すみ=「すみ」です。 にえ=「にえ」です。
 「惜別の賦」 ロバート・ゴダード (イギリス)  <東京創元社 文庫本> 【Amazon】
クリスの姪の結婚披露宴に、少年時代の親友ニッキー・ランヨンが闖入してきた。みすぼらしい姿に変わり果てたニッキーは、三十四年前、ニッキーの父が犯した殺人が冤罪であると訴える。翌朝、ニッキーはを吊って自殺をする。クリスは真相をたしかめようと捜査を始める。
にえ これは珍しく主人公にあまり特徴がないよね。
すみ そうね〜、わりと普通の、というか、まっとうな人間。読んでてムカムカしてくる男ではなかったよ。
にえ それにしてもさ、またまた悪女が登場するんだけど、ゴダードって悪女が好きだよね。
すみ う〜ん、男の人に比べて、女の人の善悪がわりとはっきりしちゃってるかもね。女の悪人はみんなお色気ありの悪女かも(笑)
にえ 今回の悪女もお色気ありで、まあ、やるだけやってくれたってかんじよね。 
すみ ネチネチタイプじゃなくて、暴発型だったね。
にえ 私は今回の過去の話、歴史がらみじゃないけど、好きだった。おもしろいよね、この設定。
すみ クリスの祖母のお兄さんである、大伯父って人が鍵なのよね。この人が、外国で成功して帰ってくるんだけど、妹には何にもあげなくて、昔好きだったコーディリアって女の人によくしてあげちゃう。
にえ コーディリアはもう結婚してるんだけど、家族ごと屋敷に住まわせて、子供にもいい教育を受けさせてやって・・・。これじゃ妹は怒るよ。
すみ その辺の複雑な過去の人間関係は私も好き。歪んでて(笑)
にえ うん。問題は現在で起きる出来事のほうだね。過去は1947年まで、現在は1981年なんだけど。
すみ そうだ、章が「今日」「明日」「昨日」って3つに分れてるんだよね。私、最初は「あれ、三日間のお話なの?」と思っちゃったけど、そういうわけではなかったね。
にえ 話を戻しましょう。その現在なんだけど、ゴダードお得意の二転、三転の展開が、ちょっとわかりやすすぎたんじゃない? 
すみ 二人とも、登場人物がそろった時点で言い当てちゃったもんね(笑)
にえ できればそういう安易なプロットにしないで、現在でも複雑な人間関係を展開して欲しかったなあ。
すみ まあ、1冊でおさまっちゃう長さだからね。
にえ 悪くはないのよ、話的には。ただ、絡み方が単純すぎる。主な登場人物が主人公のクリスでしょ、ニッキーの妹でしょ、悪女でしょ、けっきょく3人なんだもん。
すみ 全体に漂う物哀しい雰囲気も良かったし、登場人物も悪くないよね。それぞれ個性出てるし。悪女も平べったくないし。それだけに、あとちょっと・・・って思っちゃうな。
にえ その謎とか展開部分さえもうちょっと深くしてくれてたら、好きだったかもしれない。
すみ もっと利害関係を入り組ませて、善人悪人がごちゃごちゃ騙しあったり、裏切りあったりとかね(笑)
にえ う〜ん、まあ、あんまりふだんのゴダードほどゴチャついてないほうが好きって言うんだったら、これはこれでいいのかもしれないけど。
すみ あんまりふだんミステリ読まない人には、かえってわかりやすくていいかもね。それ以外の人は好みの問題でしょう。私たちが好きじゃなかったってだけなんだから。おもしろかったって言う人もけっこういるよ。
にえ うん。ということで、私たち的にはこれは残念賞だったってことで。
 週刊ロバート・ゴダード 2001年3月23日号