郷土料理・故郷の味    by 忠右ヱ門

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◆まえがき◆

 江戸時代の昔からこの地に伝わる笹寿しは、お盆の時期のご馳走の一つです。笹は自然の殺菌作用があり、保存が効く事も喜ばれた理由でしょう。 旅に出ている(実家から離れて暮らす・働く)子や孫たちは、お盆の帰省でこの笹寿しを食べ、帰省してきた事を実感し、田舎の良さと故郷の温もり、そして親の愛に触れ家族の絆に涙するのです。

 忠右ヱ門というのは我が家(私の実家)の屋号で、200年以上も前から続いています(私の代が九代目)。また、明治の中頃まで桶屋職人をしていたので、通称「桶屋さ」とも呼ばれています。今でも、近隣の部落間では苗字よりも屋号を言ったほうがわかりやすいのです。例えば、「忠エむのおっちゃ」(私の事)とか、五郎兵衛のばあちゃなどと言った具合に・・。隣近所の付き合いというのは
、ごくあたり前に先祖代々からの付き合いという事で、部落内の同じ苗字の本家・分家の間柄を「家内(やうち)」と呼びます。冠婚葬祭など(特にお葬式や法事)では、若い者にはわからない、いろいろな習わしやしきたりなど本家や分家の父ちゃん爺ちゃんなどから学んだりするのです。田植えや稲刈りなどの農作業を皆で共同で行う「結い」も最近まで行われてきました。

 そうした田舎の文化が今、危機に立たされようとしています。若い人達が少なくなり当然のように子供がいなくなり、3年前に中学校がなくなりました。そして、今度は小学校がなくなるそうです。学校のない所に活気のある社会があろうはずはありません。 そうなると、残るのはお年寄りばかりです。そのお年寄りがいなくなった時、一体この何百年と受け継がれてきた家や土地はどうなるのでしょう。あと20年くらいした時、私は「存続か放棄か・・」という人生の岐路に立っているかもしれません。その時に明るい前向きな選択ができる様に、今から私は田舎の味の(食べ物だけでなく生活そのものの)良さを自分自身で再認識しながら、皆さんに少しでもお伝えしていきたいと考えているのです。

前おきが長い山アスパラ活二より◆

 何年か前、民放TV局の「・・旅サラダ」という番組で糸魚川の郷土料理として、この笹寿司が紹介されました。その時私の両親に声がかかり、親戚の者が集まりこれを作る様子が放映されました。現場監督は父、調理人は母という感じです。

 お隣りの富山県では鱒(マス)寿司が有名ですが、その流れがあるというか、似たところがあります。両者に共通する事は

・ 鮭や鱒を食材(ネタ)に使う事
・“押し寿司”であること。  
・ 笹を敷いて作ること。      です。

<<それでは作り方を紹介しましょう!>>

1 ● 笹の葉を育てて採ります。 
 我が家の蔵の後ろにある笹竹は、葉幅が広く、緑が深く香りが良いのが特徴です。50年に一度山じゅうの笹に一斉に花が咲きいったん絶えます。(この時落とした実を食べて野ネズミが大発生すると言われる)今から20年ほど前、この時期があり、今ある笹は、その後父が知人から株を譲り受け、植え付けたものです。
 時々、古竹を刈りこんでやるなどの管理をしながら、十何年も掛けてこのような立派な葉が毎年出るようになりました。
● 笹の葉を拭く
 濡れタオルで笹を拭きます。この時注意する事は、葉の根元から先に向けてタオルを動かす事。反対にこすると毛並みに逆らう事になり、葉が破れたり毛羽立ったりします。(これは、食べる時にも影響する、以外に大切な事なのです。)
● 寿司飯とネタ(具)をそろえる
 寿司飯はもちろん自慢のコシヒカリ。(ちなみに我が家のコシヒカリは、その旨味成分を昨年秋に計測してもらった結果、魚沼産のブランド米より上でした。・・水と土が良く有機肥料を効果的に使っているからでしょう・・)

 ネタの詳細については、また後ほどご案内します。
● 寿司飯を笹の葉の器に盛る
 植物の葉を器にするのは世界中で行われていますよね。南国ではバナナの葉を使ったり・・。日本でも笹の葉は自然の殺菌作用があって、昔から珍重されてきました。笹餅なんかも家で作ります。
 両手で笹とご飯を優しく挟むようにして盛りつけます(葉っぱの裏側に乗せる)。こんなふうに床に座って(“ねまって”と言う)やるのが本式。
● 寿司箱に揃えて並べる
 笹の方向を揃えて少しずつ重ねる様にして並べます。これが以外と重要なのです。何故なら、後で重しをつけて押した時に笹の葉が折れてしまわない様にとの先人の知恵なんですねえ。この寿司箱は6列で3段重ね出来る大きさです。笹の両端は取り出す時の事を考えて、わざと箱からはみ出る様にします。

● 具(ネタ)を乗せ並べる
 このようにきれいに並んだ状態で同じ具を続けて乗せれば効率が良いですね。さて、何を乗せているかわかりますか?だいたい家庭でおなじみの食材です。
 今回は生姜は苦手という子供の為に省きましたが、大人には必需品ですよね!

だんだん美味しそうになってきましたよ!
● 色とりどりに乗せる
 その時の気分で1段目と2段目の具を並べる順番が違ったりしても、それは良しとして・・。作る人のセンスにおまかせです。
● 葉っぱを隙間なく被せる
 ここでは3段重なったら笹の葉を上に隙間なく被せています。食べる人が多い時には4弾に重ねる事もあります。(今回はこれを2箱作りました)

お気づきでしょうか?必ず笹の葉の裏側がご飯に向いていますよね。これがとても大切な事。反対にすると“ムレてしまう”、裏側は呼吸が出来る為、上手に水分(湿り気)の調節をしてくれるのです。
● 上蓋に体重を乗せて押す
 これが最も押し寿しらしいところ。ここで不思議に思うのは「何故押すのでしょう」という事。

食物を外気から遮断して保存性を高める事が一番。そしてご飯と具をなじませながら、笹の葉の持つ水分がその爽やかな香りとあいまって、寿司に直一層の旨みを与えるのです。
蓋に重しを載せて、一晩置いたらちょうど食べ頃です。
さて、いただくとするか!はて、どうやって食べるのかな?

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