演劇レポート集 其の2
白馬村の夏の夜の夢〜大駱駝艦「庭の秘密」〜
大駱駝艦の野外公演を観てきました。以下本文作成中。
2004年8月7日夕刻、雨飾山登頂を終えた私は、白馬駅に降り立った。
麿赤兒率いる大駱駝艦の野外公演、天賦典式「庭の秘密」を鑑賞するためである。
チケットは郵送で手配し、会場の場所も確認し、帰りの切符も買い、準備は万端である。
ぱらついた雨も5時過ぎには止み、陽光が差し込んだ。
松川のはるか上流には雄大な白馬連峰が見渡せる。絶好の野外劇日和である。
会場は意外と遠い。白馬駅から松川橋まで北へ歩くこと15分。
そこからさらに松川沿いにてくてくとしばらく歩いて、ようやく会場に到着。
開演まで1時間近くあるというのに、すでに桟敷にはお客がいっぱいだった。
夕空にはためく「大駱駝艦」と「天賦典式」の旗がカッコいい。
夕間暮れの空が、やがて日没とともにゆっくりと夜の色に染まっていく。
開幕。煙と光が舞台に湧いた、そのとき。
舞台の後方ではなく、舞台の左側に広がる河川敷のはるか向う、その闇の彼方から、
身体中を金箔で塗った数十人の集団が現れ、観客の度肝を抜いた。
そして怒涛のごとくは走りこんできて、まさに巨大な黄金色の津波となって、舞台上になだれ込む。
客席からは拍手と歓声と爆笑の渦が巻き起こった。
踊り手の中には老若男女、外国人など、様々な人間が交じり合っており、それを観ているだけでも愉しい。
はじめは激しいロック調の音楽に合わせた乱舞。
途中で音楽はトランス系に変わり、舞踏の内容もそれに合わせて変わっていく。
続いて小道具の松明を手にし、音楽もフェリーニの道化師のような狂騒的なものに変わる。
踊り暴れ狂うサーカスの狂乱。
それが終わると、金箔の集団はいったん退場し、舞台も静かな様子に変わる。
白装束の2人、麿赤兒ともう一人の誰かによる花を抱えた舞踏。
つづいては客席後方から着物を着た集団が登場し、日本の村祭り風のにぎやかさを描く。
御柱、あるいは神社の鳥居のようにも見える、巨大な赤い柱が舞台上に屹立する。
そして舞台は暗転し、俳優たちが支える巨大な板に、これまでの活動の記録写真が映写されていく。
次に現れたのはマトリックスのような黒い服を纏った男たちと、白装束の女たちによる舞踏。
互いの身体を絡ませあい、睦み合い、なかなか刺激的だ。
そして舞台は役者全員集合で、大団円となる。
総上演時間は1時間半ほどだったが、非常に密度の濃い内容だった。
来年もまた必ず来ようと決め、帰りの電車に乗り込んだ。