘るのをやめようとしない。じつは隣の奴が掘ってるのは、あなたを埋めるための穴だったというお話。こ、こわいよう。


10月11日(月)
デビルマン』(監督 那須博之/原作 永井豪)★
伝説の原作の実写化。予告を観たときからわかっていたことだが、主役の伊崎兄弟の演技がとにかく下手すぎる。台詞が完全に棒読みで、デビルマンになっても人間のために戦う不動明の苦悩、人間を滅ぼそうとするが明だけは救いたいと思っている飛鳥了の苦悩、といったものが全く伝わってこなかった。そして見所の特撮部分。迫力はあったのだが、キャラクターも背景も含めてフルCGで表現するなら、それはもはや実写映画ではなくてアニメーションだろうって気がする。もう少し生身の肉体感を生かしてほしかったなあ。

さて、昨日観た舞台版『ステーシー』
が以外といい出来だったので、さっそく原作の映画版DVDを再読および再見。読み返してわかったのは、映画を観たときには原作の内容を、舞台を観た時には映画の内容を忘れていたので、いい感じに楽しめたということ。観ている間は気づかなかったが、舞台版はかなり原作に忠実に作られていた。冒頭のミルク・コーヒー・ダンスを観たときは、えらい観客に媚び売ってるなあと思ったけど、ちゃんと原作からあったシーンだったんだなあ。全く忘れてた。詠子の友達の砂置子のエピソード、有田約使と隊長のピロートークなど、原作の言葉を大切にして舞台化していることがわかって、高取英への高感度アップ。


10月10日(日)
月蝕歌劇団『ステーシー 少女再殺奇談』
(原作 大槻ケンヂ/脚色・演出 高取英/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆☆☆

映画化もされた大槻ケンヂの純愛ホラー小説の舞台化。詠子役の森永理科、ニアデスハピネスの狂い加減が可愛い。「ウヒヒヒヒヒ」という笑い声は一度聞いたら耳から離れそうもない。アニメ声だと思ってたら、本当に声優をやってるらしい。一ノ瀬めぐみ、保鳴美凛、中性的な男役がカッコよく決まってる。スギウラユカ、若いツバメを囲う隊長役、貫禄の演技で、ドンとかボスとか呼びたいような迫力。演出・脚本・演技とも今一歩力が足りず、寒いギャグが出てくるのは、いつもの月蝕歌劇団。小説、映画、舞台と、メディアによって自分の心に残った部分が異なるのがわかって面白かった。映画版では娘を再殺したことを蛍雪次郎が語るシーンに、とにかく号泣した。舞台版で一番心に残ったのは、花井美香演じる奇形の少女が、愛する博士を守るために身を投げ出す場面。「化け物だって、誰かのために死ねるんだ!」という台詞にぞくぞくっと着ました。一番好きな渋さんと詠子の絡みも、ちゃんと原作のとおり再現されていて満足。次回は『家畜人ヤプー』の再演ということで、これも楽しみ。

銀幕遊学◎レプリカント『headless in the MooN』
(台本・楽曲・舞台効果 佐藤香聲/会場 タイニイアリス)☆
Riverbed Theatre『Headless in Losangels』
(作 C.A.Tinquero/演出 Craig Quintero/会場 同上)
大阪の劇団と台北+シカゴの劇団の連続公演。両方ともいまいちでした。レプリカントの方は音楽とダンスのコラレーション。舞台装置一切なし、衣装変えなし、小道具は球体関節人形一体のみの簡素な舞台。俳優に操られ弄ばれる球体関節人形が、舞台上を跳ね回る俳優自身の姿と二重写しになっていく。視覚的にも音楽的にも美しかったが、如何せん同じようなシーンのくり返しばかりだったので、1時間という短い上演時間にもかかわらず、途中で寝てしまった。外国の劇団の方は、シュールっぽいだけで何のドラマもアクションも展開しないつまらない内容。海外ではこんなものが受けるのかなあ。


10
月9日(土)
『呪怨 劇場版』(監督 清水崇)★★
映像がシュールすぎて笑ってしまいました。前衛映画かと思ったよ。面白いけど、怖くはないなあ。一番怖かったシーンは、伽椰子が這いずり回りながら階段を下りてくるシーンなんですが、これはVシネ版の1作目からあったシーンだしなあ。奥菜恵、伊東美咲、上原美佐、市川由衣らの「美少女が、恐怖に怯え、震え、泣きじゃくる姿を見て楽しむ映画」として楽しみました。サドの気の人なら必見かな。

『呪怨2 劇場版』(監督 清水崇)★★
『予言』観たときも思ったけど、酒井法子も年食ったな。ホラー映画の出演依頼しか来ない売れない女優という役柄が、なんか本人の実生活にかぶって見える。今作でも新山千春、市川由衣、山本恵美と美少女が泣き叫ぶので、それを観て興奮するという鬼畜な楽しみ方をしました。しかし『呪怨』といい韓国映画の『箪笥』といい、ハリウッドでリメイクするほど面白いとは思えないんだよなあ。『リング』のヒットで目が曇ってるとしか思えない

10月6日(水)
無頼漢』(監督 篠田正浩/脚本 寺山修司/原作 河竹黙阿弥)★
シネマアートン下北沢で、特集上映「テラヤマのコトバ」を再び鑑賞。全部で5作品を撮った寺山×篠田コンビによる時代劇。うーん、話の本筋がはっきりしない映画だった。数人の主要人物にそれぞれの物語があるのだが、どれも描き方が中途半端で、結局誰の話だったんだろうという感じが残る。杖を突いてうろつく3人組の按摩、顔をつき合わせて小声で噂話をする女たち、過保護すぎる母親と、それを川に捨てに行く息子など、寺山ファンならニヤリとする部分がそこかしこにある。若い頃の仲代達矢、岩下志麻、丹波哲郎らの姿が見れたのも面白かった。


10月3日(日)
呪怨2 Vシネマ版』(監督 清水崇)
怖かった部分は前作の再録部分だけ。クライマックスシーンは、演出が過剰で逆に笑っちゃいました。


10月2日(土)
『感染』(監督 落合正幸)★★★
本筋の謎の感染症よりも、脇役で出てくる何も無い所に語りかける痴呆症の老婆などの方が怖い。最後まで揺れてたブランコはなんだったんだろう。

『予感』(監督 鶴田法男/原作 つのだじろう『恐怖新聞』)★
上博史が号泣するシーンに、ヘドウィグの演技を思い出して独りでウケてました。『恐怖新聞』というタイトル、そして未来を告げる新聞が届くという設定と、明らかに漫画チックな題材を扱いながら、物語の描き方がちょっとリアリスティック過ぎるような気がした。大学講師に真顔で『恐怖新聞』なんて言葉を語られても、冗談にしか聴こえない。ストーリーや時間軸が混迷していてよくわからなかった。娘が死ぬという過去を主人公が変えた瞬間に、替わりに妻がダンプにはじき飛ばされるシーンには鳥肌が立ちましたが、印象に残ったのはそれくらいです。

10月1日(金)
『スウィング・ガールズ』(監督 矢口史靖)★★★
ウォーター・ボーイズ』の監督による、ジャズバンドに挑む女子高生たちの物語。タイトルも内容的にも明らかにニ匹目のドジョウを狙った作品ですが、丁寧に作られていてとても楽しめました。主演の上野樹里ってどこかで観たことあると思ってたら、『ジョゼと虎と魚たち』に出てたちょっとエッチで可愛い女子大生だ。何事にもやる気がなかった子達が、自分が打ち込めるものを見つけて、一生懸命に頑張る姿っていうのは、やっぱり観ていて気持ちいい。土壇場で音楽祭に出れて、しかも大喝采を浴びるというクライマックスの展開は、ご都合過ぎる感じがしましたが、まあお話だから、いいよね。最後に演奏されるのが『Sing Sing Sing』っていうのもポイント高し。この曲、ウディ・アレンもよく使ってるし、すごく好きなんだよなあ。


9月29日(水)
『陰陽師U』(監督 滝田洋二郎/原作 夢枕獏)★
何だこの白々しい映画は!とりあえずこの監督が映画版『阿修羅城の瞳』を監督することへの不安感が倍増しました。とりあえずスケールをでかくすればいいってもんでもないでしょうが。巻物を宙に浮遊させながら調べるシーンに「あんたはエスパー魔美か!」とツッコミを入れたり、伊東秀明の時間を止めてしまうシーンに「あんたはドラえもんか!」ってツッコミを入れたり、とにかくツッコミどころの多い映画でした。もうなんでもありですね。そして前作以上にホモっぽい野村萬斎と伊藤秀明。「お前と一緒なら死ぬのも怖くない」と、愛の告白をしてましたし。そしてクライマックスは、口紅を引いて巫女さん姿で舞い踊る野村萬斎!妖しい!妖しすぎる!

9月25日(土)
黒色綺譚カナリア派『犬華〜枯れぬ少年期』(作・演出 赤澤ムック/会場 高円寺明石スタジオ)☆☆☆☆
幼馴染の吉雄と鉄雄と要子は、野良犬の肉を捌いて鶏肉だと偽り、串焼きにして売ることで生計を立ている。知恵遅れ気味の鉄雄は実は要子に好意を寄せている。だが要子は吉雄が好きで、鉄男を毛嫌いし邪魔物扱いしている。その鉄雄はといえば、市場でよく見かける鉄扇の花のように美しい少女に憧れている。ある日、彼らの家に出入りしていたエロ写真売りの少年小四郎の姉三鈴が、鉄雄が憧れていた鉄扇の少女であることがわかる。三鈴は自分を好色な目で見るようになった父親を殺すために、野良犬を餌付けしていた。鉄雄は三鈴の気を引くために、冗談のつもりで「俺が犬の代わりに父親を殺してやろうか」と言うが、三鈴はそれを本気にし……
今回はロック調と当日リーフレットの文章で書いてましたが、ふたを開けてみれば、いつものサイケ耽美アングラ芝居。いやあ、今回は非常によかったですよ。やはりお勧め劇団と言えます。慎ましやかな願いを持ち、ささやかながら最低限の誇りを持って生きていた人間たちが、その慎ましやかな願いさえ踏みにじられたとき、誇りを捨てて犬畜生に成り下がる。前々作『月光蟲』のキイ子しかり、人間性が反転する瞬間の描写(人格者の感情が爆発して外道に成り下がる瞬間)が、赤澤ムック氏の作品の最大の持ち味であり魅力だと思う。クライマックスの、吉雄・要子・三鈴・小四郎と、登場人物が連鎖的に次々と外道に変わっていく様は、観ていて胸が痛くなってくるほどの迫力だった。女犬の語りは少ししつこいような気もしましたが、エロ可愛いので良しですね。次回は来年5月にザムザ阿佐ヶ谷とのことで、これも楽しみですね。

さて、芝居終了と同時に駅へと走って、中野タコシェの宇野亜喜良氏サイン会へ移動。よかった、まだやってました。狭い店内は大混雑。でも無事にサインしてもらえました。本名で書いてもらうのも芸がないので、ペンネームでお願いしたら、笑われてしまいましたが。

『母たち』(監督 松本俊夫/詩 寺山修司)★★★
渋谷でマリアの心臓に寄り道した後、井の頭線で下北沢へ。シネマアートン下北沢で特集上映「テラヤマのコトバ」を鑑賞。内容は『母たち』と『怪盗ジゴマ音楽篇』の2本立て。『ジゴマ』はビデオで観たことがあったので、今日の目的は『母たち』の方。世界各地で、母と子の暮らす姿を追った短編ドキュメンタリー。監督は『ドグラ・マグラ』の松本俊夫。台詞はなく、映像に合わせて岸田今日子が寺山の詩を朗読する。「母親は涙、子供しか拭けない/母親は街、子供しか知らない」といった言葉が、胸に染みた。「様々な音を子守歌に育った子供たち/だがここに爆撃の音を子守歌に育った子供たちがいる」といってベトナムの惨状が映し出されるシーンには、時代性を感じつつ、今もイラクで全く同じことが繰り返されていることを思った。


9月23日(木)
2000ヒット達成。

9月18日(土)
『ヴィレッジ』(監督 M.ナイト・シャマラン)★
「目が見えない人間があんなに動けるはずがない!」っていうのが最初のツッコミどころ。障害物の多い森の中を走りまくり。オチは、小学生が夏休みに書いたSF小説並みのネタだった。『世にも奇妙な物語』か『アウターゾーン』あたりで絶対一度は使われていると思う。ちょっと考えればわかるどころか、考えんでも解るオチだ。いっそのこと、”村を出たらそこはスペースコロニーで、ガラスの向うの宇宙には荒廃した地球が!”ぐらい馬鹿馬鹿しくてもよかったな。

9月13日(月)
『バイオ・ハザードU アポカリプス』(監督 アレクサンダー・ウィット)★★★
ミラ・ジョヴォヴィッチ、いくらなんでも強すぎ、カッコよすぎだ。前作は地下研究所という閉鎖された危険な「内」から、安全な「外」へと脱出しようとする話だった。それに対し、今回は危険が蔓延し尽くした「外」を逃げ回り、いかに安全な「内」
を見つけるかになっている。この対比が、ほとんど同じ内容を描きながら、前作と違った魅力を出している。ゲームにも登場したという、ジルとネメシスのキャラクターがいい。しかし今回もすっきりしない終わり方だ。ぜひ大団円の第3作を作ってほしい。

9月11日(土)
ナイロン100℃『男性の好きなスポーツ』(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ/会場 本多劇場)☆☆☆
セックス・コメディと銘打っていたので、ウディ・アレンみたいなのを想像していたら全然違ってました。爆笑できるシーンやものすごくエロいシーンもありますが、いやーな気分になる部分の方がはるかに多い。ナンパしてホテルに連れて行った女の子から金品を奪う少年、犯罪を見逃してやる替わりに女を犯す悪徳警官、知的障害者施設から誘拐してきた少女を監禁し飼育する会社社長。自らが快楽を得るために、「好きなスポーツ」と称するにはあまりにもむごたらしい行いをする男たち。ケラさんの悪意全開。ロマンティカの女の子たちはエロ可愛くてグッド。

戸川純バンド『Togawa Fiction』CD発売記念LIVE(会場 東京・初台The DOORS)☆☆☆
生の戸川純が観れたのは嬉しかったが、ものすごく疲れました。開場は18時なのに、前座の遠藤ミチロウが1時間、いろいろ待ちが1時間で、ようやく戸川純が登場したのは、20時近く。終了時はもう足がパンパン。曲目はニューアルバムのものが中心。本人も言ってましたが、喉の調子悪そうでした。アンコールで歌われたの「バージンブルース」が一番よかったかな。


9月5日(日)
ウズメの人でなしレビュー!第7弾『愛の酸化〜溶けかけのオレンジ』(作 色羽 紫/構成・演出 松田道徳/会場 世田谷パブリックシアター)☆☆
結構面白かったが、私の世界を求める世界とは少し違うなあ。裏宝塚を名乗ってるそうですが、図にするとこんな感じだろうか↓。私は断然毛皮族が好きですが。
(邪道)――毛皮族――ウズメ――宝塚――(正統)

天然ロボットhomme plus『翅蠱綺譚』(作・演出 湯澤幸一郎/会場 シアタートラム)☆☆☆
2003年2月以来2度目の鑑賞。いやあ、長かったなあ。開演前に黒色すみれが演奏をしたり、舞台美術を人形作家の恋月姫が担当していたりと、非常に耽美な雰囲気。ドラマを楽しむよりは、場の雰囲気を楽しむ感じの舞台。つい最近『カフェー小品集』を読んだせいもありますが、小説でいえば嶽本のばらの世界に近い。それは例えば名曲喫茶で時を過ごすような、ゆるやかで甘美なひととき。


9月4日(土)
『ヴァン・ヘルシング』(監督 スティーブン・ソマーズ)★★★
無駄に豪華なソマーズ映画。面白かったです。3人の吸血鬼の花嫁がエロティックでよかったですね。一番綺麗な人が最初にやられちゃいましたが。主人公の過去が秘密なまま終わるのには、明らかに続編制作の匂いを感じるのですがどうでしょう。

『バイオ・ハザード』(監督 ポール・アンダーソン)★★★
ミラ・ジョヴォヴィッチかっこいい


8月23日(月)
『華氏911』(監督 マイケル・ムーア)★★★★
期待通り面白かった。が、「打倒ブッシュ」という明確な目的があって作られているだけあって、『ボウリング』よりも偏った感じがした。後はこの作品を単に受け入れるだけでなく、如何に咀嚼し、自分の血肉としていけるかどうかだと思う。


8月15日(日)
『「超」怖い話A 闇の鴉』(監督 星野義弘/原作 平山夢明)★★
青緑の空をバックに血まみれの鴉を持った女子高生がたたずんでいる宣伝ビジュアルに惹かれて鑑賞。うーん、『呪怨』といい、最近のホラーは因果律は希薄で、何故かは分からないけど怖い現象が発生していくってパターンが多いのだろうか。私はたとえば、なぜ呪いが始まったのかという謎が解き明かされていく、というような部分に興味があるので、いまいちだった。

『キャバレー』(監督 ボブ・フォッシー)★★★

本当はサム・メンデス演出で東京国際フォーラムでやってる舞台版を観に行きたかったのですが、金がないので映画版で我慢。こういう猥雑な美しさは大好きだが、ライザ・ミネリはちょっと自分の好みから外れるんだよなあ。最後はちょっとあっけない。

8月7日(土)
大駱駝艦・天賦典式『庭の秘密』(振鋳・演出・美術 麿赤兒/会場 白馬村松川河川敷公園)☆☆☆☆☆
最高でした!詳しくはこちらに。


7月30日(金)
『キング・アーサー』(監督 アントワン・フークワ)★
「トロイ」を観たときの違和感を倍増させた感じ。これのどこが「アーサー王と円卓の騎士」なんだ。名前借りただけじゃん。騎士たちの会話ややり取りが、アメリカ海兵隊のそれと変わらない。時代と設定だけ挿げ替えて、適当に別の作品が作れちゃいそうな厚みのない話だった。


7月25日(日)
『箪笥(たんす)』(監督 キム・ジウン)★★
あのポスターヴィジュアルにやられて、すごい期待して観に行ったのですが、いまいちでした。映像や音楽は非常に綺麗ですが、肝心のストーリーがよくわからない。ラジオドラマ版『多重人格探偵サイコ』みたいな話だったってことでいいのだろうか。

7月24日(土)
『アリス』(監督 ヤン・シュヴァンクマイエル)★★★
シアター・イメージフォーラムのヤン・シュヴァンクマイエル映画祭へ。何かわかりにくい場所にある映画館だな。この監督の作品を観るのは初めてだったわけですが、感想。ああ、西洋の美少女はお人形のように可愛いねえ……とそれだけでした。独特のセンスをもった人形アニメではありますが、いまいち盛り上がりにかけるなあ。途中少し寝てしまった。これならティム・バートンの方がいいなあ。

演劇実験室万有引力『毛皮のマリー』(作 寺山修司/演出 J.A.シーザー/会場 亀戸・カメリアホール)☆☆
1998年の篠井英介版の方が遥かに面白かったと思います。突出した個性に支えられた俳優劇であるはずのモノを集団劇に置き換えてるわけですが、成功していたようには思えません。マリー役の俳優も頑張っていましたが、それでもの伝説の男娼としての存在感は薄かったと思いますし、欣也役が女性なのにも違和感を感じました。男優劇として書かれたものに女優を出すんなら、それなりに新しい意味を付与しないといけないと思うのですが、観た感じでは単に劇団公演だから女優も出してみたという感じです。井内俊一の女装姿もすごかったが、先々月に三上博史のヘドウィグを観た身としては、霞んでしまうなあ。舞台装置は木材を使った簡素なもので、マリーの美粧も顔に蝶の刺青があるだけ。だが、マリーは蝶であるよりは、極彩色の毒蛾であるべきだと思う。で、思ったのですが、三上博史主演で『毛皮のマリー』をやったら面白いんじゃないかと。うーん、しかし万有引力の芝居って期待感が高すぎるせいか、いつも厳しい評価になってしまうなあ。シーザーさんはもっと力のある演出家だと思いますので、また次回以降に期待です。

『竹久夢二生誕120年記念祭』(映画上映+人形観覧/会場 マリアの心臓)★★

山崎達璽監督による、竹久夢二を主人公にした大正ロマン3部作の上映会。いい感じの雰囲気の映画ではありますが、ドラマ性は薄いです。これが柿落としとなるマリアの心臓は、50人も入ればいっぱいになるくらいの小さなスペースですが、部屋中に恋月姫・清水真理・三浦悦子らの人形が飾られ、店員も大正女学生のような格好をしている、なかなか面白い空間です。センスが行き届いているというのかな。また何か催しがあったら来てみたいですね。渋谷ジァンジァン亡き後の、渋谷のアングラ文化のメッカのような場所になるといいと思います。

7月19日(日)
『スパイダーマン2』(監督 サム・ライミ)★★★★
かなり面白かった。パンフにも書いてあったけど、これはアクション映画の姿を借りた青春映画なんだなあと。ビルドゥングスロマンってやつです。キャラクター一人一人が非常に魅力的。みんないい台詞を言うんだよなあ。作りこまれた感じがする。

『スチーム・ボーイ』(監督 大友克洋)★★
大山鳴動して鼠一匹、という感じのストーリー。

7月10日(土)
電車に乗ってはるばると、寺山作品鑑賞の旅第2回。今回は京浜東北線川口駅からバスに乗り、NHKアーカイヴスへ。ブースでさっそく「ルポルタージュにっぽん・ダービーの日」を鑑賞。同期三人の騎手が争うことになった1978年のダービーを、寺山修司がリポートしている。30分の短い作品ながら、「自分の人生の中で、今だいたい何コーナー辺りだと思う?」「そうだなあ、1コーナーを曲がって2コーナーに差し掛かった辺りかな」という騎手とのやりとりや、「同期生たちの長いドラマは、今はまだほんの向う正面に差し掛かった辺りで、本当の意味の直線ゴールはまだまだ先なのだ」というラストのコメントなど、あの独特の喋り方での寺山節は充分に味わえた。ついでに佐々木昭一郎作・演出のテレビドラマ『夢の島少女』も鑑賞。永野のりこの漫画でもネタにされたりしていたので、一度観たかった作品。夢の島にうち捨てられるゴミのように、ある日海岸に流れ着いていた少女と、その少女を拾った青年の物語。正直観念的でよくわからなかった。雨も降ってきたので、取って返して原宿へ。
   

指輪ホテル『リア』(作 岸田理生/演出 羊屋白玉/会場 EXREALM(エクスレルム)B1)☆☆☆
岸田理生作品連続上演のフィナーレを飾る作品。刺激的な宣伝スチールと”炎のような接吻が唾液の洪水にのみこまれる”というキャッチフレーズに惹かれて、鑑賞に行ってきました。上演場所は非常にわかりにくかったです。岸田理生の戯曲と思しき部分は幕開きに少し使われただけで、あとは指輪ホテルの創作と思われるイメージシーン。でも一番印象に残ったのはその幕開きの部分だったりします。遊具の並ぶ公園のような場所で、女たちは泥んこになりながら、遊びのような殺し合いを(殺し合いのような遊びを)演じ続ける。ストリップか泥レスか、ってな感じですがあまりエロくはありません。むしろ怖いです。

7月3日(土)
『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(監督 アルフォンソ・キュアロン/原作 J.K.ローリング)★★
何かわかりにくい話だった。確か『ドラえもん・のび太の大魔境』に似たような話があったなあ。未来の自分が過去の自分を助けに行くというやつ。それをやっちゃったら「何でもアリ」になっちゃうと思うんだが。


6月27日(日)
紅王国『火學お七』(作 岸田理生/演出 野中友博/会場 中野スタジオあくとれ)☆☆☆☆
熱く燃ゆるは女の情念。真っ赤な衣装を纏った女たちが、血となり、炎となって舞台を舞う。岸田理生の魔的な言葉に負けないだけの世界を創り上げた、演出と役者の力は見事。もっと早く観に行くべき劇団だったと後悔。

三日月少年『憧瑠〜ドール〜』(作・演出 櫻木バビ/会場 ザムザ阿佐ヶ谷)☆
チラシの”ビンヅメの少女”というフレーズから『瓶詰め地獄』みたいな話を想像して観に行ったのだが、全然違った。うーん、いまいち。まず少女役が全然少女に見えない。役者にいまいち華がない。そしてなにより、台詞とちりすぎ。


6月20日(日)
恐ろしい暑さの中、はるばる日暮里へ「夜想リターンズ」展を観に行く。会場名の「HIGURE 17-15 CAS」ってどういう意味だと思ってたら、日暮里(ひぐれ)の17番15号の住所にあるってことだったんだな。住宅街の中をさ迷い歩いた末、ようやく会場を発見。うわ、なんかしょぼいなあ。目当てのアングラ演劇ポスターは2枚しか貼ってなかった。ペヨトル工房の全ブック展も、この暑さの中、冷房のないフロアで読む気にはなれん。とりあえず目的の「ジャパン・アヴァンギャルド」を買って離脱。美輪明宏の推薦文が書かれた帯も美しい、A3サイズの豪華版。電車の中で中身を見て、その素晴らしさに感涙。素晴らしすぎますよ、この本。まさにアングラ演劇ポスターの集大成だな。ああ、刷りたてのインクの匂いがする……とくんかくんかとやっていたら、何か頭がくらくらしてきた。馬鹿だね、どうも。

榴華殿『捨子物語』(作 岸田理生/演出 川松理有/会場 中野スタジオあくとれ)☆☆☆
岸田理生作品連続上演の中の1本。一度観たいと想っていた劇団。期待通りの中身でしたが、期待以上ではなかったかな。物語については、寺山修司の「赤い鳥渉猟―岸田理生ノート」(エッセイ集『幻想遊戯』所収)という一文があまりに全てを語り尽くしてしまっているので、これ以上言えることはない。女寺山修司と呼ばれただけあって、やはり紡ぎ出される言葉の力が凄まじかった。魔女詩人というフレーズが浮かぶ。

6月12日(土)
『ラヴァーズ・キス』(監督 及川中/原作 吉田秋生)★★★★
主演の平山綾って『ロリータの温度』でロリータ℃をやってた子だよなあ確か、って思ってたら、それは平野綾だった。まぎらわしい。平気で男と寝ていた女の子が、「あんまり自分を粗末にするんじゃない」と言われて、初めて本気で相手を好きになる、という冒頭の展開に、「ああなんてベタ過ぎる話なんだ」と思いきや、中盤、物語が別の登場人物の視点に切り替わる所から、果然面白くなってくる。一つの事件を、複数の人物の視点から順に描いていくことで、事件の新たな側面が浮かび上がっていくという、『きょうのできごと』とか『ブギーポップは笑わない』で使われた手法。古いところでは『羅生門』とか。宮崎あおいと阿部進之介が演じる二人が、恋人同士ではないけど互いの気持ちを理解しあってつるんでる様子が微笑ましくて楽しい。異性間の友情ってやつだなあ。

6月5日(土)
厚生年金会館に向かう道すがら、マルイワン新宿の8Fで、三浦悦子の人形のミニ個展を鑑賞。黒いゴシック衣装に身を包んだ『コゼットの肖像』のイメージドールは非常にいい出来。惚れてしまいそうだった。

劇団新感線『髑髏城の七人』(作 中島かずき/演出 いのうえひでのり/会場 東京厚生年金会館)☆☆☆

97年版を何度もビデオで観てたので新しい感動はあまりなし。好きなシーンや台詞が結構カッとされていて残念。最後列から3列目という舞台からの遠さ、マイクの音声がときどきこもったりしたのもマイナス。それでもタイトルバックの唐傘を担いだ古田新太の後姿や、クライマックスの逆光の中の七人の戦士の立ち姿などは鳥肌ものだった。水野美紀演じる森蘭丸と天魔王の絡むシーンは、生と死、男と女を超越した妖しさがあった。実際に生身で触れている天魔王ではなく、むしろ織田信長公の髑髏、あるいは亡霊と睦み合っているようにも見えた。

『オイディプス王』(作 ソフォクレス/演出 蜷川幸雄/会場 シアターコクーン)☆☆☆
翻るマントの後姿がカッコいい、様式美の世界。純白の衣装に身を包んだ汚れを知らぬ誇り高き王と王妃、そしてそれを取り巻く真っ赤な血の色の衣装を纏ったコロスたち。やがてその呪われた運命が暴かれるとともに、王の純白の衣装が、自らの両目を潰した真っ赤な鮮血で染め上げられる。野村萬斎と麻美れいの存在感が圧倒的で、二人の並んだ立ち姿がとても美しい。


5月30日(日)
『下妻物語』(監督 中島哲也/原作 嶽本野ばら)★★★★
いやあ、想像以上に面白かった。今映画館の前で『ハニー』と『下妻』のどっちを観ようか悩んでいる人間がいたら、迷いなく『下妻』の方をお薦めします。可愛い顔と可愛い衣装の中に捻じ曲がった性格の宿っている主人公の桃子をはじめ、造りこまれた強烈なキャラクターを持った登場人物たちが魅力的。これは原作者の力によるところも多いのだろうけど、深田恭子、土屋アンナ、樹木希林、篠原涼子とみんなノリにノって演じてる感じがいい。卓球バトルの「サッポロ黒ラベル」のCMで見せたような、馬鹿なシーンを金かけて特撮で撮る感じも面白い。昨日観た『ハニー』では失敗気味だった演劇的・漫画的な演出というのが、破天荒な物語に見事にはまっている。そしてこれまた『ハニー』では失敗気味だった女の友情も、丁寧に描かれてもいい。原作に続編が出るみたいなので、映画でも続編を作って欲しいですね。あと、毛皮族の町田マリーと江本純子も出演してるとのことだったが、発見できませんでした。


5月29日(土)
『キューティーハニー』(監督 庵野秀明/原作 永井豪)★
庵野監督の実写映画ははっきりいって大っ嫌いですが、タダ券があったのとサトエリのエロさを期待して行ってきました。実写とアニメの融合を目指したというハニメーションはただの安っぽい合成にしか見えん。『ロジャーラビット』並みだな、こりゃ。何か中途半端な作品だった。演劇の役者をいっぱい使ってるがそれなら芝居をやればいいし、アニメっぽい演出がしたいならアニメを作ったほうがずっと面白いだろうに。なぜ実写映画として作る必要があるんだろう。決して才能がないわけではないのに、何か庵野監督って才能を無駄に使ってる気がするなあ。そんなに肩書きに「アニメーター」じゃなくて「映画監督」って書きたいのかねえ。と、パンフレットを読んでたら庵野監督の手でオリジナルアニメも製作中との情報を発見。最初からそうすりゃいいのに。劇団新感線の中島かずきが脚本を書くそうなので、むしろこっちの方が期待大ですね。しかし岸田戯曲賞受賞作家がアニメのシナリオ書くとは世も末だな…… 

5月26日(水)
林静一の『小梅ちゃん』の本を無事購入。角川文庫の寺山修司本でお馴染みの、可憐な少女のイラストが満載で大満足

5月23日(日)
カンヌ映画祭で『華氏911』がパルムドールを受賞したそうな。めでたい、めでたい。これでますます公開が楽しみになりました。

5月22日(土)
『コールドマウンテン』(監督 アンソニー・ミンゲラ/原作 チャールズ・フレイジャー)★★★
全く観る気はなかったのだが、ナタリー・ポートマンが出演していると知って急遽鑑賞。大嫌いな『シェルブールの雨傘』みたいな、戦争で引き裂かれた男女の自己陶酔的な鼻につく恋物語なのかなあ、と偏見たっぷりで観たのだが、以外にも面白かった。作品を魅力的にしているのは、ただ待つというだけのことさえ堪えられずに、周囲の声に流されて金持ちと結婚してしまう『シェルブールの雨傘』の馬鹿女と違って、恋人の帰る場所を守り育て、自らの力で生きる糧を掴み取るたくましさ持った女として、ヒロインが描かれていること。ニコール・キッドマンもレニー・セルヴィガーも、とにかくかっこいい。山を谷を越え、運命に立ち向かってこそ愛だろう。

『レディ・キラーズ』(監督 ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン)★★★
むかつくほど威勢のいいブラック(黒人)のおばさんの出てくるブラックコメディ。て、これじゃ駄洒落だな。トム・ハンクスのエセ善人っぽいところが良く出てる。

『トロイ』(監督 ウォルフガング・ペーターゼン)★★★

ああ、なんか教科書で習った話と違う……。ハリウッド的ストーリーに適当に書き換えられてるなあ。登場人物の心の動きや物語の展開、戦う理由なんかもなんか適当。人がゴミのように死んでいくなあ。まあ、2時間半退屈しないだけの映像的見応えはそこそこあったと思う。巫女さんが敵の捕虜になって愛妾になっちゃうって展開は、なんかエロくていい。巫女と寝るっていうのはいわば神様の女を寝取っちゃうわけだから、考えてみればこれ以上の不貞はないわな。

5月19日(水)
『世界の中心で、愛をさけぶ』(監督 行定勲/原作 片山恭一)★★★
というわけで、予習で全作品鑑賞を終えた行定勲監督最新作。やはり作品というのは、「何を描くか」ではなく、「どう描くか」が重要なんだとつくづく感じた。不治の病にかかった恋人が死ぬ、というストーリーとしては非常に使い古されたものだが、描かれる一つ一つの情景が限りなくいとおしい。原作の力に拠るところも多いのだろうが、やはり取り残された者たちの心情を描かせたら行定監督はピカイチ。どんなものでも、それが当たり前にあるときはその大切さに気づかず、それがなくなり、それまでそれが存在していた空白がぽっかりと自分の前に残されたとき、初めて気づくものなのだろう。そういえばフィルモグラフィーの中では異質とされる『GO』も、一番泣けたのは親友が死んだ後に『ロミオとジュリエット』の一説を読んで主人公が号泣するシーンだった。

5月16日(日)
『ビッグ・フィッシュ』(監督 ティム・バートン/原作 ダニエル・ウォレス)★★★★★
旅立つ者には「ここで為すべき事は全てやり終えた」という満足の笑顔を、見送る者には彼を讃えつつも名残を惜しむ涙を、というのが理想的な別れの姿ではないだろうか。うーん、笑って死ねるって言うのはいいよね。「じゃあな!」って感じで。あちこちで散々大人になったティム・バートンの映画だと言われていたが、まさしくその通りだった。今までの疎外される者への偏愛から万人受けする作品に変貌しつつ、なおもティム・バートンらしさは前面に押し出されている。しかしあの端正な顔立ちの美しい少女が、ごっついかくばった顔のヘレナ・ボナム・カーターになっちゃうのは無理があるだろう。骨格からして違うし。どんな美しい女性になるんだろうという夢と希望を見事に打ち砕いてくれた。ラストは泣けました。

5月15日(土)
『ゴッド・ディーバ』(監督 エンキ・ビラル)★★★
16時の『ヘドウィグ』開演までの間に観てしまおうと思い、上映時間が一番早かった池袋シネマ・ロサへ。が、窓口に何か張り紙が。”『ゴッド・ディーバ』は急遽予定を変更し、5月7日を持って上映を終了しました―”呆然。慌てて前売り券裏面に記載してる上映劇場に電話しまくり、現在も昼の上映があるという新宿ピカデリーに向かう。くそ、余計な移動をさせるんじゃねえ。で、鑑賞。実写と3Dアニメの融合作品。映像美は1作ごとに確実に上がっていて、1作目が鉛筆でスケッチした絵なら、2作目は試しにいくつか色を塗って見た感じで、この3作目は幾重にも色を塗りこんで仕上がった絵、とそんな印象。
 
さて、いよいよ今日のメインイベントのため、渋谷パルコへ。屋外掲示板では、例の三上博史の女装ポスターがまがましい美しさを放っている。何度見てもいい。さらにその隣の掲示で、パルコ版「青ひげ公の城」DVD化の情報を入手。この作品、舞台としてはいまいちだったが、シーザーの音楽は良かった。買うべきか買わざるべきか。そうこうしているうちに開場。客席周辺には、「ヘドウィグ」という作品をイメージしたイラストを募集した「カタワレコンテスト」の優秀作品が展示されていて、なかなか楽しい。パンフもCDも購入し、いよいよ開演である。

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(作 ジョン・キャメロン・ミッチェル/訳・演出 青井陽治/会場 パルコ劇場)☆☆☆☆
いやあ、三上博史最高!まさかここまでやってくれるとは思わなかった。胸に贋物のおっぱいがついてて、蜂みたいにお尻にもなんか飛び出たものがついてる、という奇抜な衣装で客席から現れて、のっけから爆笑。もう嬉しくてしょうがなくて、笑いが止まらなかった。1曲目から最前列の婦女子たちは立ち上がってエキサイト。ほんとコンサートのノリだな。三上博史はオネエ言葉全開で、「私がフェラでジュルジュルジュルッってしてあげたら、あの子ったら、イクイクイクーッってよがっちゃって」とか、アグッレシブなマイクパーフォマンスを連発。「毛皮のマリー」の美輪明宏をもっとはっちゃけた感じ。客席に飛び込んでって男性客に馬乗りになって腰を振ったりなど、サービスも満点。まあそれより何より、「オリジン・オブ・ラブ」を生のライブで聴けたのが最高だった。まあ、全てがよかったわけではなくて、音響が大きすぎて歌詞が非常に聞き取りにくかったのは少し不満だった。こっちは三上博史のボーカルが聞きたいんだからさ。あとわがままかもしれないが、アンコールがなかったのも寂しい。準備がなくて物理的に無理だったのかもしれないが、観客総立ちで鳴り止まない拍手を送ってるんだから、もう1曲くらい歌って欲しかった。俺なんかもう自明のものとしてアンコールで「オリジン・オブ・ラブ」を歌ってくれるものと思ってましたが。なんか申し訳なさそうに、もう一度三上博史がカーテンコールに出てきて終わりでした。

5月12日(水)
『悪魔のはらわた/FLESH FOR FRANKENSTEIN』(監督 ポール・モリセイ/監修 アンディ・ウォーホル)★
「やがて誰でも15分ずつ、世界的な有名人になれる日がやってくる」という言葉で有名なウォーホル作品を、一度は観てみようと借りてみた。が、ものすごい悪趣味でグロテスクなスプラッタ映画。人間の手足を首を切断したりくっつけたり、内臓を取り出したり。極めつけは腹部の手術跡から手を突っ込んで内臓を弄くりまわしながら死体とファックするシーン。変態性欲丸出しだな。これがアングラの帝王の映画なのか?オリジナルは立体映画だったそうなので、そういう意味で前衛的だったのかもしれないが、作風は全く好きになれん。他の作品もこんな感じなら観る必要はないな。

5月11日(火)
『カノン』(監督 行定勲/原作 篠田節子)★★
行定勲作品8本目。山登り好きとしては、穂高の美しい森や岩肌の風景が描かれるのは嬉しい。が、しかし。あんな軽装で悪天候の穂高山頂を目指すだと?絶対死ぬわ、ボケ!山をなめるんじゃねえ!あ、こら!ごみを捨てるな!高地ってのはバクテリアが少ないから、ごみが分解されて土に還るまですごく時間がかかるんだぞ!などと、映画の本筋とは恐らく全く関係ない部分が気になってしまった。映像的には非常に美しいカットがいくつもあったが、ホラー作品としては失敗していると思う。むしろサスペンスかな。

5月10日(月)
『宇宙からのメッセージ』(監督 深作欣二)★
「スターウォーズ」の日本公開前の試写会を観て、「公開されるまでの間に作って、先に公開しちゃえ!」つって作られたというパクリ映画。いつ行っても貸し出し中だったのだが、ようやく借りられました。恐ろしく安っぽくて馬鹿な映画ですSF映画というより戦隊モノの延長線上で考えたほうがいいんじゃないかと。

『トーキング・ヘッド』(監督 押井守)★★★★
「球体関節人形展」で寺山修司っぽい映画と紹介されていたので観てみたのですが、かなりツボにはまった。面白かった。押井守の映画の中で一番好きかもしれない。不条理で演劇的なメタ・フィクション映画。寺山の『田園に死す』とかフェリーニの『魂のジュリエッタ』、ウディ・アレンのメタフィクショナルな映画なんかが好きな人ならきっと楽しめると思う。ちなみにスタッフの中に行定勲の名前があったが、あの行定勲なのかな。

5月9日(日)
廃盤になっていた寺山修司作詞のCD「おいらの故郷は汽車の中」を遂に入手。こまめにネット巡回をしていた甲斐があった。プレミアもつかず、ほぼ定価で買えたのも嬉しい。AZAMIってミュージシャンの名前だったのね。なかなかいい出来で半日聞き惚れる。午後は松尾スズキのミュージカル「キレイ〜神様と待ち合わせた女〜」のビデオを鑑賞。

5月8日(土)
寺山修司の作品を視聴するために、横浜の放送ライブラリーに行ってきました。思った以上に多くの作品があって、気がつけば6時間ぶっ続けの鑑賞。さすがに疲れました。
まず1本目はテレビドラマ「子守歌由来」。少女が川に流れた手毬を追うシーンから始まる。子供が一人間引きされるたびに、その子供が土に中で眠りにつくよう、またひとつ新しい子守歌が生まれる。
2本目はラジオ『山姥』。内容的は演劇『青ひげ』とほぼ同じ。
3本目はラジオ『まんだら』。演劇『花札伝奇』でも使われた、「生まれる前から死んでいた」というモチーフが使われている。
4本目はラジオ『中村一郎』。”空がおいらの別荘さ/太陽の日で卵をいため/雲のソファーで休むのさ”という挿入歌が楽しい。大学に入ってから3年間も入院していた若い売れない詩人、という明らかに寺山自身をモデルにした登場人物が出てくる。
5本目はラジオ『大礼服』。現実には存在しない大礼服を着た男をめぐる物語。『奴婢訓』の不在の主人や、『中国の不思議な役人』の存在しない中国人などのモチーフの原型が見て取れる。
6本目はラジオ『おはようインディア』。インド人留学生の少女と、鍵っ子の男の子の交流を巡るドキュメント仕立ての作品。
7本目はラジオ『シュウさんと修ちゃんと風の列車』。寺山修司役で元天井桟敷の佐々木英明が出演している。家出少女は迷い込んだ列車の中で、シュウさん(太宰治)と修ちゃん(寺山修司)という不思議な男に出会う。恐山行きのその列車の乗客は実は死者ばかりで、やがて少女も自分が自殺していたことを思い出す。太宰と寺山の悪口の言い合いが楽しい。「”ぼくは愚痴っぽい男が大嫌いなのである”だって?悪かったね。愚痴っぽくて」「よく読んでるね。あんた死ぬときまで女に甘えすぎだよ」「あんたこそネタがなくなるとすぐに母親のこと出すじゃない」といったやり取りが次々出てくる、ファンにはたまらない展開。極めつけは少女が寺山に叫ぶ「うるさい!このマザコン!」という台詞でしょうか。その後の「こら、マザコンにマザコンって言ったら失礼だろ」という太宰のフォローになってないフォローもおかしい。

シベリア少女鉄道『天までとどけ』(作・演出 土屋亮一/会場 シアター・トップス)☆☆☆
わかってはいたけど、染谷景子さんが出てなくてがっかり。今回も馬鹿馬鹿しくて笑えた。しかしいまいち。寺山修司風に言うと、「美しすぎる観劇体験を持つものは、いつかその観劇体験に復讐される」といった所だろうか。私はきっと「遥か遠く同じ空の下で君に贈る声援」という作品を、愛しすぎているだろう。ああ、再演しないかなあ。作品の作りとしては、「遥か〜」に近い感じ。

5月6日(木)
深作欣二のファンサイトを見ていたら、新たなシーンを追加した「バトル・ロワイアルU 鎮魂歌」特別篇が5月20日に上映されるとのこと(http://fukasakugumi.net/より)。明らかに描写不足のところが大量にあった映画なので、完全版が出たらいいなとは思っていたが何故この時期なんだろうな。もうとっくに世間の熱は冷めているだろうに……。とりあえず平日夜に観に行くのは厳しいので、一般公開かDVD化を待つことにします。劇場公開版が遺作では深作監督も浮かばれないと思うので、今度こそきっちりとした作品に仕上がっていて欲しいものです。

5月1日(土)
『CASSHERN』(監督 紀里谷和明)★★
うーん、悪くはないけど、これは映画と呼べるのかって気がする。ミュージックビデオの演出をしてきた監督ということなのでそれっぽいのを想像していたら、まんまミュージックビデオだった。何か描かれてるものが、やたらと綺麗だがすごく底の浅い感じがする。同じようにMV界出身の監督が作ったMV風の映画にはターセムの『ザ・セル』というのがあるが、出来は向こうの方が遥かに上だと思う。とりあえず、キャシャ―ンと敵軍団の結成を描くだけで1時間近くもかけるのにはうんざりした。「スター・ウォーズ」のオープニングみたいにこんなもん字幕ナレーションでいいだろう。「これこれこういうわけで、キャシャ―ンは今日も戦う!」で。時間をかけた割には、設定や展開はかなり適当。新造人間がたまたま逃げていった先に、たまたま無人の城と無人のロボット兵器工場があってそこを拠点にする、ってのはあまりにもご都合主義すぎるだろう悪の幹部な4人が揃うシーンには、「これまんまヴィジュアルバンドじゃねえか!」と突っ込みを入れつつ爆笑してしまった。とりあえずヒロインの麻生久美子が可愛かったので元は取れたと思う。長椅子の上で丸まって眠り込んでしまうシーンとかすごくいいなあ。

『ディボース・ショウ』(監督 ジョエル・コーエン)★★
ジョージ・クルーニーにキャサリン・ゼタ・ジョーンズと、やたらと顔の濃い二人が揃った大人のコメディ。まあそこそこ面白かったが、どうということはない話。しかし『猿の惑星』にティム・バートンらしさがなかったくらいに、まったくコーエン兄弟らしさがない。「オー!ブラザー!」同様、とりあえずクルーニーの面白顔を楽しんどけって感じだろうか。  


4月30日(金)
『ブルース・ブラザーズ2000』(監督 ジョン・ランディス)★★★
前作があまり乗れなかった記憶があるので、期待しないので観たのだが、すごくいいじゃないですかこの映画!何がいいってとにかく音楽がいい。劇中の言葉で言えば、「魂(ソウル)」のこもった歌の数々が堪らない。警察官が歌の魅力にとりつかれて空中浮遊した挙句、ブルースブラザーズに変身するシーンは爆笑モノ。ジェームス・ブラウンほかゲストミュージシャンも豪華。とりあえずサントラを買いに行こうと思います。何やら無駄にカーチェイスで車のぶっ飛ぶシーンが多かった。この監督、車壊すのが好きなのかな。


4月28日(水)
「ドライブインカリフォルニア」の当日券を手に入れるため、平日だというのに昼間からウェンディーズで待機。Mサイズのアイスコーヒーが140円ってのは安いな、と感心しつつ、12時になると同時にTEL、TEL、TEL。そして平日狙いが成功し、何とか座布団席をゲット。一安心して、時間調整にスパンアートギャラリーへ。金子国義の新作写真集の発売に合わせた写真展を開催中。うーん、面白いけど買うほどではないなあ。ポストカードを数枚買うだけにして、銀座線で渋谷へ。
   

劇団アロッタファジャイナ『ダンス・ダンス・ベイビー・ダンス』(作・演出 松枝佳紀/会場 渋谷・ギャラリールデコ)☆☆
チラシがエロかったので観てみようと思っただけです。ええ、それだけです。という訳で、初見の劇団、アロッタファジャイナ。うーん、つまらない金返せというほどではないが、いまいちでした。悪魔のような奇形児ばかりが生まれるようになった世界。その治療薬が開発されたが、それを使うと人は痴呆のようになってしまう。なぜなら負の感情こそが人間の本質だから。という風なのが大方のあらすじだが、次々と挿話挿話で物語が展開してき、主題というか話の本筋がはっきりしない。説明台詞がやたらと多いのも気になった。一番ひどかったのは一人の役者が、全然台詞が頭に入っていない様子だったこと。とちるのはともかく、台詞忘れてパニくるのはお金とって演じてる役者として駄目でしょう。終演後に撮影会をやるというのを聞いて、アイドル予備軍の女優が出演してるのを売りにしてるのかなと思ったり。まあ、良くも悪くもできたばっかりの劇団って感じだった。今後に期待。
   

大人計画『ドライブインカリフォルニア』(作・演出 松尾スズキ/会場 本多劇場)☆☆☆☆

「花札伝奇」以来10ヶ月ぶりの本多劇場。当日券の受け渡しの手際が悪くて、開演前にぐったり。どうしてすでに確保してある券を受け取るだけなのに45分もかかるんだ……。客席内は、補助席と座布団席が隙間なく詰められ、文字通りの満員。ああ、こういう雰囲気久しぶりだ。そして開演。序盤は常連さんと思われる人だけがウケている微妙な雰囲気。なんか変な感じだと思っていたら、はたと今日が初日だったことに気づく。なんか俳優も観客の方もお互いに探りあいながらやってるような少し固い空気。中盤からは場も温まってきたのか俳優の演技ものびのびしてきて、客席の方も爆笑の渦が起こるようになり、最終的には大盛り上がりで終わった。個人的には、重箱の隅をつつくような感じの映画の小ネタが大量に使われているのが楽しかった。「フルメタル・ジャケット」の「お前は豚だ」「イエッサー」とか、「キル・ビル」の「ヤッチマイナー!」とか、「プリティ・ウーマン」のヒロインを肩にかつぐシーンのパロディとか、舞台上のTVに映る映像が「博士の異常な愛情」だったりするとか、「マディソン郡の橋」とか「女優霊」とか。さて、会場で購入したパンフレットには意味ありげに「上演終了まで開けないでください」という封筒が挟まっていた。物語の鍵となるものでも入ってるんだろうか、劇中歌の歌詞カードやシングルCDだったらいいな、と中身を期待しつつ帰宅後開封して見ると、なんだこりゃ。馬鹿だ、馬鹿すぎる……  


4月26日(月)
『さびしんぼう』(監督 大林宣彦)★★★
想像していたよりもずっといい映画だった。少しセンチメンタルに過ぎるのは、80年代映画の愛嬌。富田靖子が若い、可愛い、あどけない。こういう空想の友達、空想の恋人を、誰でも少年時代には思い描いたことがあるんじゃないだろうか。

4月25日(日)
『ロックンロールミシン』(監督 行定勲/原作 鈴木清剛)★★
行定勲作品7本目。会社生活に嫌気がさして、サークルのりでインディーズブランドを作っている友人のとこに転がり込むが、長くは続かず、元の会社生活に戻る、というありがちなストーリー。うーん、感動したわけでは全くないが、非常に見てて痛い。身につまされるなあ。

『聖獣学園』(監督 鈴木則文)★
毛皮族を理解するために借りてみた。うーん、エロというよりバカ映画だな。犯されたオールドミスのシスターの、「32年と4ヶ月守り続けてきた純潔が……」という台詞が一番笑えた。

『紅い眼鏡』(監督 押井守)★★

押井守の実写作品1作目。定番俳優(声優)千葉繁。声優のコスプレ映画の域を出ていない感じ。現実と虚構が入り混じるいつもの展開。意識して見ると、確かに寺山修司っぽい。


4月24日(土)
『キル・ビル Vol.2』(監督 クエンティン・タランティーノ)
一作に比べてドラマ重視。戦闘シーンも静かな趣きの中で決着がつく。それでも目玉を抉り出して踏み潰すといったグロい描写もあるので、そういうのが苦手な人は要注意。ザ・ブライドの本名が「ベアトリクス・キドー」であったことが明らかになるが、秘密にしていたのにどんな意味があったのかはわからない。音楽は最高。後半のビルとのやり取りが素晴らしい。愛しているから許すのか、愛しているから許さないのか。愛しているから殺すのか、愛しているから殺さないのか。どれもが真実のようでもあり、どれもが間違いのようでもある。うーん深いなあ。


4月19日(月)
『ひまわり』(監督 行定勲)★★★★
行定勲作品6本目。劇場公開作としては第1作とのことですが、非常に良くまとまってる作品だと思う。「きょうのできごと」の原型のようにも思える群像劇。恋人の由香里(河村彩)と喧嘩中の輝明(袴田吉彦)は、ニュースで小学校の同級生だった朋美(麻生久美子)が海難事故で行方不明になったことを知る。死体の上がらないまま行われる葬儀に集まったかつての同級生や朋美の恋人たちが、不在の朋美について語る形で物語は進む。そして「ゴドーを待ちながら」さながら、最後まで知美は現れなず、生死もはっきりとはしない。それでも周囲の人々は互いに語り合いながら、それぞれの想いを捕らえなおしていく。タイトルになっている向日葵や、日蝕のシーンなど、白い白い光の使い方が印象的。麻生久美子の河村彩の二人の女優の撮り方も非常に美しいうーん、うまく感想化できないですが、とにかくいい映画でした。


4月18日(日)
『富江 最終章 禁断の果実』(監督 中原俊/原作 伊藤潤二)★★★
安藤希と宮崎あおいの美しい少女愛。殺して殺しても生き返り、どんなに憎んでも憎んでも愛さずにいられない、永遠不滅のファムファタルとしての安藤希。中年の國村隼を誘惑し手玉に取るさまも色っぽい。

『Seventh Anniversary』(監督 行定勲)★★★
行定勲作品4本目。おとぎばなしのような物語展開と皮肉な結末。純粋さゆえに現実に翻弄されるヒロインが哀しい。自分の大切な想いが形として残るなら美しいが、形でしか想いを感じ取れなかったなら、それは美しいことだろうか?物事はつねに本末転倒する可能性を孕んでいるが、逆もまた真であるとは限らない。そんな問い。そして唐突に訪れる終わり。『贅沢な骨』もそうだったが、死はそれが訪れるべき時や、受け入れる準備ができている時にくるわけではない。ただ訪れるのだ。
「人間は死ぬべきときに死なず、ただその時期が来たら死ぬもんだ」(寺山修司『百年の孤独』より)

『えんがわの犬/恋、した。〜ブルームーン〜』(監督 行定勲)★★★
行定勲作品5本目。短編なので物語がどうこうというのはないが、一つ一つのシーンがとてもいとおしい。縁側の犬とお茶、夏の田園を走る二人乗りの自転車、夕立がやむまでの大木の下の雨宿り、田舎の駅のホームの待ちぼうけ。本当に日常を描くのがうまい監督です。


4月15日(木)
金がないんだから絶対駄目だ、と自分に言い聞かせていたのに、店頭で見た瞬間に買ってしまいました。「キル・ビル vol.1」のDVD。なんかジャケット着てます。ああ、やっぱりゴーゴー夕張最高。栗山千明最高。と、馬鹿みたいな感想を書いて今日はおしまい。

4月12日(月)
『贅沢な骨』(監督 行定勲)★★★
「グラスを落とした瞬間って、あッて、息のむでしょ。手をのばしてもまにあわない。呼吸をとめてただ見つめるだけ。あんな瞬間がずっと続いている感じ」(紺野キタ『あかりをください』より)
と、感想がうまいこと書けないのでいきなり引用から始めました。行定勲作品3本目。冒頭に映される火葬場のシーンが物語の悲しい結末を暗示する。ホテトル嬢でお金を稼いでいる不感症のミヤコ(麻生久美子)と、彼女の居候の家出少女のサキコ(つぐみ)。百合的な関係の中で二人は仲良く暮らしていたが、ミヤコが初めて「イク」ことができた相手、新谷(永瀬正敏)の登場でその関係が変わっていく。二人きりの閉じた関係の中に三人目が現れることで物語が展開していくのは、「閉じる日」と一緒。劇中、3匹の金魚をミキサーに入れて飼うシーンがあって、いつかミキサーのスイッチを入れてしまいそうではらはらさせられるのですが、これはそのままいつ壊れてしまうかわからない3人の関係そのものに他ならない。映画「水の中の八月」でも感じられたような、今にも壊れてしまいそうな不安定さを内包した、そしてそれゆえにこそ儚くいとおしい幸せの日々が切ない。しかしこれもまたエロティックな映画だなあ。絡み多し。決してそういうところばかり見ているわけではないですが、やはり見所はつぐみのヌード。足についたギプス以外オールヌードで、バスタブで膝を抱える姿が、なにかアンバランスで心惹かれる。ってあれ、実年齢はつぐみの方が上なのか。絶対麻生久美子より年下だと思ったのに。「ねじ式」でもっきり屋の少女をやってたときよりずっと幼く見える。


4月11日(日)
『化粧師』(監督 田中光敏/原作 石ノ森章太郎)★★
池脇千鶴を見るために鑑賞。菅野美穂の扱いのひどさに比べて、おいしい役だなあ。いろんな衣装が見れて満足。ドラマ的には道徳の授業みたいな内容で何だかなあ、と。子供が初めて喋るシーンは哄笑してしまった。緑の草原の中やモノクロ映像の中に配置される真っ赤なスカーフが映像的に美しい。

『閉じる日』(監督 行定勲)★★★
行定勲作品2本目。静謐で美しくエロチックな物語と映像世界。田舎の一軒家で隔絶された近親相姦的な二人暮しをする小説家の姉名雪(冨樫真)と高校生の弟拓海 (沢木哲)。そこに弟に恋する少女・悠里(綾花)が現れたことで、閉じた世界が崩壊を始める。なんか最近似たような一文を書いたなあと思ったら、「港のロキシー」に似てるんだな。しかし大きな違いは性についての描写(単純にセックスについてのみでなく)が前面に押し出されていること。まるで互いに相手に見せつけるかのようにセックスをする姉と弟。父親に犯されたという過去を持つ姉と、それを見ているしかなかった弟。その弟は、まるで過去を繰り返すかのように自分の恋人が売春を強要させられようとするのを、寸前で阻止する。弟を失い精神の安定を失う姉と、姉の呪縛から弟を救おうとする弟の恋人。そして物語は最後の最後で「脳髄の地獄」的な虚構の入れ子構造を呈する。どんな真実も人間の記憶を通す中で虚構化してしまうのを免れないし、今ここにある現実もまた、私たちが現実と感じているだけの虚構に過ぎない。


4月10日(土)
『呪怨(Vシネマ版)』(監督 清水崇)★★
栗山千明主演と聞いたので観てみたが、出番は少しだけ。映像的には確かに怖いけど、話の流れがなんだかわからず釈然としない。


4月3日(土)
『きょうのできごと』(監督 行定勲/原作 柴崎友香)★★★★
何気ない若者たちの日常の風景。観たことないけど小津安二郎ってこんな感じなんだろうか。田中麗奈、伊藤歩、池脇千鶴と、関西弁で喋る女の子たちが元気で可愛い。

『ドッグウィル』(監督 ラース・フォン・トリアー)★★
うーん、面白かったけど好きにはなれない作品。人間が、自分より弱いもの、自分から逃げられないものに対して如何に残酷になれるかが描かれていく。ささやかな善意がやがてふくれ上がった悪意に飲み込まれていき、その悪意が報復を受けて崩壊を迎える暗いカタルシス、というこの展開は「リリィ・シュシュのすべて」(監督 岩井俊二)を彷彿とさせる。途中胸が悪くなった。やはりこの世で最も恐ろしいのは怪物や悪霊などではなく、人間の心なのだ。可憐で美しいニコール・キッドマンが虐げられ、陵辱されていくさまはサディスティックな興奮を味合わせてくれる、と言いたいところだが、そんな余裕もないほどの不気味な映画。


3月27日(土)
毛皮族『DEEPキリスト狂』(作・演出 江本純子/会場 下北沢駅前劇場)☆☆☆☆
江本純子の長い長い前説と客いじりが馬鹿馬鹿しくて面白い。CDデビューも果たし、パワーも歌唱も全開。常連となった拙者ムニエルの澤田育子、「女王蜂ハチコ」のときとは同じ人間とは思えないほど、ふっくらして可愛くなった。怪しいインド人女性を演じる佐々木幸子と、メイド姿で出てくる柿丸美智恵のキャラ立ちがすごい。ツボにはまって爆笑しまくり。逆に町田マリーは少しおとなしめの役柄で、もっとはじけてほしかった。なんかセリフも普通のお芝居みたいだ。いや、最後「私はきちがいです」と言って劇場の外に出て行ってしまう当たりは普通じゃないですが。ちょっとしたセリフなどにいろんな作品が引用されていてニヤリとさせられる。「私は腰巻お仙でござる」とかいって出てくるシーンとか。機動隊のシーンはやっぱり「飛龍伝」のパロディなんだろうか。今回はエロさ控えめという話だったが、いやエロエロでしょう、これは。

幻想演劇・永久アリス『少女地獄』(原作 夢野久作/作・演出 吉田雷/会場 MIYAJI LIVE)
西欧のどこかと思われるお屋敷で暮らす、令嬢アンナと女中のユリと下男の3人が織りなす物語。会場のMIYAJILIVEはカウンターのある小さなバーで、その端っこにある1メートル四方程度の小さな台が舞台。出演者は三人。俳優が変わりばんこにそこに立ってあらすじを追うように台詞を話し、演出は照明を突けたり消したりするのみ。上映時間も90分とのことだったが、正味50分ほど。うーん、これはちょっとどうなんだろう。良い悪い以前に、まず作品なんだろうか。たとえばカウンターでグラスを傾けながら、酒の肴に眺めるとかそういう類のパフォーマンスであって一本の芝居にはなっていないように思える。もっと広い舞台でもっと長い上演時間でもっと俳優を出してやってくれんことには、今後に期待が持てるのか持てないのかさえも判断できない。夢野久作の原作も全く生かされていないよなあ。嘘で周囲を惑わし破滅へと導いていく女中のユリが、どうやら自殺から生き延びて記憶を無くした姫草ユリ子らしい、とおぼろげにわかる程度で、原作の言葉は全くセリフには使われていない。原作の『少女地獄』が好きで、あの作品を90分間という上演時間の中で、一体どんな芝居として仕上げたのか観てやろうと意気込んできたのでかなり肩透かし。いっそ朗読劇とかでもよかったんだが。ゴスロリ劇団という特色にしても、ゴスロリを着てるのは一人だけで、もう一人の女優は普通の服装、もう一人は兄ちゃん。前日観てきた『球体関節人形展』のように、もっとゴスロリをきた少女たちが舞台中に溢れるようなのを期待してたんだけどなあ。あ、でも観客にゴスロリがいたか。とりあえずちゃんとした劇場で演じられる舞台を観るまで評価は保留、様子見ということで。あ、芝居の出来とは別に、二人の少女が向かい合ってるイラストのモノクロのリーフレットのデザインとか、入場券代わりに黒薔薇の造花をくれたりするセンスは結構好きです。

『盲獣VS一寸法師』(監督 石井輝男/原作 江戸川乱歩)★
石井輝男って日本のエド・ウッドだったんだ、というのが最初の印象。まず画面が粗く汚くて、スクリーンに映す価値のあるもんじゃねえだろうと思う。きょうびアダルトビデオでももう少しきれいな画を撮るぞ。タイトル通り二本の原作を融合した作品だが、まず「盲獣」の部分に関しては、増村保蔵版の足元にも及ばない。演出、俳優、造形美術あらゆる部分がどうしようもないほどひどい出来。おばさんの裸なんて見たくないし。「一寸法師」の部分も、なぜハーフ顔の女優が演じる資産家夫人が違和感ありまくり。上映後監督によるティーチインがあるとのことでしたが、聴かずに抜け出しました。

さて、本日の戦利品をチェック。毛皮族のCD、馬鹿馬鹿しくて面白くていい。永久アリスの案内ハガキは何度見ても良いデザイン。


3月26日(金)
土曜に買った池の下公演『花札伝奇』のビデオを鑑賞。1999年に生で観た作品で、あの感動よ再び!という感じで買ったんですが、うーんいまいち。ああいう見世物小屋的空間をビデオで観てもやっぱり迫力は伝わってこなかったというのもあるが、カメラワークがひどいなあ。やたらと喋ってる俳優をアップで撮って、これじゃ舞台全体で何が起こってるのか全然わかんねえだろ!
3月25日(木)
劇団維新派の公演『カンカラ』と『流星』のDVDを鑑賞。野外劇をノートパソコンの小さな画面で観るというのは、もうすでにその時点で無意味なことのような気もしますが。うーん、去年『ノクターン』を観たときも思ったが、少し自分の好みとは違う世界だなあ。音楽も視覚的にも壮大で美しいんだが、やっぱり言葉=セリフがないと物足りない。ちゃんと俳優が喋ってるじゃないかというかもしれないが、あれは声というよりも音だもんなあ。夢の中から抜け出してきたような、幻想的な世界空間の数々、途中観てる自分の方が夢の中に行ってしまいそうになった。なんか眠くなるなあ。


3月23日(火)
幻想演劇永久アリスに続いて、黒色綺譚カナリア派の方からも掲示板に書き込みがあり、びっくり。うーん、どうせ内輪しか見てないだろうと適当にやってたが、ちゃんと見てる人がいたんだなあ。壁に耳あり障子に目あり、うかつな事はできません。あらためて気合を入れて、HPを作っていきたいと思います、はい。


3月22日(月)
『青空娘』(監督 増村保蔵/原作 源氏鶏太)★★★
「いつも青空のように明るく」がモットー(こういう恥ずかしい表現が、恥ずかしくなかった時代があったんだなとしみじみ)のヒロインが、愛人の娘ということで継母にいじめられながらも、本当の母親に出会って幸せになるまでを描く、『小公女』映画。継母を単なるステレオタイプな悪人ではなく、夫の愛を得られなかった不幸な女性として描く様に好感が持てた。まだあどけなさの残る若き日の若尾文子の溌剌とした様子が可愛い。女中役で故・ミヤコ蝶々が出演している。この人は昔っからあの芸風だったんだなあ。

『遊び』(監督 増村保蔵/原作 野坂昭如『心中弁天島』)★★
映画「タクシードライバー」の主人公(ロバート・デ・ニーロ)のような、やるせない人生のどん詰まりの状況の中で出会い、恋に落ちる男と女。全てをなくした二人が旅立つ先にあるのは、破滅か一欠けらの幸福か。沈みかけのボートに捉まって足をばたつかせながら、二人が深い河の中を進んでいくラストシーンを見ながら、漫画家永野のり子のこんな言葉を思い出した。曰く、人生とは足におもしをつけられて波にぷかぷかと浮かんでいるようなもので、常にあがいてないと沈んでしまうのである。

3月21日(日)
『聖ミカエラ学園漂流記(Vシネマ)』(監督 高取英)
夢野久作の『瓶詰め地獄』がロマンポルノになっているというのを知って新宿ツタヤで探していたら、代わりにこれが見つかってしまった。何故、アダルとビデオのコーナーにあるんだ。内容は、ひどい出来。一度見てみたいと思っていたので、喜んで借りたのですが……うーんある程度覚悟はしていたが、ここまでひどいとは思わなかった。ただの出来の悪いエロビデオになってるなあ。見所は野口昌代のブルマー姿かな。というかそれくらいしか楽しむべきところがない。月蝕歌劇団の女優陣の演技と高取英の演出がいかに下手かというのが、映画というリアリズムの中では浮き彫りになってしまう。演劇的な台詞をこういうリアリズムの中で言われてもねえ、ただのヘンな人だよ。シーザーの音楽のアレンジもひどい。

『港のロキシー』(監督 あがた森魚)★★
少し背徳的な臭いのする、仲のいい姉と弟の蜜月。やがてそこに一人の男が現れる。男は弟にとって兄のような存在に、姉にとって恋人のような存在になる。両親に裏切られて以来、閉じた世界にいた姉弟が、他者を受け入れていくまでの物語。1999年の映画なのに、70年代頃の古い感じがするのが、やっぱりあがた森魚色の映画だ。

『アフリカ物語』(原案 寺山修司/監督 羽仁進)★★
寺山修司絡みということで借りてみたが、そんな匂いは全くない。どうやらほんとに原案だけらしい。サバンナで生きる動物とそこで暮らす人間の姿を描く。「生き物地球紀行」だな、こりゃ。映画としての見所はないが、動物が可愛いから、まあいいんじゃないでしょうか。


3月20日(土)
『球体関節人形展』(監修 押井守/会場 東京都現代美術館)☆☆☆☆
大江戸線に乗ってはるばる行ってきました。土砂降りの雨の中、駅から13分の道程はけっこうつらい。開場前から意外と人の列が出来ていて驚く。それなりに観に来る人がいるんだな。客はおおまかに分けて、パンピーとオタク青年とゴスロリ少女の3パターン。まあ、予想通りですが。少し暗めの照明の中に配列された人形たちが、妖しくていい感じ。月並みな表現だが、まるで生きているかのよう。胸に触れればかすかに息づいているんじゃないか、瞳を覗き込んでいると、不意にこちらを見るんじゃないか、なんていう妄想に取り付かれてしまいそうになる。
   

1時間ほど鑑賞したのち、常設展へ移動。横尾忠則の「腰巻お仙」と金子国義の「愛の乞食」のポスター原画があり、少し得した気分。軽く鑑賞して、会場を後にする。地下鉄を乗り継ぎ、中野へ。タコシェでやっている丸尾末広フェアを覗く。少女の椿の原画なんかを眺める。池の下ポスターの再販を願っていたんだが、それはない模様。オリジナルポスターとポストカードを購入。隣のCD屋でゲルニカのコンプリートCDを中古で売っていたので、これも購入。まあ、これぐらいにしとこう。あまり時間もないので、新宿経由で下北沢に。

『ウチハソバヤジャナイ』(作 ケラリーノ・サンドロヴィッチ/脚色・演出 ブルースカイ/会場 スズナリ)☆☆☆

確か、ブルースカイ演出を観るのはこれが2回目。うーん、悪くはないんだけど、悪くはないんだけど、いまいち。話が一つ一つ寸断されているので、カタルシスが持続しないというか。「爆笑オンエアアバトル」でいうと、流れで話が続いていく漫才ではなく、ショートコントを観ているような感じ。

   
演劇集団・池の下『大山デブコの犯罪』作 寺山修司/演出 長野和文/会場 新宿タイニイ・アリス)☆☆☆☆☆
池の下およそ3年ぶりの公演。期待半分・不安半分という感じだったが、結果はすばらしいだった。客席はほぼ満員。開演と同時に、「大山デブコのテーマ」に乗って現れる異形の者たち。『花札伝奇』の興奮再び!、という感じだった。これだ、この見世物小屋空間が観たかったんだ。やはりタイニイ・アリスという小屋が池の下にはあってるんじゃないか。そして主役のデブコ。一体どうするのかと思っていたら、ああ、ちゃんといた。しかも二人も。しとやかなデブコと憎たらしいデブコ。この二人がまた、二人とも良い。麗しの大山デブコ。思わず惚れてしまいそうだった。役者陣で印象に残ったのは、活きのいい口上が楽しいデブコの娘役。あと天使の羽のついたセーラー服の少女が、台詞はないがツボにはまった。少し残念だったのは、音楽がすごくいいのでどうせなら、テープではなく生のコーラスでやって欲しかったこと。後は上演時間1時間弱と短くて少々食い足りないこと。まあ、もとの戯曲が短いんでしょうがない。いっそのこと同じものをもう1時間上演してくれてもよかった。私は喜んで観ましたよ。とりあえず帰りがけに「花札伝奇」の公演ビデオとサントラを購入。チラシの次回公演の予定が載ってなかったのが気になりますが、一刻も早く観たいものだ。
   
すっかり満足して帰路に着こうとしたら、新宿駅ビルの青山ブックセンターで驚愕!林静一の装画による寺山修司の新刊「不良少女入門」が並んでいるじゃないですか。ああ、泣きたくなるほど素敵な表紙だ。さっそく買って読んでみると、未読の「キネマ活動写真 大怪盗ルパン」というシナリオが掲載されていた。どうやら昨年の流山児事務所『花札伝奇』で劇中劇として演じられたのは、これが元らしい。流山児祥の創作じゃなかったんだな。帰りの電車の中、読みふける。いやあ、充実した一日だった。


3月16日(火)
『直撃!地獄拳』(監督 石井輝男)
千葉真一主演のバカ映画。「キル・ビル」元ネタの一つということで、とりあえず鑑賞。うわ、すげえ。本物だ、本物の三流バカ映画だ!バカだよ、バカ過ぎるよ!


3月15日(月)
『怪盗ジゴマ・音楽篇』(監督・作曲 和田誠/脚本・作詞 寺山修司)★★
観たい観たいと思っていたら、近所に新しく開店したビデオ屋に置いてあった。日曜洋画劇場のオープニングアニメみたいな感じのアニメ映画。寺山没後の1988年の作品なんでおかしいなと思ってたら、同名の戯曲を元に作られたとのこと。CD「老人探偵団とガリガリ博士の犯罪」に収録の「センチメンタル・センチメートル」、「さみしい女のバラード」なんかを由紀さおりが歌っていて、なかなか楽しい。20分ほどの短編なのであまり見応えはないかもしれないが、良作。


3月14日(日)
『華氏451』(監督 フランソワ・トリュフォー/原作 レイ・ブラッドベリ)
観ていてつらい昔のSF映画。そもそも「本」という情報媒体の形態自体が形骸化しつつある今の時代では、作品中の思想統制としての焚書という行為には全く説得力がない。当時は最新の技術で撮ったと思われる未来世界像も、今観るとウディ・アレンのスリーパー並みに安っぽいし。

で、夜。NHKアーカイヴスの「紅い花」を鑑賞。数年前に再放送を見逃して以来ずっと見たかったので非常にありがたい。少女役はもっと幼いほうがよかったと思う。あ、ここでも焚書が(笑)。うーん、全体的には期待していたほど面白くはなかった。もっと幻想的な映像だと思っていたんだが。川で少年と少女が話すシーンなんか明らかに照明を当てすぎだし。石井輝男監督の「ゲンセンカン主人」と「ねじ式」の方が好みだった。


3月13日(土)
『花とアリス』(監督 岩井俊二)★★
ネット配信の短編映画の、加筆・再編集映画。元々あった部分と後から足した部分とが、なんか違和感あり。「リリィ・シュシュのすべて」とは対極にある少女の何気ない日常をつづった物語。全体の雰囲気は「四月物語」に近い。これも「不思議の国のアリス」のように、「少女」という架空の生物を題材にした一種のファンタジーなのだと思う。なんかアリス役の蒼井優がおいしいとこ取り。それに比べて花役の鈴木杏の扱いはひどいなあ。岩井監督ひいきしすぎだよ。

3月7日(日)
『イノセンス』(監督 押井守/原作 士郎正宗)★★★
美しい映像に乗せた、押井守選による名言・格言映画。メモしておきたい名言が一杯。恐らく今までの押井作品の中でも最も難解。面白かったけど、当たらないだろうなあ。登場人物も主役の二人を含めおじさんばかりで華がないし。バトーの役柄は「多重人格探偵サイコ」における、雨宮一彦が去った後の笹山徹なんだろうなあ、とまたわかりにくい例えをしてみたり。取り残された人々の、それでも生きていかなればならない物語。たとえ心がつながっていても、やっぱり生身の身体で触れ合うことができないのは寂しいことなんだよ、とそんな感じがした。


3月6日(土)
『地獄の黙示録 特別完全版』(監督 フランシス・フォード・コッポラ)★★★
やはり難解な映画。観終わって思いついたのは、人間にとって一番恐ろしいことは「終わりがない」ことなんではないだろうか、ということ。どんな苦しみも終わりがると思うから耐えられるものだ。逆に幸福も限りがあるからこそ尊いものである。だからこそいつまで続くのかの終わりが見えない、泥沼の戦争の中で、人間は狂っていく。


2月28日(土)
『アラビアのロレンス 完全版』(監督 デヴィッド・リーン)★★
昔の大作映画。それ以上の感想は特になし。


2月26日(木)
『ピアノ・レッスン』(監督 ジェーン・カンピオン)★★★
BS2のアカデミー賞作品特集で鑑賞。サトエリの「人魚姫的な物語」という言葉が印象に残った。そうか、声を失った人魚姫は、手話を覚えればよかったんだ。
美術館の絵画を見ているかのような、美しい映像と美しい音楽。アンナ・パキン演ずる少女がとにかくかわいい。さすが最年少でアカデミー賞を取っただけのことはある。ホリ・ハンターも静かなる激情を熱演。テーマは学問的にいえば、異文化コミュニケーション。声の出せない女はピアノの音色と手話で言葉を語り、字の読めない男は性的行為で言葉を語ろうとする。普通の言葉をもたない二人の人間が共有した言葉は、ただ「触れ合う」こと。ラストの死と再生の儀式は少しわかりやすすぎるような気がする。ピアノって結局移行対象だったのね。


2月19日(木)
さて、2月某日。何か面白いことはないかと「寺山修司」をキーワードにネットを彷徨っていた私は、ある劇団を発見した。その名も幻想演劇・永久アリス。紹介文曰く、”寺山修司を弔うために少女たちが立ち上がった。恐らく日本初のゴシック&ロリータ劇団”とのこと。そして本日、ホームページ上で発表された第2回公演の演目は、なんと夢野久作の少女地獄!ここまで私の好きな要素を並べ挙げられてしまったら、もはや観に行かざるをえません。さっそくリンクに追加。都内某所で公演ということですが、近くであることを願います。

2月15日(日)
『カメレオンズ・リップ』(作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ/会場 シアターコクーン)☆☆☆☆
嘘つきな女を演じる深津絵里がかわいい。騙し合いを描いたクライムコメディということで、「スティング」などが関連作品に挙げられていたが、むしろウディ・アレンの映画みたいだと思った。妻や恋人や愛人の間を、嘘をつきまくりながらうまく立ちまわる、みたいな。父を殺した母が娘にその罪をなすりつけるというプロットは「セプテンバー」だし、「カメレオンマン」という邦題の映画もあった。前半楽しく笑わせてくれて、後半重く暗い話になっていくいつもの展開。姉と弟が狂気に満ちた中の幸せを手に入れ、雨の中で戯れるラストシーンは、本水を使った演出がグッド。

『鼠小僧次郎吉』(作 佐藤信/演出 流山児祥/会場 Space早稲田)☆☆
ああ、昔の脚本だなあ、という感じ。勢いはあるが、時代遅れな感じも否めず。「次郎吉のテーマ」をはじめとする劇中歌が印象的。折込みチラシの中に流山児祥の演出200本記念のリーフレットが。全公演の詳細なリストが載っていて、これを貰っただけでも来た甲斐があった。ほんと面白いおじさんだよなあ。
2月14日(土)
『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』(原作 トールキン/監督 ピーター・ジャクソン)★★★★
1作目を観たときは、まさか3作目がここまで面白くなるとは想像も出来なかった。この3部作は旧SW3部作と双璧をなしたと言ってもいい。3時間半の上映時間を全く長いと感じさせない力量は見事。(ただ、途中耐えられずにトイレに走る観客の姿を何度か観た。合掌。)あまりに心に残るシーンばかりだったので、思いつくままにいくつか。死の間際の父王に王女が「あなたを救いたい」といい、父王は「もう救ってもらった」と答える。SWにもルークとダース・ベイダーの同じようなやり取りがあった。人間にとって真の救いとは何か。それは必ずしも死から救うことだけではないのだ。一人一人の人間が持っている、自分の命、というよりむしろ、自分の全存在を賭けてもやり遂げたい何か、それを悔いなくやり終えること。思い残すことは何もないと思わせてあげること。それこそが本当の救いなのでないだろうか。そして長い旅の果てに固い絆で結ばれたドワーフとエルフの、戦いを前にしてのやり取り。「まったく、エルフの隣で最後を迎えるとはな」「友達(の隣)なら?」「いいね。それなら、悪くない」ここは少し泣いてしまった。そして強大な敵に怯える兵たちを鼓舞する、新たな人間の王アラルゴンの演説。「いつか人が邪悪な心に負ける日が来るかもしれない。だがそれは、今日ではない!いつか人の世界が滅びる日が来るかもしれない。だがそれは、今日ではない!今は戦うときだ!今は命を賭して戦うときだ!」人は限界を知り、何かをあきらめてしまうときがある。だがそれは本当にあきらめるべきときなのか。まだそのときではないのに、「どうせダメだ」と早々とあきらめてしまっていないか。勇気が奮い立たされると同時に、身につまされるセリフだった。とまあ、ちょっと青臭い感想になってしまったがとにかくいい映画だったってことで。


2月11日(水)

『修羅雪姫』(監督 藤田敏八/原作 上村一夫・小池一雄)★★
母の恨みを晴らすめ、一人また一人と仇を殺していく主人公。殺す相手ごとに章が分かれていて語りが入ったり、日本屋敷で死闘を繰り広げたり、殺した仇の娘に恨まれたりと、「キル・ビル」のストーリー構成って「修羅雪姫」そのままだったんだなあ、と。「わたしの顔に見覚えないかい?あんたが嬲った誰かに似てないかい?」の台詞とかね。修行時代を描く部分で、何の脈絡もなく裸に剥かれる少女時代の雪役の女の子。主演の梶芽衣子にさえも濡れ場がないというのに、この監督はロリコンなのか?しかし白髪の坊さんを師匠にした修行のシーン、「立て、立つんだ雪!」には笑った。「あしたのジョー」かよあんたは。きっと「キル・ビル2」でのザ・ブライドとパイ・メイの修行は、このシーンのパクリなんだろう。白無垢の着物姿で切り結ぶさまの絵画的な美しさは期待したほどはなく、「キル・ビル」のオーレン・イシイの方がカッコいいい。

『軍旗はためく下に』(監督 深作欣二/原作 結城昌治)★★★

逃亡罪で処刑されたため、戦没者の英霊の列に加えてもらえない夫。その死の真相を知るため、未亡人は夫の隊にいた人間を訪ね歩く。戦争体験者の証言を尋ねて回る物語の展開は「ゆきゆきて、神軍」(監督 原一男)に、会う人間によって証言が異なるさまは「藪の中」(芥川龍之介)に似ている。基本的に現在はカラーで、戦争中の回想はモノクロで描かれるが、モノクロの中に要所要所で挿入されるパートカラーのシーンが鮮烈な印象を残す。

2月8日(日)
『ティファニーで朝食を』(監督 ブレイク・エドワーズ)★★★
オードリー・ヘップバーンって愛嬌のある顔ではあるが、美形ではないよなあ、と再認識。にもかかわらず、何でこんなに魅力的なんだろう。他人の檻の中に囲われるのが嫌で自由に生きているつもりで、実は自分で作った檻の中に閉じ篭もってしまっているという矛盾。「ほんとうの自由とは何か?」と、なかなか鋭い問いかけ。土砂降りの中で必死になって猫を探すシーンは、それまでうわべばかり取り繕ってセレブな生活を目指していたロインの裸の心が初めて垣間見えるいいシーンだ


2月7日(土)

『ワン・フロム・ザ・ハート』(監督 フランシス・フォード・コッポラ)★★
倦怠期の恋人。ケンカして町を彷徨い、いろんな人間と出会った挙句元の鞘に戻る。スタジオ撮影と思われる書き割りの風景は、舞台っぽさを狙ったんだろうけども、何だか安っぽい感じ。サーカス娘のナスターシャ・キンスキーが、少しエッチでかわいい。


2月1日(日)

『シービスケット』(監督 ゲイリー・ロス/原作 ローラ・ヒレンブランド)★★★★

いい映画だった。寺山修司の競馬モノが好きな私のような人間にとっては、たまらない作品。「さらばハイセイコー」を地で行くような、大衆のヒーローとなった名馬の物語。もう観てる間中「さらばサラトガ」や「さらばテンポイント」なんかが想起されて、それだけで感動してしまった。作中にサラトガ競馬場の地名が出てきた時も、ちょっと反応してしまった。失敗や敗北でどん底に陥っても、諦めずにもう一度立ち上がり挑戦する人々だげが、栄光を手にできる。でも立ち上がることできるのは、どん底に陥っても見捨てず、寄り添って手を差し伸べてくれる人がいるからこそなのだ。

そして夜。NHKアーカイブスで、寺山修司脚本のドラマ「わが心のかもめ」を鑑賞。「海で死んだ人は、みんなかもめになる」、「彼は競馬に賭けているというより、むしろ自分自身に賭けている」といった寺山のエッセンスが存分に詰まっていて興味深かった。が、いかんせん数十年前の作品なので少し退屈。「忘れた領分」なんかと同様、コレクターズアイテムという感じだろうか。


1月24日(土)
『ビックリハウス展示場展』(会場 パルコミュージアム)☆☆
今日はまず渋谷に。元天井桟敷団員の萩原朔美が編集していた雑誌「ビックリハウス」。そのビックリハウスゆかりの様々なアーティストが、趣向を凝らして作ったダンボールハウスによる展覧会。粟津潔、宇野亜喜良、あがた森魚なんかの作品がおもしろかったが、所詮はダンボール。いまいち見応えがない。ま、入場料700円じゃこんなもんだろうかな。作品は3万円で販売されるとのことで、ファンにとってはたまらないだろうな。

『寺山修司映像詩ポスター展』(会場 ポスタハリスギャラリー)☆☆☆☆
早々に会場を後にして、銀座線で南青山に向かう。「寺山関連のポスターはほとんどは見たことがあるしなあ、いまさら目新しいものはないだろうけど、寺山マニアとして一応行っとくか」くらいの感じで行ったのだが、思わぬ収穫があった。まず、「7回忌・寺山修司シネマ・メモワール」・「寺山修司没後10年祭」・「寺山修司映画祭・さらば映画よ」と未見の三枚のポスターを鑑賞・購入することが出来た。寺山存命中のポスターはアングラ文化の特集などがあるたびに紹介されるが、没後に制作されたポスターはあまり紹介されることがないので、こうやってまとめて見られる機会は貴重だと思う。そして驚いたのが、店内に置いてある閲覧資料である。花輪和一の手によると思われる、映画「田園に死す」の無数のカラーイメージイラスト、映画「上海異人娼館」のスチール写真、映画「書を捨てよ町へ出よう」・映画「田園に死す」のアートシアターギルド公開時のパンフレット(複製)など、感涙ものの資料が盛りだくさん。長々と居座って熟読してしまった。さらにもう一つ、店内でふと天井を見上げたら、「レミング」で使われた巨大体温計が張り付いていて、笑っってしまった。

『毛皮のマリー 人形劇版』(作 寺山修司/演出・人形操演 平常/会場 下北沢ギャラリー ラ・カメラ)☆☆
青山を後にし、井の頭線で下北沢へ。駅から結構な距離を歩いて、ラ・カメラに到着。ほんとうに30人入れば満員の、小さなギャラリー。ここで23歳の平常が、美少年欣也を生身の本人が、その他の登場人物を自ら操演する人形に演じさせることで、たった一人で「毛皮のマリー」を上演してしまおうという無謀な企画が行われた。いやあ、若いって怖いなあ。なかなかがんばっていたとは思うが、ううん、アマチュアの域を出ていないかな。私なんかは、過去に上演された「毛皮のマリー」を思い出して、想像力で補完しながら鑑賞することが出来たが、いちげんさんにはかなり厳しい作品に仕上がってたんじゃないかと思う。

黒色綺譚カナリア派『少女灯〜ドドメ懐古趣味』(作・演出 赤澤ムック/会場 荻窪アールコリン)☆☆
下北沢から新宿経由で荻窪へ。駅前に素敵な古本屋が沢山あったので、掘り出し物がないか物色。そうこうしてるうちに、開場時間が近づいたので劇場に向かうが、道に迷う。このチラシの地図わかりにくすぎるんだよ……いや、はじめて行く劇場なのに時間ぎりぎりまで古本屋にいる俺が悪いのか。走って走って、何とか開演時間ぎりぎりに到着。
カナリア派は「月光蟲」に続いて二度目の鑑賞。閉鎖されたケーキ工場を舞台にした、少女たちの物語。うーん、前回と比べるといまいちだった。物語の時間軸が交錯していてわかりにくいし、登場人物の心理に一貫性がなく、一人一人の行動が唐突な感じがする。突然「ここで死ななきゃ全然あなたらしくない」と言い出すドドメ(斎藤けあき)の論理が良くわからないし、その言葉に納得してあっさり死を選んでしまう緋色(冴島園子)の行動原理もわからない。登場する少女たちが皆地味な工員服なのも、色鮮やかな着物で舞台を舞っていた前回公演に比べて寂しい。やはり見栄えは大事だと思います。冴島園子さんは前回に引き続きひねくれた少女役が素晴らしい。この女優さんはほんとうに華がある。印象的だったのは、緋色が視力を失った男に毒を飲ませるシーン。死にたくない一心で、「解毒剤をくれ!」と音だけを便りに必死に自分を捕まえようとする男の手から、まるで鬼ごっこでもしているかのような楽しげに笑いながら、少女は逃げる。人の命さえも遊戯の対象にしてしまう残酷な少女性には、ぞくぞくするような迫力があった。盲人に襲われるシーンといえば、ケラさんの岸田戯曲賞受賞作「フローズン・ビーチ」や、「身毒丸」の義理の弟にらい病をうつしてとり殺そうとする身毒丸、映画「盲獣」でさらって来た女性に密室で襲い掛かるあんまの男などが次々と思い出されるが、どれも背筋が凍るほど恐ろしかった。盲人の恐怖というのは、まだ相手に見つかっていない、つまりいつ見つかるかわからない、予想がつかないという想像力の恐怖だと思う。


1月17日(土)

『たそがれ清兵衛』(監督 山田洋次/原作 藤沢周平)★★★

がんばるお父さんの話。真田広之、宮沢りえ、田中泯と俳優がみな素晴らしい。うーん、私としては、もう少し毒が欲しいなあ。


1月10日(土)
シベリア少女鉄道『ウォッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』(作・演出 土屋亮一/会場 駅前劇場)☆☆
シベ鉄、遂に下北沢に進出。めでたい。劇団予約で特典のCDRも貰い、準備万端で入場。駅前劇場の狭い空間の中で、客席の周囲の四方の壁に計四つの舞台が設けられている。「すわ、百年の孤独か!」というのが第一印象。当日チラシの中にある「頑張って見ていって下さい」という言葉からも、この四方の舞台が同時に使われ、観客は首を捻りながら観なきゃいけないんだろうというのが予測できた。そして開演。あいかわらずの、思いっきりわざとらしいネタフリの演技で物語が展開していく。そしてクライマックス、宣伝チラシの矢印が今回の仕掛けのネタばれだったことがわかる。仕掛けの詳細は省くが、今回はオチの部分が長く面白くて楽しかった。前回、前々回公演が自分的にはいまいち楽しめなかったのだが、今回は大満足。ラストにはカーテンコール風に出演者全員でカラオケを唄ってくれる大サービス。染谷景子さんと秋澤弥里さんはほんといい感じの女優になったなあ。次回は5月にシアター・トップスで公演とのこと。楽しみだ。
中島みゆき 夜会Vol.13『24時着 0時発』(会場 シアターコクーン)☆☆
 物語は主人公の女性が、海外旅行に当選して夫婦で出かけるところから始まる。実はこの当選は仕組まれもので、旅行先で夫は殺人の罪を擦り付けられる。主人公は夫はのアリバイを証言するが、「情婦の証言」(「恋文」収録曲)なので法廷では効力を持たない。国外退去を命ぜられ一人列車に乗せられた主人公は、気がつくと線路の終着駅にいた。そこには「ミラージュホテル」(「恋文」収録曲)という名のホテルがあった。ホテルは同時に、駅のようでもあり、水がせき止められた湖のようでもあり、淀んだ「時間」の溜まり場のようでもある。そして自分が通ってきた線路は、同時に川のようでも、道のようでも、時間の流れのようでもある。ホテルには旅人とも、川を遡る鮭ともつかない者たちが集まってくるが、水門が川を堰き止めているため、あるいは分断機が線路を止めているため、そして時計の針が止まっているため、その淀み(=ホテル)から違う場所に向かうことが出来ない。主人公は時計の針(=水門)を動かして流れを変え、そこを抜け出て、夫を救うために法廷へと戻る。だが謝って間違った世界に戻ってしまったらしく、その世界では、彼女は夫とは赤の他人になっていた。情夫の証言では効力がないが、赤の他人の証言なら有効になる。「たとえ赤の他人になってしまっても、あの人が助かるならそれでいい」と、主人公は一人きりになりながらも、夫を救えたことに満足する。
 10年の長きに渡る念願が叶い、ついに観劇できた。物語としては少し弱いというか、展開が飛躍しすぎている感じがしたが、音楽性には大満足だった。中島みゆきの圧倒的歌唱力と、大迫力のオーケストラピットに鼓膜が震えた。ほぼ全曲が書き下ろしの中で、「サーモンダンス」という曲の「生きて泳げ!涙は後ろへ流せ!」という歌詞が特に印象に残った。劇場内は当然ながら撮影禁止なので、ポスターとパネルを撮った。グッズショップでも、カレンダー、パンフ、なみろむを購入と、すっかり散財。


1月2日(金)

初詣でおみくじを引いたら大吉だった。なかなか良いことが書いてあった。
”時来れば 枯れ木と見えし 山影の 桜も花の 咲き匂いつつ”

1月1日(木)
なにやらうやむやのうちに年が明けてしまいました。今年もいろいろ観ていきたいと思います。