すみ=「すみ」です。 にえ =「にえ」です。
セルゲイ・ドナートヴィチ・ドヴラートフ 「わが家の人びと」  <成文社 単行本> 【Amazon】 
ロシアで生きる、百年四代にわたる一族の多彩な人々を描く短編集。悲劇的な20世紀ソ連の歴史を背景 としつつ、ユーモアとのんびりとした詩情にあふれる、どこまでが本当で、どこからがホラ話なのか わからない物語の数々。「イサークおじいさん」「ステパンおじいさん」「ロマンおじさん」 「レオポルドおじさん」「マーラおばさん」「アロンおじさん」「母」「父」「いとこのボーリャ」 「グラーシャ」「レーナ―これは愛じゃない」「カーチャ」「ニコラス―結び」
  
にえ 私はこの本を読んだとき、すっごく うれしくなったの。なぜなら、私がずっと、ロシア人って本当はこういう人たちなんじゃないかな、と 思ってたイメージにぴったり符合してたから。
すみ なんか、ソ連の時代には、ロシア人って ものすごく怖ろしい人たちのように描かれてたよね、とくにアメリカの娯楽本で。
にえ うん、その後もなんとなく、殺伐とした イメージがつきまとってるよね。
すみ でも、本当はヨーロッパの田舎と呼ばれて た、わりあいとのんびりした、牧歌的な国民性なのよね?
にえ うん、古典のロシア文学って重々しいイメ ージがあるけど、よくよく読めば、そういう穏やかに、のんびり笑いながら暮らす人たちの姿が見えてく ると思う。
すみ そのイメージに、この本がぴったりだった のね。
にえ そうそう、だから、やっぱり私は間違って なかった〜ってすごく嬉しくなっちゃった。
すみ どの話もほんと、ソ連時代の暗黒政治の 背景がありながら、どこかのほほんとしてるよね。
にえ たとえば、身長が2メートル10センチも あったおじいちゃんの、町内英雄伝みたいなお話なんて良い例よね。
すみ だれかが街角の居酒屋でしてるみたいな楽し い与太話に、おじいちゃんがソ連政府のために遭わされた残酷な仕打ちが、さりげなく、さらっと付け加えら れてる。
にえ そういうのって、なんか人間の逞しさみたいな ものを感じない?
すみ 感じる、感じる。
にえ 飼ってた犬も家族の一員として書かれ てて、そういうのも読んでいてニンマリさせられちゃう。
すみ お母さんの話もよかったよね。ほろっと きちゃった。
にえ これが本当のロシアの人々じゃないの かなあ。
すみ 作者はアメリカに住んでて、ロシア語で この本を書いたらしいけど、ロシアでもものすごく人気が出たらしいしね。ロシア人が喜ぶんだから、 やっぱり本物でしょう。