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「千尋の闇(ちいろのやみ)」 ロバート・ゴダード (イギリス)
<東京創元社 文庫本> 【Amazon】 (上) (下)
職を追われた歴史教師のマーチンは友達の紹介で謎の多い老年の実業家に出会い、半世紀以上前に失脚した青年政治家ストラトフォードの真実を探るよう依頼される。 | |
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ま、最初だからそんなに褒めちぎらなくてもいいでしょ(笑) じつは私、この本を前に読んで完全に忘れてました。 |
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まあ、素晴らしい記憶力ですこと。 |
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なんで忘れてたのか、読み返してわかりました。ストーリーは面白くて、一気に読めたんだけど、登場人物の善悪わけがはっきりしすぎてて厚みがなく、印象に残らないのよね。 |
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そう? 私はストラトフォードの紳士っぷりに感動をおぼえたけど。 |
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あと、ある悪人がわかりやす過ぎ。もうちょっと隠してて欲しかった。最初は全くの善人ふうで、最後はドカン、みたいな。 |
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ああ、あの人ね。 |
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主人公の男は、男として魅力がなさ過ぎ。最後のところで、「あんた、そりゃ金だけが目当てだろ〜!」って言いたくなった。 |
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げげげ、ネタバレすれすれ。 |
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それからヒロイン、物事を表面的にとらえすぎ、お高くとまった純潔ぶりが鼻につく。 |
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え〜、それは昔の淑女だからしょうがないんじゃない。それにあとでかっこよくなったし。 |
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でも、愛する男よりまわりの言うことを信じる女なんてどこにいるのよ。普通、周りがいくら悪く言っても、私だけはあの人を信じる、なんてことを言うのが女でしょう。 |
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そりゃにえちゃんの偏見では? |
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でもね、読み返したら、ゴダードさんの良さがわかりました。 |
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ほっ。それでゴダードを読み尽くそう(笑)って気になったのね。 |
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まずね、長いのに一気に読める親切設計。 |
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設計って・・・。 |
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たとえばね、他の作家が出だしの情景描写に2ページ半は費やすとすると、ゴダードは半ページ程度であっさりすませちゃう。 |
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2ページ半って・・・。統計をとったわけでもないのに、よくそうやって言い切るよね。でもまあ、たしかに景色とかの描写が簡潔。あと、クドクドとした心理描写とかもあまりないよね。こういう内容だとネチネチ書きたくなりそうなものなのに。 |
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そうそう。素敵なお屋敷とか出てきても、癖の強い人物が出てきても、簡単にしか説明しない。で、ひたすらストーリーを追うことにだけ集中させてくれるの。これは親切。 |
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もたつきがないよね。 |
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過去の歴史を語りながらも、大衆的なのよ。読んでる人の身になってる優しい作家さんなの。で、これ言っちゃうとファンに怒られそうだけど、読んでる感覚的には、超訳!で有名なシドニィ・シェルダンを連想しちゃいました。 |
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あ、それにさ、いくつも謎を含ませといて、どんどん答えを与えてくれるから、なんか縺れた毛糸玉がテーブルの上にぽんと置いてあって、それを器用な手がどんどんほどいていってくれるような、読んでてそういう快感がない? |
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そうね、はっきり言って、謎がいくつか先に解けちゃったりもするんだけど、まだ他にも謎が残ってるから、まだまだ楽しめるぞって安心感があるよね。 |
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なぜか最後のオチだけはどの作品も、かならずと言っていいほどバレバレで、オチのつかない落語家さんみたいな間抜けさはあるけど、本当に最初から最後まで楽しませてくれるよね。 |
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で、誉めまくったところで、この本に戻ると、過去と現在が交錯するようなストーリーの流れになってるんだけど、歴史上の有名な政治家(ただし、イギリス限定)が出てきたり、女性の参政権を訴える女性運動家たちが描かれてたり・・・。 |
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あと、悲恋あり、悪女あり、でロマンスも満載! |
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娯楽本として、軽く楽しめばいいんじゃないかしら。 |
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うん。主軸のストーリーが重々しいわりに、読んでて重みはないよね。読書を楽しむためにあるような本。 |
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てことで、今週はここまで! 来週は「リオノーラの肖像」で〜す♪ |
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ゴダードについてはもうだいたい喋ったから(笑)、来週からはもっとストーリーをつっこんで話しましょうね。 |
週刊ロバート・ゴダード 2001年1月19日号 | |
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