=「すみ」です。 =「にえ」です。 | |
「鉄の絆」 ロバート・ゴダード (イギリス)
<東京創元社 文庫本> 【Amazon】 (上) (下)
「あなたがどんな命令を受けているかはわかっています。だれに雇われたのかも」老婦人は、いままさに自分を殺そうとしている男にそう告げた。すべての計画を見抜き、死を覚悟したうえで待ちかまえていたのだ。高名な詩人の姉であった彼女の身に何が起きたのか? | |
これはねえ、最初の300ページあたりまで、何にも起きなくて、これって登場人物も出なくて、どうしようと思ったけど。 | |
そこから急速におもしろくなるのよね。 | |
なんかそれにさあ、ストーリーから人物まで、今までとはかなり違ったよね。 | |
うん。スペイン戦争、戦死した詩人、っていう重厚な歴史がからむところはゴダードらしいんだけど、現在の話はちょっとロマンティックでコミカル? | |
主人公が若い女の人(シャーロット)と、ちょっと意気地なしだけど、女の人に恋をしたから頑張っちゃう男の人(デレク)なのよね。 | |
そうそう、かわい〜♪ でもさ、デレクって、最初はお兄さんのために頑張って、それから女の人のために頑張って、ぜんぜん意気地なしじゃないよね、考えてみれば。 | |
一回も逃げ出さなかったよね。最後には命までかけちゃうし。過去にこだわってるところもないし、卑怯なところもないし、人として深みがあるかどうかは別として好感持てるかも。 | |
デレクのお兄さんも、ハリウッド映画に脇役で出てきそうなほどコミカルだし、腹黒い人たちもいい味だしてるし、その辺はもう、完璧にハリウッド映画の娯楽活劇を見るような楽しさがあるよね。 | |
それに、スペイン戦争、戦死した詩人、殺された詩人の姉、秘密を持った人々っていう重く悲しい話が加わって、明暗がくっきり。 | |
その中間にいて、現在と過去を繋ぐのが謎めいたおじいさん、渋めのいい味だしてるよね。 | |
いいところにさっと出てきたりして、これまた娯楽本の定石的な登場人物だよね。 | |
殺された老婦人もかっこいいよね。 | |
生きてて、いろんな話をしてくれればいいのにと思うけど、死んだところから話がはじまるから、これはしかたないか(笑) | |
ハラハラドキドキ、謎解きあり、アクションあり、恋愛あり、で、予想通りのハッピーエンド。今までのゴダードと違うから、あれって感じだけど、これはこれでよくできてるし、きらくに楽しめるんじゃない? | |
最初の300ページがなかったら、もっとグッドだけどね(笑) | |
あと、最後のオチになる謎は、もうしょっぱなからバレバレ、そこは残念だったね。 | |
残念っていうか、やっぱりな〜って苦笑い、笑顔で読み終われる本だったよ、そういう意味でも(笑) | |
殺された老婦人もやるだけやってくれたって感じだから、悲しいというよりかっこいいなって思えるから、やっぱり深みはあってもからっとしてるしね。 | |
それに解けていく過去の謎はよかった。納得できたし、共感できた。今までの過去の謎のなかで、私は一番好きかも。 | |
ってことで、ちょっと冒険活劇的になっちゃっててもいいって人限定でお勧めです。 | |
あ、そうそう、ふだん翻訳本をあまり読まない人に注意事項。この本で、シャーロットの愛称はチャーリー、サマンサの愛称はサムってなってるので気をつけて。 | |
チャーリー、サムってなんか根っから日本人の私たちとしては、男の名前に思えちゃうよね。 | |
シャーロットがチャ−リーなんて、英文字の綴りを思い浮かべないと、カタカナ書きだとなんのこっちゃだよね。 | |
お気をつけて〜♪ | |
さて、来週はどうしましょ? | |
2月23日にゴダードの新刊「永遠(とわ)に去りぬ」が出るし、いつも通りの日程でいくと、レンデル館と重なっちゃうし、う〜ん。 | |
じゃあ、未定ってことで(笑) | |
なるべく早く「永遠に去りぬ」をアップして、そのあとで「閉じられた環」になると思います。お楽しみに〜♪ | |
週刊ロバート・ゴダード 2001年2月23日号 | |