Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.1 ) |
- 日時: 2005/02/21 19:46
- 名前: Hiro
- ちょっとショックが覚めやらないんだけど、読み終えましたので参加させてください。(^^)
あきらかにエドウィンはジェフリーが手を下して殺してますね。 エドウィンは自殺のまねをしたんだけど、ジェフリーは本気だった。 そして、これで彼の書いた伝記は完璧になると期待していたのが、エドウィンに突然阻まれたので思わず!・・・・ジェフリーの性格からしても、このすごい計画を途中でやめるなんてことは、許せなかったのではないかしら。 エドウィンは天才かという問題なんですけど、ある程度の才能は持っていたと思います。 ある種の脈絡のない想像力というか、そんなものがあったんじゃないかしら。 でも、気まぐれで論理性は全くないし、根っから独創的という程でもない。 「天才」までは、いっていなかったんじゃないかな。 一方のジェフリーは知能が高い観察者、でもイマジネーションに欠けるから彼自身からは何も作れない。自分の持っていないものを持つエドウィンがいて初めて、その観察者として才能を開花させられる。 つまりお互いに相手を補い合うことで、お互いが天才になりえた。 その集大成があの伝記で、それを完成させるためには「エドウィンが自殺す る」というラストがどうしても必要だった・・・と思うんです。 ただ、「まんが」のラストから見ると、エドウィンはジェフリーの手で殺されることを感じていたとも考えられるわけで・・・・ まだ頭が混乱しているので、ここまでにします。(^^;
|
Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.2 ) |
- 日時: 2005/02/21 19:48
- 名前: Hiro
- エ〜、猫毛さんのいらっしゃる前にもう少し詳しく説明してみま〜す。(^^)
でも、あくまでも私の勝手な解釈ですから適当に聞いてやってください。
「しばらくして彼は目を開け、「どうだった?」と訊いた。次の瞬間、僕は彼の上にのしかかり、ピストルを握る彼の手を握っていた。その刹那、痺れるような無感覚の中で、数秒の誤差なら『僕の生い立ち・赤ちゃんの記録』の「ぼく、生まれたよ」の記録と矛盾するまいと、それだけは奇妙にはっきり考えたのを覚えている。」 この文章って、エドウィンの手の上からジェフリーが引き金をひいたというふうに読めませんか?(ついジェフリーの筆が滑っちゃったんだと思う。) ホワイト氏もこれにたぶん気づいたと思うけど、当時ジェフリーは11歳で18年たってれば、アメリカでも時効って成立してるんじゃないかな〜。 それに彼がもう表舞台に出てくることもないと思ったのではないでしょうか。・・とまあ、想像をしています。(^^;
それから「まんが」の方の話なんですけど・・・エドウィンって創作の時、必ず何かを真似るか、或いは下敷きにして作りますね。 この「まんが」の場合、それがエドウィンの人生そのもの。 その中で、黒マントの男が主人公を執拗に追いかけた末、最後に殺しています。しかも一度ハッピーエンドと思わせた後に、満足げな笑みを浮かべた主人公をベッドの上で殺している。この黒マントってジェフリーがモデルでしょう?これは現実とピッタリ符合してしまいます。 ただ今のところ、私はエドウィンが意識的に自分を殺させたというよりは、 潜在的にそちらにもっていったとしか思えないんですけど。 おもしろいのはこの「まんが」の内容のおかげで、エドウィンがジェフリーを本当はどう思っていたかってことがジェフリーのフィルターを通さず見えることです。 それは、ラストの「(エドウィンが)今もからかい続けていて、僕の書いているそのページの中から僕を笑っているのではあるまいか」というジェフリーの言葉にも関係してくるのじゃないかしら。
とにかく、これって二重三重の構造になっているので、かなり裏読みしなくちゃいけないみたい。考えれば考えるほど、謎が出てきそうです。 (^^)
|
Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.3 ) |
- 日時: 2005/02/21 19:49
- 名前: すみ&にえ
- そうですね! たしかに間違いないですね。そういえば、私たちもそこを読んだとき、え、これって……と思ったおぼえが。う〜、それなのに、続きを読んでるうちに混乱してしまった〜不覚。
「まんが」の方もおっしゃるとおりです。私たちは全然わかってませんでした。そうか、そうですよね、黒マントの男がジェフリーだ。 そうなると、2通り考えられますね。
1つは、エドウィンが自分でも気づかず、未来予想をしてしまった。つまり、エドウィンの鋭い感性が、二人の関係を正確に感じとっていた。
2つめは、エドウィンを天才と崇め立て、エドウィンの言葉を異常なほど大切に扱うジェフリーは、エドウィンが冗談で自殺すると宣言した時間にも異常にこだわった。同じように、エドウィンの書いた「まんが」も深読みし、ハッピーエンドになりかけたあとで殺さなければならない、黒マントの男である自分にこそその役割が振り当てられている、と思った。つまり、エドウィンは「まんが」の登場人物のモデルが誰であるか、自分で書いていながらわかてなかったが、ジェフリーはわかった(と思った)ので、自分の役割を示唆されていると信じ、忠実に演じてしまった。
そうだ、3つめ。エドウィンが暗に「まんが」で指示していた、それをジェフリーがわかって従った、というのもありですね。
2でいくと、エドウィンは崇め立てられることでジェフリーに動かされ、ジェフリーはエドウィンを崇め立てることで動かされてたっていう複雑な関係がハッキリ出てくる気がして、私たち的には一番しっくりきますが。
|
Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.4 ) |
- 日時: 2005/02/21 19:50
- 名前: 猫毛
- うわ〜、みなさん、論議が白熱してますね(^^)
Hiroさんのおしゃること、すみにえさんのおっしゃること、いちいち頷けますね。わたしはあの「復刻版によせて」っていう、前書きみたいな部分がなかったら、「まんが」の存在すらも疑いたい気分でしたが、やっぱり「まんが」は実際にあるんですよね。エドウィンがこれをどういう意味を持って書いたのか、そこが最大の謎ですね。そこにエドウィンの無意識の(あるいは意識的な?)示唆があったのかどうか。それともそんなものはないのに(だって、「まんが」ストーリー展開やラストはよくあるパターンともいえる)ジェフリーには、自分に向けられたメッセージだと思った? 最初はエドウィンが天才なんだと思って、つぎにはジェフリーのほうこそ天才だと思ったけど、やっぱりエドウィンが真の天才で、ジェフリーをあやつって、自分の「伝記」を残させたのかもしれない…堂堂巡りですね。 ちょっと「情痴の殺人」なんて言葉も浮かんだことを白状してしまおう(笑)それはないか?
|
Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.5 ) |
- 日時: 2005/02/21 19:51
- 名前: Hiro
- やはり、ジェフリーとエドウィンの関係(変な意味じゃないですよ)がこの小説のキーだと思うんですが、ここのところが考え出すとわからなくなるんです。
ジェフリーはエドウィンを本当に心から賛美していたのでしょうか? すごく傾倒していたようにも見えるけど、書き方にちょっと傲慢なところがあるのが気になります。 いかにも自分のおかげだぞと言わんばかりのところがありませんか? 自分の観察者としての才能、伝記作家になりうる才能を愛していたから、自分が天才的伝記作家となるために、必要以上に賛美しているフリをしているようにも思えるんです。 エドウィンの死後、案外サラッとして新しい隣人のポールの才能に注目しているところなど、まるで次の獲物を探しているみたいだし・・・
|
Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.6 ) |
- 日時: 2005/02/21 19:52
- 名前: すみ&にえ
- たしかに「まんが」に対しても絶賛するふりをしながら、けなしているって態度でしたよね。
でも、もともと伝記作家になろうとしたのは、エドウィンが作家になると言ったからだし、伝記部分をどけても、あの乱暴者の少年にエドウィンを奪われそうになるとき、嫉妬的な行動もとっていたし。
考えてみると、ジェフリーは矛盾してますよね。賞賛し、密着しながら、公正な伝記作家であろうとしすぎるための冷たさもあり……。
「まんが」を完成させるまでの天才の階段をのぼるエドウィンを賞賛し、愛していたけれど、天才エドウィンが抜け殻になって、抜け殻に愛は感じなかったってことでしょうか。いや、それでは「まんが」に批判的だったことの説明にはならないな〜。
愛しながらも、作家であるエドウィンに伝記作家として張り合っていたんでしょうか。う〜ん。
|
Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.7 ) |
- 日時: 2005/02/21 19:57
- 名前: プロ・ビーラー
- 読了直後の興奮にまかせて、感じたことをここに書き込みます。
見当違いな感想になったかも知れませんが、こんな風に感じた人もいたんだな、と軽く流していただければ幸いです(^^;)
エドウィンは、内省的な性格のごく普通の少年だったような気がしました。 感受性の面で大人びていたジェフリーにとって、むしろ精神的成長が遅れ気味なエドウィンの存在は、常にミステリアスであったように思えます。 そんな不可解なエドウィンを理解するために、無意識に彼を天才として位置づけていった。だからジェフリーの視点で描かれた伝記の中で初めてエドウィンが天才としての生を受けたように思えます。賞賛と皮肉が入り混じる伝記は、エドウィンが天才であるという評価に対する疑念が表れている気がしてくるのです。 そしてエドウィンが自殺した(とされる)夜、冗談交じりに自殺するふりをしたエドウィンを見て、ジェフリーは初めて彼が天才でないことを知ったのではないか。だから天才の生をそこで終わらせたのではないか。そんなふうにも思えるのです。 最後に、フーパーに興味を抱いたジェフリーのその後は・・・ちょと怖いです。
|
Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.8 ) |
- 日時: 2005/02/21 19:58
- 名前: ぎんこ
- みなさんの深い意見を聞いて、ほとほと感心しておりますー。
私なんて、そこまで考えて読んでませんでした…(あせあせ)。 エドウィンを撃ったのは、本人にせよジェフリーにせよ、私は「自殺」なんじゃないかなーと思いました。 「自殺」というより、自分で自分の決めた時に人生を終える、というのが目的なんでしょうけど。 そこが子供の(というかエドウィンの)ごう慢さなのかな? そしてジェフリーは自分の本の中でしか存在しないエドウィンを望んでいたのかもしれない…。 うーん、よくわかんないですけど、みなさんの意見を聞くと色々考えてしまいました。 しかし、ミルハウザーは結局子供を書いていても、大人を書いていても似たような感じになってますよね(笑) 何かに固執する暗い情熱…「三つの小さな王国」もそんな感じだった記憶してますー。
|
Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.9 ) |
- 日時: 2005/02/21 20:00
- 名前: よし
- 読了しました。
自分はこの作品、ドストエフスキーの「悪霊」に似てるなあと思いました。 スタヴローギンとピョートルの関係がそのまま、エドウィンとジェフリーの関係に当てはまるのではないかなあと。 スタヴローギンも天才のような革命の指導者として祭り上げられながらも、 裏で操っていたのはピョートルでした。 彼は自分の目的である革命のためにただ利用しただけでした。 そしてスタヴローギンが自殺しますが、それも明確には書かれていなかったと思いますがピョートルの仕業だったよう思います。 何事も無かったかのように、最後、ピョートルは姿を消してしまいます。 彼の目的は革命によって社会を変えることではなく、革命そのものが目的だったよう思います。
同じように、やはりエドウィンは天才ではなく、あくまでジェフリーの伝記の材料にすぎなかったのではないかと思います。 もちろん誰でもいいというわけではなく、材料にふさわしい素質をエドウィンはもっていたのでしょう。そこに触発されることでジェフリーの伝記作家としての才能が開花される、持ちつ持たれつの関係にあるのでしょう。
あと、やはりエドウィンを殺したのはジェフリーだと思いますが、 「エドウィン・マルハウス」ってあくまで、ジェフリーによって書かれた「作品」ですから、どこまで信じていいのか・・・。 そういえば「悪霊」も、ある国家の秘密諜報員によってかかれた「報告書」という体裁でした。
姿を消したジェフリーはその後、正体を隠し別人に成り済ますなどして、 次々と「伝記」を書いていったのではないでしょうか? ジェフリーってパトリシア・ハイスミスのリプリーみたいな感じにも思えます。そうすると二人のホモセクシュアルな関係もありってことでしょうか?
でもこの作品の魅力って何より、子供時代のなつかしい記憶が呼び覚まされるって言うか、まるで自分のことのように思い当たるところがたくさんあることです。 つららを冷蔵庫で保存するとか・・・自分もやりました^^;
とにかく傑作ですよね。 復刊してくれないかなあ・・・手元に置きたいです。
|
Re: <ネタバレ>エドウィン・マルハウス ( No.10 ) |
- 日時: 2005/02/21 20:02
- 名前: エムバッシ
- ネタバレの方に参加させていただこうと、もう一度皆さんの意見を読み直していたら、
色々感心することやうなずくことばかりで、自分のあやふやな印象など全て吹き飛んで しまった気がいたします(^^;;)。
ふと思ったのですが、"Mullhouse"と"Millhouser"ってスペルがあまりにも似ていませんか。 作中にも出てきた押韻へのこだわりなどをみると、(韻ではありませんが)エドウィンと作者 (本当の)ミルハウザーに共通点があるのかな、と思ったり。 となると、ミルハウザーは伝記者(ジェフリー)でもあり、被伝記者(って意味不明ですが) もあり...小説という構造上当然と言えば当然ですが。
ジェフリーの手についた硝煙は、もしあったとしても「エドウィンの手を押さえて止めよ うとした」としてごまかすことは出来ないでしょうか。
あと、これはありえない話なのですが、ローズ・ドーンとアーノルド・ハセルトロームの 死にもジェフリーが関わっていたということは...ないでしょうね。 読み終わってふと頭をよぎっただけなのですが、ローズ・ドーンの死にさしかかったときに 「ふとこれでいいのかと不安になった」となり、じっくり書くようになり、今まで書いた部分 にも推敲をはじめますよね。そしてアーノルド・ハセルトロームの部分にも丸2ヶ月を費やした、 となっています。実際はジェフリーがこの2人を「排除」し、それに対する編集を加えた状態で 伝記を作っていったのでは。 (火事を起こしたり、ましてや警官に射殺されたりという死因に関係しているとはとても 思えないのですが、ふと思ってしまった印象として、読み流していただけると嬉しいです)
黒ずくめの謎の人物がジェフリーだということは、エドウィン自身が明らかに認めている んですね。 “「だって、知ってるくせに」とエドウィンは言った―これは言わぬが花だろう。”
以上、表面的なものばかりですが、思いついたことをまとまりもなく書き込んでみました。 興奮に任せて、とのことでお読み流しください。
図書館で借りて読んだのですが、復刊したとのことだし、買います。
|